腎性貧血に新しく2剤の経口治療薬が登場/GSK、田辺三菱製薬

8月26日、腎性貧血に対して、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬であるダプロデュスタット(商品名:ダーブロック、グラクソ・スミスクライン)とバダデュスタット(同:バフセオ、田辺三菱製薬)が発売された。HIF-PH阻害薬としては、2019年11月にロキサデュスタット(同:エベレンゾ、アステラス製薬)が発売されているが、現在の適応は透析施行中の腎性貧血のみである。一方、今回発売されたダプロデュスタットとバダデュスタットは、透析施行中だけでなく保存期の腎性貧血患者にも使用可能な治療薬で1日1回経口投与である。
腎性貧血の治療薬に経口剤のHIF-PH阻害薬
高齢化や生活習慣病の進展に伴い、腎障害をもつ患者が増加しており、わが国には慢性腎臓病(CKD)のステージ3~5の患者は1,090万人と予想されている。腎臓は、エリスロポエチンなどのホルモンを産生することで赤血球の産生を促進するが、腎障害を有する患者では腎臓が十分な量のエリスロポエチンを産生することができなくなることから、腎性貧血がよく起こる。また、腎機能が低下することで腎性貧血の有病率も高くなり、CKD患者の3割に腎性貧血があるという報告もある。腎性貧血になると、動悸や息切れ、めまいや立ちくらみ、全身倦怠感などの症状が現れるが、貧血は徐々に進行するため症状に気が付ないこともあり、定期的な検査やその後の適切な治療が必要となる。
従来、腎性貧血の治療薬は、注射剤はあったものの、患者のQOLやアドヒアランスなどは決して良好とは言い難かった。
そこで新たに開発された治療薬が経口剤のHIF-PH阻害薬で、低酸素(酸素欠乏)で生じる生理学的作用と同様の作用機序で、骨髄での赤血球産生を促し、腎性貧血を改善する。HIF-PH阻害薬は、昨年発売されたロキサデュスタット、今回発売されたダプロデュスタットとバダデュスタットのほか、enarodustat(日本たばこ産業)も近く承認される見通しである。
ダプロデュスタットの製品概要
製品名:ダーブロック錠1mg/2mg/4mg/6mg
一般名:ダプロデュスタット
製造販売承認取得日:2020年6月29日
発売日:2020年8月26日
薬価:ダーブロック錠1mg 105.40円/2mg 185.80円/4mg 327.40円/6mg 456.10円
効能・効果:腎性貧血
用法・用量:
(1)保存期慢性腎臓病患者
・赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mgまたは4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
・血球造血刺激因子製剤から切り替える場合
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
(2)透析患者
通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
製造販売元:グラクソ・スミスクライン
販売元:協和キリン
バダデュスタットの製品概要
製品名:バフセオ錠150mg/300mg
一般名:バダデュスタット
製造販売承認取得日:2020年6月29日
発売日:2020年8月26日
薬価:バフセオ錠150mg 213.50円/300mg 376.20円
効能・効果:腎性貧血
用法・用量:
成人にはバダデュスタットとして、1回300mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回600mgまでとする。
製造販売元:田辺三菱製薬
(ケアネット 稲川 進)
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