日本語でわかる最新の海外医学論文|page:6

片頭痛などの疼痛スコアに口腔衛生が関連?

 女性において、口腔衛生スコアが低いことは、片頭痛などの疼痛スコアが高いことと関連するという研究結果が、「Frontiers in Pain Research」に4月9日掲載された。  シドニー大学(オーストラリア)のSharon Erdrich氏らは、女性において、自己申告による口腔衛生、口腔マイクロバイオーム、さまざまな疼痛症状の関連を検討した。口腔衛生は、世界保健機関(WHO)の口腔衛生質問票を用いて評価された。身体の疼痛、片頭痛、腹痛は、それぞれの検証済み評価尺度を用いて測定された。

新ガイドラインの導入で肺移植待機患者の死亡率が大きく改善

 米国では、2023年に肺移植の新たな臓器配分ガイドラインが導入されて以降、移植待機中に死亡する移植希望者の数が大幅に減少したことが最新の研究で明らかになった。米コロンビア大学アーヴィング医療センターのMary Raddawi氏らによるこの研究結果は、米国胸部学会国際会議(ATS 2025、5月16〜21日、米サンフランシスコ)で発表された。  米国ではかつて、ドナー肺の配分が地理的な近さに基づいて決定されており、ドナーの近くに住む人が優先的にドナー肺へのアクセス権を与えられていた。しかし2017年に、肺移植を必要としていた女性が、臓器配分のポリシーが医療的な緊急度よりも居住地を優先しているのは不公平だとして訴訟を起こした。

高齢者の夜間頻尿、改善のカギは就寝時間か

 夜間頻尿は特に高齢者を悩ませる症状の一つであり、睡眠の妨げとなるなど生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすことがある。今回、適切な時刻に規則正しく就寝する生活を送ることで、高齢者の夜間頻尿が改善する可能性があるとする研究結果が報告された。研究は、福井大学医学部付属病院泌尿器科の奥村悦久氏らによるもので、詳細は「International Journal of Urology」に4月26日掲載された。  夜間頻尿は、夜間に排尿のために1回以上起きなければならない症状、と定義されている。主な原因としては、夜間多尿、膀胱容量の減少、睡眠障害が知られている。疫学研究により、夜間頻尿はあらゆる年齢層における主要な睡眠障害の一因であり、加齢とともにその有病率が上昇することが示されている。加齢に伴う睡眠障害の一つの特徴として、就寝時間が早まる傾向がある。その結果、高齢者では総睡眠時間は延長するものの眠りが浅くなり、軽い尿意で覚醒するようになる。しかし、睡眠障害の治療が夜間頻尿の改善につながることを示唆する前向き臨床試験の報告は限られている。このような背景を踏まえ著者らは、就寝時刻を調整することで高齢者の夜間頻尿が改善するという仮説を立てた。

中硬膜動脈塞栓術で、慢性硬膜下血腫の再発リスクは軽減するか/JAMA

 慢性硬膜下血腫(CSDH)に対する開頭術後の再発リスクが高い患者において、標準的な薬物療法単独と比較して標準治療に中硬膜動脈(MMA)塞栓術を追加しても、6ヵ月後の再発率を改善せず、同側CSDH再発に対する再手術やCSDH関連の累積入院期間にも差はないことが、フランス・Pitie-Salpetriere HospitalのEimad Shotar氏らが実施した「EMPROTECT試験」で示された。研究の詳細は、JAMA誌オンライン版2025年6月5日号で報告された。  EMPROTECT試験は、フランスの12施設で実施した非盲検(エンドポイント評価は盲検下)無作為化試験であり、2020年7月~2023年3月に参加者を募集した(Programme Hospitalier de Recherche Clinique[PHRC]などの助成を受けた)。

JN.1対応コロナワクチン、発症・入院予防の有効性は?(VERSUS)/長崎大

 2024年度秋冬シーズンの新型コロナワクチン定期接種では、JN.1系統に対応した1価ワクチンが採用された。長崎大学熱帯医学研究所の前田 遥氏らの研究チームは、2024年10月1日~2025年3月31日の期間におけるJN.1系統対応ワクチンの有効性について、国内多施設共同研究(VERSUS study)の第12報となる結果を、2025年6月11日に報告した。本結果により、JN.1系統対応ワクチンの接種により、発症予防、入院予防において追加的な予防効果が得られる可能性が示された。

