日本語でわかる最新の海外医学論文|page:783

再生不良性貧血、遺伝子解析による予後予測は可能か/NEJM

 再生不良性貧血における体細胞変異と臨床転帰の関連やクローン性造血の発現状況の詳細が、京都大学大学院の吉里哲一氏らによる次世代シーケンサーを用いた検討で示された。後天性再生不良性貧血は、造血細胞や造血前駆細胞が免疫系によって破壊されることで発症し、汎血球減少を来す。造血幹細胞移植により治癒の可能性があり、免疫抑制療法が有効であるが、生存期間の改善に伴い患者の約15%が遅発性の骨髄異形成症候群(MDS)や急性骨髄性白血病(AML)を発症するという。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告。

レビー小体型認知症、認知機能と脳萎縮の関連:大阪市立大学

 レビー小体型認知症(DLB)患者における側頭葉内側萎縮(MTA)と認知機能障害との関係はいまだ明らかにされていない。大阪市立大学の田川 亮氏らは、これらの関係について、MRIを用いて検討した。その結果、MTAは記憶や言語に関する認知機能障害と関連している可能性を報告した。Geriatr Psychiatry Neurology誌オンライン版2015年6月11日号の掲載報告。  対象は、DLBと診断された37例で、1.5 Tesla MRIスキャナーにより検査した。すべてのMRIデータは、MRIスキャンで得られる画像上でMTAの程度を定量化できるvoxel-based specific regional analysis system for Alzheimer disease(VSRAD)の新型ソフトウエアを用いて分析した。関心体積(VOI)の標的は嗅内皮質、海馬、扁桃体の全領域とした。MTAの程度は標的VOI上の平均positive Zスコア(数値が高いほどMTAが重度)により評価した。認知機能障害の有無について、Mini-Mental State Examination(MMSE)および改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R:MMSEと比べ記憶と言語の評価に有効である)を用いて評価した。

胃がん切除予定例のピロリ除菌はいつすべき?

 マーストリヒト・アジア太平洋コンセンサスガイドラインでは、胃がんの既往のある患者へのHelicobacter pyloriの除菌を強く推奨している。がん研有明病院の本多 通孝氏らは、胃切除術を受ける患者への適切な除菌のタイミングを検討するため、オープンラベル単一施設無作為化比較試験を実施した。その結果、術前群と術後群で除菌成功率が同等であり、著者らは、「胃切除を予定している胃がん患者は、予定されている再建術式に関係なく、術前の除菌は必要ない」と結論している。Journal of the American College of Surgeons誌オンライン版2015年4月8日号に掲載。

肥満成人におけるリラグルチドの減量効果/NEJM

 先行研究において、GLP-1受容体作動薬のアナログ製剤リラグルチドの1日1回3.0mg皮下注が、体重管理に有用である可能性が報告されていた。これを踏まえて米国・コロンビア大学のXavier Pi-Sunyer氏らは、2型糖尿病を有していない肥満成人、脂質異常症か高血圧を有する(治療の有無を問わず)過体重成人の計3,731例を対象に、同薬投与の有効性、安全性に関する56週の二重盲検無作為化試験を行った。その結果、食事および運動療法の補助としての同薬投与は、体重の減少および代謝コントロールの改善と関連していたことを報告した。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告より。

初回エピソード統合失調症、LAIは経口薬より優る

 第2世代抗精神病薬の持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の臨床的安定に高い効果をもたらす。しかし、これまで統合失調症初回エピソード後に用いられることはあまり多くはなかった。米国・カルフォルニア大学ロサンゼルス校のSubotnik KL氏らは、統合失調症初回エピソードにおけるリスペリドンの有効性を、剤形の違い(LAIと経口剤)で比較検討した。その結果、LAIは経口剤に比べ、精神症状の増悪や再発率が低く、その背景にLAIの良好なアドヒアランスが関連していることを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月24日号の掲載報告。

