日本語でわかる最新の海外医学論文|page:423

新型コロナウイルス、皮膚表面での生存期間はインフルの5倍

 新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)を巡っては、空気中や物質表面上での生存期間がこれまでの研究で明らかになっているが、ヒトの皮膚表面における生存期間は不明であった。今回、京都府立医科大学の廣瀬 亮平氏ら研究チームが、法医解剖献体から採取した皮膚上におけるウイルスの安定性を検証したところ、SARS-CoV-2は皮膚表面上で9時間程度生存し、1.8時間程度で不活化されるインフルエンザウイルスに比べ大幅に生存時間が長いことがわかった。本研究をまとめた論文は、Clinical Infectious Diseases誌2020年10月3日号に掲載された。

ロコモに新しくロコモ度3を設定/日本整形外科学会

 日本整形外科学会(理事長:松本 守雄氏[慶應義塾大学医学部整形外科学教室 教授])は、ロコモティブシンドローム(ロコモ)の段階を判定するための臨床判断値に新たに「ロコモ度3」を設定したことを公表し、記者説明会を開催した。  「ロコモティブシンドローム」とは運動器の障害のため、移動機能が低下した状態を指す。運動器の障害は高齢者が要介護になる原因の1位であり、40代以上の日本人の4,590万人が該当するという。ロコモが重症化すると要介護状態となるが、その過程で運動器が原因の「身体的フレイル」を経ることがわかり、「身体的フレイル」に相当するロコモのレベルを知り、対策をとることが重要となっている。 整形外科学会では全年代におけるロコモ判定を目的として2013年に「ロコモ度テスト」を発表、2015年にロコモ度テストに「ロコモ度1」「ロコモ度2」からなる「臨床判断値」を制定した。その後、ロコモがどの程度進行すれば投薬や手術などの医療が必要となり、医療によってロコモがどのように改善するかの検証を行ってきた。そして、ロコモとフレイルの関係性を研究した成果をもとに、新しい臨床判断値として今回「ロコモ度3」を制定した。

胃、食道胃接合部、食道腺がん1次治療におけるニボルマブ+化学療法の成績(CheckMate-649試験)/ESMO2020

 ドイツ・Johannes-Gutenberg大学のMarkus Moehler氏は、HER2陰性の未治療の転移を有する胃、食道胃接合部、食道腺がん患者を対象としたニボルマブ・化学療法併用(NIVO+Chemo群)、ニボルマブ+イピリムマブ併用(NIVO+IPI群)と、化学療法(Chemo群)を比較した無作為化非盲検第III相臨床CheckMate-649試験での、ニボルマブ併用群と化学療法群との比較結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress2020)で発表。Combined positive score(CPS)5以上のPD-L1陽性患者では、ニボルマブと化学療法併用が化学療法単独と比較して無増悪生存期間(PFS)と全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長を認めたと報告した。

レビー小体型認知症とアルツハイマー病を鑑別する新たな方法

 レビー小体型認知症(DLB)とアルツハイマー型認知症(AD)を鑑別するうえで、SPECTによる局所脳血流(rCBF)の評価が有用であり、指標としてCingulate Island Signスコア(CIScore)が用いられる。しかし、いくつかの症例ではADの偽陽性が報告されている。この問題を解決するため、福岡大学の本田 学氏らは、後頭葉と海馬傍回のrCBFを組み込んだ新たな鑑別診断法の開発を試みた。Japanese Journal of Radiology誌オンライン版2020年9月16日号の報告。  DLB患者27例とAD患者31例を対象に、Tc-99 m-ECD SPECTを実施した。両側上後頭回、中後頭回、下後頭回、楔部、扁桃体、海馬、海馬傍回の平均Zスコアを評価した。DLBの基準は次の(1)~(4)とし、それぞれの診断能力を比較した。(1)CIScoreが0.27未満、(2)平均Zスコア1超の後頭回が3つ以上、(3)平均Zスコア1超の海馬領域が1つ以下、(4)は(2)と(3)両方の組み合わせ。

