日本語でわかる最新の海外医学論文|page:426

プラスグレル治療におけるde-escalation?(解説:上田恭敬氏)-1319

韓国の35病院において、PCIを施行したACS患者2,338例を対象として、1ヵ月間の標準療法(プラスグレル10mgとアスピリン100mg)後に、標準療法を続ける群とde-escalation群(プラスグレル5mgとアスピリン100mg)に無作為に割り付けを行い、1年間の予後を比較した試験の結果が報告された。主要エンドポイントは全死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、再血行再建術、脳卒中、BARC grade2以上の出血イベントの複合エンドポイントである。75歳以上、体重60kg未満、あるいは一過性脳虚血発作・脳卒中の既往がある人は除外されている。

nabパクリタキセルは既治療のNSCLCの標準治療となるか、ドセタキセルとの比較(J-AXEL)/日本肺癌学会

 九州大学・米嶋 泰忠氏が、既治療の非小細胞肺がん(NSCLC)におけるドセタキセル単剤に対するnabパクリタキセルの効果と安全性を検証したJ-AXEL試験の結果を第61回日本肺癌学会学術集会にて発表した。J-AXEL試験はわが国の8つの臨床試験グループが参加した無作為比較第III相である。 対象:既治療(2レジメン以内)の進行NSCLC患者 試験群:nabパクリタキセル(n-PTX) 対照群:ドセタキセル(DTX) 評価項目: [主要評価項目]全生存期間(OS)非劣性検証 [副次評価項目]無造悪生存期間(PFS)、全奏効割合(ORR)、安全性、QOLなど

日本におけるCOVID-19発生時の医療従事者のメンタルヘルス

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、世界中に蔓延している。日本赤十字社医療センターの粟野 暢康氏らは、COVID-19パンデミック中の日本における医療従事者の不安症、うつ病、レジリエンス、その他の精神症状について評価を行った。Internal Medicine誌2020年号の報告。  2020年4月22日~5月15日に日本赤十字社医療センターの医療従事者を対象に調査を実施した。不安症、うつ病、レジリエンスの評価には、それぞれ日本語版の不安尺度GAD-7、うつ病自己評価尺度CES-D、レジリエンス測定尺度CD-RISC-10を用いた。さらに、以下の3要素化からなる独自のアンケートを追加した。(1)感染に対する不安や恐れ(2)隔離および不当な扱い(3)職場でのモチベーションと逃避行動

COVID-19の血栓症発生率、他のウイルス性肺炎の3倍

 血栓症は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の際立った特徴だが、COVID-19以外のウイルス性呼吸器疾患による血栓症の発生率は不明である。今回、米国・ニューヨーク大学のNathaniel R. Smilowitz氏らが、米国でCOVID-19以外の急性ウイルス性呼吸器疾患で入院した患者における血栓症の発生率を調べた結果、2020年にニューヨークにおいてCOVID-19で入院した3,334例での血栓症発生率より有意に低かった。American Heart Journal誌オンライン版2020年11月9日号に掲載。  本調査の対象は、2002~14年にCOVID-19以外のウイルス性呼吸器疾患で入院した18歳以上の成人で、主要アウトカムは、ICD-9による心筋梗塞(MI)、急性虚血性脳卒中、静脈血栓塞栓症(VTE)などの静脈および動脈血栓イベントの複合とした。

70歳以上、ビタミンD・ω3・運動による疾患予防効果なし/JAMA

 併存疾患のない70歳以上の高齢者において、ビタミンD3、オメガ3脂肪酸、または筋力トレーニングの運動プログラムによる介入は、拡張期または収縮期血圧、非脊椎骨折、身体能力、感染症罹患率や認知機能の改善について、統計学的な有意差をもたらさなかったことが、スイス・チューリッヒ大学のHeike A. Bischoff-Ferrari氏らが行った無作為化試験「DO-HEALTH試験」の結果で示された。ビタミンD、オメガ3および運動の疾患予防効果は明らかになっていなかったが、著者は「今回の結果は、これら3つの介入が臨床アウトカムに効果的ではないことを支持するものである」とまとめている。JAMA誌2020年11月10日号掲載の報告。

