日本語でわかる最新の海外医学論文|page:786

心筋梗塞後の患者にPPIは有益か/BMJ

 心筋梗塞(MI)後で抗血栓薬と非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)投与を受ける患者において、プロトンポンプ阻害薬(PPI)投与は、消化管出血リスクの低下と関連することが示された。抗血栓薬、NSAIDs、PPIの種類にかかわらず関連がみられたという。デンマーク・コペンハーゲン大学のAnne-Marie Schjerning Olsen氏らが、同国入院患者データを分析し報告した。著者は今回の結果について、「観察非無作為化試験であり限定的である」としたうえで、MI後でNSAIDs服用を必要とする患者について、PPI投与はベネフィットをもたらす可能性があると述べている。BMJ誌オンライン版2015年10月19日号掲載の報告より。

撤回論文はもともと粗雑に書かれていた(解説:折笠 秀樹 氏)-441

臨床研究の不正により、一連の論文が撤回(retract)されたのを覚えているだろう。ここでは、撤回論文50編と同じ雑誌から非撤回論文50編を選んで、どちらが粗雑であったかを調査した。事実の食い違い(本文と抄録で数値が合っていない)、計算ミス(合計が合わない)、p値の誤り(数値は違っているのに非有意とある)など、基本的なミスが粗雑(あるいは矛盾点)の例である。

認知症患者と介護者のコミュニケーションスキル向上のために

 看護師と認知症患者との効果的なコミュニケーションにより、患者ニーズの理解が促進し、コミュニケーションのミスに関連した患者または看護師におけるフラストレーションが軽減するため、患者ケアの質が高まる。台湾・国立成功大学のHui-Chen Chao氏らは、最新の革新的インターネットベースコミュニケーション教育(AIICE)プログラムが、認知症患者に対する看護師のコミュニケーションスキルおよび認知症患者の記憶・行動関連の症状およびうつ症状に及ぼす影響を検討した。その結果、AIICEプログラムは看護師のコミュニケーション知識、患者とのコミュニケーション能力評価の頻度、コミュニケーション実行能力を向上させ、患者の記憶・行動関連の問題およびうつ症状を軽減させることが示された。著者らは、「AIICEプログラムを用いた看護師の継続的なコミュニケーション訓練が推奨される」と述べている。Journal of Nursing Research誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。

STEMIへのPCI、ルーチン血栓除去併用は脳卒中増大/Lancet

 ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)時のルーチンの用手的血栓除去術併用は、長期的な臨床的アウトカムを低減しない一方で、脳卒中の増大と関連している可能性があることが示された。カナダ・マックマスター大学のSanjit S Jolly氏らが、前向き無作為化試験TOTALの1年フォローアップ評価の結果、報告した。同併用について先行する2件の大規模試験では相反する結果が報告されていたが、今回の結果を踏まえて著者は、「もはや血栓除去術は、STEMI患者へのルーチン戦略として推奨できない」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。

子宮鏡下避妊法のベネフィットとリスク/BMJ

 子宮鏡下避妊法(hysteroscopic sterilization)は腹腔鏡下避妊(laparoscopic sterilization)法と比べて、望まない妊娠リスクは同程度だが、再手術リスクが10倍以上高いことが、米国・コーネル大学医学部のJialin Mao氏らによる観察コホート研究の結果、報告された。数十年間、女性の永久避妊法は腹腔鏡下両側卵管結紮術がプライマリな方法として行われてきたが、低侵襲な方法として医療器具Essureを用いて行う子宮鏡下避妊法が開発された。欧州では2001年に、米国では2002年に承認されているが、米国FDAには承認以来、望まない妊娠や子宮外妊娠、再手術など数千件の有害事象が報告され、2014年には訴訟も起きているという。しかし、これまでEssure子宮鏡下避妊法の安全性、有効性に関して、卵管結紮術と比較した報告はほとんどなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。

CLEAN試験:血管内カテーテル挿入時の皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコール(解説:小金丸 博 氏)-440

