日本語でわかる最新の海外医学論文|page:787

中等度~重度の尋常性乾癬にトファシチニブが有望/Lancet

 中等度~重度の慢性尋常性乾癬に対し、トファシチニブ(商品名:ゼルヤンツ、慢性尋常性乾癬に対しては未承認)の10mg1日2回投与はエタネルセプト(50mgを週2回)に非劣性であり、プラセボより優れることが示された。フランス・サンルイ病院のHerve Bachelez氏らが第III相の無作為化非劣性試験の結果、報告した。トファシチニブは、経口ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬である。今回の検討では、トファシチニブの5mgまたは10mgの2種の用量について、高用量のエタネルセプトおよびプラセボとの比較が行われた。Lancet誌オンライン版2015年6月4日号掲載の報告より。

オピオイド服用中のBZD、過剰摂取死リスク増大/BMJ

 オピオイド鎮痛薬服用中のベンゾジアゼピン系薬投与は、過剰摂取による死亡リスクの増大と用量依存的に関連することが、米国・ブラウン大学のTae Woo Park氏らによる症例コホート研究の結果、報告された。また薬剤種別の検討において、クロナゼパムと比較してtemazepam(国内未承認)の同死亡リスクが低いことも明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告より。

FDAが承認したデバイスでは選択的報道があった!(解説:折笠 秀樹 氏)-372

 米国FDAが2000年から2010年の間に承認した循環器系デバイス(医療機器)として、106件の新規デバイスを研究対象とした。これらのデバイスに関係する臨床研究は、全部で177件あった。本調査によると、承認を得たデバイスのうち、49%しか論文になっていないことが判明した。また、論文になっていたとしても、承認時の解析対象・主要エンドポイントなどが変えられるといった不備が、相当みられると報告した。エンドポイントのすり替えなどは40%、主要結果を曲げて報告された例は34%にも及んでいた。

精神疾患患者の作業記憶低下機序が解明か

米国・ピッツバーグ大学/奈良県立医科大学の紀本 創兵氏らは、統合失調症患者における作業記憶低下の分子メカニズムを明らかにするため、グルタミン酸シナプスによる神経伝達制御に関わる初期遺伝子の定量化を試みた。その結果、NARPのメッセンジャーRNA(mRNA)発現量が低下しており、これがパルブアルブミン介在ニューロンへの興奮性入力を低下させ、ガンマアミノ酪酸の合成低下を通して作業記憶低下につながっている可能性を示唆した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年6月3日号の掲載報告。

障害生存年数の増加、主な原因は腰痛とうつ/Lancet

 188ヵ国を対象とした世界の疾病負担研究(Global Burden of Disease Study)2013の結果、世界的に高齢者人口が増加しており、また高齢者ほど疾患や外傷の後遺症を持つ人の割合が増加していることが判明した。米国・Institute for Health Metrics and EvaluationのTheo Vos氏らGlobal Burden of Disease Study 2013研究グループが、1990~2013年の188ヵ国の医療データをシステマティックに分析した結果、明らかになった。Lancet誌オンライン版2015年6月7日号掲載の報告より。

携帯GPS機能で心肺蘇生実施率が向上/NEJM

 携帯電話使用者の位置情報を瞬時に特定する携帯電話位置情報システムを使って、救急通報があった院外心停止が疑われる患者の近くにいる心肺蘇生(CPR)訓練を受けたボランティア市民に連絡し、現場への急行を依頼することで、“居合わせた市民(バイスタンダー)によるCPR実施率”が有意に上昇したことが示された。スウェーデン・カロリンスカ研究所のMattias Ringh氏らが、二重盲無作為化比較試験を行い明らかにした。バイスタンダーによるCPRは、院外心停止患者の生存率上昇と関連することが示されている。NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。

抗精神病薬とアディポネクチン低下の関連明らかに

 統合失調症患者における第2世代抗精神病薬(SGA)服用と代謝異常との関連が、イタリア、ミラノ・ビコッカ大学のFrancesco Bartoli氏らによるメタ解析の結果、明らかにされた。所見を踏まえて著者らは、「SGAがアディポネクチンに影響するメカニズムは不明のままだが、心血管疾患ではアディポネクチン低下が関与しており、今回の所見は臨床的に重要な意味を持つ」と述べ、SGAのアディポネクチンへの長期的な影響を評価する経時的検討を行うべきと指摘している。Psychoneuroendocrinology誌2015年6月号の掲載報告。

心血管デバイスの承認申請書と公表論文を比較/BMJ

 米国・マサチューセッツ総合病院のLee Chang氏らは、最近承認されたハイリスク医療機器の心血管デバイスについて、米国FDAに報告された臨床試験の特徴および安全性、有効性に関する結果を調べ、ピアレビュー論文の同報告と比較した。その結果、臨床試験が未発表であるものが多く、発表されたものについても、試験集団、主要エンドポイントや試験結果が、FDAに提出されたデータとはかなり異なる可能性があることを報告した。これまでに、新規上市の医薬品については、臨床試験データにバイアスをかけた論文の発表が報告されている。医療機器については、臨床試験がどれほど選択的に報告されているのか明らかになっていなかった。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告。

