週1回製剤が糖尿病患者の負担軽減

提供元:ケアネット

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公開日:2018/05/31

 

 近年、糖尿病治療にはさまざまな薬物療法が登場する中、患者の意向や負担を考慮し、個々のライフスタイルに合わせた治療方法の選択が望まれている。しかし、糖尿病患者の負担を評価する既存の質問票では、薬物治療に対しての負担を抽出して評価することは難しい。

 そこで今回、奈良県立医科大学は、日本イーライリリー株式会社の支援により、2型糖尿病患者における薬物治療の負担を測定するアンケート調査手法、「DTBQ(Diabetes Treatment Burden Questionnaire:糖尿病薬物治療負担度質問票)」を開発し、検証・調査を行った。

 本試験の解析結果より、DTBQの信頼性が示され、服用による患者負担は、注射薬より経口薬のほうが小さく、また投与頻度が少ないほど小さくなることが明らかになった。本結果は、論文としてDiabetes Therapy誌2018年3月29日号に掲載された。

 本研究は、外来で以下の6種類のうち1種類の治療を12週間以上受けている 2型糖尿病患者236例を対象に行われた。

1. 注射薬(GLP-1受容体作動薬:以下GLP-1)を週1回±経口血糖降下薬
2. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日1回±経口血糖降下薬
3. 注射薬(インスリンまたはGLP-1)を1日2~3回±経口血糖降下薬
4. 経口血糖降下薬のみを週1回
5. 経口血糖降下薬のみを1日1回
6. 経口血糖降下薬のみを1日2~3回

 DTBQは、(1)基本情報を聴取するパートと、(2)薬物療法に対する負担感を評価するパートで構成されている。(2)の質問は、18項目それぞれを1~7点で回答し、このスコアレベルをもとに治療負担を評価する。

 検証は、信頼性評価として、236例を対象に1回目のDTBQ記入を実施、ならびに再現性評価として、47例を対象に、1回目のDTBQ記入に続き2回目の記入を実施した。

 主な結果は以下のとおり。

・週1回の経口薬の患者負担が最も小さく、次いで1日1回の経口薬、週1回の注射薬の順となり、1日複数回の服用は患者負担が大きかった。
・HbA1c値が7.0%未満の患者と7.0%以上の患者を比較すると、後者のほうがより負担を感じていた。
・低血糖経験のない患者よりも、経験のある患者のスコアが有意に高く、低血糖経験のある患者のほうが治療に対して負担を感じていた。
・注射薬、経口血糖降下薬ともに、コンプライアンスのよい患者は治療に対する負担が軽度であった。
・本試験の解析の結果、Cronbach’s α係数が0.7775~0.885であったことから各質問に対する回答の一貫性が示され、信頼性が明らかになった。
・級内相関係数(ICC)が0.912であったことから、1回目の回答と2回目の回答の一致度が高いことが示され、再現性に優れていることが判明した。

 この結果について、石井 均氏(奈良県立医科大学 糖尿病学講座 教授)は、「今後この結果は患者さんをより理解すること、そのうえで患者さんに合った、より良い治療方針を決定していくことに役立つことを確信しています」とコメントしている。

■原著論文
1)Ishii H, et al. Diabetes Ther. 2018 Mar 29. [Epub ahead of print]

■参考
日本イーライリリー株式会社 プレスリリース

(ケアネット 堀間 莉穂)