カテーテル関連血流感染症(CRBSI)はありふれた医療関連感染であり、死亡率も高いことが知られている。カテーテル挿入時の皮膚消毒は感染予防に重要であり、今までも適切な皮膚消毒薬について議論されてきた。米国疾病予防管理センター(CDC)は、カテーテル挿入時の皮膚消毒に、0.5%を超えるクロルヘキシジンを含むクロルヘキシジン・アルコールを推奨しているが、クロルヘキシジン・アルコールとポビドンヨード・アルコールをhead-to-headで比較した大規模試験は存在しなかった。

双極性障害エピソードと脂肪酸の関連を検証

 血漿中イコサペンタエン酸(EPA)濃度比低下は、双極性障害(BD)エピソードと関連しており、血漿中オメガ(n)-3値は、治療によって変化可能であることを、米国・ペンシルバニア州立大学のErika FH Saunders氏らが明らかにした。症候性BDにおいて血漿中EPA比の低下は、気分の脆弱性に関する重要な因子の可能性があり、血漿中n-3値の変化が多価不飽和脂肪酸(PUFA)代謝の変化および症状改善を示唆しうるという。著者らは、「所見は、前臨床データや事後分析データと整合しており、n-3を増量またはn-6を減量した食事性PUFAの介入試験の検討を示唆するものである」と述べている。Bipolar Disorders誌2015年11月号の掲載報告。

がん疑い患者、緊急紹介制度活用で死亡率低下/BMJ

 英国で、がんの疑いがある患者を緊急に専門医に紹介する制度「緊急紹介制度」(urgent referral pathway)を活用する一般診療所の患者は、あまり活用しない一般診療所の患者に比べ、がんの初診断・治療開始から4年以内の死亡率が低いことが明らかにされた。英国・ロンドン大学のHenrik Moller氏らが、コホート試験の結果、報告した。同緊急紹介制度は2000年代初めから始まったが、制度ががん患者の生存率に与えた影響については、これまで検討されていなかった。BMJ誌オンライン版2015年10月13日号掲載の報告。

糖尿病でのパクリタキセルDES vs.エベロリムスDES/NEJM

 糖尿病患者への経皮的冠動脈インターベンション(PCI)で、パクリタキセル溶出ステント(PDES)はエベロリムス溶出ステント(EDES)に対し、非劣性を示すことができなかったことを、インド・Fortis Escorts Heart InstituteのUpendra Kaul氏らが、1,830例の糖尿病患者を対象に行った試験の結果、報告した。1年後の標的血管不全発症率は、パクリタキセル群が5.6%に対し、エベロリムス群が2.9%と低率だったという。NEJM誌オンライン版2015年10月14日号掲載の報告より。

坐骨神経痛のリスク、喫煙で増大:メタ解析結果

 坐骨神経痛における喫煙の役割は明確ではない。フィンランド・Finnish Institute of Occupational HealthのRahman Shiri氏らは、腰部神経根痛および坐骨神経痛に対する喫煙の影響を評価する目的でメタ解析を行った。その結果、喫煙は腰部神経根痛および臨床的な坐骨神経痛のリスクを高めることが明らかとなった。また、禁煙によりそのリスクが低下することが示唆されたが、「禁煙してもリスクがゼロになることはない」と著者は指摘している。American Journal of Medicine誌オンライン版2015年9月21日号の掲載報告。

セクシュアルマイノリティーにおける皮膚がんと日焼けマシーン使用

 「セクシュアルマイノリティー(同性愛者や両性愛者)の男性は、異性愛者の男性に比べて日焼けマシーンをよく使用しており、また皮膚がんになる確率が高い」というデータが発表された。JAMA Dermatology誌オンライン版2015年10月7日号での報告。  本研究で、セクシュアルマイノリティーの男性は日焼けマシーンを使うことが多いことが明らかになった。研究者らは、「彼らに対して優先的に皮膚がんリスクを伝えることが予防につながるのではないか」とまとめている。

生体吸収性マグネシウムスキャフォールドの有用性をヒトで確認/Lancet

 第2世代の薬剤溶出生体吸収性金属スキャフォールド(DREAMS 2G)は、冠動脈デノボ病変の治療デバイスとして施行可能であり、良好な安全性と性能を有することが、ドイツLukaskrankenhaus GmbHのMichael Haude氏らが実施したBIOSOLVE-II試験で示された。生体吸収性スキャフォールドは、従来の非吸収性の金属ベース薬剤溶出ステントの限界の克服を目的にデザインされ、現時点で市販されているのはポリマースキャフォールドのみである。これに代わるデバイスとして、金属スキャフォールドの開発が進められており、第1世代のマグネシウムスキャフォールドは、安全性は良好であるものの、性能が従来の薬剤溶出ステントに及ばないことが報告されている。Lancet誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。

