日本語でわかる最新の海外医学論文|page:601

腫瘍溶解ウイルス+ペムブロリズマブの固形がん医師主導治験開始/国がん

 国立研究開発法人国立がん研究センター(理事長:中釜 斉、東京都中央区)東病院(病院長:大津 敦、千葉県柏市)は2018年3月2日、進行性または転移性固形がん患者を対象とした、腫瘍溶解ウイルス製剤テロメライシン(OBP-301)と、抗PD-1抗体ペムブロリズマブの併用療法に関する医師主導治験(第I相試験)を開始したと発表。同試験では、併用した際の安全性及び有効性などの評価を行う。

複雑性尿路感染症、メロペネム/vaborbactam配合剤の有効性/JAMA

 複雑性尿路感染症の治療において、メロペネム/vaborbactam配合剤の効果は、ピペラシリン/タゾバクタム配合剤に対し非劣性であることが、米国・ミシガン大学のKeith S. Kaye氏らが実施したTANGO I試験で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年2月27日号に掲載された。カルバペネム系抗菌薬メロペネムとβ-ラクタマーゼ阻害薬vaborbactamの配合剤は、薬剤抵抗性グラム陰性菌による重症感染症に有効である可能性が示唆されている。

前向きRCTの新規解析法、有効性実証までを短縮/BMJ

 前向きに計画された無作為化試験(RCT)の“living”ネットワークメタ解析は、従来のペアワイズメタ解析と比べて、治療効果の差に関する帰無仮説を実証(強いエビデンスを提供)できる可能性が20%高く、それまでの期間は4年早いことが示された。スイス・ベルン大学のAdriani Nikolakopoulou氏らによる実証研究の結果で、BMJ誌2018年2月28日号で発表された。ネットワークメタ解析は、多数の治療効果のエビデンスについて直接的・間接的に比較可能な従来のメタ解析の機能を拡充したものである。また、標準的なペアワイズメタ解析よりも、治療効果の比較における帰無仮説に関して、速やかかつ強固なエビデンスの提供が可能なことが示されていた。さらに最近になって、逐次解析法に基づく、前向きに計画されたRCTのlivingネットワークメタ解析が開発され、エビデンスを連続的にアップデートできるようになっていた。

ネットワークメタアナリシスの多用は薬剤間競争をあおっていないだろうか?(解説:折笠秀樹氏)-824

有用性比較研究(CERと略す)に火がついたのは、オバマ大統領がオバマケアで提唱したことにあった。今から5年ほど前の話である。特定の薬剤が有用かどうかではなく、同様の薬剤同士を比較する必要性を説いた。予想されたように、これにより薬剤同士の競争を招いた。現在では、抗凝固薬を筆頭に、CER論文が数多く出版されている。そこではほとんどでネットワークメタアナリシスが使われている。蛇足だが、CERで次によく使われるのは、データベースを用いたプロペンシティマッチング解析である。薬剤のマーケティングを通じた加熱競争をみていると、ちょっと技術の悪用に近い感を抱く。

きわめて高いHDL-Cは心血管死リスク? EPOCH-JAPAN

 心血管疾患(CVD)に対するvery highやextremely highレベルの HDLコレステロール(HDL-C)の影響は十分にわかっていない。最近のいくつかの研究では、extremely highレベルのHDL-CのCVDイベントへの悪影響が報告されているが、原因別CVD死亡率との間に有意な関連はみられておらず、またアジア人集団では研究されていない。今回、日本の主要な循環器疫学コホート研究の統合データベース共同研究であるEPOCH-JAPANにおける大規模なプール解析により、extremely highレベルの HDL-Cがアテローム性CVDによる死亡率に悪影響を及ぼすことを示した。Journal of clinical lipidology誌オンライン版2018年2月8日号に掲載。

下肢静脈瘤で深部静脈血栓症のリスク約5倍/JAMA

 下肢静脈瘤と診断された成人患者では、深部静脈血栓症(DVT)のリスクが有意に高いことが明らかにされた。肺塞栓症(PE)と末梢動脈疾患(PAD)については、潜在的交絡因子のためはっきりしなかったという。台湾・桃園長庚紀念医院のShyue-Luen Chang氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。下肢静脈瘤は一般的にみられるが、重大な健康リスクと関連することはまれである。一方、DVT、PE、PADも血管疾患であるが、全身に重大な影響を及ぼす。これまで下肢静脈瘤とDVT、PE、PADとの関連性はほとんど知られていなかった。著者は、「下肢静脈瘤とDVTとの関連が、因果関係によるのか、あるいは共通のリスク因子があるのかについて、今後さらなる研究が必要である」とまとめている。JAMA誌2018年2月27日号掲載の報告。

