日本語でわかる最新の海外医学論文|page:496

がん悪液質のステージと診断基準「知っている」~医師の3割/日本癌治療学会

 がん悪液質は食欲不振・体重減少・筋肉減少・疲労などを主な症状とし、進行がん患者の50~80%に発症する重大な合併症であり、がん患者のQOL低下、全生存期間や治療効果にも影響する原因として問題視されている。しかしながら、がん悪液質は治療対象として十分に認識されていない可能性があり、医療従事者(医師・メディカルスタッフ)のがん悪液質に対する疾患理解度や、食欲不振・体重減少に対する問題意識の程度、がん患者自身が食欲不振や体重減少でどのくらい困っているのか、といった実態は明らかとなっていない。

治療抵抗性うつ病におけるMetS有病率~FACE-DR研究

 フランス・ソルボンヌ大学のOphelia Godin氏らは、フランス人の治療抵抗性うつ病(TRD)患者のコホートにおけるメタボリックシンドローム(MetS)有病率を推定し、社会人口統計学的、臨床的および治療に関連する因子との相関について検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2019年10月15日号の報告。  対象は、2012~18年に中等度~重度(MADRSスコア20以上)のうつ病エピソード(DSM-IV基準)を有し、ステージII以上の治療抵抗性が認められたTRD患者205例。社会人口統計学的および臨床的特徴、ライフスタイルの情報、治療および併存疾患に関する情報を収集し、血液サンプルも採取した。MetSは、国際糖尿病連合(IDF)基準に従って定義した。

メニューのカロリー表示、購入意欲への影響は?/BMJ

 米国南部における大規模ファストフードチェーン店では、カロリー表示メニューを導入後も、平均購入カロリー量はわずかに減少しただけで、その減少幅も1年後には小さくなっていたことが、米国・ハーバード公衆衛生大学院のJoshua Petimar氏らによる準実験的研究の結果、明らかにされた。米国では2018年5月からレスランチェーンでカロリー表示が義務づけられている。しかし、この政策が購入カロリー量へ及ぼす影響についてのエビデンスは混沌としており、大部分の先行研究は試験規模が小さいなど不十分であった。とくに、肥満率が高い非都市部や南部地域を対象とした適切な評価は行われていなかったという。BMJ誌2019年10月30日号掲載の報告。

低LDLや低収縮期血圧と関連するgenetic variantsは生涯にわたる冠動脈疾患の低リスクと関連(解説:石川讓治氏)-1133

高LDL血症および高血圧は冠動脈疾患の確立された危険因子である。本研究では、英国のバイオバンクに登録された43万8,952人の対象者のデータを用いて、低LDLコレステロール血症と関連するgenetic variantsが多い対象者と低収縮期血圧と関連するgenetic variantsが多い対象者を評価し、これらのgenetic variantsが、独立して、相加的に冠動脈疾患発症リスク低値と関連していたことを報告していた。これらのgenetic variantsの数が増えるにつれて連続的に冠動脈疾患発症リスクは低くなっていた。同様の関連は虚血性脳梗塞においても認められていた。

「酸化コレステロール」を含んだ食品は食べないのが一番/日本動脈硬化学会

 メタボリックシンドロームにしばしば合併する脂肪肝だが、実は動脈硬化リスクも伴う。自覚症状に乏しいことから、一般メディアでは“隠れ脂肪肝”などと呼ばれ、患者から質問されることも珍しくない。しかし、脂肪肝だからと言って、ただ“脂モノ”を控えるという対処は正しくないという。  先日、日本動脈硬化学会(理事長:山下 静也)が開催したセミナーにて、動脈硬化と関連の深い「脂肪肝/脂肪肝炎」と「酸化コレステロール」について、2人の専門医が解説した。

