日本語でわかる最新の海外医学論文|page:920

低線量CTによる検診は肺がん死を減少させうるか(コメンテーター:小林 英夫 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(121)より-

 本論文は、2011年に発表されたAmerican National Lung cancer Screening Trial(NLST)、の追加解析報告である。2011年報告は5万名以上という大規模集団での比較試験であり、低線量CT検診により20%の肺癌死亡減少効果が示されたエビデンスレベルの高い研究であった。

認知症高齢者5人に1人が抗コリン薬を使用

 認知症を有する人に対する抗コリン薬の使用は、認知機能に悪影響を及ぼす。しかし、米国のコミュニティベースにおける認知症高齢者の抗コリン薬治療の頻度やその使用に関連する因子については、これまでほとんど検討されていなかった。米国・ヒューストン大学のSneha D. Sura氏らは、認知症高齢者における抗コリン薬の使用状況と使用に関連する因子を明らかにすることを目的に、米国民の非入院患者の代表的な集団であるMedical Expenditure Panel Surveys (MEPS)の2005~2009年のデータをレトロスペクティブに解析した。その結果、認知症高齢者の5人に1人が抗コリン薬を使用しており、その使用に気分障害、尿失禁および居住地域が関連していることを報告した。Drugs & Aging誌オンライン版2013年7月24日号の掲載報告。

腹部への転移性皮膚がんが増大、腹腔内臓器のがんと関連?

 韓国・カトリック大学校のChul Hwan Bang氏らは、1990年代と2000年代の転移性皮膚がんの動向を調査した。韓国では、がん罹患率は全体的に増大してきているが(10万人当たり1999年210.5、2007年254.5)、部位別にみると増大にはバラつきがあり、両年代間で罹患率上位を占めるがんに変動がみられていた(たとえば、甲状腺がんと大腸がんは増大したが、子宮頸がんは減少)。Bang氏らは、それに伴い転移性皮膚がんにも変化が考えられるとして本調査を行った。

semagacestat、AD患者の認知機能を改善せず/NEJM

 γセクレターゼ阻害薬semagacestatは、アルツハイマー型認知症(AD)患者の認知機能を改善せず、皮膚がんなどのリスクを増大させる可能性があることが、米国・ベイラー医科大学のRachelle S Doody氏らの検討で示された。この結果を受けて試験は早期中止となった。論文はNEJM誌2013年7月25日号に掲載された。ADの原因物質とされるアミロイドβ(Aβ)蛋白は、アミロイド前駆体蛋白(APP)からβセクレターゼおよびγセクレターゼにより切断されて産生される。semagacestatはγセクレターゼを阻害する低分子化合物である。

新規sGC刺激薬リオシグアト、肺高血圧症に有効/NEJM

 リオシグアト(本邦では承認申請中)は、肺動脈性肺高血圧症(PAH)患者の運動能を改善し、肺血管抵抗やN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)などの改善をもたらすことが、ドイツ・ギーセン大学のHossein-Ardeschir Ghofrani氏らが行ったPATENT-1試験で示された。リオシグアトは可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)刺激薬と呼ばれる新たなクラスの薬剤で、内因性の一酸化窒素(NO)に対するsGCの反応性を高める作用、およびNOの刺激がない状態での直接的なsGC刺激作用という2つの作用機序を持ち、第1相、第2相試験でPAH患者の血行動態や運動能の改善効果が確認されていた。NEJM誌2013年7月25日号掲載の報告。

抗てんかん薬レベチラセタム、日本人小児に対する推奨量の妥当性を検証

 レベチラセタム(商品名:イーケプラ)の日本人小児への投与量について、1回10~30mg/kg・1日2回が、日本人成人に推奨されている投与量である1回500~1500mg・1日2回に相当することを、ベルギー・UCB Pharma社のNathalie Toublanc氏らが解析を行い報告した。レベチラセタムは、成人および小児(生後1ヵ月以上)のさまざまなタイプのてんかん症状に有効な第2世代の抗てんかん薬。これまで、日本人小児への推奨投与量は検討されていなかった。Drug Metabolism and Pharmacokinetics誌オンライン版2013年7月23日号の掲載報告。

加齢黄斑変性、2つのVEGF阻害薬の効果は同等/Lancet

 滲出型加齢黄斑変性の治療において、ラニビズマブ(商品名:ルセンティス)とベバシズマブ(同:アバスチン、わが国では加齢黄斑変性に対しては未承認)の効果に差はないことが、IVAN試験の2年間の追跡結果により示された。英国・クイーンズ大学ベルファストのUsha Chakravarthy氏らが、Lancet誌オンライン版2013年7月19日号で報告した。本症の治療ではラニビズマブが標準とされるが、ベバシズマブも同等の効果を持つ可能性が示唆されている。ベバシズマブは医療コストの面で優れるが、安全性に課題が残るとされている。

