第2世代抗精神病薬の評価試験実施は不十分

提供元:ケアネット

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公開日:2015/06/09

 

 米国・ペンシルベニア大学のGregory Kruse氏らは、医療技術評価(HTA)機関を支援するため、統合失調症患者に対し第2世代抗精神病薬の有用性を検討した試験のシステマティックレビューを行った。その結果、試験のタイプ、試験方法、アウトカムに大きなばらつきがあるうえ、HTAが好ましいとする試験のタイプは少なく、かつそれら試験は実施されていたとしてもバイアスリスクが高いことを報告した。PharmacoEconomics誌オンライン版2015年5月12日号の掲載報告。

 HTA機関を支援するための効果比較の試みは、統合失調症治療に対する抗精神病薬の選択において重要な事項である。研究グループは、HTA機関の支援に向け、新規抗精神病薬の効果比較に関する疑問に対処するため、公表文献に報告されている試験方法とアウトカムの評価、ならびにエビデンスの妥当性と可能性を評価した。

 2009年1月1日~2013年9月30日までのPubMed databaseを用いて系統的検索を行い、新規非定型抗精神病薬の効果比較について報告している研究を特定した。統合失調症患者を対象とした研究で、少なくとも2種類以上の薬剤の比較が行われており、少なくとも1群は第2世代抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、アリピプラゾール、パリペリドン、アセナピン、イロペリドン、ルラシドン、クエチアピンのいずれか)が投与されている試験についてシステマティックレビューを行った。また、陽性陰性症状評価尺度(PANSS)のスコア、体重増加、資源活用あるいはコストといった有効性、安全性、経済的アウトカムが含まれていることも試験の選択基準とした。 2人のレビュワーが独立して組み入れ基準を評価。意見が一致しなかった場合は、原著を検索してコンセンサスを得たうえで解決した。各試験から方法とアウトカムに関する情報を収集し、試験には薬剤の直接比較、患者集団、試験方法、統計解析法、アウトカムの報告、試験のサポート、掲載誌の種類などが記載されていることとした。

 主な結果は以下のとおり。

・電子検索により、合計198件の試験が特定された。
・最も多かった試験のタイプは無作為化対照試験(RCT、73件、36.9%)で、その多くは規定のエンドポイントで直接比較されていた。
・HTAが要望するコホート研究(53件、26.8%)、メタ解析(32件、16.2%)、経済性の研究(14件、7.1%)、および横断研究(13件、6.6%)は少数であった。
・HTAが選択した直接比較の薬剤はオランザピンとリスペリドンが大勢を占め、それぞれ149試験(75.3%)、119試験(60.1%)であった。
・規制当局に提出される資料として主要な試験のタイプであるRCTにおいて、バイアスはみられなかったが、HTAが要望した試験は同じようにして(バイアスがない状態で)実施されなかった。
・コホート研究には、比較群における選択バイアスの問題、交絡因子の調整の欠如、脱落率の相違などの問題がみられた。
・横断研究のグループではバイアススコアが十分に得られず、代表的なサンプルを特定できなかった。
・経済性の研究では高い変数バイアスがみられ、有効性データ、妥当性が検証されていない仮説モデル、感度解析の欠如といった点においてバイアスがみられた。
・なお本システマティックレビューは、2009~2013年までの研究のみを対象としたものであり、第1世代抗精神病薬の検討を含む初期の比較研究を除外したレビューという点で限界があった。

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(ケアネット)