日本語でわかる最新の海外医学論文|page:773

うつ病の精神療法、遠隔医療でも対面療法と同程度

 米国・Health Equity and Rural Outreach Innovation CenterのLeonard Egede氏らは、無作為化非盲検非劣性比較試験にて、高齢うつ病患者に対する遠隔医療による精神療法は対面治療に比べ劣っていないことを明らかにした。多くの大うつ病の高齢者(とくに退役軍人)は、エビデンスに基づく精神療法を利用しようとしない。一方で、移動の制限があったり、地理的に孤立していたりする高齢者に対して、遠隔医療は最適な治療を提供する機会を増やす可能性が示唆されていた。検討の結果を踏まえて著者は、「遠隔医療は、移動せずに家庭にいながらエビデンスに基づく治療を受けることができ、対面治療が難しい高齢者の治療障壁を取り除くのに有用と思われる」とまとめている。Lancet Psychiatry誌2015年8月号(オンライン版2015年7月16日号)の掲載報告。

DPP-4阻害薬がよく効く患者の特徴

 2型糖尿病患者において、DPP-4阻害薬による治療12ヵ月後に高い有効性を示すのは、肥満でない患者、冠動脈疾患を持っていない患者であることが、徳島大学の八木 秀介氏らの研究により明らかになった。また、DPP-4阻害薬の長期の有効性は、治療3ヵ月後のHbA1cの低下によって予測することができるという。Diabetes and metabolism journal誌2015年8月号(オンライン版2015年7月21日号)の報告。

世界の疾病負担は改善しているか:GBD 2013の最新知見/Lancet

 2012年、「世界の疾病負担(Global Burden of Disease:GBD)」の最初の調査(1993年)以降、初めての全面改訂の結果が公表された。この取り組みはGBD 2010研究と呼ばれ、世界187ヵ国の死亡および疾病の原因の情報に基づき、1990年と2010年の国別の障害調整生命年(disability-adjusted life-years:DALY)および健康調整平均余命(health-adjusted life expectancy:HALE)を報告している。その後、GBDは必要に応じて毎年更新することとなり、GBD 2013研究については、すでに国別の損失生存年数(years of life lost; YLL)や障害生存年数(years lived with disability; YLD)などのデータが公表されており、今回は最新の解析結果が報告された。Lancet誌オンライン版2015年8月27日号掲載の報告。

高齢者の認知機能に運動は影響しない?/JAMA

 ほとんど体を動かさない高齢者(sedentary older adults)を対象に、24ヵ月にわたる適度な運動プログラム介入 vs.健康教育プログラム介入を比較した結果、総合/特定領域認知機能の改善について有意な差はみられなかったことが示された。Kaycee M. Sink氏らが1,635例を対象に行った無作為化試験LIFEの結果、報告した。JAMA誌2015年8月25日号掲載の報告より。

心肺停止に遠慮は無用(解説:香坂 俊 氏)-410

以前「心臓マッサージは深度5cmで毎分100回:その自動化への課題」で書かせていただいたが、院外心肺停止症例の蘇生率はまだ低い域に留まっている(生存退院率2~4%程度)。その蘇生率向上のため、(1)プロトコルの簡便化や(2)AEDの設置などが行われているが、何よりも大切なのは「適切な」心肺蘇生(CPR)を「速やか」に開始することである。

バルサルバ法の上室頻拍への効果、体位修正で改善/Lancet

 上室頻拍の緊急治療法として推奨されるバルサルバ法について、施行時体位の修正により効果が改善することが示された。標準法では息こらえ時の体位は半臥位だが、修正法は息こらえ時に仰向け下肢挙上の姿勢に体位を変換するというもの。英国・王立デヴォンエクセター病院NHS財団トラストのAndrew Appelboam氏らが無作為化試験を行い報告した。バルサルバ法は、上室頻拍時の国際的に推奨される緊急治療法だが、臨床における効果は乏しく(5~20%)、アデノシンなど他の治療を必要とし、患者が不快感を感じることも多いとされる。Lancet誌オンライン版2015年8月24日号掲載の報告より。

双極性障害患者の約半数が不安障害を併存

 双極性障害患者において不安障害は、アウトカムの重大要素としての認識がますます強くなっている。しかし、報告されている有病率はばらつきが大きく、信頼性の高い推定値は得られていない。カナダ・ダルハウジー大学のBarbara Pavlova氏らは、双極性障害患者における不安障害の生涯有病率を、システマティックレビューとメタ解析により調べた。その結果、双極性障害患者の不安障害のリスクは非患者と比べて約3倍有意に高く、2人に1人が一生涯のうちに不安障害を有することが示されたという。結果を踏まえて著者らは、「双極性障害患者では不安障害と気分障害とを並行して評価すべきである」と提言している。Lancet Psychiatry誌2015年8月号の掲載報告。

緑内障による失明、その移行率や予測因子は?

