ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2019/06/18

 

 初発多発性骨髄腫の治療において、自家造血幹細胞移植の前後に、ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTd)にダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)を併用した薬物療法(D-VTd)を行うと、VTd単独と比較して、厳格な完全奏効(sCR)の割合が有意に改善し、毒性は許容範囲内であることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施したCASSIOPEIA試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月3日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするIgG1κモノクローナル抗体。多発性骨髄腫の第III相試験において、ボルテゾミブ+デキサメタゾン、レナリドミド+デキサメタゾン、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾンに、それぞれダラツムマブを併用すると、病勢進行または死亡のリスクが、少なくとも50%低減し、微小残存病変陰性の割合が3倍になることが確認されている。

ダラツムマブを併用したD-VTdまたはVTdを受ける群に割り付け
 本研究は、欧州の111施設が参加した2部構成(寛解導入療法、維持療法)の非盲検無作為化第III相試験であり、2015年9月22日~2017年8月1日の期間に患者登録が行われた(Intergroupe Francophone du Myelomeと、Dutch-Belgian Cooperative Trial Group for Hematology Oncologyの助成による)。今回は、寛解導入療法の結果が報告された。

 対象は、年齢18~65歳、全身状態(ECOG PS)0~2であり、移植適応の初発多発性骨髄腫の患者であった。被験者は、自家造血幹細胞移植前の寛解導入療法として4サイクル、および移植後の地固め療法として2サイクルのダラツムマブを併用したD-VTdまたはVTdを受ける群に無作為に割り付けられた。

 第1部の主要評価項目は、移植後100日のsCRとした。

 第2部として、移植後100日時に部分奏効(PR)以上を達成した患者が、ダラツムマブを8週ごとに投与する群または経過観察群に無作為に割り付けられ、病勢進行または最長2年までの治療が行われた。

ダラツムマブ併用のD-VTd群がsCR+CR、微小残存病変陰性率、PFS期間も良好
 1,085例が登録され、ダラツムマブを併用したD-VTd群に543例(年齢中央値59.0歳[範囲22~65]、男性58.2%)、VTd群には542例(58.0歳[26~65]、58.9%)が割り付けられた。全体の診断から無作為化までの期間中央値は0.9ヵ月(0.2~22.9)、フォローアップ期間中央値は18.8ヵ月(0.0~32.2)だった。

 移植後100日時のsCRの発生率は、ダラツムマブ併用のD-VTd群が29%(157/543例)と、VTd群の20%(110/542例)に比べ有意に良好であった(オッズ比[OR]:1.60、95%信頼区間[CI]:1.21~2.12、p=0.0010)。

 完全奏効(CR)以上(sCR+CR)の達成率(39% vs.26%、p<0.0001)および微小残存病変陰性率(64% vs.44%、p<0.0001)も、ダラツムマブ併用のD-VTd群がVTd群に比べ有意に優れた。また、初回の無作為化からの無増悪生存(PFS)期間中央値は、両群とも未到達であったが、D-VTd群がVTd群に比べ有意に改善された(HR:0.47、95%CI:0.33~0.67、p<0.0001)。

 D-VTd群の14例、VTd群の32例が死亡した。2回目の無作為化の有無にかかわらず、初回の無作為化からのOS期間中央値には両群とも到達していなかったが、有意な差が認められた(HR:0.43、95%CI:0.23~0.80)。このデータは未成熟であり、長期のフォローアップを継続中である。

 最も頻度の高いGrade3/4の有害事象は、好中球減少(D-VTd群28% vs.VTd群15%)、リンパ球減少(17% vs.10%)、口内炎(13% vs.16%)であった。ダラツムマブ関連のinfusion reactionが190例(35%)に認められ、このうちGrade3は17例(3%)、Grade4は2例(<1%)だった。

 著者は、「CASSIOPEIAは、移植適応の初発多発性骨髄腫患者において、ダラツムマブ+標準治療の臨床的有益性を示した初めての試験である。これらのデータにより、ダラツムマブベースの併用療法は、多発性骨髄腫の疾患スペクトラム全体において治療の有益性を示したことになる」としている。

(医学ライター 菅野 守)