アルツハイマー病への薬物治療、開始時期による予後の差なし

 世界中で何百万人もの高齢者がアルツハイマー病(AD)で苦しんでいる。治療薬にはアセチルコリンエステラーゼ阻害薬とメマンチンがあるが、その臨床効果は限られており、早期に薬物療法を開始することが長期的に良好な予後につながるかどうかも不明である。そこで、中国・香港中文大学のKelvin K.F. Tsoi氏らは、AD患者に対する早期治療の有効性について、前向き無作為化比較試験のメタ解析を行った。その結果、約6ヵ月早くAD治療薬の投与を開始しても投与開始が遅れた場合と比較して、認知機能、身体機能、行動問題および臨床症状に有意差は認められなかった。この結果について著者らは、「追跡期間が2年未満の早期AD患者の割合が比較的高かったためと考えられる」と指摘したうえで、「長期に追跡した場合の有効性について、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2015年9月18日号の掲載報告。

高齢者における誤嚥性肺炎のリスク因子が明らかに

 高齢者における誤嚥性肺炎と関連するリスク因子は、喀痰吸引、嚥下機能の低下、脱水、認知症であることが、筑波大学の間辺 利江氏らによる研究で明らかになった。これらの結果は、繰り返す誤嚥性肺炎を予防するための臨床管理の改善に役立てられると考えられる。PLoS One誌オンライン版2015年10月7日号の報告。

心筋を凍死させる 心房細動治療の新たな選択肢

 日本メドトロニック株式会社は2015年10月23日、薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動治療を目的とした「Arctic Front Advance冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」の発売開始を記念し、プレスセミナー「心房細動におけるアブレーション技術の最前線」を開催した。そのセミナーの中で、日本不整脈心電学会理事長、奥村 謙氏は「心房細動治療最前線と冷凍アブレーションへの期待」と題する講演を行った。

ぶどう膜炎に対する眼内インプラントの効果は?

 中間部、後部および全ぶどう膜炎に対するフルオシノロンアセトニド(FA)眼内インプラントと全身性ステロイド療法の有用性を比較した、米国・ペンシルバニア大学のJohn H. Kempen氏らによるMulticenter Uveitis Steroid Treatment(MUST)試験の4.5年の追跡調査において、視覚機能および黄斑浮腫に対する改善効果は両群で類似しておりどちらも良好であることが示された。

生体吸収性スキャフォールド、ABSORB IIIの結果/NEJM

 エベロリムス溶出生体吸収性スキャフォールド(BVS)の有用性を検討した大規模な多施設共同無作為化試験の結果が報告された。非複雑性閉塞性冠動脈疾患(CAD)患者2,008例を対象に、エベロリムス溶出コバルトクロム合金ステントと比較した試験ABSORB IIIの結果、1年時点の標的病変不全の発生に関する非劣性が確認された。米国・クリーブランドクリニックのStephen G. Ellis氏らが報告した。金属製の薬剤溶出ステント埋設したCAD患者においては、有害事象として遅発性の標的病変不全が報告されている。金属製のステントフレームが血管壁に存在し続けることが関連している可能性があり、長期転帰を改善するためBVSが開発された。NEJM誌オンライン版2015年10月12日号掲載の報告。

ラピッドサイクラー双極性障害、抗うつ薬は中止すべきか

 急速交代型(rapid-cycling:RC)双極性障害における抗うつ薬の使用は論争の的となっているが、米国・ルイビル大学のRif S. El-Mallakh氏らは、このトピックについて初となる無作為化試験を行った。その結果、アプリオリな分析で、良好な抗うつ薬反応と気分安定薬の使用にもかかわらず、RCにおいて抗うつ薬使用を継続することは、中断した場合と比べて、維持アウトカムの悪化、とくに抑うつ罹患と関連することが明らかにされた。Journal of Affective Disorders誌2015年9月15日号の掲載報告。