皮下植込み型ICDの長期成績―経静脈植込み型ICDとの比較

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/18

 

 経静脈植込み型除細動器(TV-ICD)は、心臓突然死のリスクがある患者の予後を改善するが、合併症の問題が残っている。一方、皮下植込み型除細動器(S-ICD)は、リードに関連した合併症を克服するために開発された。これら2つのICDをめぐっては、それぞれの患者特性が異なるため、これまでの研究では臨床成績の比較が難しかった。そこで、オランダの2施設の研究グループが、プロペンシティスコアによるマッチングによって、S-ICDとTV-ICDの長期臨床成績を後ろ向きに比較検討した。Journal of the American College of Cardiology誌2016年11月号に掲載。

プロペンシティスコアにより両群それぞれ140例を解析
 筆者らは、オランダにおいてICDの植込みを多数実施している2施設で、S-ICDもしくはTV-ICDを植込まれた1,160例について分析した。プロペンシティスコアを用いたマッチングは、病名を含めた16項目のベースライン特性に基づいて行われ、特性が一致した両群それぞれ140例(平均年齢の中央値:41歳、四分位範囲:30~52歳、40%が女性)をペアにして比較を行った。結果の評価は、外科的処置を必要としたデバイス関連合併症、適切もしくは不適切なICDによる治療を対象として行い、5年間のKaplan Meier生存率予測が用いられた。

 合併症の発症率は、S-ICDの13.7%に対して、TV-ICDでは18.0%であった(p=0.80)。感染症の発症率は、S-ICDが4.1%だったのに対し、TV-ICDでは3.6%であった(p=0.36)。リードに関連した合併症は、S-ICDがTV-ICDに比べて有意に少なかった(0.8% vs.11.5%、p=0.03)。一方、リードに関連しない合併症は、S-ICDがTV-ICDより多かった(9.9% vs.2.2%、p=0.047)。

 抗頻拍に対するペーシング、もしくは除細動の両方を含めた適切なICDの作動については、TV-ICDで頻度が高かった(ハザード比[HR]:2.42、p=0.01)。適切な除細動(TV-ICDのHR:1.46、p=0.36)および不適切な除細動(TV-ICDのHR:0.85、p=0.64)は両群で同等であった。

合併症の頻度は両群で同等、ただし合併症の種類が異なる
 S-ICDはリード関連の合併症を有意に減らす一方で、リードに関連しない合併症が増加した。適切および不適切な除細動は両群で同等であった。しかし、合併症の種類が異なっていた。この研究で解析された患者は比較的若く、ほかの疾患をあまり有しておらず、この結果をICDが植込まれる一般的な患者に当てはめるのは難しいと思われる。さらに、プロペンシティスコアによるマッチングでは、解析に含まれていないベースライン特性の交絡を除外することは難しい。S-ICDとTV-ICDそれぞれの長所/短所を調べるには、より大規模で多様な特性を持つ患者を含む多施設のランダム化試験が必要だとしている。

(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)

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