 緑内障は失明の主たる原因である。イタリア・ミラノ大学のLuca Rossetti氏らは、欧州の大学病院7施設で治療した緑内障患者を対象に、失明への移行率や危険因子について後ろ向きに調査した。その結果、約20%の患者が失明に至っていた。緑内障による失明の特徴としては、診断あるいは専門医への紹介が遅いことと、多くの症例が正常眼圧で疾患が進行し、目標眼圧は達成されていたことが挙げられたという。

習慣飲酒が血糖状態を改善-日本の中年女性

 日本の中年女性において、アルコール摂取量と血糖状態は肥満症とは無関係に逆相関を示すことが、兵庫医科大学の下村 智子氏らによる研究で明らかになった。日本の中年女性は、飲酒することで心血管疾患の既知のリスク低下につながる可能性がある。Canadian journal of diabetes care誌オンライン版2015年8月12日号の報告。

肺高血圧症への併用療法、初期治療にも有効/NEJM

 肺動脈肺高血圧症(PAH)に対する初期治療として、アンブリセンタン(商品名:ヴォリブリス)+タダラフィル(同:アドシルカ)の併用療法は、それぞれの単独療法と比較して、臨床的に失敗のイベントリスクが有意に低いことが示された。イタリア・ボローニャ大学のN. Galie氏らAMBITION研究グループが報告した。PAHに対する併用療法の有効性については、アドオン療法としての評価はされていたが、初期治療の長期転帰については検討されていなかった。NEJM誌2015年8月27日号掲載の報告より。

働き過ぎは、脳卒中のリスク!(解説:桑島 巌 氏)-408

長時間労働と心血管疾患発生との関連を調べたメタ解析研究は数多い。しかし、メタ解析にはネガティブな結果は出版されないために、結果にバイアスがかかるという大きな短所がある。また、疾病の存在そのものが労働時間に影響する逆因果関係や、そして追跡研究では避けられない交絡因子を除くことも難しいなどの欠点も有している。とくに、職場でのポストは交絡因子として結果に影響する可能性は少なくない。

音楽療法が不眠症に有用

 不眠症は、現代社会において一般的な睡眠障害であり、生活の質の低下を引き起こし、身体的および精神的健康を損なう。音楽鑑賞が睡眠を助ける手段として広く用いられているが、それが成人の不眠症を実際に改善しうるか否かは依然不明確であった。デンマーク・オーフス大学のKira V Jespersen氏らは、成人の不眠症に対する音楽療法の有効性を明らかにするため、メタ解析を行った。その結果、音楽療法は通常の治療法に比べ、睡眠の質の改善に有効であることを示唆するエビデンスが得られたことを報告した。今回の結果を踏まえて著者らは、「音楽療法は安全で、その導入は簡便である。さらなる研究により、音楽鑑賞等の睡眠の側面に対する効果や、不眠症に起因する日中の症状に対する効果を確立することが求められる」とまとめている。Cochrane Database Systematic Reviews誌オンライン版2015年8月13日号の掲載報告。

新生児ビタミンA補給によるアトピーのリスクは女児のみ?

 現在、新生児へのビタミンA補給は、欠乏症のリスクのある国では政策となりつつあるが、先行研究においてアトピーの増加と関連がある可能性が示唆されている。そこで、デンマーク・Statens Serum InstitutのSofie Aage氏らは、ギニアビサウで実施した無作為化比較試験後の長期追跡調査を行った。その結果、女児においてのみ新生児ビタミンA補給がアトピーならびに喘鳴のリスク増加と関連が認められたことを報告した。

ベムラフェニブ、悪性黒色腫以外のBRAF V600変異陽性がんにも有効/NEJM

 ベムラフェニブ(商品名:ゼルボラフ)はBRAF V600キナーゼの選択的阻害薬で、BRAF V600変異陽性の転移性悪性黒色腫の標準治療である。米国・スローン・ケタリング記念がんセンターのDavid M. Hyman氏らは、今回、本薬はBRAF V600変異陽性の他のがん腫にも有効であることを確認しことを報告した。近年、BRAF V600変異は悪性黒色腫以外のさまざまながん腫で発現していることがわかっているが、半数以上は変異陽性率が5%未満であるため疾患特異的な試験を行うのは困難だという。本研究では、「basket試験」と呼ばれる新たな試験デザインが用いられている。このアプローチでは、同じバイオマーカーの発現がみられる組織型の異なる多彩ながん腫において、抗腫瘍活性のシグナル伝達の検出と薬剤感受性の評価が同時に可能で、生物統計学的デザインの柔軟性が高いため希少がんでの抗腫瘍活性の同定に有用であり、新たな治療法を迅速に評価できるとされる。NEJM誌2015年8月20日号掲載の報告より。

難治性多発性骨髄腫、新規CD38標的薬が有望/NEJM

  有効な治療選択肢がほとんどなく治療がきわめて困難な難治性の多発性骨髄腫の患者に対して、daratumumabは単剤で良好な安全性プロファイルを示し、有望な効果を発揮することが、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHenk M Lokhorst氏らの検討で明らかとなった。プロテアソーム阻害薬や免疫調節薬は多発性骨髄腫の転帰を改善するが、多くの患者が再発し、再発後の予後はきわめて不良である。一方、多発性骨髄腫細胞で過剰発現がみられるCD38は、本疾患の治療標的となる可能性が示唆されている。daratumumabは、CD38を標的とするヒトIgG1κモノクローナル抗体で、前臨床試験では多彩な機序を介してCD38発現腫瘍細胞の標的細胞死を誘導することが確認されていた。NEJM誌オンライン版2015年8月26日号掲載の報告。