日本語でわかる最新の海外医学論文|page:922

ICUでのMRSA感染症を防ぐために有効な方法とは?(コメンテーター:吉田 敦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(117)より-

 MRSAは、医療関連感染(Healthcare Associated Infections)の中で最も重要な微生物といっても過言ではなく、とくにICUでは問題になることが非常に多い。米国ではスクリーニングとして、ICU入室時に鼻腔のMRSAを調べ、接触感染予防策を徹底するよう義務づけている州がある。鼻腔にMRSAを保菌しているキャリアーからの伝播を防ぐ方法として、(1)抗菌薬であるムピロシンの鼻腔内塗布や、(2)消毒薬のクロルヘキシジンをしみ込ませた布での患者清拭を行って、除菌decolonizationできるかどうか検討され、それぞれ有効性が示されてきたが、誰にいつの時点で行えばよいかは不明であった。

てんかん合併アルツハイマー病患者、より若年で認知機能が低下

 米国・カリフォルニア大学のKeith A.Vossel氏らは、健忘型軽度認知機能障害(aMCI)患者またはアルツハイマー病(AD)における、てんかん合併の影響について検討を行った。その結果、てんかんを有する場合はてんかんのない患者に比べ、より若年で認知機能低下が発症することを報告した。著者は結果を踏まえて、「そのような患者を注意深く選別して治療することで、臨床経過を改善できる可能性がある」と結論している。JAMA Neurology誌2013年7月号の掲載報告。

ニコルスキー現象と広範囲にわたる浸潤を認めたら

 フランス・アンリモンドール病院群パリ公立支援病院(APHP)のJ. Chanal氏らは、線状IgA水疱性皮膚症(LABD)について、薬剤誘発性と自然発症的なものとの比較を行った。その結果、薬剤誘発性LABDのほうがより重篤であり、病変部は中毒性表皮壊死症に似ていることなどを明らかにした。British Journal of Dermatology誌オンライン版2013年7月1日号の掲載報告。

APLに対し、ATRA+三酸化ヒ素がATRA+化学療法より優れる可能性/NEJM

 急性前骨髄球性白血病(APL)に対し、全トランス型レチノイン酸(ATRA)+三酸化ヒ素の併用治療は、標準治療とされているATRA+化学療法と比較して少なくとも非劣性であり、優れている可能性が示された。イタリア・トール・ヴェルガータ大学のF. Lo-Coco氏ら研究グループが、第3相多施設共同の無作為化試験を行い報告した。APLに対する標準治療のATRA+化学療法の治癒率は80%を超える。一方で、三酸化ヒ素のAPLに対する有効性も高く、また、ATRAの併用療法について検討した予備試験(ATRA有無別で検討)では、高い有効性と血液毒性の軽減が示されていた。NEJM誌2013年7月11日号掲載の報告より。

心カテの閉塞性CAD診断率、北米の2州で大きな差/JAMA

 米国・ニューヨーク州の待機的心臓カテーテル検査による閉塞性冠動脈疾患(CAD)の診断率は、カナダ・オンタリオ州に比べ約15%も低いことが、臨床評価科学研究所(トロント市)のDennis T Ko氏らの検討で示された。同氏は「検査対象に含まれる低リスク例の差が原因」と推察している。同検査は、医療コストや診断効率の観点から、対象をより絞り込むべきとの意見がある一方で、重症CAD患者の同定に問題が生じたり、血行再建術が有効な患者を見逃す危険が指摘されている。同氏らはすでに、人口当たりの検査数はニューヨーク州がオンタリオ州の2倍に上り、これは疾病負担や選択基準の違いで説明可能なことを報告しているが、根本的な原因はわかっていなかった。JAMA誌2013年7月10日号掲載の報告。

関節リウマチの医療費の抑制は可能か?(コメンテーター:杉原 毅彦 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(116)より-

 生物学的製剤(TNF阻害薬 IL-6阻害薬 T細胞選択的阻害薬)の登場により、関節リウマチの疾患活動性のコントロールが可能となったが、関節リウマチの医療費が高騰している。もっともスタンダードな治療法であるメトトレキサート(MTX)で疾患活動性のコントロールが不十分であると判断した場合、リウマチ専門医はTNF阻害薬をMTXに追加することが増えてきた。

うつ病は、脳卒中発症リスクと顕著に関連

 スウェーデン・カロリンスカ研究所のIffat Rahman氏らは、うつ病ならびに抗うつ薬使用が及ぼす心血管疾患(CVD)発症への影響について、脳卒中と冠動脈疾患に分けて検討を行った。その結果、抗うつ薬を使用していないうつ病患者でCVD発症リスクが高く、脳卒中との間に顕著な関連がみられることを報告した。European Journal of Epidemiology誌オンライン版2013年7月9日号の掲載報告。

虚血性脳卒中の一次予防における予測能についての、新しいアルゴリズムQ Strokeと従来のアルゴリズムとの比較―前向きオープン試験―(コメンテーター:山本 康正 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(115)より-

 英国では、冠状動脈疾患や虚血性脳卒中・一過性脳虚血発作などの心血管病の危険因子や予測因子は、QRISK2で代表されるようなアルゴリズムが広く一般医の臨床現場で電子化され使用されている。今回、QRISK2に項目を追加して「Q Stroke」という、脳卒中・一過性脳虚血発作予測の絶対リスクを算出できるようなアルゴリズムを作成した。

アリピプラゾール経口剤⇒注射剤への切り替え、その安全性は?

