COVID-19パンデミック時の休校、子供の寿命に影響か

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/08

 

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック時、学校が休校となった国が多いが、子供たちの健康への影響はないのだろうか。米国・ワシントン大学のDimitri A. Christakis氏らが、COVID-19パンデミックに関連して生じうる損失生存年数(years of life lost:YLL)を米国の小学校の休校もしくは開校継続の条件で推定したところ、開校継続が支持される結果となった。JAMA Network Open誌2020年11月12日号に掲載。

 この決定分析モデルでは、米国の疾病予防管理センター(CDC)、社会保障局、国勢調査局の2020年のデータを含む公的に利用可能なデータを使用し、休校と学歴低下との関連、学歴低下と平均余命との関連を推定した。また、COVID-19による死亡率、開校を継続してCOVID-19が増加した場合に生じうる死亡率の増加も推定した。主要アウトカムはYLL。

 主な結果は以下のとおり。

・2020年のパンデミックで、計2,420万人の5〜11歳の子供が通っていた公立学校が休校となり、中央値で54日間(四分位範囲:48〜62.5)の授業が失われた。
・休校による平均YLLは、男子で0.31年(95%信頼区間[CI]:0.10~0.65)、女子で0.21年(同:0.06~0.46)であった。人口全体における休校に関連したYLLは、553万年(同:188~1080万年)と推定された。
・CDCの報告では、米国では2020年5月末までにCOVID-19で8万8,241人が死亡していることから、YLLは150万年(95%CI:123〜185万年)と推定された。もし開校を継続した場合のYLLの上乗せは、休校とパンデミック蔓延の減少の関連を検討した研究結果に基づくと147万年(同:45~259万年)と予測され、計297万年(同:188〜430万年)となる可能性が示された。
・「開校」と「休校」の両条件において推定されたYLLの分布を比較・分析すると、開校継続では休校時よりも合計YLLが低いことが98.1%の確率で観察された。

 著者らは、「この決定分析モデルでは開校継続が支持された。今後、パンデミック中の休校の決定は、教育の混乱と予想される寿命短縮との関連を考慮し、休校によって子供の健康に生じうるアウトカムを重視する必要がある」と結論している。

(ケアネット 金沢 浩子)