日本語でわかる最新の海外医学論文|page:14

マイコプラズマ肺炎、大阪府のマクロライド耐性率は約6割

 大阪府の医療施設を対象とした調査において、2024年のMycoplasma pneumoniaeのマクロライド耐性変異率は60.2%に達していたことが報告された。マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎は2000年代から増加し、2012年前後にはM. pneumoniaeのマクロライド耐性変異率が80~90%に達した。その後、マクロライド耐性変異率は低下し、2019年前後には20~30%となった。それ以降は、COVID-19パンデミックに伴ってマイコプラズマ肺炎の報告が激減したが、2024年には再流行がみられた。そこで、宮下 修行氏(関西医科大学 内科学第一講座 呼吸器感染症・アレルギー科)らの研究チームは、大阪府の医療施設を対象として、2018~24年のマイコプラズマ肺炎の報告件数とM. pneumoniaeのマクロライド耐性変異率を調査した。本研究結果は、Respiratory Investigation誌2025年4月22日号に掲載された。

新たなリスクスコアにより頸動脈狭窄に対する不要な手術を回避

 頸動脈リスク(carotid artery risk;CAR)スコアと呼ばれる新たなスコアリングシステムにより、頸動脈狭窄が確認された患者に対する頸動脈血行再建術の必要性を判断できる可能性のあることが、新たな研究で示唆された。英ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)やアムステルダム大学医療センター(オランダ)などの研究者らが開発したCARスコアリングシステムは、頸動脈狭窄の程度(狭窄率)や医療歴などを考慮して5年間の脳卒中リスクを予測する。UCLクイーン・スクエア神経学研究所の名誉教授であるMartin Brown氏らによるこの研究結果は、「The Lancet Neurology」5月号に掲載された。

肥満者の体重減少、チルゼパチドvs.セマグルチド/NEJM

 非糖尿病の肥満成人において、チルゼパチドはセマグルチドと比較して72週時の体重および胴囲の減少に関して優れていることが、米国・Weill Cornell MedicineのLouis J. Aronne氏らSURMOUNT-5 Trial Investigatorsによる第IIIb相無作為化非盲検並行群間比較試験「SURMOUNT-5試験」の結果で示された。チルゼパチドおよびセマグルチドは、肥満の管理に非常に有効な薬剤である。肥満であるが2型糖尿病は有していない成人において、チルゼパチドとセマグルチドの有効性および安全性を直接比較した臨床試験はこれまでなかった。NEJM誌オンライン版2025年5月11日号掲載の報告。

臨床試験における患者・市民参画(解説:景山茂氏)

臨床試験における患者・市民参画(patient and public involvement)は、臨床試験に患者あるいは一般市民が被験者として参加するだけでなく、試験の計画段階から参加することにより、試験計画書をより現場のニーズに合ったものとして、エンドポイントの設定についても患者の視点を踏まえたものとし、得られるエビデンスがより有用なものになるようにしようとする考え方である。臨床試験における患者・市民参画は比較的最近の動きであって、CIOMS(Council for International Organizations of Medical Sciences、国際医学団体協議会)の報告書でも2014年の「医薬品のリスク最小化のための実践的アプローチ」では、ごく簡単に触れられただけであったが、2022年の「医薬品の開発、規制、安全な使用への患者参画」において、ようやく詳しく取り挙げられた。

HAEの気道発作の救命は時間との勝負/CSLベーリング

 CSLベーリングは、5月16日の「HAE DAY(遺伝性血管性浮腫の日)」を記念し、「HAE DAYメディアセミナー 遺伝性血管性浮腫(HAE)~救急現場と患者さんの声から考える診断と治療の課題~」を開催した。遺伝性血管性浮腫(HAE)は、国の指定難病の1つで、皮膚や腹部などに突然むくみ(浮腫)が生じる疾患で、咽頭に発作が起きた場合、気道が閉塞し呼吸困難に陥り、患者の生命に関わる危険性もある。わが国には、未診断の患者も含め約2,500人の患者が推定されている。  セミナーでは、救急医療の観点からHAEと疑い診断をつけるポイントや患者会の活動と患者・患者家族の声などが語られた。なお、同社はHAEの治療薬としてヒト抗活性化第XII因子モノクローナル抗体製剤ガラダシマブ(商品名:アナエブリ)を4月18日に発売している。

