新COPDガイドラインの要点と日本人データ

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 2018年7月、日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は、COPDラウンドセミナーを都内で開催した。本セミナーでは、「COPDガイドラインの改訂と日本人データの重要性」をテーマに、一ノ瀬 正和氏(東北大学大学院医学系研究科 呼吸器内科学分野 教授)による講演が行われた。

COPDは息苦しさから、身体活動性の低下につながる
 COPDは、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease)の略語で、以前は慢性気管支炎、肺気腫などと呼ばれていた疾患の総称である。喫煙や微粒子への長期曝露により、気管支に炎症が起こり、気道の狭窄・肺胞壁の破壊(気腫化)・痰などの分泌物増加などが起こる。日本人の場合、90%以上が喫煙によって発症するため、早くても40代、平均50~70代の高齢者で顕在化するという。
 COPD患者は、呼吸に圧力が必要で、労作による息切れや運動による低酸素血症を生じる。その息苦しさによる身体活動の不活発化が問題であると一ノ瀬氏は強調した。治療が遅れることで、動脈硬化症、虚血性心疾患、骨粗相症などといった併存症の発症・悪化につながる恐れもある。

COPDの認知度を上げて、早期治療を目指す
 わが国のタバコ消費量は、1980年代から減少傾向にあるが、これまでの喫煙者数や人口構造の高齢化から、COPD患者は今後も増加すると推測できる。一ノ瀬氏は、COPDの認知度の低さを指摘し、「無理にCOPDと呼ばず、慢性気管支炎や肺気腫でもいいので、主に喫煙が原因となるこの病気を多くの人に知ってほしい。目標は、平成34年までに国民の認知度80%を達成すること」と願いを語った。COPDによる負のスパイラル(労作時息切れ→身体活動低下→運動耐容能低下→骨格筋の廃用)は、QOLの著しい低下を招くため、気管支拡張薬による早期治療が望まれる。

ガイドラインで示された、COPD治療における3つの要点
 ガイドラインの改訂で、大きく変更になった点は3つある。1つ目は長時間作用性抗コリン薬(LAMA)が、長時間作用性β2刺激薬(LABA)より推奨されたことだ。LAMAとLABAの気管支拡張効果は同等だが、LAMAのほうが、粘膜分泌抑制効果により痰が改善されることなどから、増悪率が下がるという報告1-2)がある。
 2つ目は、LAMAとLABAを併用することで、非常に強力な気管支拡張作用が得られるというエビデンス3)が示されたこと、3つ目は、ステロイド吸入薬(ICS)の推奨患者の変更である。1990年代以降に、重症COPDで増悪を繰り返す症例でICSがCOPD増悪を抑制するという報告4)がされたが、2014年のWISDOM試験で、LAMA/LABA併用患者をICS継続群とICS段階的中止群に分けて1年間検証した結果、ICSの有無にかかわらず、増悪の発生率は変わらない可能性が示唆された5)。よって、ICSは喘息病態を合併している場合に併用可能という記載になった。
 一ノ瀬氏は、治療の順序付けについて、「LAMAもLABAも単剤で十分に効果が出る。副作用が出た場合、原因が特定しづらくなるので、最初は単剤で開始し、その後併用に移行することが望ましい」と述べた。

COPD治療は身体活動性の改善が鍵
 最後に日本人のエビデンスについて紹介された。海外のCOPD患者と比較すると、わが国の患者集団は、男性が圧倒的に多いこと、高齢でBMIが低いこと、現喫煙者は少なく、症状の訴えが少ないことなど、異なる点が多くあることから、日本人データの重要性を示した。
 一ノ瀬氏は、同社が行ったTONADO試験、DYNAGITO試験、VESUTO試験などの結果で、LAMA単剤(商品名:スピリーバレスピマット)、LAMA/LABA配合剤(同:スピオルトレスピマット)により、呼吸機能のみならず、身体活動性の改善をもたらす傾向が得られたことを例に挙げた。これに関して、「患者バックグラウンドの差異によるものかもしれないが、日本人のほうが薬剤の有効性が高く、配合剤によるメリットも大きい可能性がある」と語り、「今後も検討を続けるが、吸入薬で呼吸機能が改善されても、身体活動などが変化しなければ併存症や予後に対する好影響は少ない。医師は、患者さんの生活変容に関しても指導していく必要がある」と述べ、講演を締めくくった。

■参考文献
1)Vogelmeier C, et al. N Engl J Med. 2011;364:1093-1103.
2)Decramer ML, et al. Lancet Respir Med. 2013;1:524-533.
3)Beeh KM, et al. Pulm Pharmacol Ther. 2015;32:53-59.
4)Sin DD, et al. JAMA. 2003;290:2301-2312.
5)Magnussen H, et al. N Engl J Med. 2014;371:1285-1294.

■参考
ベーリンガープラス COPDガイドラインポイント解説

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(ケアネット 堀間 莉穂)

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