認知症の攻撃性および興奮に対する介入比較~メタ解析

 認知症患者の精神症状の治療には、薬理学的介入と非薬理学的介入の両方が用いられる。カナダ・St. Michael's HospitalのJennifer A. Watt氏らは、認知症の攻撃性および興奮に対する薬理学的介入および非薬理学的介入の有効性比較を行った。Annals of Internal Medicine誌オンライン版2019年10月15日号の報告。  対象研究は、認知症の攻撃性および興奮に対する治療介入を比較したランダム化比較試験。

経口の糞便移植で死亡例、その原因は?/NEJM

 糞便微生物移植(FMT)の臨床試験に参加した被験者で、死亡1例を含む4例のグラム陰性菌血症が発生していたことが明らかにされた。米国・ハーバード大学医学大学院のZachariah DeFilipp氏らによる報告で、そのうち術後にESBL産生大腸菌(Escherichia coli)血症を発症した2例(1例は死亡)は、別々の臨床試験に参加していた被験者であったが、ゲノムシークエンスで同一ドナーのFMTカプセルが使用されていたことが判明したという。著者は、「有害感染症イベントを招く微生物伝播を限定するためにもドナースクリーニングを強化するとともに、異なる患者集団でのFMTのベネフィットとリスクを明らかにするための警戒を怠らない重要性が示された」と述べている。FMTは、再発性/難知性クロストリジウム・ディフィシル感染症の新たな治療法で、その有効性・安全性は無作為化試験で支持されている。他の病態への研究が活発に行われており、ClinicalTrials.govを検索すると300超の評価試験がリストアップされるという。NEJM誌オンライン版2019年10月30日号掲載の報告。

積極的降圧治療は通常の降圧治療よりも深部白質病変の増加を抑制するが、総脳容積の減少は大きい(解説:石川讓治氏)-1132

SPRINT研究において、積極的降圧治療(目標収縮期血圧120mmHg)が通常の降圧治療(目標収縮期血圧140mmHg)と比較して、心血管イベントを減少させることが報告され、この積極的降圧治療の優位性は75歳以上の後期高齢者でも認められた。Montreal Cognitive Assessment(MoCA)で評価した認知機能に関しては、1次エンドポイントであるProbable dementiaの発症に関しては、有意な抑制が認められなかったが、mild cognitive impairment (MCI)への進行は有意に抑制された。これらの結果より、積極的降圧治療が通常の降圧治療よりも軽度の認知機能低下であれば抑制する可能性が示唆された。

乳がんとNAFLDの意外な関連

 乳がんは女性で最も頻度の高いがんであり、主な死亡原因である。そして、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)は世界中で急速に増加している。この2つの疾患は密接に関連する可能性が高いが、有病率や予後への影響についての詳細な報告は少ない。今回、韓国・高麗大学校のYoung-Sun Lee氏らは、NAFLDは乳がん患者に高頻度で発症すること、またNAFLDは乳がん手術後の再発率を高める可能性があることを示した。大規模後ろ向きコホート研究による報告で、Medicine(Baltimore)誌2019年9月号に掲載された。

統合失調症に対する抗炎症薬の有用性~メタ解析

 統合失調症では、脳の炎症誘発性状態の傾向が重要な役割を担っているとのエビデンスが蓄積されつつある。この傾向を代償するうえで、抗炎症薬は有用である可能性がある。オランダ・Academic Medical CenterのN. Cakici氏らは、統合失調症に対するいくつかの抗炎症作用を有する薬剤の有効性に関するランダム化比較試験(RCT)の最新情報について、メタ解析を実施した。Psychological Medicine誌2019年10月号の報告。  PubMed、Embase、the National Institutes of Health website、the Cochrane Database of Systematic Reviewsより、臨床結果を調査したRCTをシステマティックに検索した。

