日本語でわかる最新の海外医学論文|page:683

統合失調症とグルテンとの関係

 統合失調症は、さまざまな臨床症状を有する慢性疾患である。そして、疾患の発症タイプ、症状、経過に関しては、異質特性を示す。生涯有病率は1%と低いものの、重度の障害を引き起こす可能性がある。したがって、効率的な治療法を開発することは非常に重要である。いくつかの研究では、食事からグルテンを除去することで、統合失調症の症状が有意に改善するとの仮説が立てられている。また、疫学研究において、統合失調症患者のセリアック病(グルテンに対する自己免疫疾患)の有病率は、一般集団よりも約2倍であると報告されている。トルコ・バフチェシェヒル大学のCan Ergun氏らは、グルテンとセリアック病が統合失調症の発症に及ぼす影響を評価した。また、グルテンフリーの食事療法の効果、グルテンに対する抗体反応、脳腸軸相関、共通の遺伝的存在についても研究している。Nutritional neuroscience誌オンライン版2017年4月9日号の報告。

クリゾチニブ、ROS1陽性非小細胞肺がんに適応取得

 ファイザー株式会社(本社:東京都渋谷区、社長:梅田一郎)は、2017年5月18日(木)、メルクセローノ株式会社(本社:東京都目黒区、代表取締役社長:レオ・リー)とコ・プロモーションを行っている抗悪性腫瘍剤/チロシンキナーゼ阻害剤クリゾチニブ(商品名:ザーコリ)が、新たな適応症として「ROS1融合遺伝子陽性の切除不能な進行・再発の非小細胞肺癌の追加承認を取得したと発表。

evacetrapib、早期中止の第III相試験の結果/NEJM

 ハイリスク血管疾患の患者に対するコレステリルエステル転送蛋白(CETP)阻害薬evacetrapibの投与は、プラセボ投与と比較して、LDLコレステロール値を低下しHDLコレステロール値を上昇させるという従来確認されている脂質バイオマーカーの変化は見られたが、心血管イベント発生の低下は認められなかった。米国・クリーブランドクリニックのA. Michael Lincoff氏らによる、約1万2,000例を対象とした第III相・多施設共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験の結果、示された。evacetrapibについては第II相試験で、ベースラインからLDLコレステロール値を35%低下、HDLコレステロール値を130%上昇させた効果が確認されていた。NEJM誌2017年5月18日号掲載の報告。

米国医師の半数が企業から金銭受領、年総額2,600億円/JAMA

 2015年に企業から金銭を受け取った米国医師は全体の48%を占め、その総額は24億ドル(1ドル110円とすると2,640億円)であったことが明らかにされた。金銭受け取り者の割合は外科医がプライマリケア医と比べて約1.7倍高く、また、男性のほうが女性よりも高いことなども判明した。米国・カリフォルニア大学サンディエゴ校のKathryn R. Tringale氏らが、米国公的医療保険の運営主体であるメディケア・メディケイド・サービスセンター(CMS)が作成する、企業から医師・医療機関への金銭供与に関する公開報告書「Open Payments」2015年版を基に調査・分析したもので、JAMA誌2017年5月2日号で発表した。

高血圧予防食、痛風リスクを低減/BMJ

 DASH(Dietary Approaches to Stop Hypertension)食は男性の痛風リスクを低減するのに対し、西洋型の食事(Western diet)はこれを増加させることが、米国・マサチューセッツ総合病院のSharan K. Rai氏らの検討で示された。研究の成果は、BMJ誌2017年5月9日号に掲載された。DASH食は、果物、野菜、ナッツ・豆類、低脂肪乳製品、全粒穀類を多く摂取し、塩分、砂糖などで甘くした飲料、赤身や加工肉の摂取を抑えた食事法で、血圧を低下させ、心血管疾患の予防にも推奨されている。西洋型の食事(赤身や加工肉、フライドポテト、精製穀類、甘い菓子、デザート)は、血清尿酸値を上昇させ、痛風リスクを増加させる多くの食品から成るのに対し、DASH食は、最近の無作為化試験で高尿酸血症患者の血清尿酸値を低下させると報告されているが、痛風のリスクに関するデータはこれまでなかったという。

急性期統合失調症、うつ病や不安症との鑑別に有用なマーカー

 うつ症状や不安症状は、統合失調症の早期または急性期においてみられる症状であり、適切な診断および治療を複雑化する。そのため、統合失調症とうつ病および不安症を分類する指標が早急に求められている。潜在的なバイオマーカーとして、統合失調症の3つのアップレギュレーションされたlncRNA、うつ病の6つのダウンレギュレーションされたlncRNA、全般不安症の3つのアップレギュレーションされたlncRNAが、lncRNAマイクロアレイプロファイリングおよびRT-PCRを用いて同定されている。中国・南京医科大学のXuelian Cui氏らは、潜在的なバイオマーカーによる、早期または急性期統合失調症の診断が可能かを検討した。American journal of medical genetics. Part B, Neuropsychiatric genetics誌オンライン版2017年3月28日号の報告。

緑内障患者の眼圧測定、GAT値の補正は誤差を拡大か

 緑内障の診断と治療においては、眼圧の正確な測定が重要となる。ゴールドマン圧平眼圧計(GAT)による測定では、補正が行われることがあるが、補正式の客観的な臨床評価はなされていない。スイス・チューリッヒ大学のJosephine Wachtl氏らは、前向きケースシリーズ研究を行い、角膜が薄く緑内障が進行している眼ではPascal dynamic contour tonometry(DCT)による測定値とGAT値の差が大きいことを明らかにした。補正式を用いてGAT値を補正することは、予測不可能な測定誤差をさらに拡大する危険性があることから、著者らは、「とくに角膜厚が薄い眼では、GAT値を当てにしないほうがいい。いかなる補正もやめるべきである」と警告を発している。JAMA Ophthalmology誌オンライン版2017年5月11日号掲載の報告。

