日本語でわかる最新の海外医学論文|page:776

ネットによる手洗い行動介入は気道感染症の抑制に有効/Lancet

 インターネットを利用して手洗い行動を促す介入法は、気道感染症の拡大の抑制に有効であることが、英国・サウサンプトン大学のPaul Little氏が実施したPRIMIT試験で示された。手洗いは、気道感染症の拡大予防に広く支持され、とくに新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスのパンデミック(pandemic)の際には世界保健機関(WHO)が推奨した。一方、主な感染経路は飛沫とする見解があるなど、手洗いの役割については議論があり、また非貧困地域の成人に関する質の高い無作為化試験のエビデンスはこれまでなかったという。さらに、パンデミックのリスクの増大に伴い、迅速に利用できる低コストの介入法が求められている。Lancet誌オンライン版2015年8月6日号掲載の報告。

テストステロンの補充は動脈硬化を進展させるか/JAMA

 テストステロンの長期投与がアテローム性動脈硬化に及ぼす影響は確立されていない。米国・ブリガム&ウィメンズ病院のShehzad Basaria氏らは、今回、TEAAM試験において、加齢に伴いテストステロン値が低下した高齢男性に対するテストステロンの3年投与は、アテローム性動脈硬化を進展させず、性機能や健康関連QOLを低下させないことを示した。近年、米国ではテストステロンを使用する高齢男性が増加しているが、長期投与のベネフィットやリスクは明らかではなく、心血管イベントとの関連については相反する結果が報告され、前臨床研究でも矛盾するデータが示されているという。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。

抗精神病薬誘発性高プロラクチン血症にアリピプラゾール補助療法

 高プロラクチン血症は、いくつかの抗精神病薬に関連した好ましくない有害事象である。ドパミンパーシャルアゴニストであるアリピプラゾールの併用は、効果的に抗精神病薬誘発性の高プロラクチン血症を減弱させる可能性があるが、理想的な投与レジメンは不明である。中国・北京Hui-Long-Guan病院のJing-Xu Chen氏らは、統合失調症患者のプロラクチンレベルや高プロラクチン血症に対する、アリピプラゾール補助療法の用量を評価することを目的に、検討を行った。Psychoneuroendocrinology誌2015年8月号の報告。

トロポニンT値、2型糖尿病患者の心血管リスク予測に有用/NEJM

 心筋トロポニンT値は、2型糖尿病と安定虚血性心疾患の合併患者において、心血管系が原因の死亡、心筋梗塞、脳卒中の独立した予測因子であることが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のBrendan M. Everett氏らによる検討の結果、明らかにされた。また、迅速血行再建術でメリットが得られる患者はトロポニンT値14ng/L未満であることも示された。心筋トロポニン値は、急性冠症候群患者において、緊急血行再建が有効の可能性がある患者を同定するために用いられている。研究グループは、安定虚血性心疾患患者においても、心筋トロポニン値を用いて心血管イベントリスクの高い患者を同定し、迅速な冠血行再建によるベネフィットを得られることが可能であるとの仮説を立て、その検証試験を行った。NEJM誌2015年8月13日号掲載の報告より。

統合失調症の同胞研究、発症と関連する脳の異常

 先行研究において、統合失調症における構造的な脳結合性の異常が観察されている。それら異常の長期的なマッピングと、同胞研究による遺伝的リスクの理解は、統合失調症に関連する漸進的な発達的変化について重要な見識を与えてくれる。オーストラリア・メルボルン大学のAndrew Zalesky氏らは、小児期発症統合失調症(COS)の青年において発達過程の変化を示す皮質間結合を確認し、類似の変化が非罹患同胞にみられるかどうかを検討する前向き研究を行った。その結果、非罹患同胞の統合失調症発症に対するレジリエンスと関連する中間表現型を伴う後頭側頭部の結合性の成熟遅延が、COS患者の特徴的なマーカーであることが示唆されたことを報告した。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年7月15日号掲の載報告。

繊維摂取と大腸がんの関連~性別や部位で異なる

 これまでの研究において、繊維摂取量と大腸がん発症の間に負の相関が認められているが、がんのステージによる違いは検討されていない。スウェーデン・ルンド大学のAlexandra Vulcan氏らは、The Malmo Diet and Cancer Studyで、繊維摂取量とその供給源、および大腸がん発症との関連を、性別、腫瘍部位、TNM分類ごとに検討した。その結果、繊維摂取量と大腸がんの間に、性別、腫瘍部位、繊維供給源により異なる関連が認められた。とくに果物やベリー類からの高い繊維摂取は、女性において大腸がん発症を防ぐ可能性があるという。The British journal of nutrition誌オンライン版2015年8月18日号に掲載。

失明患者の視覚を回復、人工網膜システムが欧米で初承認

 これまで治療法がなかった網膜色素変性症に対する、人工網膜システムArgus II(Second Sight社)が開発された。網膜色素変性症は光受容体の消失により失明に至る遺伝性のまれな疾患である。開発されたシステムは、メガネに搭載された小型カメラと映像プロセッサにより、イメージを電気信号に変換し網膜に移植した電気デバイスに送信して視覚を提供するというもの。今回、米国・ウィルズ・アイ・ホスピタルのAllen C. Ho氏らは、Argus II移植後1年および3年の臨床試験成績を報告。網膜色素変性症による失明に対し、視覚を回復するArgus IIの長期的な安全性と有用性が認められたことを明らかにした。なお、本研究の中間解析結果により承認申請がなされ、Argus IIシステムは世界初かつ唯一の網膜移植システムとして米国および欧州で承認された。Ophthalmology誌2015年8月号(オンライン版2015年7月8日)の掲載報告。

