2型糖尿病肥満患者、胃バイパス術で代謝機能は改善するか/NEJM

提供元:ケアネット

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公開日:2020/09/01

 

 2型糖尿病を有する肥満患者において、胃バイパス術と食事療法の代謝に及ぼす有益性はほぼ同じで、この有益性は体重減少それ自体に関連している可能性があり、胃バイパス術には体重減少と独立した臨床的に重要で明確な効果はないことが、米国・セントルイス・ワシントン大学医科大学院のMihoko Yoshino氏らの検討で示された。2型糖尿病の治療では、薬物療法よりも肥満手術のほうが有効であると無作為化臨床試験で示されている。また、Roux-en-Y法による胃バイパス術は、2型糖尿病患者の代謝機能に対し体重減少とは独立の治療効果をもたらすと示唆されている。一方、これらの研究の結果には、手術を受ける患者間の体重減少の差による交絡の影響が認められるという。NEJM誌2020年8月20日号掲載の報告。

胃バイパス術の代謝機能の改善効果を評価するコホート研究

 研究グループは、糖尿病を有する肥満患者において、胃バイパス術は体重減少とは独立に、代謝機能の改善効果をもたらすかを検証する前向きコホート研究を実施した(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成による)。

 Roux-en-Y法による胃バイパス術(手術群)または食事療法のみ(食事療法群)に分け、両群間でマッチさせた体重減少(約18%)の前後で、グルコース恒常性の代謝調節因子の評価を行った。

 主要評価項目は、肝臓インスリン感受性の変化とし、低用量インスリン持続静注(3段階の高インスリン正常血糖クランプ法の1、2段階)で評価した。副次評価項目は、骨格筋インスリン感受性、β細胞機能、24時間血糖、インスリンプロファイルの変化であった。

体重減少による代謝機能への強力な治療効果が明らかに

 本試験は、2014年11月~2018年10月の期間に実施された。食事療法群は11例(平均年齢54±9歳、女性7例、糖尿病診断からの平均期間9.1±5.6年)、手術群も11例(49±12歳、8例、9.6±9.6年)が解析に含まれた。

 平均体重減少率は、食事療法群が17.8±1.2%(範囲16.1~20.4%)、手術群は18.7±2.5%(16.0~24.4%)だった。BMIは、食事療法群が42.9±6.9から35.2±5.6へ、手術群は43.2±3.8から35.1±2.9へ減少した。

 体重減少により、糖産生のベースラインからの抑制率が増加した。クランプ法の第1段階で、食事療法群では平均7.04μmol/kg除脂肪量[FFM]/分(95%信頼区間[CI]:4.74~9.33)増加し、手術群では平均7.02μmol/kg FFM/分(95%CI:3.21~10.84)増加した(群間差:0.25μmol/kg FFM/分、95%CI:-3.08~3.59)。また、第2段階では、それぞれ5.39μmol/kg FFM/分(95%CI:2.44~8.34)および5.37μmol/kg FFM/分(95%CI:2.41~8.33)増加した(群間差:0.02μmol/kg FFM/分、95%CI:-2.00~2.04)。両群間に有意な差は認められなかった。

 また、体重減少によって、インスリン刺激による平均糖取り込み率が増加した。食事療法群では、糖取り込み率が30.5±15.9μmol/kg FFM/分から61.6±13.0μmol/kg FFM/分へ増加し、手術群では29.4±12.6μmol/kg FFM/分から54.5±10.4μmol/kg FFM/分へ増加した(増分の群間差:-6.5μmol/kg FFM/分、95%CI:-15.7~2.7)。両群間に有意な差はみられなかった。

 さらに、体重減少により、β細胞機能(インスリン感受性と比較したインスリン分泌)が、食事療法群では1.83単位(95%CI:1.22~2.44)、手術群では1.11単位(95%CI:0.08~2.15)、それぞれ上昇した(群間差:-0.71、95%CI:-1.75~0.34)。両群間に有意差はなかった。また、体重減少により、両群で24時間血糖値およびインスリン値の曲線下面積が減少した。これらについても、両群間に有意な差はなかった。

 両群とも、重大な合併症は発生しなかった。

 著者は、「これらの結果は、代謝機能に及ぼす体重減少の強力な治療効果を強調するものであり、胃バイパス術による代謝への有益な効果は、体重減少のみの帰結である可能性が高い」としている。

(医学ライター 菅野 守)

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コメンテーター : 住谷 哲( すみたに さとる ) 氏

公益財団法人日本生命済生会日本生命病院 糖尿病・内分泌センター

J-CLEAR評議員