PD-L1陽性NSCLC、アテゾリズマブへのベバシズマブ上乗せ効果は?(WJOG@Be)/ESMO2020

 抗PD-1/L1抗体の単剤治療は、高PD-L1発現非小細胞肺がん(NSCLC)における生命予後の改善を示す。一方、抗VEGF抗体ベバジズマブは、前臨床において抗PD-1/L1抗体の活性を強化することが報告されている。九州がんセンター 呼吸器腫瘍科の瀬戸 貴司氏は、未治療のPD-L1高発現NSCLCに対する抗PD-L1抗体アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法に関する非盲検単群第II相WJOG@Be試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。同併用療法が高い奏効率を示し、Grade4以上の有害事象はなかったと報告した。

EGFR変異NSCLC1次治療におけるapatinib+ゲフィチニブ第III相試験(ACTIVE)/ESMO2020

 中国・中山大学のLi Zhan氏は進行EGFR変異陽性NSCLCにの1次治療におけるVEGFR2-TKIのapatinibとEGFR-TKIゲフィチニブの併用を評価する無作為化二重盲検第III相試験ACTIVEの結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で発表。apatinib併用群の有意な無増悪生存期間(PFS)を報告した。

4価HPVワクチン、浸潤性子宮頸がんリスクを大幅に低減/NEJM

 スウェーデンの10~30歳の女児および女性は、4価ヒトパピローマウイルス(HPV)ワクチンの接種により、浸潤性子宮頸がんのリスクが大幅に低く、同リスクは接種開始年齢が若いほど低いことが、スウェーデン・カロリンスカ研究所のJiayao Lei氏らの調査で明らかとなった。研究の詳細は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。これまでに、子宮頸部高度異形成(Grade2または3の子宮頸部上皮内腫瘍[CIN2+、CIN3+])の予防における4価HPVワクチンの効能と効果が確認されている。一方、4価HPVワクチン接種と接種後の浸潤性子宮頸がんリスクとの関連を示すデータはなかったという。

PARP阻害薬オラパリブは去勢抵抗性前立腺がん患者においてOSを延長(解説:宮嶋哲氏)-1296

オラパリブはDNA修復に関与するポリADPリボースポリメラーゼを阻害するPARP阻害薬である。がん抑制遺伝子であるBRCA1やBRCA2に変異を有する悪性腫瘍は本剤に感受性が高く、わが国において2018年に「白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣癌における維持療法」を効能・効果として承認され、さらに同年「がん化学療法歴のあるBRCA遺伝子変異陽性かつHER2陰性の手術不能又は再発乳癌」についても適応が承認された。本研究は前治療として新規ホルモン薬による治療(エンザルタミド、アビラテロン)を行い、病勢進行を認めたmCRPC患者を対象とした、オラパリブの安全性と有効性を検討するPROfound trialの第III相ランダム化試験であり、今回の報告は副次評価項目であるOSに注目している。

ミズイボへの新規外用剤、有効性・安全性を確認

 子供に多いことで知られるウイルス性皮膚感染症、いわゆるミズイボへの新規外用剤VP-102の、第III相臨床試験の結果が報告された。VP-102は、1回使い切りタイプの独自の薬剤送達デバイスで、カンタリジン0.7%(w/v)を含有する局所フィルム形成溶液を病変部に塗布するというもの。病変塗布部が区別しやすいよう外科用染料ゲンチアナバイオレットが使われ、また苦味を加味して潜在的な経口摂取の防止が図られているという。今回、カリフォルニア大学サンディエゴ校のLawrence F. Eichenfield氏らが、2歳以上の伝染性軟属腫(MC)患者への有効性と安全性を検討した2件の第III相臨床試験の結果を報告した。

糖尿病併存のCOVID-19治療、入院時のシタグリプチン投与が有用

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を巡っては、高血圧症や糖尿病などの併存疾患を有する患者で転帰不良となることがこれまでの研究で明らかになっており、併存疾患に応じた治療を模索する必要がある。イタリア・パヴィア大学のSebastiano Bruno Solerte氏らは、COVID-19治療のために入院した2型糖尿病患者を対象に、標準治療(インスリンなど)にDPP-4阻害薬シタグリプチンを追加したケースと、標準治療のみのコントロールを比較する多施設後ろ向きケースコントロール研究を行った。その結果、シタグリプチン追加群で死亡率の低下と臨床転帰の改善がみられた。Diabetes Care誌オンライン版2020年9月2日号に掲載。