臨床統計の基本を身につける J-CLEAR夏季セミナーのご案内

 NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR)は、7月25日に夏季セミナー「基本を身につけよう! 臨床統計の読み方、考え方」を開催する。医療関係者を対象に、バイオ統計学の専門家である折笠 秀樹氏(J-CLEAR評議員/富山大学大学院医学薬学研究部バイオ統計学・臨床疫学教授)が、臨床統計の読み方や考え方を基本からやさしく解説する。

ワインアレルギー、原因はタンパク質への感作か

 ドイツで行われた先行調査において、無作為抽出された4,000例のうち、回答があった948例中68例(7.2%)がワイン不耐症あるいは飲酒後のアレルギー様症状発現を報告したことが判明している。この報告を踏まえてドイツ・マインツ大学のNadine Jaeckels氏らは、ワインの製造過程で含まれる他の成分や清澄剤ではなく、ワイン不耐症の間接原因としてブドウ由来のタンパク質に対するIgEに焦点を当て、ワインタンパク質への感作をアレルギー検査などで確認できるかを検討した。その結果、ブドウおよびワインタンパク質に対する感作が観察され、交差反応性炭水化物抗原決定基(CCD)の関与も示唆された。著者は「今後、さらに大きなコホートで検討する必要がある」とまとめている。

2型糖尿病、男性では膝OAの有意な予測因子に

 最近の研究では、肥満、糖尿病、高血圧および脂質異常症といった代謝因子やそれらの集積であるメタボリックシンドロームが、変形性膝関節症(膝OA)の病態生理に関与している可能性が示唆されている。フランス・AP-HP Henri Mondor HospitalのFlorent Eymard氏らは、膝OA患者を対象としたstrontium ranelateの第III相無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験(SEKOIA試験)におけるプラセボ群について解析し、2型糖尿病が男性膝OA患者における関節裂隙狭小化の予測因子であることを報告した。Osteoarthritis and Cartilage誌2015年6月号(オンライン版2015年2月3日号)の掲載報告。

骨髄性プロトポルフィリン症、afamelanotideの第III相試験/NEJM

 骨髄性プロトポルフィリン症はまれな遺伝性疾患で、急性の光毒性を伴う重度の光線過敏症を呈し、きわめて強い疼痛がみられQOLが著明に低下する。オランダ・エラスムス医療センターのJanneke G Langendonk氏らは、afamelanotideが本症の症状を軽減し、忍容性も良好であることを確認し報告した。本症の光線過敏症は、プロトポルフィリンをヘムへ変換する合成酵素であるフェロケラターゼの活性低下に起因する。afamelanotideはヒトαメラノサイト刺激ホルモンのアナログで、メラノサイトなどの皮膚細胞のメラノコルチン1受容体に結合するトリデカペプチドであり、紫外線放射によってメラニン産生が刺激された際に生じる紫外線による細胞障害を起こすことなく、表皮のユーメラニン産生を増加させるという。NEJM誌2015年7月2日号掲載の報告より。

グルタミン酸作用、統合失調症の認知機能への影響は認められず

 統合失調症に認められる認知障害において、NMDA受容体の機能低下に大きく関与していることが指摘されている。グルタミン酸塩のモジュレーターがこのような難治状態の回復に有効な可能性があるが、これまでに実施された個々の研究では矛盾した結果が出ていた。カナダ・Centre for Addiction and Mental HealthのY Iwata氏らは、統合失調症患者の認知機能に及ぼすグルタミン酸塩を含むモジュレーターの影響を明らかにするため、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。その結果、全般的認知機能および8つのドメインにおいてプラセボと比較した優位性は認められず、グルタミン酸塩を含むモジュレーターが有効でない可能性を報告した。Molecular Psychiatry誌オンライン版2015年6月16日号の掲載報告。

高齢者は血圧低下が腎機能低下のリスクに

 ベルギー・ルーヴァンカトリック大学のBert Vaes氏らは、高齢者における静的および動的な血圧と腎機能の変化の関係について検討した。その結果、チャールソン併存疾患指数(mCCI)およびベースライン時の腎機能・血圧を調整すると、すべての年齢層において、血圧の経年的低下が腎機能低下における強力な危険因子であることが示された。BMJ open誌2015年6月30日号に掲載。