院外心肺停止の予後、バッグマスクvs.気管内挿管/JAMA

 院外心肺停止(OHCA)患者において、バッグマスク換気(BMV)は気管内挿管(ETI)と比較し、28日目における神経学的予後良好な生存に関して非劣性または劣性を確認することはできなかった。フランス・パリ第5大学のPatricia Jabre氏らが、フランスとベルギーで行った多施設共同無作為化比較試験の結果を報告した。OHCA患者の心肺蘇生法(CPR)において、二次救命処置の気道管理は、BMVがETIより簡便であり、これまでの研究ではBMVの生存に関する優越性が報告されていた。JAMA誌2018年2月27日号掲載の報告。

1994~2014年の30ヵ国におけるうつ病有病率調査

 うつ病の有病率は、過去20年間の精神医学的治療の変化やオンラインメンタルヘルス情報の入手による影響を受けている可能性がある。オーストラリア・モナッシュ大学のGrace Y. Lim氏らは、1994~2014年にかけて、異なる国と地域におけるうつ病の有病率を評価し、地理的、方法論的、社会経済的な要因によって層別化された有病率の変動を調査した。Scientific reports誌2018年2月12日号の報告。

多枝・左主幹部冠動脈疾患の死亡率、CABG vs.PCI/Lancet

 多枝冠動脈疾患患者では、冠動脈バイパス術(CABG)が経皮的冠動脈インターベンション(PCI)よりも、死亡に関してベネフィットがあることが示された。とくに、糖尿病の併存や冠動脈の病変が複雑な患者ほど、その傾向は強かった。一方、左主幹部冠動脈疾患患者では、CABGがPCIよりもベネフィットがあることは示されなかった。オランダ・エラスムス大学医療センターのStuart J. Head氏らが、11の無作為化比較試験、被験者総数約1万1,500例を対象に行ったプール解析の結果で、Lancet誌オンライン版2018年2月22日号で発表した。これまで多くの無作為化試験で、冠動脈疾患患者についてCABGとPCIの比較が行われているが、血行再建術の戦略間で死亡の差を評価した試験はなかったという。

敗血症性ショック、ステロイド2剤併用で死亡率低下/NEJM

 敗血症性ショック患者に対する検討で、ヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾン投与はプラセボ投与と比較して、90日全死因死亡率が低いことが示された。フランス・Raymond Poincare病院のDjillali Annane氏らが、1,241例を対象に行った多施設共同二重盲検無作為化試験の結果を、NEJM誌2018年3月1日号で発表した。敗血症性ショックは、感染に対する宿主反応の調節不全が特徴で、循環異常、細胞異常、代謝異常を呈する。研究グループは、ヒドロコルチゾン+フルドロコルチゾンによる治療、または活性型drotrecogin αによる治療は、宿主反応を調節可能であり、敗血症性ショック患者の臨床的アウトカムを改善する可能性があるとの仮説を立てて、検証試験を行った。

抗うつ薬は効果があるのか?(解説:岡村毅氏)-822

抗うつ薬に関するネットワークアナリシスである。臨床的には納得できる点が多い。「良薬口に苦し」とはよく言ったもので、いわゆる三環系抗うつ薬であるアミトリプチリンは効果が大きいが、抗コリン作用(口渇、眠気、便秘、不整脈等)が強く、高齢社会においてはますます使いにくい。SSRIの登場によりうつ病の薬物治療が新時代を迎えたころ、華々しく登場したfluoxetineやパロキセチンは、やはりスタディ数が圧倒的に多い。バランスが良いのはセルトラリンやエスシタロプラムであるが、従来いわれていた知見と合致する。

