日本語でわかる最新の海外医学論文|page:778

ビタミンEとセレニウムは喫煙者の前立腺がんリスクを下げるか

 ビタミンEとセレニウムの疫学研究において、これら抗酸化物質が前立腺がんリスクを下げるとの仮説があるが、明確なベネフィットは示されていない。また、喫煙がこれらの効果に影響する可能性も示唆されている。米国・エモリー大学のYeunjung Kim氏らはメタ解析により、ビタミンEおよびセレニウムの摂取と前立腺がんリスクとの関連性を非喫煙者と喫煙経験者(現喫煙者/元喫煙者)について比較検討した。Anticancer research誌2015年9月号の掲載報告。

心房細動アブレーション、部位特定にアデノシンが効果的/Lancet

 発作性心房細動へのカテーテルアブレーションにおいて、肺静脈隔離術後にアデノシンを投与し休止伝導部位を特定することが、無不整脈生存を改善する安全で非常に効果的な戦略であることが明らかにされた。カナダ・モントリオール大学のLaurent Macle氏らが、国際多施設無作為化優越性試験ADVICEの結果、報告した。著者は、「本アプローチを、臨床でルーチンとすることを検討すべきである」とまとめている。心房細動へのカテーテルアブレーションは増大しているが、不整脈再発の頻度が高い。アデノシンの投与は、休止伝導部位(dormant conduction)を明らかにし、伝導再発(reconnection)リスクのある肺静脈を特定可能である。それにより心房細動アブレーションの追加部位が導かれ、無不整脈生存が改善できるのではないかと見なされていた。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号の掲載報告。

唐辛子をほぼ毎日食べると死亡リスク低下/BMJ

 香辛料入り食品を習慣的に摂取すると、あまり食べない集団に比べ、全死因死亡のほか、がん、虚血性心疾患、呼吸器疾患による死亡が減少することが、China Kadoorie Biobank collaborative groupのJun Lv氏らの調査で示された。香辛料は、世界の食文化に不可欠の要素であり、食品の味や風味付け、彩り、保存食のほか医療用としても長い歴史を持つ。最近は、とくに味付けのための使用が増加しており、中国では全国的に唐辛子の消費量が多いという。一方、カプサイシンなど、香辛料の主要な生理活性成分は、種々の慢性疾患において有益な役割を果たすことが、実験的研究や地域住民研究で報告されている。BMJ誌オンライン版2015年8月4日掲載の報告より。

統合失調症患者の家庭での暴力行為に関する調査:東京大学

 精神疾患患者の脱施設化を目指す日本において、家庭内暴力は重要な問題である。東京大学の蔭山 正子氏らは、統合失調症患者を対象に、家庭内暴力の割合や患者の性別、患者との関係性における違いを明らかにすべく、検討を行った。Asia-Pacific journal of public health誌オンライン版2015年7月16日号の報告。

脳卒中リスク、日本でも居住地の経済状況が影響

 地区の社会経済状況の水準を指標化したものを、地理的剥奪指標(areal deprivation index)という。これまで欧米の多くの研究で、この地理的剥奪が循環器疾患リスクに影響する因子であることが示されている。しかし、アジアにおける検討はこれまでなかった。今回、国立がん研究センターによる多目的コホート研究(JPHC研究)で、地理的剥奪指標と脳卒中死亡および発症リスクとの関連が前向き研究で検討された。その結果、居住地の剥奪指標が脳卒中の発症に影響することが明らかになった。著者らは「地区の社会経済状況は脳卒中リスクを減少する公衆衛生介入の潜在的なターゲットになりうる」としている。Journal of epidemiology誌オンライン版2015年3月5日号掲載の報告。