機械学習モデルは統計モデルよりも優れるか/BMJ

 機械学習および統計モデルについて、同一患者の臨床的リスクの予測能を調べた結果、モデルのパフォーマンスは同等だが、予測リスクはさまざまに異なることが、英国・マンチェスター大学のYan Li氏らによる検討で示された。ロジスティックモデルと一般的に用いられる機械学習モデルは、中途打ち切りを考慮しない長期リスクの予測には適用すべきではなく、QRISK3のような生存時間分析モデルが、中途打ち切りを考慮し説明も可能であり望ましいことが示されたという。結果を踏まえて著者は、「モデル内およびモデル間の一貫性のレベルを評価することを、臨床意思決定に使用する前にルーチンとすべきであろう」と指摘している。QRISKやフラミンガムといった心血管疾患のリスク予測モデルは、臨床で幅広く使われるようになっている。これらの予測にはさまざまな技術が用いられるようにもなっており、最近の研究では、機械学習モデルがQRISKのようなモデルよりも優れているといわれるようになっていた。BMJ誌2020年11月4日号掲載の報告。

永遠の命題PCI vs.CABG、SYNTAXスコアII 2020開発は、本当に進化か?(解説:中川義久氏)-1318

冠血行再建におけるPCI vs.CABGは永遠の命題なのであろう。次々と情報が提供される。その度に、霧が晴れるようにスッキリしていくのではなく、出口のない迷宮をさまよう気持ちになる。PCI vs.CABGの比較において、最も重要で代表的な臨床試験が2005年から2007年に施行されたSYNTAX試験である。3枝疾患または左主幹部病変を有する患者を、PCIかCABGに無作為に割り付けて比較したものである。このSYNTAX試験の登録患者を10年後まで追跡するSYNTAX Extended Survival(SYNTAXES)試験から、長期予後の予測モデルである「SYNTAXスコアII 2020」が開発されたことが、2020年10月8日付のLancet誌に報告された。執筆者は、当該施設に留学していた日本人であり、その努力と貢献はうれしく、賞賛に値する。

AZ社の新型コロナワクチン有効率最大90%、貯蔵はより容易か/第II/III相試験中間解析

 アストラゼネカ社は、COVID-19に対するウイルスベクターワクチンAZD1222の第II/III相および第III相試験の中間分析の結果、最大90%の有効率が示されたことを11月23日に発表した。2つの異なる投与レジメンで有効性が示され、平均70%の有効率が示されている。条件付きまたは早期承認のためのデータを世界各国の規制当局に提出し、承認取得次第、2021年に最大30億回分のワクチンを製造できるよう準備を進めているという。  AZD1222は、SARS-CoV-2ウイルススパイクタンパク質の遺伝物質を含む、複製欠損および弱毒化されたチンパンジー由来の風邪アデノウイルスを用いて作製される。ワクチン接種後スパイクタンパク質が生成され、感染した場合に免疫系を刺激し、SARS-CoV-2ウイルスを攻撃する。

乾癬患者における、COVID-19の重症化因子は?

 COVID-19への決定的な対策はいまだ見いだされていないが、入院・重症化リスクを捉えることで死亡を抑え込もうという世界的な努力が続いている。本稿では、乾癬患者のCOVID-19に関する国際レジストリ「PsoProtect」へ寄せられた25ヵ国からの臨床報告に基づき、英国・Guy's and St Thomas' NHS Foundation TrustのSatveer K. Mahil氏らが乾癬患者の入院・重症化リスクを解析。「高齢」「男性」「非白人種」「併存疾患」がリスク因子であることを明らかにした。また、乾癬患者は複数の疾患負荷と全身性の免疫抑制薬の使用によってCOVID-19の有害アウトカムのリスクが高まる可能性があるとされているが、これまでデータは限定的であった。今回、著者らは「生物学的製剤の使用者は、非使用者と比べて入院リスクが低かった」とも報告している。Journal of Allergy and Clinical Immunology誌オンライン版2020年10月16日号掲載の報告。

双極性障害と統合失調症の診断予測因子

 初回エピソード精神病(FEP)コホートにおける双極性障害と統合失調症の診断予測に役立つ可能性のあるベースライン特性と臨床的特徴を特定するため、スペイン・バルセロナ大学のEstela Salagre氏らが、検討を行った。The Journal of Clinical Psychiatry誌2020年11月3日号の報告。  本研究は、2009年4月~2012年4月に募集したFEP患者355例のコホートを評価したプロスペクティブ自然主義的研究である。12ヵ月のフォローアップ期間にDSM-IV診断で最終的に双極性障害および統合失調症と診断された患者のベースライン特性を比較した。フォローアップ時の双極性障害診断の予測因子を評価するため、バイナリロジスティック回帰モデルを用いた。

孤独を感じる人のCOVID-19に対する予防行動とは?