GLP-1受容体作動薬使用時にすべき生活習慣介入の優先事項とは

 肥満症の治療にGLP-1受容体作動薬が使用される際に、その効果を維持などするために患者の食事や運動など生活習慣に引き続き介入する必要がある。米国・タフツ大学フリードマン栄養科学政策学部のDariush Mozaffarian氏らの研究グループは、GLP-1受容体作動薬を使用する際に、食事内容や生活習慣介入での優先事項をアメリカ生活習慣病医学会、アメリカ栄養学会、肥満医学協会、および肥満学会の団体とともに共同指針として策定した。この指針はThe American Journal of Clinical Nutrition誌2025年5月29日号オンライン版に掲載された。

男女の認知症発症リスクに対する性ホルモンの影響

 認知症は、世界的な公衆衛生上の大きな問題であり、そのリスクは性別により異なることが知られている。女性のアルツハイマー病およびその他の認知症発症率は、男性の約2倍であるといわれている。テストステロン値は、高齢者の認知機能に影響を及ぼすと考えられているが、これまでの研究では一貫性のない結果が報告されており、性ホルモンと認知症との関係は、依然として明らかになっていない。中国・山東大学のYanqing Zhao氏らは、大規模データベースを用いて、男女の認知症発症リスクに対する性ホルモンの影響を検討した。Clinical Endocrinology誌オンライン版2025年5月11日号の報告。

心筋梗塞後の便秘、心不全入院リスクが上昇~日本人データ

 心筋梗塞患者において、退院後6ヵ月間における便秘は心不全による入院リスクの上昇と強く関連していることを、仙台市医療センター仙台オープン病院の浪打 成人氏らによる研究の結果、示唆された。浪打氏らは以前、急性心不全後に便秘のある患者は心不全による再入院リスクが高いことを報告しており、今回、便秘による心筋梗塞患者の予後への影響を心不全入院で評価し、BMC Cardiovascular Disorders誌2025年5月28日号に報告した。

ドナー心の冷却保存時間の延長に新たな可能性

 ドナーから摘出された心臓を移送中のダメージから守ることにつながる新たな発見によって、今後、移植に使用できる心臓(以下、ドナー心)の数が増えるかもしれない。米メイヨー・クリニックの心臓血管外科医であるPaul Tang氏らが、冷却保存している間にドナー心が損傷を受ける生物学的なプロセスを特定したとする研究結果を、「Nature Cardiovascular Research」に5月19日発表した。  さらに喜ばしいことに、Tang氏らはすでに心疾患の治療に使用されているある薬が、ドナー心の損傷の予防にも活用できることを突き止めた。Canrenoneと呼ばれるこの薬を使用して保存されたドナー心では、同薬を使用しなかったドナー心と比べてポンプ機能が約3倍に強化されたことが示されたという。

AIは眼科医の緑内障診断に影響を与える

 近年、人工知能(AI)による画像診断アルゴリズムは眼科疾患の診断精度を向上させているが、医師の判断に影響を及ぼし、バイアスを引き起こす可能性もある。今回、眼底写真に基づく緑内障診断において、AIの診断結果は医師の判断に影響を及ぼすという研究結果が報告された。特に、経験の浅い医師ほどAIの診断結果の影響を受けやすいことが示されたという。研究は、山梨大学医学部眼科学教室の柏木賢治氏らによるもので、詳細は「PLOS One」に4月16日掲載された。  緑内障は自覚症状が少ない場合が多く、疾患による障害は不可逆的であるため、早期発見が極めて重要だ。近年、緑内障の診断においてAIが有用であることを示す研究報告が多数発表されている。しかし、AIの利用が拡大するにつれ、眼科医の診断がAIの結果に影響を受け、診断を誤ってしまう可能性も懸念される。実際、皮膚病変の診断においてAIが誤診した際、その診断に異議を唱える皮膚科医は少なかったとの報告がある。一方、緑内障に関しては、AIの診断が医師の判断に及ぼす影響について十分な検証が行われてこなかった。こういった背景を踏まえ、著者らは眼底写真を用いた緑内障の検出および重症度評価に対するAIの影響を検討した。

