肥満2型糖尿病に対するメタボリックサージェリーの展望

提供元:ケアネット

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公開日:2018/04/27

 

 わが国では、2014年4月に腹腔鏡下スリーブ状胃切除術手術が保険適応になってから、すでに4年が経っている。このほかに実施されている3つの術式(腹腔鏡下スリーブバイパス術、腹腔鏡下ルーワイ胃バイパス術、腹腔鏡下調節性胃バンディング術)はそれぞれ自費診療であったが、2型糖尿病を合併する重症肥満患者に対する腹腔鏡下スリーブバイパス術が、先進医療として2018年1月に認可された。この治療法の開発者であり普及を目指す、笠間 和典氏(四谷メディカルキューブ減量・糖尿病外科センター センター長)が2018年4月11日、メドトロニック株式会社本社にてメタボリックサージェリーについて講演した。

日本の治療件数は認知度に相関
 同氏によると2018年3月に開催されたアジア太平洋肥満代謝外科学会(APMBSS)でのNational reportの結果では、全手術件数トップはサウジアラビアの1万7,000件、それに対して日本は471件。隣国の台湾でも2,834件と日本と比較すると大きな乖離があり、「この原因は言うまでもなく認知度が低いためである」という。

手術適応患者の要件
 日本肥満学会によると、日本人の肥満症の定義であるBMI≧25は、WHOが定義するBMI≧30とは異なる。肥満患者はさまざまな合併症を伴っており、その中の1つが2型糖尿病である。患者は一生、糖尿病と共存するだけではなくさまざまな合併症も併発し、治療上多くの薬剤が必要となることから医療経済にも負担を強いることとなる。また、美容目的で施術される脂肪吸引と混同されがちなため、日本肥満症治療学会が手術適応患者を以下のように定義している。

<肥満手術の要件>
・年齢18歳以上、65歳以下
・ 6ヵ月以上の内科的治療が行われているにもかかわらず、有意な体重減少および肥満に伴う合併症の改善が認められず、次のいずれかの条件を満たすもの
 1)減量が目的の場合はBMI 35以上であること
 2)合併疾患(糖尿病、高血圧、脂質異常症、肝機能障害、睡眠時無呼吸症候群など)治療が主目的の場合、糖尿病または糖尿病以外の2つ以上の合併疾患を有する場合は BMI 32以上であること

腹腔鏡下スリーブバイパス術が体内にもたらす影響とは
 海外で多く実施されている胃バイパス術は、術後体内に空置きされた胃が残ってしまう。日本人は胃がんのリスクが高いため、術後胃がん検査を行えないこの術式は不適である。また、現在日本で多くの実績を上げている腹腔鏡下スリーブ状胃切除術は術後の合併症が少ないものの、重症2型糖尿病の改善率が低い。そこで、これらの長所を生かしたのが腹腔鏡下スリーブバイパス術である。この術式は胃の幽門と十二指腸とを吻合するため、ダンピングが少ない、潰瘍が少ない、胃の観察が通常の胃内視鏡でできるなどのメリットがある。それに加えて、糖尿病などの内分泌疾患の改善が報告されているという。そこで、同氏は減量外科治療のうち、スリーブバイパス術を受け、1年間経過観察された2型糖尿病の日本人75例のHbA1c、BMI、そして薬物離脱率を検証。対象患者のうち48%が術前にインスリンを使用し、糖尿病罹患期間は7.2±6.2年であった。結果は以下のとおり。

・HbA1c<7.0%を達成したのは、術後1年後で93%だった。また、術後インスリンを離脱できたのは97%だった。
・BMIは術前38.5から術後1年後27.2、5年後は28.4(p<0.001)と減少を維持できた。

糖尿病外科誕生に期待
 同氏は、「2型糖尿病患者が糖尿病のない人生を送るために、外科と内科が手を組んでメタボリックサージェリーを普及させる時が来た」と意気込みを語った。また、米国糖尿病学会(ADA)ガイドライン2017年版では“肥満を伴う糖尿病の治療”としてBMIに応じて外科治療を推奨する治療アルゴリズムが採用され、「糖尿病治療としての位置付けが確立した」と述べた。同ガイドラインでは、“糖尿病外科治療はBMI 27.5から32.4の内服や注射薬でも良好な血糖コントロールの得られないアジア人に対して、オプションとして考慮されるべきである”とされている。

 最後に同氏は「安全が第一であり、これらが急速に普及した場合の問題に備え、日本内視鏡外科学会ならびに日本肥満症治療学会では、合同で腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術導入要件を発表して注意喚起を行っていく」と締めくくった。

■参考
日本肥満症治療学会編.日本における高度肥満症に対する安全で卓越した外科治療のためのガイドライン(2013 年版)
日本内視鏡外科学会および日本肥満症治療学会における腹腔鏡下肥満・糖尿病外科手術の導入要件

(ケアネット 土井 舞子)