医療従事者の手指衛生励行キャンペーンの効果/BMJ

 WHOが2005年に始めた医療従事者の手指衛生励行キャンペーン(WHO-5)により、医療従事者の手指衛生コンプライアンスが改善したことが、タイ・マヒドン大学のNantasit Luangasanatip氏らによるシステマティックレビューとネットワークメタ解析の結果、報告された。WHO-5は、医療従事者の手指衛生コンプライアンスが平均38.7%(範囲:5~89%)であったことを鑑みプログラムされたキャンペーン。「システムの変更」「訓練と教育」「観察とフィードバック」「院内での喚起」「病院の安全文化」という5つの項目から成る多様な戦略を推進することで手指衛生の改善を図る。検討の結果、さらなる戦略の追加で改善に結び付くことが判明し、著者は「目標設定、インセンティブ、アカウンタビリティ戦略の追加で、さらなる改善をもたらすことが可能なようだ」と述べている。ただし、それら介入に必要なリソースの報告は不十分なままであるとも指摘している。BMJ誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。

高TG血症の新規治療薬、アポリポ蛋白C-IIIを有意に低下/NEJM

 高トリグリセリド血症治療薬として新規開発中のISIS 304801は、トリグリセリド値の有意な低下と関連することが報告された。ベースラインのトリグリセリド値が異なる85例を対象に、カナダ・モントリオール大学のDaniel Gaudet氏らが行った第II相無作為化二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果、示された。ISIS 304801は、血漿トリグリセリド値の主要な調節因子であるアポリポ蛋白C-III(APOC3)合成の第2世代アンチセンス阻害薬である。NEJM誌2015年7月30日号掲載の報告より。

不眠症併存患者に対する非薬物療法の有効性

 不眠症の認知行動療法(CBT-I)は、不眠障害に対する最も優れた非薬物的治療である。その有効性について、原発性不眠症についてはメタ解析による検討が行われているが、併存不眠症に関する検討はほとんど知られていなかった。米国・ボストン大学のJade Q Wu氏らは、併存不眠症に対するCBT-Iの有効性を明らかにするため、無作為化臨床試験37件のメタ解析を行った。その結果、認知行動療法により不眠症状および睡眠パラメータの改善が認められた。また、併存疾患として内科的疾患よりも精神疾患を有する例で、より大きな効果が得られることを報告した。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2015年7月6日号の掲載報告。

慢性HBV感染の有病率、初の世界的分析結果/Lancet

 世界の慢性B型肝炎ウイルス(HBV)感染症の有病率は3.61%であり、アフリカおよび日本を含む西太平洋地域が最も高率であることなどが、ドイツ・ヘルムホルツ感染症研究センターのAparna Schweitzer氏らにより明らかにされた。世界的分析結果は初となるもので、研究グループは、1965~2013年の発表データを系統的にレビューし、プール解析を行った。Lancet誌オンライン版2015年7月28日号掲載の報告。

小児へのデング熱ワクチン、効果あるも年齢差/NEJM

 2~16歳児を接種対象とした長期サーベイランス中のデング熱ワクチン(遺伝子組み換え型生減弱4価タイプ:CYD-TDV)について、3年時点の中間解析結果が発表された。同期間中の全被験者リスクは、ワクチン接種群が対照群よりも低下したが、9歳未満児で原因不明の入院リスクの上昇がみられたという。インドネシア大学のSri Rezeki Hadinegoro氏らCYD-TDVデング熱ワクチンワーキンググループが、アジア太平洋およびラテンアメリカでそれぞれ行われている3件の無作為化試験の結果を統合分析して報告した。NEJM誌オンライン版2015年7月27日号掲載の報告。

ピオグリタゾンとがん(解説:吉岡 成人 氏)-397

日本における糖尿病患者の死因の第1位は「がん」であり、糖尿病患者の高齢化と相まって、糖尿病患者の2人に1人はがんになり、3人に1人ががんで死亡する時代となっている。日本人の2型糖尿病患者におけるがん罹患のハザード比は1.20前後であり、大腸がん、肝臓がん、膵臓がんのリスクが増加することが、疫学調査によって確認されている。糖尿病によってがんの罹患リスクが上昇するメカニズムとしては、インスリン抵抗性、高インスリン血症の影響が大きいと考えられている。インスリンはインスリン受容体のみならず、インスリン様成長因子(IGF-1)の受容体とも結合することで細胞増殖を促し、がんの発生、増殖にも関連する。

