うつ病のアルゴリズムに基づく治療プログラムの有効性

ランダム化比較試験(RCT)で証明された効果が、日常の臨床診療で一般化できるかどうかには疑問が残る。オランダ・フローニンゲン大学のKaying Kan氏らは、うつ病のアルゴリズムに基づく治療(AGT)プログラムの治療オプションを評価し、それらの有効性を有効性試験のアウトカムと比較した。さらに、治療継続性とアウトカムとの関係を評価した。Journal of Affective Disorders誌2020年10月1日号の報告。
オランダのメンタルヘルス医療従事者より2012年1月~2014年11月の治療データを収集し、ルーチンアウトカムモニタリング(ROM)データと関連付けた患者351例を対象とした、自然主義的研究を実施した。治療オプション(薬物療法、心理療法、薬物+心理療法)の有効性は、メタ解析で報告された有効性と比較した。バイナリ変数として治療継続性(推奨された治療セッションの早期中止患者と完了患者の比較)を含めた。
主な結果は以下のとおり。
・各治療オプションの寛解率は、メタ解析の結果と比較し、以下のとおりであった。
●心理療法:38%(95%CI:32~45)、メタ解析より低い
●薬物療法:31%(95%CI:22~42)、メタ解析と同等
●薬物+心理療法:46%(95%CI:19~75)、メタ解析と同等
・各治療オプションの治療反応率は、メタ解析の結果と比較し、以下のとおりであった。
●心理療法:24%(95%CI:19~30)、メタ解析より低い
●薬物療法:21%(95%CI:13~31)、メタ解析より低い
●薬物+心理療法:46%(95%CI:19~75)、メタ解析と同等
・治療セッションの早期中止患者と完了患者の寛解率および治療反応率は、同等であった。
・本研究の限界として、ROMデータの不十分さ、選択バイアスチェックのための患者特性データが限られていた点が挙げられる。
著者らは「臨床診療において、患者の状態の不均一性が高いにもかかわらず、ガイドラインを厳格に順守したAGTプログラムの有効性は、RCTの結果と大きな違いは認められなかった。また、推奨された治療セッション数は、すべての患者に適しているとは限らない可能性がある」としている。
(鷹野 敦夫)
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