 孤独感がCOVID-19予防行動の低下に関連しているという報告が、早稲田大学のAndrew Stickley氏らの研究によって明らかとなった。Journal of Public Health誌オンライン版2020年9月3日号の報告。  孤独感と健康行動の悪化との関連性について数多くの報告があるが、孤独感とCOVID-19予防行動の関連性についてはほとんど研究されていない。  孤独感とCOVID-19予防行動の関連性について、2020年4月と5月に2,000人の日本人を対象にオンライン調査を実施した。孤独感は3項目の孤独尺度にて評価し、孤独感と予防行動の関連性については二変量線形回帰分析を、孤独感と予防行動13件(外出後/食事前に手を洗う、マスクを着用する、うがい、咳やくしゃみ時にティッシュを使用する、物に触れた後に顔に触ることを避ける、触れるものを頻繁に消毒する、外出/旅行をキャンセルする、予定していたイベントをキャンセルする、人込みを避けて自宅にいる、集会やパーティーへの参加を控える、病気の人/高齢者への接触を避ける、風邪の場合に家族以外への接触を避ける、2メートル以上の距離を保つ)それぞれとの関連性についてはロジスティック回帰分析を実施した。

75歳以上への脂質低下療法、心血管イベントの抑制に有効/Lancet

 系統的レビューとメタ解析には、スタチン/強化スタチンによる1次/2次治療に関するCholesterol Treatment Trialists' Collaboration(CTTC)のメタ解析(24試験)と、5つの単独の試験(Treat Stroke to Target試験[スタチンによる2次予防]、IMPROVE-IT試験[エゼチミブ+シンバスタチンによる2次予防]、EWTOPIA 75試験[エゼチミブによる1次予防、日本の試験]、FOURIER試験[スタチンを基礎治療とするエボロクマブによる2次予防]、ODYSSEY OUTCOMES試験[スタチンを基礎治療とするアリロクマブによる2次予防])の6つの論文のデータが含まれた。

未就学児へのアジスロマイシン集団配布で耐性因子が増加/NEJM

 アジスロマイシンの年2回、4年間の集団配布により、マクロライド系抗菌薬のみならず、マクロライド系以外の抗菌薬の耐性遺伝子が増大する可能性があることが、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のThuy Doan氏らが実施したMORDOR試験の補助的調査で示された。研究の詳細は、NEJM誌2020年11月12日号に掲載された。サハラ以南のアフリカでは、就学前の子供へのアジスロマイシンの年2回、2年間の配布により、小児死亡率は低下するものの、マクロライド耐性の増大という代償を要することが報告されている。また、より長期の年2回アジスロマイシン投与が、体内の抗菌薬耐性遺伝子の集積場所である腸レジストーム(gut resistome)に影響を及ぼすかは明らかにされていないという。

統合失調症に対するルラシドンの長期評価

 英国・サノビオン・ファーマシューティカルズ・ヨーロッパ・リミテッドのPreeya J. Patel氏らは、統合失調症におけるルラシドンの長期有用性を評価するため、二重盲検(DB)アクティブコントロール試験と非盲検(OLE)試験の事後分析を実施した。Neurology and Therapy誌オンライン版2020年10月24日号の報告。  DB試験では、統合失調症患者をルラシドンまたはリスペリドンの12ヵ月間投与にランダムに割り付けた。OLE試験では、すべての患者に対し6ヵ月間のルラシドン投与を行った。治療による有害事象(TEAE)の評価を行った。有効性の評価には、再発率(DB試験のみ)、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)、臨床全般印象度の重症度(CGI-S)、Montgomery Asbergうつ病評価尺度を用いた。

日本人のマスク率が高いワケ

 マスクを着用することで不安は解消されるが、リスク軽減の期待には影響しないことが、同志社大学の中谷内 一也氏らが行った日本人対象の研究によって明らかとなった。Frontiers in Psychology誌2020年8月4日号の報告。  COVID-19に対するマスクの着用は、着用者の感染を防ぐことではなく、ほかの人への感染を防ぐことでパンデミックの蔓延を抑える。日本ではパンデミックの初期段階からマスクを着用する習慣が広まり、マスクの供給不足を引き起こした。

COVID-19の予防に対する意識が低い人とは?

