日本人統合失調症患者に対するアセナピンとオランザピンの治療継続率

アセナピンは、多元受容体作用抗精神病薬(MARTA)に分類される第2世代抗精神病薬であり、その薬理学的特徴はオランザピンと類似している。藤田医科大学の松崎 遥菜氏らは、実臨床データを用いて、統合失調症に対するアセナピンとオランザピンの治療継続率や中止理由についての比較を行った。Neuropsychiatric Disease and Treatment誌2021年12月14日号の報告。
本研究は、レトロスペクティブ研究として実施した。主要エンドポイントは、6ヵ月間に治療継続率のカプランマイヤー推定とし、潜在的な交絡因子で調整するため傾向スコア法を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・統合失調症患者95例(アセナピン群:46例、オランザピン群:49例)を対象とし、分析を行った。
・一致したデータを6つの共変量(年齢、性別、クロルプロマジン換算量、ジアゼパム換算量、クロザピンの使用歴、修正型電気けいれん療法の使用歴)を考慮し調整した。
・一致したデータにおける6ヵ月間の治療継続率は、アセナピン群で27.3%(95%信頼区間[CI]:15.6~47.6)、オランザピン群で50.8%(95%CI:34.3~75.3)であった(ハザード比[HR]:0.41、95%CI:0.21~0.82、p=0.0088[Log rank検定])。
・効果不十分による中止率は、アセナピン群で13.0%、オランザピン群で10.2%とほぼ同様であった。
・アセナピン群のみで観察された副作用は、苦みによる中止(6.5%)、投薬方法の負担(6.5%)であり、オランザピン群のみで観察された副作用は、口渇(4.1%)や便秘(2.0%)などの抗コリン作用系副作用であった。
著者らは「実臨床におけるアセナピンの治療継続率の低さは、苦みや投薬方法などの特定の因子に関連している可能性が考えられる」としている。
(鷹野 敦夫)
関連記事

統合失調症患者におけるアセナピンとブレクスピプラゾールの治療継続率
医療一般 日本発エビデンス(2021/04/22)

統合失調症に対する抗精神病薬の長期継続性
医療一般(2021/08/03)

統合失調症まとめ【クローズアップ!精神神経 7疾患】
クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26)
[ 最新ニュース ]

子宮内膜症、レルゴリクス併用療法が有効か/Lancet(2022/07/01)

費用対効果分析へのスポンサーバイアスは?/BMJ(2022/07/01)

抗体-薬物複合免疫賦活薬(iADC)の創製で戦略的提携/アステラス・Sutro(2022/07/01)

追加接種のタイミング、6ヵ月以上でより高い有効性か(2022/07/01)

男性の肥満のないNAFLD、テストステロン低下が要因か/日本抗加齢医学会(2022/07/01)

日本人労働者の睡眠負債がプレゼンティズムや心理的苦痛に及ぼす影響(2022/07/01)

新型コロナ発症から15ヵ月後も多くの患者で後遺症が持続(2022/07/01)

糖尿病患者の便秘が冠動脈疾患に独立して関連―江戸川病院(2022/07/01)
[ あわせて読みたい ]
クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26)
~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15)
Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07)
薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30)
全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31)
ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15)
診療よろず相談TV(2013/10/25)
在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)
「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)
柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)