進行がん患者のせん妄に対する抗精神病薬の安全性と有効性

 千里中央病院の前田 一石氏らは、緩和ケアを受けている進行がん患者のせん妄に対する抗精神病薬の安全性および有効性を明らかにするため、検討を行った。General Hospital Psychiatry誌オンライン版2020年9月14日号の報告。  本研究は、緩和ケアまたはサイコオンコロジーの入院患者で、抗精神病薬を投与されているせん妄を有する進行がん患者を、連続して登録したプロスペクティブ観察研究である。せん妄評価尺度98(DRS、範囲:0~39)の調整済み平均スコアを、一般化推定方程式を用いて、ベースライン時と3日目に収集した。また、7日間にわたる有害事象を評価した。

アテゾリズマブ単剤、NSCLC1次治療でOS延長(IMpower110)/NEJM

 非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、アテゾリズマブ単剤はプラチナ製剤ベースの化学療法と比較して、組織型を問わず、プログラム細胞死リガンド1(PD-L1)の発現量が多い患者の全生存(OS)期間を延長させることが、米国・イェール大学医学大学院のRoy S. Herbst氏らが行った「IMpower110試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年10月1日号に掲載された。PD-L1発現NSCLCで転移のある患者の1次治療において、抗PD-L1モノクローナル抗体アテゾリズマブはプラチナベースの化学療法と比較して、有効性と安全性が優れるか否かは明らかにされていなかった。

心房細動治療が変わるEAST-AFNET 4試験(解説:高月誠司氏)-1294

心房細動に対する治療方針として、リズムコントロールとレートコントロールを比較したランダム化試験が約20年前にいくつか行われ、リズムコントロールの優位性は示せなかった。その後心房細動のリズムコントロールの手段としてカテーテルアブレーションが発達したが、こちらも薬物療法と比較して予後を改善したという結果は、低心機能の心不全例を対象としたランダム化比較試験でのみ得られている。結局症状のない心房細動に対しては、レートコントロールで良いという根拠になっている。本EAST-AFNET 4試験は、1年以内に発症した心房細動に対する治療方針をリズムコントロールとレートコントロールに分けて比較したランダム化比較試験である。対象は2,789人、年齢70.3歳、CHA2DS2-VAScスコア3.3点と比較的ハイリスクの患者を対象とした。結果的に主要エンドポイントである心血管死、脳卒中、心不全や急性冠症候群による入院の複合エンドポイントは、リズムコントロール群で3.9%/人年、レートコントロール群で5.0%/人年で有意にリズムコントロール群で少なかった(ハザード比:0.79、96%信頼区間:0.66~0.94、p=0.005)。

進行乳がんにおける内分泌療法+BVへの切り替え、患者報告アウトカムの結果(JBCRG-M04)/ESMO2020

 進行・再発乳がんに対する標準的化学療法は、病勢進行まで同レジメンを継続することだが、化学療法誘発性末梢神経障害(CIPN)や倦怠感などの用量依存的な影響が問題になる場合がある。今回、エストロゲン受容体(ER)陽性HER2陰性進行・再発乳がん患者に対して、1次化学療法のパクリタキセル(wPTX)+ベバシズマブ(BV)療法から、内分泌療法(ET)+BVの維持療法に切り替えた場合の患者報告アウトカム(PRO)について、化学療法継続と比較したところ、身体的健康状態(PWB)と倦怠感を有意に改善し、重度のCIPNを防いだことが示された。欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、福島県立医科大学の佐治 重衡氏が報告した。

食道がん、食道胃接合部がんに対するニボルマブの術後補助療法(CheckMate-577)/ESMO2020

 米国・ベイラー大学のRonan J. Kelly氏は、術前補助化学放射線療法で病理学的完全奏効(pCR)が得られなかった切除可能な食道がん・食道胃接合部(GEJ)がんの切除後の術後補助療法でニボルマブ投与とプラセボ投与を比較した無作為化二重盲検第III相臨床試験であるCheckMate-577試験の結果を欧州臨床腫瘍学会(ESMO2020 Virual Congress 2020)で発表。ニボルマブによる術後補助療法は、プラセボと比較して統計学的に有意な無病生存期間(DFS)の延長を認めたと報告した。