MEK1/2阻害薬、KRAS変異陽性NSCLCの予後改善示せず/JAMA

 既治療の進行KRAS変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)の治療において、ドセタキセル(DOC)にselumetinibを追加しても、DOC単剤に比べ無増悪生存(PFS)は改善されないことが、米国・ダナ・ファーバーがん研究所のPasi A.Janne氏らが実施したSELECT-1試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2017年5月9日号に掲載された。KRAS変異は、肺腺がん患者の約25%に発現し、NSCLCで最も高頻度にみられる遺伝子変異であるが、これを標的とする分子標的薬で承認を得たものはない。KRAS変異は、MAPKキナーゼ(MEK)に関与するMAPK経路を含むシグナル伝達経路の下流の活性化によって腫瘍の増殖を促進する。selumetinibは、MEK1とMEK2を選択的に阻害する経口薬で、アロリスティックにKRAS変異を抑制する。

CDC「手術部位感染予防のためのガイドライン」18年ぶりの改訂

 米国疾病管理予防センター(CDC)は、「手術部位感染予防のためのガイドライン」を1999年以来18年ぶりに改訂し、エビデンスに基づく勧告を発表した。手術部位感染(SSI)治療のための人的および財政的負担の増加を背景に、専門家の意見を基に作成された1999年版から、エビデンスベースの新たなガイドラインに改訂された。著者らは「これらの勧告に基づく手術戦略を用いることで、SSIのおよそ半分が予防可能と推定される」と記している。

うつ病患者、身体症状から見つけて

 2017年5月17日、東京において塩野義製薬株式会社主催のプレスセミナーが開催され、「うつ傾向のある人の意識と行動に関するアンケート調査※1」の結果が、藤田保健衛生大学 精神神経医学 教授の内藤 宏氏より発表された。その後、患者の身近な相談医として日常診療にあたっている宮崎医院 院長の宮崎 仁氏を交え、うつ傾向のある患者とかかりつけ医のコミュニケーションについて語られた。

ブルガダ症候群におけるSCN5A遺伝子変異は心イベントの予測因子となるか

 ブルガダ症候群における遺伝子型形式と表現型の関連に関しては、依然として議論が続いている。国立循環器病研究センターの山形 研一郎氏ら研究グループは、SCN5A変異の有無により心イベントの発生率に差異がみられるかを検証するため、ブルガダ症候群発端者に限定したレジストリを構築し、長期追跡調査した。Circulation誌オンライン版3月24日号の掲載。

肥満が双極性障害の病態生理に影響

 双極性障害(BD)患者の60%以上で肥満が報告されている。肥満は、疾患の重症度を悪化させ、認知や機能アウトカムに影響を及ぼす。白質(white matter:WM)の異常は、BDの神経イメージング研究において、最も一貫して報告された知見の1つである。イタリア・Scientific Institute Ospedale San RaffaeleのElena Mazza氏らは、BD患者においてBMIとWM統合性が相関すると仮定し、検討を行った。Bipolar disorders誌2017年3月号の報告。

限定的エビデンスを基に承認された薬の市販後調査の傾向/BMJ

 米国食品医薬品局(FDA)が限定的エビデンスに基づき承認した新薬の、市販後のエビデンスの質と量を調べた結果、当初のものとはエビデンスが大きく変化しており、FDAが最初に承認した適応について、臨床的アウトカムを用いて有効性を確認した市販後の対照試験報告はわずかであることが、米国・ニューヨーク州立大学のAlison M. Pease氏らによるシステマティックレビューの結果、明らかにされた。FDAはしばしば、主要エンドポイントが臨床的アウトカムではなく、疾患の代用マーカー(surrogate markers)を用いたpivotal試験(単一または複数)をエビデンスベースとした新薬についても承認を行っている。これらの新薬は、たとえ市販後臨床試験で有益性が期待できないと立証されても、その後も広く用いられている現実があるという。BMJ誌2017年5月3日号掲載の報告。

NSAIDで心筋梗塞リスクが増大?44万例の調査/BMJ

   NSAID(非ステロイド性抗炎症薬)は急性心筋梗塞のリスクを増大させ、COX-2選択的阻害薬セレコキシブのリスクは従来型NSAIDと同等で、rofecoxib(米国で心血管系の副作用のため2004年に販売中止、日本では未発売)に比べて低いことが、カナダ・モントリオール大学のMichele Bally氏らの調査で明らかとなった。最初の1ヵ月が最もリスクが高く、用量が多いほど高リスクであることもわかった。研究の成果は、BMJ誌2017年5月9日号に掲載された。従来型およびCOX-2選択型NSAIDは、いずれも急性心筋梗塞のリスクを増大させることを示唆するエビデンスがあるが、用量や治療期間の影響、各薬剤のリスクの違いはよく知られていないという。

中等度リスクの患者に対する外科的大動脈弁置換術と経カテーテル大動脈弁留置術の比較(SURTAVI研究)(解説:今井 靖 氏)-681

大動脈弁狭窄症治療のゴールドスタンダードは外科的大動脈弁置換術であるが、高齢や心臓以外の合併疾患等の理由により開心術に耐えられないと判断された患者に対しては、対症療法しか手段がなかった。そのようななかで経カテーテル大動脈弁留置術(TAVR/TAVI)が登場し、外科手術がハイリスクと考えられる重症大動脈弁狭窄症に対して実施されるようになった。