重度アルツハイマー病に心理社会的介入は有効か:東北大

提供元:ケアネット

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公開日:2015/01/16

 

 重度アルツハイマー病に対する心理社会的介入は有効なのか。東北大学の目黒 謙一氏らは、重度アルツハイマー病患者に対する薬物療法に心理社会的介入を併用した際の効果を明らかにするため、介護老人保健施設入所患者を対象に前向き介入試験を実施した。その結果、意欲改善やリハビリテーションのスムーズな導入、および転倒事故の減少がみられたという。著者は、「心理社会的介入の併用治療アプローチは、重度の患者に対しても有用な効果を示した。ただし、より大規模なコホートを用いて再検証する必要がある」と述べている。BMC Neurology誌オンライン版2014年12月17日号の掲載報告。

 コリンエステラーゼ阻害薬は、アルツハイマー病(AD)の進行を遅らせることができ、中等度~重度ADに対する臨床的効果が、複数の臨床試験により首尾一貫して報告されている。また、軽度~中等度AD患者においては、心理社会的介入との併用による効果が報告されているが、重度AD患者に対する同薬と他の治療アプローチもしくはリハビリテーションを併用した際の効果については議論の余地が残っている。そこで研究グループは、介護老人保健施設入所患者を対象に、前向き介入試験を実施した。

 2ヵ所の介護老人保健施設(N1、N2)を対象とした。N1は126床の施設で、ドネペジルでの治療は行わずに心理社会的介入のみ(現実見当識訓練[リアリティオリエンテーション]および回想法)を実施した。N2は認知症特別室50床を含む150床の施設で、ドネペジルを処方し、心理社会的介入に加えてリハビリテーションが実施された。N1およびN2の重度AD患者(MMSE<6)32例(16 vs. 16)を対象として、心理介入療法の有無別(各施設8 vs. 8)に、ドネペジル(10mg/日、3ヵ月間投与)の効果を比較した。意欲の指標としてVitality Indexを用いて日常生活行動とリハビリの導入について評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・N2におけるドネペジルの奏効率(MMSEが3+)は37.5%であった。
・ドネペジル+心理社会的介入は、Vitality Indexの総スコア(Wilcoxon検定のp=0.016)、およびサブスコアのコミュニケーション(p=0.038)、食事(p=0.023)、リハビリテーション(p=0.011)を改善した。
・大半のリハビリテーションはスムーズに導入され、転倒事故の頻度が減少した。
・薬剤を使用していないN1での心理社会的介入では、総スコアの改善のみ認められた(Wilcoxon検定、p=0.046)。

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(ケアネット)