高齢者の認知症リスクに世代間格差/Lancet

 英国3地域で、1989~1994年と2008~2011年の認知症有病率を同一の方法で調べ、そのデータを基に同有病率の予測値を割り出したところ、最近の高齢者のほうが以前の高齢者に比べて認知症リスクが低いことが示された。英国・ケンブリッジ大学のFiona E Matthews氏らが行ったコホート研究の結果、報告された。認知症の有病率は世界的に関心が高く、将来のケア体制整備のためにも、同年齢の人がどれぐらい認知症になるかの推計が必要だが、英国においてはそのエビデンスは10年以上更新されていなかったという。そこで、1989年に始まった英国での認知機能と加齢についてのオリジナル研究「MRC CFAS」を基に、20年後に同一地域・同一方法で認知症有病率を調べ、同有病率に変化があったかを調べた。Lancet誌オンライン版2013年7月16日号掲載の報告より。

うつ病の寛解、5つの症状で予測可能:慶應義塾大学

 大うつ病性障害(MDD)の寛解予測について、特定の抑うつ症状の早期改善が指標として有用である可能性が、慶應義塾大学病院精神・神経科の櫻井 準氏らによる解析の結果、示された。これまで、MDDのアウトカムの予測に際して、個々の抑うつ症状が検討の材料となるのか明らかではなかった。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月22日号の掲載報告。

H.pylori、祖母の感染もリスク因子

 子どものヘリコバクター・ピロリ(H.pylori)感染は、母だけでなく、祖母の感染も有意なリスク因子となることが、東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センターの瓜田 純久氏らの研究により明らかになった。この研究結果により、3世代同居世帯のH.pylori感染拡大に関わる重要な感染経路が解明されたと考えられる。 Journal of paediatrics and child health誌2013年5月号(オンライン版2013年4月5日号)の報告。

腰椎手術では減圧術より固定術で心イベントの発現率が高い

 脊椎手術における周術期死亡の主たる原因は、心イベントである。米国・ラッシュ大学メディカルセンターのSteven J. Fineberg氏らは、大規模データベースを用いたレトロスペクティブ研究により、腰椎手術後の心合併症の発現頻度を調べた。その結果、心イベントの頻度は1,000例当たり6.7件であり、減圧術より固定術施行例において高く、リスク因子は「高齢」であることを明らかにした。

PCV7ワクチン導入効果は10年後も持続、高齢者への間接効果も/NEJM

 2000年に米国で導入された7価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV7)の小児への接種の効果について、肺炎関連入院の減少効果が、10年後も持続していることが、米国・ヴァンダービルト大学のMarie R. Griffin氏らによる調査の結果、報告された。また直接接種をしていない成人についても減少が認められ、とくに85歳以上高齢者について大幅な減少が確認されたという。米国においてPCV7の導入は、接種対象の若年小児以外にも年長小児や成人における“ワクチン血清型”の侵襲性肺炎球菌疾患の発生率を大幅に低下させた。2004年時点の調査では、若年小児のあらゆる肺炎関連入院が顕著に減少したことが確認されていた。しかし一方で増加が報告されていた“非ワクチン血清型”の侵襲性肺炎球菌疾患についての懸念から、PCV7導入の長期的効果および高齢者への効果についての評価が待たれていた。NEJM誌2013年7月11日号掲載の報告より。

無作為化試験の解析プラン、公表試験とレジストリ等での不一致は47%/BMJ

 無作為化試験の主要アウトカムの報告において、ベースラインや解析方法について広範で多様な補正(adjustment)が行われていることが、米国・スタンフォード大学のNazmus Saquib氏らによるメタ疫学研究の結果、明らかにされた。それら補正後の主要アウトカムを選択することで、名目上の結果の有意性が変わる可能性があり、著者は、「プロトコルにおいて、主要アウトカムについて補正プランがあることを明確にすべきであり、また解析は事前プランに準じて行われるべきである」と提言している。BMJ誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。

統合失調症の治療に伴う性機能障害、カベルゴリンにより改善

 臨床的に安定している統合失調症患者に対するカベルゴリン(商品名:カバサールほか)の投与は、精神病理状態に悪影響を及ぼすことなく性機能を改善する可能性があることが、Christina S. Kalkavoura氏らによる検討の結果、示唆された。また本検討により、高プロラクチン血症の重症度に見合ったカベルゴリンの投与量も明らかになった。Experimental and Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2013年7月8日号の掲載報告。

円形脱毛症患者は酸化ストレスや過酸化脂質が有意に増大

 円形脱毛症の人は、そうでない人と比較して、活性酵酸素(ROC)の増大に伴う酸化ストレスや過酸化脂質が有意に増大していることが、エジプト・ミヌーフィーヤ大学病院のOla Ahmed Bakry氏らによるケースコントロール試験の結果、明らかにされた。ROCや過酸化脂質の増大は、多くの皮膚傷障害で認められ、円形脱毛症においては、ROCの産生が毛包周囲の炎症性細胞で増大することが知られていた。

プレゼンにおけるベストなCOI開示方法は?~AAOSを例に~

 プレゼンテーションの前にスライドを提示して潜在的な利益相反(COI)の開示を行うことは、聴衆が提示されたデータを批判的に評価するためにほとんどの整形外科学会で行われており、インターネットサイトやプログラム集でたびたび補完されている。これまで、このスライドのフォーマットの忠実性や有用性は調査されておらず、その方法で本来の目的が達成されているのかどうかは、明らかになっていなかった。今回、メイヨークリニックのSassoon AA氏らは、2012年アメリカ整形外科学会(AAOS)年次総会において潜在的利益相反の開示状況について調査した。