津波後の移住が心代謝リスク因子に関連

提供元:ケアネット

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公開日:2016/06/02

 

 2011年に起きた東日本大震災の津波被災者を対象に、移住に代表される震災関連の精神的および社会経済的問題とアテローム性動脈硬化症リスク因子の変化との関連を調査した縦断研究が報告された。この研究から、津波後の移住が被災者の体重の増加とHDLコレステロール(HDL-C)値の減少に関連しており、この変化は災害後の長期間にわたる精神的苦痛と社会経済的問題と関連することが示唆された。岩手医科大学の高橋 宗康氏らによるBMJ Open誌オンライン版2016年5月12日号掲載の報告。

 本研究には、2011年の東北地方太平洋沖地震に伴い発生した津波の大きな被害を受けた岩手県陸前高田市、山田町、大槌町の一般住民(6,582人)を登録した。移住群3,160人および非移住群3,368人に対して、地震から8ヵ月後および18ヵ月後に身体測定、臨床的および心理学的測定、自己記入式アンケートによる調査を行った結果を解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・性別および年齢で調整後、移住群は非移住群と比べて、体重および胴囲の有意な増加がみられた[体重:+0.31(0.23~0.39) vs. -0.24(-0.32~-0.16)kg、p<0.001、胴囲:+0.58(0.48~0.68) vs. +0.05(-0.05~0.15)cm、p<0.001]。
・移住群は非移住群と比べて、血清HDL-C値の有意な減少がみられた[-0.65(-0.96~-0.34) vs. -0.09(-0.39~0.21)mg/dL、p=0.009]。
・身体活動、精神的健康、および社会経済的状態の悪化が、非移住群と比べて移住群に高い頻度でみられた(すべてp<0.001)。

(ケアネット 河野 祐子)