抗精神病薬使用と乳がんリスク

提供元:ケアネット

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公開日:2018/06/29

 

 一部の抗精神病薬は、プロラクチンレベルを上昇させ、乳がんリスクを高める可能性がある。これまでのエビデンスは、矛盾しており、とくに第2世代抗精神病薬の使用に関するデータは不十分である。デンマーク・南デンマーク大学のAnton Pottegard氏らは、抗精神病薬使用と乳がん発症との関連についての全国規模のケースコントロール研究を実施した。British journal of clinical pharmacology誌オンライン版2018年6月1日号の報告。

 Danish Cancer Registryより、2000~15年に乳がんの初回診断を受けた女性患者6万360例を抽出した。各症例について、女性対照群10集団を年齢とマッチさせた。抗精神病薬使用に関連する乳がんのオッズ比(OR)は、条件付きロジスティック回帰を用いて算出した。第1世代および第2世代抗精神病薬ならびにプロラクチン上昇作用により、抗精神病薬を層別化した。

 主な結果は以下のとおり。

・乳がんの初回診断を受けた女性患者の8.1%(4,951例)、対照群の7.1%(4万7,643例)に抗精神病薬が使用されていた。
・抗精神病薬の長期使用(オランザピン換算1万mg以上)が乳がんと関連しており、調整ORは1.18(95%CI:1.06~1.32)であった。
・弱い用量反応パターンが認められ、オランザピン換算5万mg以上でORが1.27(95%CI:1.01~1.59)に増加した。
・第1世代(OR:1.17)および第2世代抗精神病薬(OR:1.11)でも同様な関連が認められた。また、非プロラクチン誘発性抗精神病薬においても同様であった(OR:1.17)。
・エストロゲン受容体の状態により層別化したところ、エストロゲン受容体陽性のがんでは正の相関が認められたが(長期使用OR:1.29、95%CI:1.13~1.47)、エストロゲン受容体陰性のがんについては関連が認められなかった。

 著者らは「全体として、抗精神病薬の使用と乳がんリスクとの間に臨床的に重要な関連性が認められなかった。薬剤誘発性プロラクチン上昇の重要性は不明であるが、エストロゲン受容体陽性の乳がんリスクがわずかではあるが上昇する可能性がある」としている。

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(鷹野 敦夫)