がん患者の心身緊張感とトリガーポイント/日本サイコオンコロジー学会

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がん患者の心身緊張感とトリガーポイント/日本サイコオンコロジー学会のイメージ

 患者が訴える痛み-これを医療者が少しでも受け止め間違えると、鎮痛はうまくいかない。2019年10月11~12日、第32回日本サイコオンコロジー学会総会が開催。セミナー2「医療者が共感しにくい患者の背景に何があるのか?」において、蓮尾 英明氏(関西医科大学心療内科学講座)が「葛藤の中で生じるー症状としての心身症」について講演し、痛みを抱える患者の背景に迫った。

本当は痛いのに我慢するのはなぜ?
 客観的に見たらとても痛そうにしているのに、問いかけると「痛みは…大丈夫です」と答える患者に遭遇したことはないだろうか? このような患者にこそ、実は本当の気持ち(甘えたい、辛さを共有してもらいたい…)を話したい、という感情が潜んでいることがある。しかし、医療者は「言ってくれないとわからない」と考えてしまいがちである。これについて蓮尾氏は「言語化できない、器用さを備えていない患者もいる」とし、心身症を抱えるがん患者の存在を強調した。

 心身症とは、身体疾患のなかでその発症や経過に心理社会的因子が密接に関与し、器質的ないし機能的障害が認められる病態である。がん疼痛は器質的要因、がん患者の一番の痛み原因と言われる筋筋膜性疼痛症候群(MPS)は機能的要因に位置づけられる。実際、日本人の進行がん患者の31~45%がMPSを訴え、がん疼痛とMPSの併存率は64%に及ぶ1)。これについて、「がん疼痛をかばう動作から生じる二次的なMPSであることが多い」と、同氏は言及した。

 この二次的なMPSはがん疼痛部の直上にできることが多く、がん疼痛が取れたとしてもMPSによる痛みを取り除けていない状況が生じてしまう。同氏は「MPS診断の参考基準に“ストレスによって悪化する”という項があることからも、MPSには心身症患者が含まれることが明らか」と特徴づけ、「医療者は心理的な部分に介入しがちだが、MPSを通して心と身体の緊張が関連していることを伝える」など、患者への寄り添い方を説明した。

緊張感の感覚に気づいてもらうことが重要
 疼痛コントロールがうまくいかない背景として、心身症の特性であるアレキシサイミア(失感情症)の存在を忘れてはならない。がん患者においてアレキシサイミアは約50%も存在することが明らかになっている2)。アレキシサイミアを疑うポイントは、1)感情・感覚をラベリングすることの困難さ、2)感情・感覚を他人に伝えることの困難さ、3)対外志向的考え方、4)空想力・想像力欠如、の4つであるが、いずれも本人の感情・感覚に対する“気づきの乏しさ”が問題である。たとえば、アレキシサイミアのあるがん患者の多くは、心の緊張感、身体の緊張感ともに気づきの乏しさがある。

 このような患者にはMPSの存在を感じてもらうため、TP注射や虚血圧迫法などを用いて、一時的に緊張感の軽減を図ることが重要である。そこで、同氏はオピオイド不応の腰痛が直面化を促す時期に一致して増悪した患者にTP注射を実施した。その結果、「患者は処置後の緊張感の軽減に驚き、身体の緊張感の存在に気づいた」と、身体の緊張感の存在を気づかせるアプローチ法の有用性を報告した。さらに、「身体の緊張感の軽減が図れると、自然に心の緊張感の軽減が図れ、さまざまな感情の表出が増える(身体化→言語化)」と、付け加えた。

 最後に同氏は、「心身症を疑うなかで、とくに感情を伴わず淡々と身体症状を訴える患者の場合、身体感覚を気づかせるためには、このような身体的アプローチが導入しやすい」と締めくくった。

(ケアネット 土井 舞子)

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