腫瘍内細菌叢が肺がんの予後を左右する

 細菌は外的因子としてがんの発生に寄与するが、近年、腫瘍の中にも細菌(腫瘍内細菌叢)が存在していることが報告されている。今回、肺がん組織内の腫瘍細菌叢の量が、肺がん患者の予後と有意に関連するという研究結果が報告された。研究は、千葉大学大学院医学研究院分子腫瘍学(金田篤志教授)および呼吸器病態外科学(鈴木秀海教授)において、越智敬大氏、藤木亮次氏らを中心に進められ、詳細は「Cancer Science」に4月11日掲載された。  近年、がんの予後と腫瘍内細菌叢の関係が注目されている。その中でも、肺がんに関する研究は、喀痰や気管支肺胞洗浄液に含まれる腫瘍外部の細菌に焦点を当てたものがほとんどであり、腫瘍内細菌叢とその予後への影響について検討したものは限られている。そのような背景を踏まえ著者らは、腫瘍内細菌叢が肺がん患者の予後に与える影響を評価するために、単施設のコホート研究を実施した。

重症血友病BにおけるAAV遺伝子治療、13年後の有効性・安全性は?/NEJM

 アデノ随伴ウイルス(AAV)を介した遺伝子治療は、血友病Bの有望な治療法である。米国・セントジュード小児研究病院のUlrike M. Reiss氏らは、2014年に、scAAV2/8-LP1-hFIXcoを単回静脈内投与した重症血友病Bの患者において、この遺伝子治療が成功したことを報告した。しかし、臨床的ベネフィットの持続性については不確実性が残っており、またAAVを介した遺伝子導入の長期安全性は不明であった。研究グループは、治療に成功した患者集団について入手できた追跡期間中央値13.0年のデータを解析し、第IX因子の発現は持続しており、臨床的ベネフィットは維持され、遅発性の安全性に関する懸念は認められなかったことを報告した。NEJM誌2025年6月12日号掲載の報告。

既治療のEGFR陽性進行NSCLC、sacituzumab tirumotecanがORR改善/BMJ

 EGFRチロシンキナーゼ阻害薬および化学療法後に病勢進行が認められた、EGFR遺伝子変異陽性局所進行または転移のある非小細胞肺がん(NSCLC)患者において、sacituzumab tirumotecan(sac-TMT)はドセタキセルと比較して、奏効率(ORR)、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)に関して統計学的に有意かつ臨床的に意義のある改善をもたらし、安全性プロファイルは管理可能なものであることが、中国・中山大学がんセンターのWenfeng Fang氏らが行った第II相の多施設共同非盲検無作為化対照試験の結果で示された。sac-TMTは、栄養膜細胞表面抗原2(TROP2)を標的とする新規開発中の抗体薬物複合体。

わが国における単剤療法を考えるにはもう一段の考察も必要か?(解説:野間重孝氏)

本論文は、PCI後の抗血小板療法において、DAPT終了後の維持戦略としてP2Y12阻害薬単剤療法がアスピリン単剤と比較して虚血イベント抑制において優れ、出血リスクも同等に保たれる可能性を、個別患者データ(IPD)を用いたメタ解析によって明らかにしたものである。対象データはいずれも信頼できるRCTに基づいており、解析の設計と手法も洗練されている。近年積み重ねられてきたP2Y12阻害薬単剤療法の有効性に関する知見を、統合的かつ精緻に再検討した意義は十分に評価できると考える。

精神疾患を併存している肥満者は減量治療抵抗性/日本糖尿病学会

 日本糖尿病学会の第68回年次学術集会(会長:金藤 秀明氏[川崎医科大学 糖尿病・代謝・内分泌内科学 教授])が、5月29~31日の日程で、ホテルグランヴィア岡山をメイン会場に開催された。  今回の学術集会は「臨床と研究の架け橋 ~translational research~」をテーマに、41のシンポジウム、173の口演、ポスターセッション、特別企画シンポジウム「糖尿病とともに生活する人々の声をきく」などが開催された。  肥満や肥満症の患者では、うつ病、不眠などの精神疾患を併存しているケースが多い。こうした併存症は診療の際にアドヒアランスなどに影響するなど、臨床現場では治療の上で課題となっている。また、精神疾患が体重の増加などにも影響することが指摘されている。

治療法が大きく変化、アミロイドーシス診療ガイドライン8年ぶりに改訂

 『アミロイドーシス診療ガイドライン2025』が2024年12月に発刊された。2017年版から8年ぶりの改訂となるが、この間にアミロイドーシスの各病型の病態解明が進み、診断基準をはじめ、トランスサイレチン型(ATTR)アミロイドーシスに対する核酸医薬、ALアミロイドーシスに対する抗CD38抗体薬、アルツハイマー病(AD)による軽度認知障害および軽度の認知症に対する抗アミロイドβ抗体薬の発売など、治療法も大きな変化を遂げている。そこで今回、本ガイドライン作成委員長であり、アミロイドーシスに関する調査研究班を率いる関島 良樹氏(信州大学医学部 脳神経内科、リウマチ・膠原病内科 教授)にアミロイドーシスの現状や診断方法、本書の改訂点などについて話を聞いた。

