認知症者のせん妄、BPSDにより複雑化

提供元:ケアネット

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公開日:2017/01/04

 

 認知症とせん妄の精神症状が合併すると、せん妄の診断は複雑化する。シンガポール・Tan Tock Seng病院のJennifer Abengana氏らは、認知症に合併したせん妄(DSD)患者において、BPSDの有無によりせん妄の発現および転帰の差異について検討を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2016年12月5日号の報告。

 著者らは、特別なせん妄ユニットに入院したDSD高齢者における前向きコホート研究(2010年12月~2012年8月)を行った。患者背景、併存疾患、疾患重症度、せん妄発現、認知機能スコアに関連するデータを収集した。認知症の重症度は、Delirium Rating Scale Revised-98(DRS-R-98)とCognitive Assessment Method severity score(CAM-sev)を用いて評価した。患者は、行動心理学的障害に基づきBPSD+群とBPSD-群に分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象患者は、BPSD合併例37例(21.3%)を含むDSD患者174例(84.4±7.4歳)。
・DRS-R-98によるせん妄重症度と症状頻度は類似していたが、BPSD+群では、多くは単一のせん妄発現であったが(40.5% vs.21.9%、p=0.07)、持続時間が有意に長かった(中央値:7日 vs.5日、p<0.01)。
・せん妄の解消により、BPSD+群は、睡眠覚醒障害、不安定作用、運動興奮の有意な改善を示し、BPSD-群では運動遅延を除くすべての非認知症が改善された。
・BPSD+群では薬理学的抑制がより頻繁であり(62.2% vs.40.1%、p=0.03)、高用量であった(CP換算:0.95±1.8 vs.0.40±1.2、p<0.01)。

 著者らは「BPSDは、認知症者のせん妄への脆弱性を増加させ、遅発性のせん妄に対する回復を遅らせる可能性がある。睡眠覚醒障害、不安定作用、運動興奮は、せん妄の疑いを強めると考えられる」としている。

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(鷹野 敦夫)