日本におけるインスリン療法の実態とその変遷を解析した大規模リアルワールド研究「Insulin JP2DB Study」の結果が報告された。日本では近年、インスリンと非インスリン薬の併用が増加している。本研究では、その割合が約20年間で大きく増加していることが示された。京都府立医科大学の福井 道明氏らによる本研究はDiabetes Therapy誌オンライン版2026年1月27日号に掲載された。
日本の医療データベース(JP2DB)を用いて、インスリン治療の導入パターンおよび併用薬の使用動向を後ろ向きに解析した。解析は、年次ごとの治療動向を評価する「連続横断解析」と、インスリン導入後の治療法の推移を追跡(2型糖尿病は9ヵ月、1型糖尿病は21ヵ月)した「縦断コホート解析」の2つのデザインで実施された。
インスリン治療法は、bolus(追加インスリン)、basal(基礎インスリン)、premixed(混合型インスリン)、basal-bolus(強化インスリン)などに分類した。さらにDPP-4阻害薬やSGLT2阻害薬などの非インスリン血糖降下薬の併用状況を評価した。
主な結果は以下のとおり。
・連続横断解析では、4,953例(2型糖尿病4,693例、1型糖尿病260例)が対象となった。2型糖尿病においてインスリン治療と非インスリン薬を併用する割合は、2002年の31%から2021年には61%へと倍増した。とくに2014年以降はインスリン使用者の30%以上がDPP-4阻害薬を併用した。SGLT2阻害薬の併用率は2013年の0%から2021年には20.2%に増加した。2018年以降は、1型糖尿病でも非インスリン薬併用の増加傾向が確認された。
・縦断コホート解析では、2万7,492例(2型糖尿病2万7,031例、1型糖尿病461例)が対象となった。2型糖尿病では、入院中にインスリン療法を開始した患者は、導入時は追加インスリンが70.8%と高かったが、9ヵ月後には17.3%まで低下した。その代わりに基礎インスリン(6.3%→31.1%)、強化インスリン(17.0%→23.4%)が増加した。外来で開始した場合、導入時は基礎インスリンが最も多く、病院では53.9%、診療所では58.9%を占めた。
・1型糖尿病患者では、入院時にインスリン療法を開始した患者の57.9%が追加インスリンを投与されたが、1ヵ月後には強化インスリンが主流(85.0%)となった。外来で開始した場合は、研究期間を通じて強化インスリンが主流であった。
著者らは「2型糖尿病では、導入環境によって治療法に違いが見られた。入院中は高血糖是正を目的に強化インスリンが行われることが多いが、時間の経過とともに退院後の外来管理を想定した治療法へ移行する傾向が示された。外来では低血糖リスクや治療負担を考慮し、初回治療は比較的簡便な基礎インスリンから開始する戦略が一般的であることが示唆された。一方、1型糖尿病では、入院導入例では約6割が追加インスリンで開始されたが、1ヵ月後には85.0%が強化インスリンへ移行していた。外来導入例でも研究期間を通じて強化インスリンが主流であり、導入環境による違いが少なかった。さらに、インスリン治療患者における非インスリン薬併用は年々増加しており、本試験は日本の糖尿病治療が多剤併用戦略へと移行していることを示す結果である」とまとめている。
(ケアネット 杉崎 真名)