うつ病に対するブレクスピプラゾール増強療法とミトコンドリア遺伝子発現変化

 うつ病患者の20%は治療抵抗性を示し、いくつかの抗うつ薬単剤療法では治療反応が得られない。このような治療抵抗性うつ病患者には、抗精神病薬による増強療法が治療選択肢の1つとなりうる。しかし、抗精神病薬増強療法のメカニズムは、依然として解明されていない。愛媛大学の近藤 恒平氏らは、遺伝子発現レベルにおけるブレクスピプラゾール増強療法の作用メカニズムを解明するため、本研究を実施した。Journal of Psychopharmacology誌オンライン版2025年5月6日号の報告。

患者数は多いが社会的認知度の低い肥大型心筋症/BMS

 ブリストル マイヤーズ スクイブ(以下、BMS)は、閉塞性肥大型心筋症(Hypertrophic cardiomyopathy:HCM)治療薬の選択的心筋ミオシン阻害薬マバカムテン(商品名:カムザイオス)を5月21日に発売した。本剤が国内初承認されたことで、臨床現場でもHCMの見方が変わってくるだろう。5月15日にはBMS主催のメディアセミナーが開催され、北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学 教授)が「肥大型心筋症とはどの様な疾患か? なぜ新しい治療が必要か?〜肥大型心筋症で苦しむ患者さんのために〜」と題し、HCMの過小評価の実態などについて解説。さらに、患者代表として林 千晶氏が登壇し、自身の経験から医師に知ってもらいたいこと、患者として注意すべきことについて語った。

フィブラート系薬でCKDリスクは増加、死亡リスクは低下

 フィブラート系薬の服用が腎機能や死亡に及ぼす影響を検討した結果、フィブラート系薬は慢性腎臓病(CKD)発症リスクの増加と関連する一方で、末期腎不全(ESKD)発症および死亡リスクの低下と関連していたことを、米国・Harbor-UCLA Medical Centerの高橋 利奈氏らが明らかにした。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2025年4月7日号掲載の報告。  フィブラート系薬は血清クレアチニンの急激な上昇を引き起こす可能性があるが、腎アウトカムの評価は追跡期間の短い研究では困難である。さらに、特定の腎アウトカムに関する研究は限られており、それらの結果も一貫していない。

咳嗽・喀痰の診療GL改訂、新規治療薬の位置付けは?/日本呼吸器学会

 咳嗽・喀痰の診療ガイドラインが2019年版以来、約6年ぶりに全面改訂された。2025年4月に発刊された『咳嗽・喀痰の診療ガイドライン第2版2025』では、9つのクリニカル・クエスチョン(CQ)が設定され、初めてMindsに準拠したシステマティックレビューが実施された。今回設定されたCQには、難治性慢性咳嗽に対する新規治療薬ゲーファピキサントを含むP2X3受容体拮抗薬に関するCQも含まれている。また、本ガイドラインは、治療可能な特性を個々の患者ごとに見出して治療介入するという考え方である「treatable traits」がふんだんに盛り込まれていることも特徴である。第65回日本呼吸器学会学術講演会において、本ガイドラインに関するセッションが開催され、咳嗽セクションのポイントについては新実 彰男氏(大阪府済生会茨木病院/名古屋市立大学)が、喀痰セクションのポイントについては金子 猛氏(横浜市立大学大学院)が解説した。

超加工食品の摂取は早期死亡リスクを高める

 超加工食品の摂取量が多いほど早期死亡リスクも高まるようだ。新たな研究で、超加工食品の摂取に起因する早期死亡は、総エネルギー摂取量に占める超加工食品の割合が高いほど増加することが明らかになった。オスワルド・クルス財団(ブラジル)のEduardo Nilson氏らによるこの研究結果は、「American Journal of Preventive Medicine」に4月28日掲載された。  超加工食品は、飽和脂肪酸、でんぷん、添加糖など、主に自然食品から抽出された物質で作られており、風味や見た目を良くし、保存性を高めるために、着色料、乳化剤、香料、安定剤などさまざまな添加物が加えられている。具体例は、パッケージ済みの焼き菓子、砂糖が添加されたシリアル、すぐに食べられる、または温めるだけで食べられる製品などが挙げられる。研究の背景情報によると、超加工食品の摂取は心臓病、肥満、糖尿病、一部のがん、うつ病など32種類の健康問題と関連付けられているという。