かかりつけ医と薬局が連携して薬剤の一元管理を

 厚生労働省は第4回健康情報拠点薬局(仮称)のあり方に関する検討会(座長:昭和薬科大学 学長 西島 正弘氏)を8月7日に開催した。冒頭に厚労省より、これまでの議論を踏まえ、「健康づくり支援薬局(仮称)=かかりつけ薬局の機能+積極的な健康サポート機能を有する薬局」という案が示された。具体的には、「かかりつけ薬剤師」が日頃から患者と継続的に関わって信頼関係を構築し、薬について相談できることが重要であり、その役割を発揮するために適切な業務管理や連携、薬局の構造設備が必要であることが説明された。そのうえで、かかりつけ薬局の主な機能として以下の3つが提案され、「かかりつけ薬局・薬剤師」の必要性と機能について議論が交わされた。

抗認知症薬の脳萎縮予防効果を確認:藤田保健衛生大

 これまで抗認知症薬が軽度認知障害(MCI)やアルツハイマー病患者の脳萎縮を予防するという決定的なエビデンスはなかったが、藤田保健衛生大学の岸 太郎氏らによる無作為化プラセボ対照試験のメタ解析の結果、抗認知症薬はプラセボに比べ優れた脳萎縮予防効果を発揮することが示唆された。International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2015年7月19日号の掲載報告。

アロマターゼ阻害薬術後療法での乳がん死抑制効果~TAMとの比較/Lancet

 閉経後早期乳がんの術後ホルモン療法において、アロマターゼ阻害薬(アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール)はタモキシフェン(TAM)に比べ、再発や乳がん死の抑制効果が高いことが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で明らかとなった。閉経後早期乳がんの治療では、アロマターゼ阻害薬の5年投与またはTAM 2~3年投与後のアロマターゼ阻害薬2~3年投与は、TAM 5年投与よりも再発率が低いことが示されているが、乳がん死への影響などはいまだに不明だという。Lancet誌2015年7月23日掲載の報告。

抗精神病薬の適応外処方、年代別の傾向を調査

 成人、小児および高齢者における抗精神病薬の適応外処方について、フランス・リール第1大学のLouise Carton氏らはシステマティックレビューにて調査を行った。その結果、近年、適応外処方は広く行われており、その処方内容は患者の年齢層により異なること、使用理由としては治療に行き詰まった場合や承認薬がほとんどない特異的疾患におけるケースが多いことを明らかにした。一方で、その他の適応外処方は軽度な症状に対する処方を一時的に反映しているだけで、著者らは「安全性に対する懸念が生じる可能性がある」と指摘している。Current Pharmaceutical Design誌2015年7月号の掲載報告。

新規経口抗凝固薬の眼内出血リスク、従来薬との比較

 新しい経口抗凝固薬(NOAC)は、ほとんどの血栓形成予防において標準療法に対し非劣性であることが認められているが、安全性プロファイルには差があり、とくに眼内出血のリスクについてはほとんどわかっていない。ポルトガル・分子医学研究所のDaniel Caldeira氏らは、NOACに関連した重大な眼内出血のリスクを評価する無作為化比較試験のメタ解析を行った。

早期乳がんの術後ビスホスホネート、ベネフィットは閉経女性のみ?/Lancet

 早期乳がんに対するビスホスホネート製剤による術後補助療法は、骨再発を抑制し、生存期間の改善をもたらすが、明確なベネフィットは治療開始時に閉経に至っている女性に限られることが、Early Breast Cancer Trialists’ Collaborative Group(EBCTCG)の検討で示された。術後ビスホスホネート療法は、早期乳がん女性の無骨転移生存、無病生存、全生存を改善するとの報告がある一方で、全体では有意な効果はないものの、閉経後または高齢女性でベネフィットを認めたとの報告がある。これは、ビスホスホネート製剤は性ホルモンが低下した女性(閉経または卵巣抑制療法)にのみベネフィットをもたらすとの仮説を導く。Lancet誌オンライン版2015年7月23日号掲載の報告より。