リスペリドン使用で乳がんリスクは上昇するか

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/28

 

 いくつかの抗精神病薬、とくにリスペリドンは、血清プロラクチンを増加させることが知られている。高プロラクチン血症は、動物実験において、乳腺腫瘍の発生に関連していることが知られている。スウェーデン・カロリンスカ大学のJohan Reutfors氏らは、リスペリドンまたは他の抗精神病薬を使用した女性の全国コホートにおける乳がんリスクを調査した。Schizophrenia research誌オンライン版2016年11月4日号の報告。

 2006~12年にリスペリドンまたは他の抗精神病薬による治療を開始した18歳以上のすべての女性を、スウェーデン全国レジスターより抽出した。対象者は、3ヵ月以内に同じ抗精神病薬を2回連続で投与された、がんでない患者とした。なお、パリペリドン投与患者は含まなかった。最終コホートは、リスペリドン投与患者2万2,908例、他の非定型抗精神病薬投与患者2万4,527例、定型抗精神病薬投与患者8,544例の合計5万5,976例の女性となった。抗精神病薬と乳がんとの関連は、ハザード比(HR)、95%信頼区間(CI)を推定するために、Cox回帰モデルを用いた。

 主な結果は以下のとおり。

・患者はプロスペクティブに追跡し、平均追跡期間は2.4~2.8年であった。
・年齢調整後、リスペリドン投与患者の乳がんリスクは、他の非定型抗精神病薬投与患者(HR:0.94、95%CI:0.72~1.22)、定型抗精神病薬投与患者(HR:1.25、95%CI:0.94~1.66)と比較し、増加していなかった。
・積極的治療経過時間を用いた腫瘍ステージ別に層別化された分析、または治療未経験患者のみの分析では、結果に顕著な変化は認められなかった。

 著者らは「リスペリドンの使用は、他の抗精神病薬と比較し、短期的な乳がんリスク上昇を来すことはない」としている。

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(鷹野 敦夫)