バーチャル合唱プログラムで孤立した高齢者の気分やウェルビーイングが向上

 歌を歌うことが魂にとって救いとなることがあるが、バーチャルな集団の中で歌うことにも同様の効果はあるのだろうか? その答えは「イエス」であることが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策のロックダウン中にバーチャル合唱団へ参加したことが高齢者の感情面あるいは精神面に良い影響をもたらしたのかどうかを検証した研究で示された。研究によると、孤立した高齢者からは、ZoomやFacebook Liveを介して合唱の練習に参加したことで不安が軽減され、社会とのつながりが深まり、感情的および知的な刺激を受けることができたとの評価が得られたという。米ノースウェスタン大学音楽療法プログラムのBorna Bonakdarpour氏らによるこの研究の詳細は、「Journal of Alzheimer’s Disease」に4月22日掲載された。

MASHによる代償性肝硬変、efruxiferminは線維化を改善せず/NEJM

 代謝機能障害関連脂肪肝炎(MASH)による代償性肝硬変患者において、efruxiferminは36週時点で線維化の有意な改善を示さなかった。米国・Houston Methodist HospitalのMazen Noureddin氏らが、米国、プエルトリコおよびメキシコの45施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「SYMMETRY試験」の結果を報告した。線維芽細胞増殖因子21(FGF21)アナログであるefruxiferminは、MASHによる線維化ステージ2または3の患者を対象とした第II相試験において線維化の軽減とMASHの消失が認められたが、MASHによる代償性肝硬変(線維化ステージ4)の患者における有効性と安全性に関するデータが求められていた。NEJM誌オンライン版2025年5月9日号掲載の報告。

筋萎縮性側索硬化症、リルゾール+低用量IL-2で死亡リスク低減か/Lancet

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者において、リルゾールへの低用量インターロイキン2(IL-2LD)の上乗せは補正前解析では有意ではないものの死亡リスクの減少をもたらし、補正後解析では脳脊髄液中リン酸化ニューロフィラメント重鎖(CSF-pNFH)低値集団で有意な死亡リスクの減少が認められた。フランス・Pitie-Salpetriere HospitalのGilbert Bensimon氏らMIROCALS Study Groupが、フランスの10施設および英国の7施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検プラセボ対照試験「MIROCALS試験」の結果を報告した。ALSは、運動ニューロンの進行性喪失を特徴とする生命を脅かす疾患であり、治療法は限られている。著者は、「主要エンドポイントにおける補正前解析と補正後解析の結果の差は、ALSの無作為化比較試験において疾患の異質性を考慮する重要性を強調しており、CSF-pNFH低値集団で死亡リスクが減少したことは、ALSに対するこの治療法が有望であることを示すものであり、さらなる研究が必要である」とまとめている。Lancet誌オンライン版5月9日号掲載の報告。

自家SCT後に再発した多発性骨髄腫、同種SCT vs.自家SCT

 自家造血幹細胞移植(auto-SCT)後に再発した多発性骨髄腫患者に対して、これまでauto-SCTより同種造血幹細胞移植(allo-SCT)のほうが優れていると考えられていた。今回、オーストリア・Wilhelminen Cancer Research InstituteのHeinz Ludwig氏らの系統的レビューとメタ解析の結果、allo-SCTがauto-SCTよりも全生存期間(OS)および無増悪生存期間(PFS)が劣っていることが示された。Cancer誌2025年5月15日号に掲載。  研究グループは、1995年~2024年10月に発表された英語論文の包括的な文献レビューを行い、初回auto-SCT後に再発した多発性骨髄腫に対して、allo-SCTとauto-SCTを比較した5研究を解析した。また、再発後に適合する同種造血幹細胞ドナーが存在する患者と存在しない患者を比較した2研究を個別に解析した。日本造血・免疫細胞療法学会と国際血液骨髄移植研究センター(CIBMTR)の2つの大規模データベースから 815例の個別データを入手した。Kaplan-Meier曲線で示された5つの小規模研究(allo-SCTとauto-SCTを比較した3研究、および適合ドナーの有無で比較した2つの研究)のデータは、Shinyアプリを用いてデジタル化した。メタ解析はR 4.3.3を用い、OSおよびPFSについてKaplan-Meier検定およびlog-rank検定を行った。