統合失調症の認知機能低下に影響を及ぼす向精神薬

 認知機能低下は、統合失調症でみられる中心的な病態の1つであるが、確立された薬理学的治療法は、いまだ存在しない。統合失調症治療では、主に抗精神病薬が用いられるが、統合失調症患者の認知機能に及ぼす影響については、実臨床における日常的な研究は行われていなかった。米国・The Stanley Research Program at Sheppard PrattのFaith Dickerson氏らは、統合失調症患者を対象としたリアルワールドコホート研究における、向精神薬と認知機能との関連を評価した。Schizophrenia Bulletin誌オンライン版2025年5月8日号の報告。

男女の身長差、遺伝子で説明できる?

 男性は通常、女性よりも平均で13cmほど背が高いが、その理由についてはこれまで明らかにされていなかった。しかし新たな研究で、「SHOX(short stature homeobox)」と呼ばれる遺伝子により、この現象を部分的に説明できる可能性のあることが示された。米ガイジンガー医科健康科学大学の遺伝学研究者であるMatthew Oetjens氏らによるこの研究の詳細は、「Proceedings of the National Academy of Sciences (PNAS)」に5月19日掲載された。  男女の身長差を説明する仮説の一つは、身長に関わるSHOX遺伝子に関するものだ。SHOX遺伝子は、X染色体とY染色体の間で配列が相同な領域である偽常染色体領域1(PAR1)に位置する。これまで、哺乳類の雌の細胞では2本のX染色体のうちの1本が不活性化され(不活性化X〔Xi〕染色体)、多くの遺伝子の機能が損なわれるが、PAR1に位置する遺伝子はその影響を免れると考えられてきた。ところが近年の研究で、Xi染色体のPAR1に位置するSHOX遺伝子やその他の遺伝子は、実際には発現が抑制されていることが示された。一方、男性はX染色体とY染色体を1本ずつ持っており、双方の染色体のSHOX遺伝子が活性化されている。このため、男性の方がSHOX遺伝子の発現量が高く、これが身長の伸びを促進している可能性があると考えられる。

AIは中間期乳がんの検出に有用?

 人工知能(AI)は、訓練を受けた放射線科医でも見逃してしまうような乳がんを検出できる可能性のあることが、新たな研究で示された。研究グループは、マンモグラフィー検査にAIを組み込むことで、年1回の定期検診の合間に発生する中間期がん(interval breast cancer;IBC)の発生率を下げられる可能性があるとしている。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)デビッド・ゲフィン医学部放射線学分野のTiffany Yu氏らによるこの研究結果は、「Journal of the National Cancer Institute」に4月18日掲載された。  Yu氏はUCLAのニュースリリースで、「がんの早期発見は、患者にとって大きな違いを生む。がんを早期に見つけることができれば、より積極的な治療を必要としなくなり、より良好な転帰を得る可能性も高まる」と話す。

歯周病の進行が動脈硬化と相関か

 歯周病は40歳以上の成人における歯の喪失の主な原因と考えられているが、2000年代の初頭からは他の全身疾患との関連性も報告されるようになった。今回、アテローム性動脈硬化と歯周病の進行が相関しているとする研究結果が報告された。研究は鹿児島大学大学院医歯学総合研究科予防歯科学分野の玉木直文氏らによるもので、詳細は「Scientific Reports」に4月18日掲載された。  アテローム性動脈硬化は血管疾患の主な原因の一つであり、複数のメタ解析により歯周病との関連が報告されている。長崎大学は2014年に、離島における集団ベースの前向きオープンコホート研究である長崎諸島研究(Nagasaki Islands Study;NaIS)を開始した。このコホート研究でも以前、動脈硬化が歯周病の進行に影響を与えるという仮説を立て、横断研究によりその関連性を調査していた。しかし、両者の経時的な関連性を明らかにする縦断研究はこれまで実施されていなかった。そこで著者らは、追跡調査を行い、動脈硬化と歯周病の関連性を検討する3年間のコホート研究を実施した。