 米国・カリフォルニア大学のSteven G. Potkin氏らは、経口抗精神病薬から月1回投与の持続性注射剤アリピプラゾールに切り替える際の安全性と忍容性の評価を行った。その結果、経口抗精神病薬の中間安定期を経ることなく、月1回投与のアリピプラゾールに安全に切り替え可能であることが示されたことを報告した。Current Medical Research and Opinion誌オンライン版2013年7月3日号の掲載報告。

寝室での夜間光曝露がうつ病に関連

 現代生活では夜間光曝露が増加しているが、夜間光曝露はサーカディアンリズム(生体の概日リズム)の変調に関連している。しかし、家庭における夜間光曝露がうつ病と関連しているかどうかは不明である。今回、奈良県立医科大学地域健康医学講座の大林 賢史氏らが高齢者を対象とした研究の横断解析を行った結果、一般の高齢者において自宅の夜間光曝露が抑うつ症状に有意に関連することが示唆され、寝室を夜間暗く保つことによってうつ病のリスクが低下する可能性が示された。Journal of Affective Disorders誌オンライン版2013年7月12日号に報告。

入院中に喫煙者を同定し支援することで、禁煙達成が改善/BMJ

 2次医療施設に入院中の患者に対し、喫煙状況の確認と禁煙支援による介入を行い、退院後は地域サービスによる支援の利用を促すことで、禁煙の達成、維持状況が改善可能であることが、英国・ノッティンガム市立病院のR L Murray氏らの検討で示された。15年以上前から、英米の診療ガイドラインは、入院患者の喫煙状況を確認して禁煙の意思のある喫煙者には支援を行うよう勧告しているが、2次医療施設におけるこの勧告の遂行状況は不良な状態が続いているという。一方、入院時の診断名にかかわらず、入院中に禁煙に対する動機づけを集中的に行い、退院後に禁煙支援を1ヵ月以上継続することで禁煙達成率が上昇することが示されている。BMJ誌オンライン版2013年7月8日号掲載の報告。

CO、PM2.5による大気汚染で心不全増加/Lancet

 大気中の特定のガス状物質や粒子状物質と、心不全による入院や死亡リスクとの関連が、英国エジンバラ大学のAnoop S V Shah氏らの検討で明らかとなった。心不全の有病率は加齢とともに上昇し、罹患者は世界で2,300万人以上に上ることから、公衆衛生学上の課題として浮上している。一方、WHOの推算では、世界で毎年100万人以上の死亡に大気汚染が影響を及ぼしている。大気汚染への急性曝露と心筋梗塞との関連が知られているが、心不全に対する影響はこれまで不明であった。Lancet誌オンライン版2013年7月10日号掲載の報告。

脳卒中にも抗血小板併用療法は必要か?(コメンテーター:後藤 信哉 氏)-CLEAR! ジャーナル四天王(114)より-

 心筋梗塞急性期には、多くの症例が冠動脈インターベンションを受ける。内科的治療に終わった症例であっても、急性冠症候群後1年間はアスピリンとクロピドグレルの抗血小板併用療法を行なうことにより、心血管死亡/心筋梗塞/脳卒中のリスクを低減できることが、1990年代に施行されたランダム化比較試験により示された。脳梗塞と心筋梗塞、急性冠症候群には類似点が多い。いずれも動脈硬化を基盤とする動脈系の血栓性疾患である。

抑うつ症状改善に“手紙による介入”は効果的か?:京都大学で試験開始

 「高齢うつ病患者に対し手紙を出すという介入で、抑うつ状態を改善できるのか」というプラグマティックな無作為化試験が、京都大学東南アジア研究所フィールド医学の今井必生氏、同教授・松林公蔵氏らにより開始された。「手紙による介入」は1976年に米国で、大うつ病退院患者の自殺予防を目的に初めて行われたが、地域在住の抑うつ状態の高齢者への適用は本試験が初めてだという。Trials誌オンライン版2013年7月9日号で、その試験概要が報告された。

SGLT2阻害薬追加、血糖管理不良な2型糖尿病に有用/Lancet

 ナトリウム/グルコース共輸送体(SGLT)2阻害薬カナグリフロジン(canagliflozin)は、メトホルミン単独では血糖管理が十分でない2型糖尿病患者に対する追加治療として良好な血糖改善効果を発揮し、忍容性も良好なことが、米国・ペニントン生物医学研究所のWilliam T Cefalu氏らが行ったCANTATA-SU試験で示された。メトホルミンへの上乗せが可能な既存薬の多くは体重増加や低血糖の懸念があるが、SGLT2の阻害という作用機序はこれらの問題を回避し、また尿糖排泄の促進作用により総カロリーの消費が進むため体重が減少する可能性もあるという。一方、本薬剤には軽度の浸透圧利尿がみられるため、頻尿や多尿の懸念があるという。Lancet誌オンライン版2013年7月12日号掲載の報告。

急性VTEへのアピキサバン投与、従来レジメンと非劣性で出血リスクは低下/NEJM

 急性静脈血栓塞栓症(VTE)へのアピキサバン(商品名:エリキュース)投与は、従来レジメンによる治療法と比べ、症候性VTE再発やVTE関連の死亡について非劣性が認められ、出血リスクも半減することが示された。イタリア・ペルージャ大学のGiancarlo Agnelli氏らによる、5,000例超を対象に行った無作為化二重盲検試験の結果で、NEJM誌オンライン版2013年7月1日号で発表した。

統合失調症、双極性障害の家族特性を検証!

 米国・ロザリンドフランクリン医科学大学S. Kristian Hill氏らは、統合失調症と双極性障害の神経心理学的機能障害の特徴について調べた。その結果、両疾患ともに強い認知障害が認められ、それは家族性であること、一親等の認知機能障害は、統合失調症よりも双極性障害においてより緊密にパーソナリティ障害と関連していることなどを報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2013年6月17日号の掲載報告。