経口H.pyloriワクチン、未感染小児に高い効果/Lancet

 中国で開発中の経口組換え型H.pyloriワクチンについて、未感染小児に対する有効性、安全性、免疫原性が確認されたことを、中国食品医薬品検定研究所のMing Zeng氏らが4,464例を対象とした第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験の結果、報告した。投与後1年時点の有効性は71.8%であったという。著者は、「本ワクチンはH.pylori感染の発生を大幅に減少することができた。さらなる長期追跡によりその予防効果を確認する必要がある」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年6月30日号掲載の報告より。

爆発的に増えた血糖降下薬のRCT論文、著者の特徴は/BMJ

 オランダ・アムステルダム大学医療センターのFrits Holleman氏らは、血糖降下薬の刊行論文が、一部少数の論文多産著者(supertrialists)によるものなのかどうか、および彼らによる論文の特徴を調べた。その結果、過去20年の無作為化試験(RCT)論文の3分の1は、製薬メーカーの社員(44%)とメーカーと密接に仕事をする大学研究者(56%)により執筆されたものであることを明らかにした。BMJ誌オンライン版2015年7月1日号掲載の報告。

いわゆる「新規経口抗凝固薬」:中和剤は臨床的に意味があるか?【2】(解説:後藤 信哉 氏)-383

 ワルファリンは第II、VII、IX、X因子の機能的完成を阻害する薬剤であるため、濃縮血漿を加えることにより抗凝固活性を速やかに阻害することができる。最近開発された新規経口抗凝固薬(抗Xa、抗トロンビン薬)存在下では濃縮血漿を加えても、抗トロンビン、抗Xa薬により凝固因子の効果が阻害され続けるので、薬剤が体内から消失するまで止血効果を期待できない。第Xa因子の場合には、血漿中の抗凝固効果以上に、細胞膜上のprothrombinase complexを構成するXaも中和しなければならないので、抗Xa薬中和剤の開発はいっそう困難である。

ステント型血栓回収デバイス、急性虚血性脳卒中の1次治療に 米脳卒中治療ガイドライン

 2015年7月10日、日本メドトロニック発表。アメリカ心臓協会/アメリカ脳卒中協会(American Heart Association, AHA/American Stroke Association, ASA)から新しい脳卒中治療ガイドラインが発表された。本ガイドラインでは、適応患者に対し現行の標準治療であるIV-tPAに、Medtronic plc(本社:アイルランド ダブリン、会長兼最高経営責任者:オマーイシュラック)のステント型血栓回収デバイス(商品名:Solitaire)をはじめとするステント型血栓除去術の併用が治療の第1選択として推奨されている。

ダビガトランに対するidarucizumab、患者での中和効果は?/NEJM

 ダビガトラン(商品名:プラザキサ)投与中の患者に対して、idarucizumabは数分以内で抗凝固作用を完全に中和することが、米国・ペンシルベニア病院のCharles V. Pollack, Jr氏らによる検討の結果、報告された。idarucizumabは、経口非ビタミンK拮抗薬に対する特異的な中和薬がない中、ダビガトラン特異的に抗凝固作用を中和するために開発されたヒト化モノクローナル抗体フラグメントである。これまでボランティア被験者(腎機能正常の健常若年者、65~80歳高齢者など)を対象とした試験で、迅速かつ完全な中和作用をもたらすことが示されていた。NEJM誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告より。

認知症予測にMRI検査は役立つか/BMJ

 認知症発症の予測について、従来リスクデータにMRI検査の情報を加えても、予測能は改善しないことが示された。英国・ニューカッスル大学のBlossom C M Stephan氏らが10年間にわたる住民ベースコホート研究の結果、報告した。ただし、再分類能、予後予測能について統計的に有意な改善が示され、また臨床的有用性のエビデンスがあることも示されたという。従来リスク変数は、人口統計、神経心理、健康、生活習慣、身体機能、遺伝をベースとしたものである。これまでMRI情報を加えたモデルと従来モデルとを、住民ベースレベルで比較した検討は行われていなかった。BMJ誌オンライン版2015年6月22日号掲載の報告。