双極性うつ病に対するルラシドンの有用性~他の非定型抗精神病薬との比較

 藤田医科大学の岸 太郎氏らは、双極性うつ病に対するルラシドン(LUR)の有効性および安全性を評価するため、システマティックレビュー、変量効果モデル、日本での第III相試験のネットワークメタ解析を実施し、オランザピン(OLZ)やクエチアピン徐放製剤(QUE-XR)との比較検討を行った。Neuropsychopharmacology Reports誌オンライン版2020年9月9日号の報告。  本研究には、双極性うつ病患者を対象とした日本での二重盲検ランダム化プラセボ対照第III相試験のデータを含めた。主要アウトカムは治療反応率、副次的アウトカムは寛解率、Montgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)合計スコアの改善、治療中止率、個々の有害事象発生率とした。

内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性/日本感染症学会

 2020年8月に現地とオンラインのハイブリッド方式で開催された日本感染症学会学術講演会において、名古屋大学医学部附属病院の手塚 宜行氏(中央感染制御部)が「内科医も知っておきたい小児感染症の特殊性」とのテーマで発表を行った。  手塚氏によると、小児感染症が成人と異なる事項は、以下の4点に集約される。 1)年齢(月齢)によってかかる病気が変わる 2)ウイルス感染症が多い  3)検体採取が困難なケースが多い 4)病勢の進行が速い

FDA、悪性胸膜中皮腫に対するニボルマブ/イピリムマブの1次治療を承認

 米国食品医薬品局(FDA)は、2020年10月3日、切除不能な悪性胸膜中皮腫(MPM)の成人患者の1次治療に、ニボルマブとイピリムマブの併用を承認した。適応症はニボルマブ360 mg 3週間ごとイピリムマブ1mg / kg 6週間ごと投与。  今回の承認は、切除不能MPM患者を対象に、ニボルマブとイピリムマブの併用と、シスプラチンまたはカルボプラチンとペメトレキセドの標準併用化学療法を評価した無作為化非盲検試験第III相CheckMate743試験の中間解析の結果に基づくもの。

ダパグリフロジン、CKDの転帰を改善/NEJM

 慢性腎臓病(CKD)患者では、糖尿病の有無にかかわらず、SGLT2阻害薬ダパグリフロジンはプラセボと比較して、推算糸球体濾過量(GFR)の持続的な50%以上の低下や末期腎不全、腎臓または心血管系の原因による死亡の複合の発生リスクを有意に低下させることが、オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J L Heerspink氏らが行った「DAPA-CKD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2020年9月24日号に掲載された。CKD患者は、腎臓や心血管系の有害な転帰のリスクが高いとされる。SGLT2阻害薬は、2型糖尿病患者の大規模臨床試験において、糖化ヘモグロビンを低下させるとともに、腎臓や心血管系の転帰に良好な効果をもたらすと報告されている。一方、CKD患者における糖尿病の有無別のダパグリフロジンの有効性は知られていないという。

COVID-19、ECMO導入患者の院内死亡率は?/Lancet

 体外式膜型人工肺(ECMO)を導入された新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者では、装着から90日後の推定死亡率、および入院中の患者を除く最終的に死亡または退院となった患者の死亡率はいずれも40%未満であり、これは世界の多施設のデータであることから、COVID-19患者で一般化が可能な推定値と考えられることが、米国・ミシガン大学のRyan P. Barbaro氏らExtracorporeal Life Support Organization(ELSO)の検討で明らかとなった。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2020年9月25日号に掲載された。いくつかの大規模な医療組織では、COVID-19関連の急性低酸素性呼吸不全患者に対してECMOによる補助が推奨されている。一方、COVID-19患者でのECMO使用に関する初期の報告では、きわめて高い死亡率が示されているが、COVID-19患者におけるECMO使用に関する大規模な国際的コホート研究は行われていなかった。