肺結核の家庭内接触、多剤耐性菌の感染リスクは?/BMJ

 肺結核患者の家庭内接触者では、多剤耐性菌は薬剤感受性菌に比べ結核感染リスクが高いが、結核症の発病リスクは両群に差はないことが、米国・ハーバード大学医学大学院のMercedes C. Becerra氏らの調査で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年10月24日号に掲載された。既報の分子疫学研究では、薬剤耐性結核菌株は感染可能であり、耐性株のクラスターは長期に存続可能であることが示されている。また、いくつかの研究では、家庭内接触による結核の感染リスクは薬剤耐性菌と感受性菌で差はないとされるが、最近の研究では、多剤耐性菌に曝露した家庭内接触者は薬剤感受性菌への曝露に比べ、結核症の発現の可能性が半減すると報告されている。

80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症、レボチロキシンの効果は?/JAMA

 80歳以上の潜在性甲状腺機能低下症患者の治療において、レボチロキシンはプラセボに比べ、関連症状や疲労を改善しないことが、オランダ・ライデン大学医療センターのSimon P. Mooijaart氏らが行った2つの臨床試験の統合解析で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2019年10月30日号に掲載された。潜在性甲状腺機能低下症(サイロトロピン[甲状腺刺激ホルモン:TSH]上昇、遊離サイロキシン[FT4]正常範囲)は、便秘、精神機能低下、疲労、うつ症状などがみられ、心血管疾患リスクの上昇との関連が指摘されている。また、加齢に伴い併存疾患やフレイルが増加するため、80歳以上の患者は、疾患管理による有益性と有害性が、若年患者とは異なる可能性がある。一方、現時点で高齢患者のエビデンスはなく、プライマリケア医による治療においてばらつきの原因となっている可能性があるという。

診察室血圧および24時間自由行動下血圧モニタリングにおける夜間血圧と予後-なぜ夜間血圧の予後予測能がいいのか?-(解説:石川讓治氏)-1131

自由行動下血圧モニタリング(ABPM)は、15~30分間隔で連続して血圧測定を行い、診察室以外での自由行動下および睡眠中の血圧測定が可能である。疫学的研究において、24時間平均自由行動下血圧、とくに夜間血圧が、診察室血圧よりも優れた高血圧性臓器障害や予後予測指標であることが報告されてきた。International Database on Ambulatory Blood Pressure in Relation to Cardiovascular Outcomes(IDACO)研究は、ABPMを用いた世界中の多数の疫学研究データを統合し、これらの研究結果をグローバル化させることを行ってきた。本研究の結果、24時間平均自由行動下血圧、とくに夜間血圧が、診察室血圧よりも優れた予後予測指標であったことが再確認された。

TNM分類と取扱い規約は統合可能か?/日本癌治療学会

 本邦では、臓器別に各学会が作成する取扱い規約が使われてきたが、世界中の日本以外の国で主に使用されるのは国際対がん連合(UICC)/米国がん合同委員会(AJCC)によるTNM分類である。国際的な臨床試験への参加時や、論文投稿時に生じる齟齬への対応策はあるのか。第57回日本癌治療学会学術集会(10月24~26日)で、がん研究会有明病院消化器外科の佐野 武氏が、「日本の取扱い規約とUICC/AJCC TNM分類は統合可能か? 」と題した講演を行った。

睡眠時間と認知症リスク~メタ解析

 睡眠時間と認知症リスクとの関連について、一貫性のない結果が疫学研究で報告されている。この関連性を明らかにするため、中国・Chinese PLA General HospitalのLi Fan氏らが、プロスペクティブコホート研究のシステマティックレビューとメタ解析を実施した。Journal of the American Medical Directors Association誌オンライン版2019年10月8日号の報告。  対象者には、コミュニティまたは臨床環境における認知症またはアルツハイマー病(AD)の患者と一般集団を含めた。

乳がん術後トラスツズマブ、心毒性の影響は?