低用量スタチンでの糖尿病リスク~日本のコホート研究

低用量スタチンを服用している日本人の糖尿病新規発症リスクはこれまで検討されていない。今回、秋田大学医学部附属病院薬剤部の加藤 正太郎氏らは、低用量スタチン服用患者を、高力価スタチン群と低力価スタチン群に分けて糖尿病新規発症リスクを評価した。その結果、高力価スタチン群では低力価スタチン群と比べ有意に発症リスクが高かった。さらに、ステロイドや免疫抑制薬との併用で発症リスクが上昇するため、注意が必要と指摘している。Journal of Clinical Pharmacy and Therapeutics誌オンライン版2018年2月26日号に掲載。

統合失調症の維持治療に対するブレクスピプラゾールの長期安全性評価研究

 ブレクスピプラゾールは、統合失調症の急性期や再燃予防において有効性を発揮するセロトニン・ドパミンアクティビティモデュレーター(SDAM)である。米国・大塚ファーマシューティカルD&C Inc.のAndy Forbes氏らは、フェーズIIIの多施設共同研究において、ブレクスピプラゾールのフレキシブルドーズ1~4mg/日における長期安全性、忍容性、有効性の評価を行った。The international journal of neuropsychopharmacology誌オンライン版2018年2月3日号の報告。

冠動脈疾患疑い患者に有益な画像診断戦略は?/BMJ

 低リスクの急性冠症候群(ACS)患者において、初期画像診断戦略としての機能的検査(ストレスエコー検査、心血管MR[CMR])の実施は、非侵襲的な解剖学的検査(冠動脈CT造影法[CCTA])と比べて、付加的検査における侵襲的な冠動脈造影検査や再血行の処置を受けることが少ないと明らかにされた。将来的な心筋梗塞リスクについて、明らかな影響はみられなかったという。一方、安定冠動脈疾患(CAD)が疑われる患者については、付加的検査における侵襲的な冠動脈造影の必要性に関して、明確な違いが初期診断戦略の間でみられず、心筋梗塞のリスクの違いでルールアウトすることもできなかった。スイス・ベルン大学病院のGeorge CM Siontis氏らによるネットワークメタ解析の検討結果で、BMJ誌2018年2月21日号で発表された。研究グループは、「診断精度に関する情報は、診断検査の有用性を結論付けるのに重要であるが、その情報が患者の利益に結びついていない可能性がある」として、今回の検討を行った。

トリプルセラピーは重症COPD患者の中等度以上の増悪を減らすことができるのか?(解説:山本寛 氏)-821

慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)、とくに重症のCOPDに対する治療は長時間作用性ムスカリン受容体拮抗薬(long-acting muscarinic antagonist:LAMA)の吸入、長時間作用性β2刺激薬(long-acting β2 agonist:LABA)の吸入を軸に、吸入ステロイド(inhaled corticosteroid:ICS)が上乗せされることが多かった。確かに重症COPDには気管支喘息の合併、いわゆるACO(Asthma and COPD Overlap)が多く、また、喘息を合併していない場合でも、好酸球性気道炎症は重症COPDで多く認められ、ICSが本質的に有用な患者は存在する。しかし、十分な証拠もなくICSを追加してしまう場合も多いだろう。ICS/LABAが第1選択であると誤解されていることもあるようだ。一方、COPDに対してICSを上乗せすると肺炎の合併が多くなることは従来から指摘されていて、最新2017年のGOLD(Global Initiative for Chronic Obstructive Lung Disease)では、一旦追加したICSを中止することも選択肢の1つとして提示されている。

マイボーム腺機能不全や眼表面摩擦関連疾患でドライアイが重症化

 マイボーム腺機能不全(MGD)や眼表面摩擦関連疾患(FRD)は、ドライアイの重症度にどのような影響を及ぼしているのか。慶應義塾大学のChi Hoang Viet Vu氏らDry Eye Cross-Sectional Study in Japan Study Groupは、約450例を対象とした横断観察研究において、MGD、FRDまたはその両方が存在すると、ドライアイの状態やサブタイプに関係なく涙液層破壊時間(TBUT)が有意に短縮していることを明らかにした。Ophthalmology誌オンライン版2018年2月16日号掲載の報告。

早期の認知症発見とコンピュータ使用との関連性の検証

 高齢者が多様なコンピュータを使用する動作から、認知機能に問題がないか、または認知機能低下の初期段階にあるか判断することはできるか、そしてこれらの動作が認知機能低下と関連しているかについて、英国・マンチェスター大学のG. Stringer氏らが調査を行った。International journal of geriatric psychiatry誌オンライン版2018年2月9日号の報告。