 COVID-19に対する予防措置を講じても、約20%の人が適切な実施に対して消極的であることが、東京大学医科学研究所の武藤 香織氏らの研究によって明らかとなった。消極的な人の特徴として、男性、若年(30歳未満)、未婚、低所得世帯、飲酒または喫煙の習慣、外向性の高さが挙げられた。PLOS ONE誌2020年6月11日号の報告。  COVID-19に対して予防措置や自制の呼び掛けといった対策を講じ、協力を要請した状況下で、予防的行動がいつ、どのように変化したか調査した。クォータサンプリングに基づき、オンラインプラットフォームで実施された横断調査のミクロデータ(20~64歳、回答者数合計1万1,342人)を使用した。

睡眠時間がうつ病やQOLに及ぼす影響~日本におけるインターネット調査

 日中の眠気や睡眠障害の有無で調整後の一般集団における睡眠時間とQOLまたはうつ病との関連を評価した研究は、これまでなかった。国立精神・神経医療研究センターの松井 健太郎氏らは、これらの関連を調査するため、Webベースの横断調査を実施した。Sleep Medicine誌オンライン版2020年10月15日号の報告。  対象は、20~69歳の8,698人。平日の睡眠時間、日中の眠気、睡眠障害、QOL、うつ病との関連を調査した。エプワース眠気尺度、ピッツバーグ睡眠質問票(睡眠時間の項なし)、健康関連QOL評価尺度SF-8、CES-Dうつ病自己評価尺度を用いて評価を行った。

オシメルチニブ、T790M変異陽性NSCLCの2次治療のOS結果(AURA3最終)/Ann Oncol

 第3世代EGFR-TKIオシメルチニブについて検討した、AURA3試験の最終解析結果が報告された。同試験においてオシメルチニブは、既治療のEGFR T790M変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)患者に対して、プラチナ併用化学療法と比較し、無増悪生存(PFS)期間および奏効率を有意に改善することが示されていた。今回、米国・テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのV A Papadimitrakopoulou氏らは、最終的な全生存(OS)期間について解析を行い、オシメルチニブ群とプラチナ+ペメトレキセド群に統計学的な有意差は認められなかったと発表した。ただし、示された結果について著者は、プラチナ+ペメトレキセド群からオシメルチニブ群へのクロスオーバーが高率であったことを反映している可能性があると指摘している。Annals Oncology誌2020年11月号掲載の報告。

心血管リスク患者へのフェブキソスタット、アロプリノールに非劣性/Lancet

 心血管リスク因子を有する痛風患者において、フェブキソスタットはアロプリノールと比較し、主要評価項目である複合心血管イベントに関して非劣性であることが示された。長期投与による死亡あるいは重篤な有害事象のリスク増加も確認されなかった。英国・ダンディー大学のIsla S. Mackenzie氏らが、多施設共同前向き無作為化非盲検非劣性試験「FAST試験」の結果を報告した。フェブキソスタットとアロプリノールはともに痛風の治療に用いられる尿酸降下薬であるが、フェブキソスタットの心血管系への安全性に懸念があり、欧州医薬品庁は安全性をアロプリノールと比較する市販後臨床試験の実施を勧告していた。Lancet誌オンライン版2020年11月9日号掲載の報告。

米空母内の新型コロナ感染リスク、甲板上より船内で高い/NEJM

 米原子力空母セオドア・ルーズベルト(乗組員4,779人)において、2020年3月23日~5月18日に新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のアウトブレイクが発生、U.S. Navy Bureau of Medicine and SurgeryのMatthew R. Kasper氏らがその調査結果をまとめた。SARS-CoV-2の感染は、狭苦しい閉鎖的な空間で無症状および症状発現前の感染者によって促進され、空母内で急速に拡大したという。SARS-CoV-2陽性と判定された乗組員の約半数は、無症状であった。NEJM誌オンライン版2020年11月11日号掲載の報告。