狂犬病予防レジメン、モノクローナル抗体は有用か/Lancet

提供元:ケアネット

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公開日:2025/08/21

 

 狂犬病は、ほぼ確実に死に至る、主としてアジアとアフリカの低・中所得国で影響の大きいウイルス性疾患の人獣共通感染症である。ワクチンと免疫グロブリンによる曝露後予防(PEP)がきわめて効果的だが、狂犬病免疫グロブリン(ヒト狂犬病免疫グロブリン[HRIG]またはウマ狂犬病免疫グロブリン[ERIG])の製造・供給にさまざまな制約があり、低・中所得国の狂犬病への高リスク曝露例の大半は、狂犬病免疫グロブリンによる予防的治療を受けていないという。インド・Serum Institute of IndiaのPrasad S. Kulkarni氏らRAB-04 study groupは、同国で開発され2016年に受動的予防法として承認された世界初の狂犬病モノクローナル抗体(RmAb、Serum Institute of India製[Pune])について市販後調査を実施。RmAbは安全で忍容性は良好であり、狂犬病に対する予防効果が示されたことを報告した。Lancet誌2025年8月9日号掲載の報告。

無作為化試験で免疫グロブリンレジメンと比較

 研究グループはインドの3次救急病院15ヵ所で、RmAbを含むPEPレジメンの長期安全性、免疫原性および有効性を評価する、第IV相非盲検無作為化実薬対照試験を行った。

 対象は、WHOの狂犬病曝露カテゴリー3(狂犬病感染が疑われる動物による曝露)を有する2歳以上で、試験登録前72時間未満に曝露があった患者(顔、首、手、指への曝露については試験登録前24時間未満)を適格とした。

 被験者を、RmAb+精製Vero細胞狂犬病ワクチン(PVRV[Rabivax-S])またはERIG(Equirab製)+PVRVのいずれかのPEPを受ける群に3対1の割合で無作為に割り付けた。さらに各群で、筋肉内投与または皮内投与を受ける群に1対1の割合で無作為に割り付けた。各試験群には、ブロックサイズ8の並び替えブロックデザインを用いて割り付けられ、試験開始前に中央無作為化リストが作成され、双方向ウェブ応答システムを用いて無作為化された。免疫原性の検査担当者は割り付けを知らされなかった。

 RmAb(3.33 IU/kg)およびERIG(40 IU/kg)は、WHO 2018推奨に従い0日目にのみ創傷内および創傷周囲に注射投与した。PVRVは、1.0mLを筋肉内投与(0日目、3日目、7日目、14日目、28日目:Essenレジメン)または0.1mL+0.1mLを皮内投与(0日目、3日目、7日目、28日目:updated Thai Red Crossレジメン)した。

 主要アウトカムは予防的治療後365日までの治療関連重篤有害事象で、安全性解析対象集団(ワクチンと予防的治療を1回以上受けた全被験者)で評価した。また、狂犬病ウイルス中和抗体濃度の幾何平均値(GMC)をサブ対象集団で評価した。

主要アウトカムの治療関連重篤有害事象は0件、長期の免疫応答を確認

 2019年8月21日~2022年3月31日に、4,059例が登録・無作為化された。計3,994例(男性3,001例、女性993例)がPEPレジメンによる治療を受けた(RmAb+PVRV群2,996例、ERIG+PVRV群998例)。両群のベースライン特性は類似しており、平均年齢はRmAb+PVRV群30.3(SD 17.0)歳、ERIG+PVRV群30.6(17.5)歳、18歳未満の被験者がいずれも25.1%であった。また、曝露動物は犬がそれぞれ93.5%と92.6%。曝露から無作為化までの平均時間は15.1時間と15.4時間であった。

 3,622例(90.7%)が1年間のフォローアップを完了した。

 治療関連有害事象は、RmAb+PVRV群11件、ERIG+PVRV群で17件が報告された。ほとんどの有害事象は、軽度で一過性であった。

 重篤な有害事象は、RmAb+PVRV群7例で7件報告されたが、すべて治療との関連は認められなかった。ERIG+PVRV群では治療と関連がある重篤な有害事象が1件報告された。

 14日目に狂犬病ウイルス中和抗体濃度のGMCは、RmAb+PVRV群は16.05 IU/mL(95%信頼区間[CI]:13.25~19.44)に、ERIG+PVRV群は13.48 IU/mL(9.51~19.11)に上昇した(GMC比のポイント推定値:1.19[95%CI:0.82~1.72])。

 1年間のフォローアップ中、狂犬病を発症した被験者はいなかった。

 結果を踏まえて著者は、「RmAb+PVRVのPEPレジメンは、免疫原性が認められ、免疫応答は長期にわたり持続した」とまとめている。

(ケアネット)