 乳がん治療に用いられる分子標的薬トラスツズマブの心毒性の発生頻度や機序などが、ベルギー・ブリュッセル自由大学のEvandro de Azambuja氏らにより明らかにされた。トラスツズマブ関連心毒性の発生率、発生時期、治療完了への影響およびリスク因子について、トラスツズマブ術後補助療法の臨床試験3件のプール解析を行った結果、1年間のトラスツズマブ投与は心イベントのリスクを高めるが、ほとんどは無症候性または軽度の左室駆出率(LVEF)低下であり、トラスツズマブによる術後補助療法は多くの患者にとって心毒性の点で安全な治療と考えるべきであることが示されたという。トラスツズマブ関連心毒性は、HER2陽性乳がん患者においてなお議論の余地があるが、今回の結果を踏まえて著者は、「トラスツズマブ関連心毒性は投与中止の主な原因であることから、さらなる研究を行い、予防と管理の個別化が必要である」とまとめている。Breast Cancer Research and Treatment誌オンライン版2019年10月11日号掲載の報告。

精神疾患が死亡率と平均余命に影響/Lancet

 精神障害は若年死と関連していることが、デンマーク・オーフス大学のOleguer Plane-Ripoll氏らによる、デンマークの全国登録を用いたコホート研究の結果、示された。精神障害の発症年齢を加味した生存年損失(life-years lost:LYL)で評価すると、精神障害は死亡率の増加と平均余命の減少の両方と関連していたという。これまでシステマティックレビューにより、精神障害を有する人は若年死のリスクが増加することが一貫して示されてきたが、このエビデンスは平均余命減少の相対リスクまたは粗推定値に基づいていた。著者は、「今回の新しい方法は、若年死のより正確な推定値を提供するとともに、競合リスクや特定の死因に関連する、これまで正当に評価されていない特性を明らかにした。精神障害を有する人々の全身状態のケアも最大限に高める必要がある」とまとめている。Lancet誌オンライン版2019年10月24日号掲載の報告。

新たな結核ワクチン、投与36ヵ月後の有効性は?/NEJM

 結核菌(M. tuberculosis)に感染した成人において、M72/AS01Eワクチン接種は免疫応答を誘導し、少なくとも3年間は肺結核の発症を予防することが認められた。米国・国際エイズワクチン推進構想のDereck R. Tait氏らが、結核菌に対するM72/AS01Eワクチンの有効性、安全性および免疫原性を検討したプラセボ対照第IIb相臨床試験の3年間の最終解析結果を報告した。初期解析の結果では、M72/AS01Eワクチンは結核菌に感染した成人において安全性に懸念はなく、活動性肺結核の発症を54%防ぐことが示されていた。NEJM誌オンライン版2019年10月29日号掲載の報告。

喫煙と認知症リスクの関連、禁煙後何年で消失?

 喫煙は認知症の危険因子として知られているが、禁煙によってリスクは減少するのだろうか。米国・ジョンズホプキンス大学School of Public HealthのJennifer A. Deal氏らが、Atherosclerosis Risk in Communities(ARIC)研究で調べたところ、禁煙は認知症リスク減少に有益ではあるものの、禁煙期間に依存することがわかった。本研究では、禁煙後9年以上経過した場合に認知症発症との関連が消失し、認知症リスクを減らすためには中年早期に禁煙する重要性が示唆された。Journal of the American Geriatrics Society誌オンライン版2019年11月1日号に掲載。

長期再発リスクが高い早期肺がんの病理学的所見は?

 早期肺がんで再発リスクが高い病理学的所見が明らかにされた。広島大学の津谷 康大氏らが、「胸部薄切CT所見に基づく肺野型早期肺癌の診断とその妥当性に関する研究」(JCOG0201)の10年追跡結果を報告。浸潤成分径>2cm、臓側胸膜浸潤陽性または血管侵襲陽性の再発リスクが高いことが示されたという。Annals of Thoracic Surgery誌2019年11月号掲載の報告。  JCOG0201は前向き多施設共同研究で、再発リスクが高い病理学的Stage I肺腺がん患者を特定する目的で行われた。被験者は、肺葉切除を受け登録された病理学的Stage I肺腺がん患者536例。lepidic成分を除く浸潤成分の大きさを腫瘍径としデータを解析した。