ハイリスク医療機器の臨床試験の質・量、市販前後で変化/JAMA

 米国FDAの市販前承認(PMA)を受け上市したハイリスク医療機器の臨床試験は、市販前と市販後では量・質ともに変化がみられ、承認後3~5年で市販後試験を完了していたのは約13%であったことなどが明らかにされた。イェール大学医学部のVinay K. Rathi氏らが、2010~2011年に承認されたハイリスク(生命補助・維持または不当なリスクをもたらしうる)医療機器について調べ、報告した。JAMA誌2015年8月11日号掲載の報告より。

早期乳がんにおける術後補助療法としてのビスホスホネート:無作為化試験からの個々のデータのメタ分析(解説:矢形 寛 氏)-402

ビスホスホネートは、転移抑制、とくに骨転移の予防に効果を示す可能性が指摘されているが、臨床試験によって結果が一定していない。しかし、サブセット解析では、閉経後または高齢女性に対してはベネフィットが示唆されている。そこで、術後補助療法としてのビスホスホネートのリスクとベネフィットを明らかにするため、Early Breast Cancer Trialists’Collaborative Group(EBCTCG)のグループによってメタ分析が行われた。主要評価項目は、再発、遠隔再発と乳がん死である。主要サブグループ調査項目は、遠隔転移部位(骨とそれ以外)、閉経状態(閉経後[自然および人工]とそれ以外)、ビスホスホネートのクラス(アミノ基を含有するもの[ゾレドロン酸、イバンドロン酸、パミドロン酸]とそれ以外[クロドロン酸])である。

2つの月1回抗精神病薬持効性注射剤、有用性の違いは

 統合失調症患者に対する2つの持効性注射剤の有用性を評価するため、ドイツ・ハンブルク大学エッペンドルフメディカルセンターのDieter Naber氏らは直接比較試験を行った。アリピプラゾール400mg/月1回(AOM400)とパリペリドンパルミチン酸エステル月1回(PP)について、Heinrichs-Carpenter QOL評価尺度(QLS)、健康関連QOL、機能尺度を用いて検討した結果、AOM400はPPと比較し、健康関連QOLの優れた改善や良好な忍容性プロファイルにより、高い全般的有効性が示唆された。Schizophrenia research誌オンライン版2015年7月28日号の報告。

結節性硬化症の白斑、mTOR阻害薬の有効性を確認

 結節性硬化症(TSC)の白斑病変に対する、局所ラパマイシン(mTOR阻害薬、別名:シロリムス)治療の有効性と安全性が確認された。大阪大学医学部皮膚科 講師/医局長の金田 眞理氏らが患者6例について行った前向きベースライン対照試験の結果、報告した。著者はその改善機序として、「今回示された効果は、TSCメラニン形成細胞におけるメラニン形成障害の改善によりもたらされることを強く支持するものであった」と述べている。これまでTSC患者の、腫瘍に対する哺乳類ラパマイシン標的蛋白質複合体1(mTORC1)の効果については多くの検討が行われてきたが、白斑への効果については不明であった。JAMA Dermatology誌2015年7月号の掲載報告。

周術期の音楽が術後の疼痛・不安を軽減/Lancet

 成人患者の手術後の疼痛や不安感の軽減を支援する手段として、音楽が有効であることが、英国・ロンドン大学クイーンメアリー校のJenny Hole氏らの検討で明らかとなった。医療における音楽の使用の歴史は長く、19世紀半ばにはフローレンス・ナイチンゲールが入院患者の回復を目的に導入しており、周術期の患者支援としては1914年にEvan Kane氏が初めて報告した。音楽は、施行が簡便で失敗がほとんどなく、非侵襲的で安全かつ安価な介入法であるが、その有用性についてはこれまでに包括的なレビューがいくつかあるものの、メタ解析は行われていないという。Lancet誌2015年8月12日号掲載の報告。

Stage IIIA/N2のNSCLC、術前化学放射線療法は有用か/Lancet

 Stage IIIA/N2の非小細胞肺がん(NSCLC)の治療では、術前の化学療法に放射線療法を併用しても、さらなるベネフィットは得られないことが、スイス・Kantonsspital WinterthurのMiklos Pless氏らSAKK Lung Cancer Project Groupの検討で示された。局所進行Stage III病変は治癒の達成が可能な最も進行したNSCLCであるが、最終的に患者の60%以上ががんで死亡する。Stage IIIA/N2の標準治療は同時併用化学放射線療法と手術+化学療法で、後者については術後または術前化学療法+手術が、手術単独よりも生存期間において優れることが示されているが、術前化学放射線療法+手術の第III相試験はこれまで行われていなかった。Lancet誌オンライン版2015年8月11日号掲載の報告より。