日本語でわかる最新の海外医学論文|page:425

日本人統合失調症患者における経皮吸収型ブロナンセリンのD2受容体占有率

 経皮吸収型の抗精神病薬は、アドヒアランスの改善など、潜在的なベネフィットを有している。大日本住友製薬のHironori Nishibe氏らは、経皮吸収型ブロナンセリン1日1回の使用による線条体のドパミンD2受容体占有率について調査を行った。The International Journal of Neuropsychopharmacology誌オンライン版2020年9月16日号の報告。  本研究は、ブロナンセリン錠8mg/日または16mg/日で治療された、日本人統合失調症外来患者18例(20~64歳、スクリーニング時の陽性・陰性症状評価尺度[PANSS]スコア120未満)を対象とした非盲検第II相臨床試験である。対象患者は、2~4週間のブロナンセリン錠による治療後、経口用量に基づき、2~4週間の経皮吸収型ブロナンセリン1日1回使用の1日量10mg、20mg、40mg、60mg、80mgに割り付けられた。主要評価項目は、ブロナンセリンの線条体ドパミンD2受容体占有率とし、[11C]raclopride-PET画像を用いて測定した。副次評価項目は、用量別の受容体占有率の評価、PANSSおよび臨床全般印象度-重症度(CGI-S)スコアの変化、アドヒアランスに対する患者の意向、経皮吸収型製剤の粘着性とした。

CAR-T細胞製剤liso-cel、再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫でCR53%/Lancet

 CD19を標的とする自家キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T細胞)製剤lisocabtagene maraleucel(liso-cel)は、さまざまな組織学的サブタイプや高リスクの病型を含む再発・難治性の大細胞型B細胞性リンパ腫患者の治療において、高い客観的奏効率をもたらし、重度のサイトカイン放出症候群や神経学的イベントの発生率は低いことが、米国・マサチューセッツ総合病院のJeremy S. Abramson氏らが行った「TRANSCEND NHL 001試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌2020年9月19日号に掲載された。liso-celは、さまざまなサブタイプの再発・難治性大細胞型B細胞性リンパ腫で高い奏効率と持続的な寛解が報告されているが、高齢者や併存疾患を持つ患者、中枢神経リンパ腫などの高リスク集団のデータは十分でないという。

マイナンバーは医学研究にとっても不可欠だ(解説:折笠秀樹氏)-1292

セクハラと自殺との関係を調べるときどうするだろうか。因果関係なので縦断研究が必要だろう。介入研究は無理なので観察研究になるだろう。だからコホート研究になる。しかし、セクハラと自殺を取り入れたコホート研究はあまりない。では、どうやって研究したのだろうか。セクハラの実態に関する調査はよく行われている。それはいわゆる横断研究である。今回もそうだったようだ。横断研究では因果関係は捉えられない。そこでどうしたかというと、国民背番号をIDとして、患者医療データ(patient register)をリンクさせたようだ。自殺あるいは自殺企図というのは患者医療データから入手した。セクハラの実態は横断研究から入手した。どちらも日付がわかるので、セクハラを受けてから自殺あるいは自殺企図までの時間に関する比例ハザード分析ができた。

胃がんのニボルマブ+化学療法1次治療、PFS改善(ATTRACTION-4)/ESMO2020

 国立がん研究センター中央病院消化管内科の朴 成和氏は、HER2陰性(HER2-)で未治療の切除不能な進行・再発の胃・胃食道接合部がん患者を対象としたニボルマブ+化学療法併用群(ニボルマブ併用療法群)とプラセボ+化学療法群(化学療法群)を比較した第II/III相臨床試験であるATTRACTION-4試験の無作為化二重盲検第III相試験部分の結果をESMO2020で発表。ニボルマブ併用により無増悪生存期間(PFS)は統計学的に有意な延長を認めたものの、全生存期間(OS)では統計学的に有意な延長は認めなかったと報告した。 ・対象: 未治療のHER2-進行・再発胃・食道胃接合部がん(PS 0~1)724例 ・試験群:ニボルマブ併用療法群(362例): ニボルマブ360mg/日3週ごと+化学療法はSOX(S-1+オキサリプラチン3週ごと)あるいはCapeOX(カペシタビン+オキサリプラチン3週ごと)

10月からロタワクチン定期接種化、知っておくべきことは?

