エボロクマブのプラーク退縮、AHAで発表:アムジェン

提供元:ケアネット

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公開日:2016/11/18

 

 アムジェン社は2016年11月15日、冠動脈疾患(CAD)患者に対して最適用量のスタチン療法にエボロクマブ(商品名:レパーサ)を上乗せした結果、統計学的に有意なアテローム性動脈硬化の退縮が確認されたことを発表した。この第III相プラセボ対照無作為化二重盲検比較試験(GLAGOV試験)の結果は、2016年米国心臓学会議(AHA)学術集会での発表と同時に、Journal of the American Medical Association(JAMA)誌にも掲載された。

 GLAGOV試験では、サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)阻害剤エボロクマブの、最適用量のスタチン療法を受けている患者に対する冠動脈のアテローム性プラーク進展への影響をベースラインおよび78週目の血管内超音波(IVUS)測定により検証した。

 この試験は主要評価項目を達成し、エボロクマブの治療が、動脈血管内に占めるプラークの割合であるアテローム体積率(PAV:Percent Atheroma Volume)をベースライン時から統計学的に有意に減少することを明らかにした。

 最適用量スタチン+エボロクマブ(エボロクマブ群)ではPAVがベースラインに対し0.95%の減少が認められたが、最適用量スタチン+プラセボ群では0.05%の増加が認められた(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.78)。投与群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。さらに、エボロクマブ群ではプラセボ(プラセボ群)と比較し、より多くの患者でPAVの退縮が認められた(エボロクマブ群:64.3%、プラセボ群:47.3%、p<0.0001)。

 プラーク量測定のもう1つの基準である標準化した総アテローム体積(TAV:Total Atheroma Volume)の減少ついては、エボロクマブ群で平均5.8mm3、プラセボ群では0.9mm3で(エボロクマブ群:p<0.0001、プラセボ群:p=0.45)、2群間で統計的に有意な差が認められた(p<0.0001)。

 ベースラインでは、いずれの群でも患者の平均LDL-C値は92.5mg/dLであり、両群で98%の患者が高用量から中用量のスタチン療法を受けていた。78週間の治療期間中、エボロクマブ群のLDL-C値の時間加重平均は36.6mg/dLで、プラセボ群の93.0mg/dLと比較し59.8%の低下が認められた。78週目において、エボロクマブ群の平均LDL-C値は29mg/dLで、プラセボ群が90mg/dLを示したのに対し、ベースラインから68.0%低下を認めた。

 この試験では、安全性に関する新たな所見は認められなかった。治療中の有害事象の発現率は両群で同等であった(エボロクマブ群:67.9%、プラセボ群:79.8%)。本試験で検討された臨床的に重要な有害事象は筋肉痛(エボロクマブ群:7.0%、プラセボ群:5.8%)、新たに診断された糖尿病(エボロクマブ群:3.6%、プラセボ群:3.7%)、神経認知機能関連の事象(エボロクマブ群:1.4%、プラセボ群:1.2%)、注射部位反応(エボロクマブ群:0.4%、プラセボ群:0.0%)であった。 GLAGOV試験では結合抗体はほとんど認められず(エボロクマブ群:0.2%[1例])、中和抗体は検出されなかった。

 また、心血管イベントへの影響を評価する目的では設計されていないものの、明確に主要心血管イベントと判定された事象の発現率はエボロクマブ群で12.2%、プラセボ群で15.3%であった。判定された事象の多くは、冠動脈血行再生術(エボロクマブ群:10.3%、プラセボ群:13.6%)、心筋梗塞(エボロクマブ群:2.1%、プラセボ群:2.9%)、その他の判定された心血管イベントの発現率はいずれの治療群でも0.8%以下であった。

GLAGOV試験について
 GLAGOV(GLobal Assessment of Plaque ReGression with a PCSK9 AntibOdy as Measured by IntraVascular Ultrasound)試験は、臨床的に冠動脈造影が必要とされている最適用量のスタチン治療中の患者968例を対象に、冠動脈疾患における動脈硬化(プラーク)に対するエボロクマブの効果を評価するため設計された。患者は、最低4週間継続して定用量のスタチン療法を受けており、LDL-C80mg/dL以上か、60~80mg/dL の場合は、1件の重要な心血管リスク要因(冠動脈以外のアテローム性血管疾患、直前2年間における心筋梗塞または不安定狭心症による入院、もしくは2型糖尿病と定義)または3件の軽微な心血管リスク要因(現在喫煙している者、高血圧、HDLコレステロール低値、若年性冠動脈疾患の家族歴、2mg/dL以上の高感度C反応性タンパク質、50歳以上の男性、55歳以上の女性)があることが要件であった。被験者は、エボロクマブ420mg月1回またはプラセボに1:1で割り付けられた。最適用量のスタチン療法の定義は、20mg/日以上相当のアトルバスタチンを投与し、ガイドラインに沿ってLDL-Cを低下させられる投与用量とした。主要評価項目は、IVUS測定による、プラセボと比較した78週目におけるPAVのベースラインからの変化率。副次的評価項目は、PAVの減少(ベースラインからのすべての減少)、78週目におけるTAVのベースラインからの変化、およびTAVの減少(ベースラインからのすべての減少)であった。

(ケアネット 細田 雅之)

原著論文はこちら

Nicholls SJ, et al.JAMA. 2016 Nov 15. [Epub ahead of print]

参考

アムジェン社(米国):ニュースリリース
GLAGOV試験(ClinicalTrials.gov)