40%の患者が過小診断される心不全疾患とは/アレクシオン

 新たなトランスサイレチン型心アミロイドーシス治療薬アコラミジス(商品名:ビヨントラ)が2025年5月21日に発売された。これに先駆け、アレクシオンファーマが4月16日にメディアセミナーを開催し、北岡 裕章氏(高知大学医学部 老年病・循環器内科学 教授)が『心アミロイドーシスを取り巻く環境と治療の現状と課題』、田原 宣広氏(久留米大学病院 循環器病センター 教授)が『新薬アコラミジスがもたらすATTR-CMに対する新たな治療』と題して講演を行った。

「がんと栄養」に正しい情報を!がん患者さんのための栄養治療ガイドライン発刊

 日本栄養治療学会(JSPEN)は2025年2月、『がん患者さんのための栄養治療ガイドライン 2025年版』(金原出版)を刊行した。JSPENが患者向けガイドラインを作成するのは初めての試みだ。5月14日には刊行記念のプレスセミナーが開催され、比企 直樹氏(北里大学医学部 上部消化管外科学)と犬飼 道雄氏(岡山済生会総合病院 内科・がん化学療法センター)が登壇し、ガイドライン作成の経緯や狙いを解説した。 【比企氏】  世の中には「〇〇を食べると健康に良い」といった根拠の乏しい情報があふれている。とくにがんに関しては、科学的根拠のない栄養療法や補助食品の情報があふれており、患者や家族が正しい情報を得ることに苦労している。一方で、最近ではがん治療と栄養療法に関連した研究が増え、「どの栄養素を、どれだけ摂取すれば、どんな効果があるか」に関するエビデンスが蓄積されてきた。実際、がんの薬物療法や手術治療において、栄養治療が副作用の軽減や合併症の予防に寄与することが明らかになっている。こうした背景から、患者さんが正しい情報を得られるよう、情報を整理するために作成されたのがこのガイドラインだ。

若年性認知症リスクとMetSとの関連

 若年性認知症は、社会および医療において大きな負担となっている。メタボリックシンドローム(MetS)は、晩年の認知症の一因であると考えられているが、若年性認知症への影響はよくわかっていない。韓国・Soonchunhyang University Seoul HospitalのJeong-Yoon Lee氏らは、MetSおよびその構成要素が、すべての原因による認知症、アルツハイマー病、血管性認知症を含む若年性認知症リスクを上昇させるかを明らかにするため、本研究を実施した。Neurology誌2025年5月27日号の報告。

高齢者への抗菌薬投与の有害性と安全性、3~7日vs.8~14日

 地域在住の66歳以上の高齢者において、アモキシシリン、セファレキシン、シプロフロキサシンの投与期間が長期(8〜14日)となった場合、短期(3〜7日)の場合と比較して、副作用やClostridioides difficile感染症(CDI)などの有害性アウトカム発現に差は認められなかった。カナダ・トロント大学のBradley J Langford氏らは、10万例以上の高齢患者を対象としたコホート研究の結果を、Clinical Infectious Diseases誌2025年4月号で報告した。

妊娠初期の貧血は子の先天性心疾患リスクを高める

 妊娠100日目までの妊娠初期に母親が貧血状態にあると、生まれてくる子どもが先天性心疾患を持つリスクが大幅に高まる可能性のあることが、新たな研究で明らかになった。英オックスフォード大学生理学・解剖学・遺伝学分野のDuncan Sparrow氏らによるこの研究結果は、「BJOG: An International Journal of Obstetrics & Gynaecology」に4月23日掲載された。Sparrow氏は、「妊娠初期の貧血がこれほど有害であることを示した本研究結果は、世界中で医療のあり方を一変させる可能性がある」と同大学のニュースリリースで述べている。

降圧薬の心血管リスク低減効果、朝服用vs.就寝前服用/JAMA

降 圧薬の就寝前服用は安全であるが、朝の服用と比較して心血管リスクを有意に低減しなかったことが、カナダ・University of AlbertaのScott R. Garrison氏らが、プライマリケアの外来成人高血圧症患者を対象として実施した無作為化試験で示された。降圧薬を朝ではなく就寝前に服用することが心血管リスクを低減させるかどうかについては、先行研究の大規模臨床試験における知見が一致しておらず不明のままである。また、降圧薬の就寝前服用については、緑内障による視力低下やその他の低血圧症/虚血性の副作用を引き起こす可能性が懸念されていた。今回の結果を踏まえて著者は、「降圧薬の服用時間は、降圧治療のリスクやベネフィットに影響を与えない。むしろ患者の希望に即して決めるべきである」とまとめている。