 10月1日より、ロタウイルス胃腸炎のワクチンが定期接種となった。これに先立ってMSDが主催したプレスセミナーにおいて、日本大学の森岡 一朗氏(小児科学系小児科学分野)が疾患の特性やワクチン接種時の注意点について解説した。  ロタウイルス胃腸炎は冬の終わりから春にかけて流行する急性疾患で、下痢、嘔吐、発熱などの症状を引き起こす。ロタウイルスワクチンが導入される前は、国内で毎年約80万人が罹患し、7~8万人が入院し1)、数名が死亡していた。感染するのは5歳までの乳幼児が中心だが、5歳までの入院を要する下痢症に占める割合は42~58%と推計される2)。最近では5歳以上の幼児の感染が増加しており、10~20代の感染報告もある。糞口感染し、感染力が非常に強いことが特徴で、先進国においても乳幼児下痢症の主要原因であり、院内感染や保育所等での集団感染の報告例も多い。感染した場合、抗ウイルス薬などの治療法はなく、経口補液や点滴などの対症療法が中心となる。

患者人生に寄り添った治療法説明のために-協働意思決定の普及を

 Shared Decision Making (SDM、協働意思決定)をご存じだろうか? SDMとは、医療者と患者が治療法のエビデンスや患者を取り巻く環境、患者とその家族の治療生活に対する希望についての情報を共有し、一緒に治療方針を決めていくプロセスのことである。治療が患者のその後の人生を大きく左右するがんや末期腎不全などでは、早い段階で患者と医療者が話し合いの場を持ち互いに理解することが重要なため、このようなプロセスが必要とされる。  たとえば、末期腎不全患者に腎代替療法を説明する際、患者には腹膜透析、血液透析、腎移植の3つの選択肢がある。ところが、現状では医師の判断により1つの治療法しか患者に説明されていない場合が多いと言われている。

認知症リスクに対するPTSDの影響~メタ解析

 心的外傷後ストレス障害(PTSD)は、認知症発症の潜在的なリスク因子といわれている。しかし、このリスクを定量化するためのメタ解析はこれまで実施されていなかった。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(UCL)のMia Maria Gunak氏らは、一般集団におけるPTSDに関連する将来の認知症リスクを定量化するため、システマティックレビューおよびメタ解析を実施した。The British Journal of Psychiatry誌オンライン版2020年9月15日号の報告。  2019年10月25日までのPTSDと認知症リスクを評価した縦断的研究を、9つの電子データベースより検索した。研究全体の推定値をプールし、ランダム効果と固定効果モデルのメタ解析を行った。

急増するオンライン学会、参加経験と満足度は?/医師1,000人に聞きました

 新型コロナウイルス感染症の影響により、今年には入って急増したのがオンライン(Web)上で行われる学会だ。感染流行初期の2、3月は開催中止に追い込まれる学会が多かったが、4月以降からオンラインへのシフトが本格化し、秋以降もオンライン上のみ開催、もしくは現地開催とのハイブリッド形式を採用する学会が大半となっている。  ケアネットでは、会員医師に協力いただき、オンライン学会への参加経験の有無や、参加した感想をアンケート形式で聞いた。2020年8月13日~19日に1,000名を対象にオンライン学会への参加経験の有無を聞き、「参加経験あり」の回答者に参加学会や満足度、感想を聞いた。

ニボルマブ480mg4週ごと投与、国内承認/小野・BMS

 小野薬品工業と ブリストル・マイヤーズ スクイブは、2020年9月25日、ヒト型抗ヒト programmed cell death-1(PD-1)ニボルマブ(商品名:オプジーボ)の単独投与時の用法及び用量に関して、すでに承認を取得している全ての 9 つのがん腫において、これまでの 1 回 240 mg を2 週間間隔で点滴静注する用法及び用量に加え、1 回 480 mg を 4 週間間隔で点滴静する用法及び用量が追加になったと発表。  今回の用法及び用量の追加の承認によって、治療選択肢が増えること、患者および医療スタ ッフの利便性の向上に繋がるものと期待しているとしている。

アテゾリズマブおよびベバシズマブ、肝細胞がんに国内承認/中外

 中外製薬はアテゾリズマブ(商品名:テセントリク)およびベバシズマブ(商品名:アバスチン)について、切除不能な肝細胞がん(HCC)に対する適応追加の承認を、2020年9月25日、厚生労働省より取得したと発表。同治療は、2020年4月に優先審査に指定され、承認申請より7ヵ月での承認取得となった。  今回の承認は、全身薬物療法未施行の切除不能なHCCを対象に実施された第III相臨床試験IMbrave150試験の成績に基づいている。アテゾリズマブとベバシズマブの併用療法は、ソラフェニブ単剤と比較し、死亡リスクを42%、病勢進行または死亡リスクを41%減少させた。

週1回の基礎インスリン、1日1回と同等の血糖降下作用/NEJM

 2型糖尿病患者の治療において、insulin icodecの週1回投与は、インスリン グラルギンU100の1日1回投与と同程度の血糖降下作用を発揮し、安全性プロファイルは同等で低血糖の頻度も低いことが、米国・Dallas Diabetes Research Center at Medical CityのJulio Rosenstock氏らが行った「NN1436-4383試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月22日号に掲載された。基礎インスリン注射の回数を減らすことで、2型糖尿病患者の治療の受容やアドヒアランスが改善される可能性があると考えられている。insulin icodecは、糖尿病治療のために開発が進められている週1回投与の基礎インスリンアナログ製剤で、最高濃度到達時間は16時間、半減期は約1週間とされる。