脊椎圧迫骨折治療に有望な、新たな椎体形成術

 Kivaシステムは、椎体内にポリエーテルエーテルケトン(PEEK)を素材としたデバイスを埋め込み、その中に骨セメントを充填する椎体形成術(Vertebral Augmentation)である。米国・ウィスコンシン医科大学のSean M Tutton氏らは、安全性、有効性について、有痛性の骨粗鬆症性脊椎圧迫骨折患者を対象に多施設無作為化比較試験KAST研究を行った。その結果、主要評価項目である疼痛改善、機能の維持・改善および安全性の複合エンドポイントに関してKivaシステムのバルーン椎体形成術(BKP)に対する非劣性が確認されたことを報告した。

統合失調症への集団精神療法、効果はどの程度か

 統合失調症に対してさまざまな集団精神療法が行われているが、その効果についてはほとんどわかっていない。英国・ロンドン大学クイーン・メアリー校のStavros Orfanos氏らは、集団精神療法の効果を評価するとともに、“集団効果”が治療強度、診断の均一性および治療方針と関連があるかどうかを検討する目的で、システマティックレビューを行った。その結果、統合失調症の治療において集団精神療法は陰性症状や社会的機能を改善しうることが認められ、その効果はさまざまな集団療法でみられ非特異的であることが示唆された。著者らは「将来的には集団療法の有効性のメカニズムを明らかにし、治療効果を最大化する方法を検討すべきである」とまとめている。Psychother Psychosom誌2015年6月号の掲載報告。

かかりつけ機能を基に薬局を地域の健康窓口へ

 6月18日、厚生労働省は第2回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会(座長:昭和薬科大学 学長 西島 正弘氏)を開催した。この検討会は、昨年6月に閣議決定された日本再興戦略の「薬局・薬剤師を活用したセルフメディケーションの推進」を受けて、健康情報拠点としてふさわしい薬局の定義・名称、基準の策定、公表の仕組みを検討することを目的としている。第2回検討会では主に定義に関する話し合いが行われた。

プレスリリースはFDA非承認内容を適切に報じているか/BMJ

 臨床試験のスポンサー(製薬会社)は、米国FDAが薬剤の市販申請を承認しない理由を伝える審査完了報告通知(complete response letter:CRL)の内容の多くを、プレスリリースには反映していないことが、FDA公衆衛生戦略解析事務局のPeter Lurie氏らの検討で明らかとなった。FDAは、規制機関がスポンサーからの市販申請を承認しないと決定した場合に、その理由をCRLでスポンサーに伝える。スポンサーは、CRLの内容を含むプレスリリースを公表してよいが、必須ではない。一方、これらのプレスリリースは、FDAの決定および非承認の論拠に関する公開された唯一の情報源となることが多いという。BMJ誌オンライン版2015年6月10日号掲載の報告。

雌との遭遇意欲低下、うつモデルマウス:大阪大学

 大阪大学の吾郷 由希夫氏らは、うつ病を含む精神障害の重要な指標である意欲低下を評価する新たな手段として、雄マウスの雌マウスとの遭遇テストを検討した。その結果、雄マウスのうつ病モデルでは雌マウスとの遭遇を好む傾向が低下すること、この低下はフルボキサミンなどで軽減されることを報告し、本手法が雄マウスの意欲の評価に有用である可能性を報告した。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年5月29日号の掲載報告。

抗真菌活性を有する新たなピーナッツアレルゲンを同定

 ピーナッツは、最も危険な食物アレルギーの原因の1つで、未知のアレルゲンが親油性マトリックスの中にまだ隠されている。ピーナッツアレルギー患者がアレルギーを起こすリスクを推定し診断法を改善するためには、こうしたアレルゲンを発見する必要がある。ドイツ・ボルステル研究所のArnd Petersen氏らは、この問題に取り組み、新しいピーナッツアレルゲン(Ara h 12およびAra h 13)として、とくに重度ピーナッツアレルギー患者のIgEと反応するディフェンシンを同定した。

救急隊到着前の心肺蘇生で予後改善/NEJM

 スウェーデンでは、人口約970万人のうち300万人以上が心肺蘇生(CPR)の訓練を受けているが、その効果を疑問視する声があるという。今回、同国カロリンスカ研究所のIngela Hasselqvist-Ax氏らが調査したところ、救急隊(EMS)到着前のCPRにより院外心停止患者の30日生存率が2倍以上に向上していることがわかった。心肺停止患者のアウトカムの改善には発症から治療開始までの期間の短縮が重要であり、欧米のガイドラインでは、院外で可能な最も重要な措置は、心停止の発生を早期に認識して緊急電話を入れ、CPRおよび除細動を行うこととされる。研究の成果は、NEJM誌2015年6月11日号掲載の報告より。

シタグリプチン追加で重症心血管イベント増加せず/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、通常治療にDPP-4阻害薬シタグリプチン(商品名:ジャヌビア、グラクティブ)を併用しても、重症心血管イベントは増加しないことが、米国・デューク大学のJennifer B Green氏らが実施したTECOS試験で示された。多くの2型糖尿病治療薬が承認されているが、一部の薬剤で心血管系の長期的な安全性に関して疑問が生じているという。米国FDAや欧州医薬品庁(EMA)は、新薬に対し、血糖降下作用だけでなく臨床的に重要な心血管系の重篤な有害事象の発生率を上昇させないことを示すよう求めている。NEJM誌オンライン版2015年6月8日号掲載の報告より。