保険償還NGSパネル検査をどう臨床応用するか/日本肺癌学会2019

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2019/12/24

 

 2019年6月にNGS(次世代シーケンサー)パネル検査が保険収載された。12月に行われた第60回日本肺癌学会学術集会では、収載から半年が経過した現状において、臨床現場で感じる問題点を近畿大学の武田 真幸氏が発表した。

問題点1 NGSパネル検査の定義が定まっていない
 保険収載されたNGSパネル検査は「NCCオンコパネル」「Foundation One CDx」の2種類で、多数の遺伝子変異を同時に調べて未承認薬につなげる「プロファイル検査」として承認された。一方で、「オンコマインDX」は非小細胞肺がん(NSCLC)の4つの遺伝子変異を調べ、承認薬につなげる「コンパニオン検査」として承認されており、プロファイル検査と比較した場合に、治療開始直後から使える、費用が安価、がんゲノム情報管理センター(C-CAT)への登録が不要、がん診療連携拠点病院以外でも使えるなど、実施条件が大きく異なる。武田氏は「海外では『オンコマインDX』を遺伝子パネル検査として使っている現状がある。肺がんではコンパニオン検査としてオンコマインを使えるため治療戦略が立てやすいが、肺がん以外での固形がん患者では、遺伝子パネル検査での運用となるため、同じようにはいかない」と話した。

問題点2 検査を行うタイミングが標準治療後に限定される
 武田氏はNGSパネル検査利用の問題点として、「利用が標準治療後に限定されているが、患者さんの状態によってどこまでを標準治療とするかは大きく異なる。1次治療のみに留まる患者さんも相当数いる中で、パネル検査を使うタイミングの判断が難しい」とした。

問題点3 再検査ができない
 NGSパネル検査が保険適用されるのは1回のみ、分析が失敗に終わった場合でも保険適用で再検査が受けられない点は問題だ、と述べた。

問題点4 費用が回収できない場合がある
 NGSパネル検査は保険収載が2分割で設定されており、最初の患者説明・検体提出時には一部費用しか請求できず、エキスパートパネル・C-CAT 登録を経て、検査結果が戻ってきた時点で初めて残りを請求できる。この間に病状が変わることも多く、死亡したために残りの請求ができなかったケースがすでに出ているという。

問題点5 検査結果が出るまで時間がかかる
 検体提出から結果が出るまでに時間がかかる点も問題点として挙げた。「Foundation One CDx」、「NCCオンコパネル」とも1ヵ月前後かかる。しかしながら、これは費用回収の問題等が解消されれば受け入れられる範囲の問題だとした。

問題点6 がんゲノム情報管理センター(C-CAT)の登録が煩雑
 「現場における最大の問題は、国が義務付けているC-CATへの登録だ」と述べ、登録における必要な情報の多さと煩雑さが現場の医師を疲弊させていると強調し、入力自動化などの仕組みの導入を求めた。

問題点7 腫瘍の不均一性から検査の失敗が多い
 腫瘍には、原発巣と転移巣で腫瘍の遺伝子変異の特徴が異なってくる可能性(空間的不均一性)があり、また抗がん剤等の介入による経時的な経過でも腫瘍の特徴に変化(時間的不均一性)が生じる可能性があるが、「現状のNGSパネル検査は分析の失敗も多い中、1回しか受けられないのは問題」とした。しかし、「来年以降リキッドバイオプシーが承認されれば、空間的不均一性についてはある程度は解決する問題ではないか」との見解を述べた。

問題点8 実際に効果的な治療につなげていく出口戦略の欠如
 最後に、「遺伝子変異が判明しても、その変異に対応する治療薬が限られ、コストをかけて検査しても、結果がその後の治療につながる確率が低い」ことを挙げた。そして、「検査ばかりが注目されているが、治療につながることが重要。ここが一番の問題点だと認識している」とまとめた。

(ケアネット 杉崎 真名)