9日から開催の日本乳癌学会学術総会、注目トピック

 COVID-19感染拡大の影響により延期されていた第28回日本乳癌学会学術総会が、10月9日(金)~31日(土)にWEB開催される。9月17日にプレスセミナーが開催され、総会会長を務める岩田 広治氏(愛知県がんセンター 副院長・乳腺科部長)、事務局長を務める澤木 正孝氏(同乳腺科医長)らが見どころについて紹介した。 開催スケジュール 10月9日(金)~31日(土) 完全WEB開催(共催セミナーのほか、パネルディスカッションや教育講演のオンデマンド配信などが期間を通じて閲覧可能) 10月9日(金)~10月18日(日)LIVE配信 10月13日(火)~15日(木) 厳選口演(LIVE)

コロナ流行した2020年上半期の超過死亡、例年より少なく/厚労省研究班調べ

 2020年1~6月における日本の超過死亡は、過去3年に比べて少ないことが、厚生労働省研究班の推計で明らかになった。今年の上半期は、世界的に新型コロナウイルスの発生および感染拡大があり、超過死亡にかかわる重要なファクターと見られたが、推計値ではコロナ流行前を大きく下回った。  本調査では、2020年1~6月、例年の死亡数を基に推定される死亡数(予測死亡数の点推定)およびその95%片側予測区間(上限)と、実際の死亡数(観測死亡数)との差のレンジを週別、都道府県別に推計。データ分析には、米国疾病予防管理センター(CDC)のFarringtonアルゴリズムおよび欧州死亡率モニターのEuroMOMOアルゴリズムの2つを使用している。

職場における不眠症介入~メタ解析

 スペイン・セビリア大学のJuan Vega-Escano氏らは、従業員の不眠症の改善または軽減に対する介入の影響を特定および評価するため、ランダム化臨床試験を通じたシステマティックレビューおよびメタ解析を実施した。International Journal of Environmental Research and Public Health誌2020年9月2日号の報告。  PRISMAおよびMARSステートメントの推奨事項に従って、PubMed、Web of Science、CINHAL、PsycINFOのデータベースよりシステマティックに文献を検索した。アウトカムの尺度として、変量効果モデルと不眠症重症度指数を用い、メタ解析を実施した。バイアスリスクとエビデンスの質の評価には、コクラン共同計画ツールとGRADEシステムをそれぞれ用いた。

尿路上皮がんに対するペムブロリズマブ+化学療法の結果(KEYNOTE-361)/ESMO2020

 進行尿路上皮がんの1次治療として、ペムブロリズマブとプラチナ系化学療法薬の併用投与は、化学療法のみに比べ、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)の統計学的に有意な延長を示さなかったことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Virtual Congress 2020)で、米国・ミシガン大学のAjjai Alva氏から発表された。  このKEYNOTE-361試験は、オープンラベル第III相のグローバル試験であり、症例はペムブロリズマブ+化学療法群(Pem+CT群)、ペムブロリズマブ単独群(Pem群)、化学療法群(CT群)の3群に割り付けられた。 ・対象:局所進行または転移のある尿路上皮がん患者で、PS0~2、進行病変に対する全身療法が行われていない1,010例 ・試験群: [Pem+CT群]ペムブロリズマブ200mgを3週ごと化学療法薬を最長6サイクルまで投与し、その後、維持治療としてペムブロリズマブ200mgを3週ごと最長29サイクル [Pem群]ペムブロリズマブ200mgを3週ごと最長35サイクル ・対照群:CT群はゲムシタビン(1000mg/m2)と、シスプラチン(70mg/m2)またはカルボプラチン(AUC5)を主治医が選択して投与した。化学療法薬は最長6サイクル

オラパリブ、去勢抵抗性前立腺がんでOS延長(PROfound)/NEJM

 3つの遺伝子(BRCA1、BRCA2、ATM)のうち1つ以上に変異のある転移のある去勢抵抗性前立腺がん男性において、PARP阻害薬オラパリブは、エンザルタミドまたはアビラテロン+prednisoneに比べ全生存(OS)期間を有意に延長し、2回目の病勢進行(PD)までの期間も長いことが、米国・ノースウェスタン大学のMaha Hussain氏らが実施した「PROfound試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2020年9月20日号に掲載された。本試験の主解析では、オラパリブは主要評価項目である無増悪生存(PFS)期間を有意に延長し、進行および死亡のリスクを66%低減したと報告されている(ハザード比[HR]:0.34、95%信頼区間[CI]:0.25~0.47、p<0.001)。この時点では、主な副次評価項目の1つであるOSのデータは不十分であり、フォローアップが継続されていた。

臨床意思決定支援システムでケアは改善するか?/BMJ

 臨床意思決定支援システムを利用した介入の大半は、推奨されるケアプロセスを受ける患者の割合を小~中程度改善することが、それらを報告した研究で見いだされた臨床エンドポイントの小さな変化によって確認された。また、ごく一部の試験では、推奨されたケアの提供が大幅に増加していたが、改善に関して説得力のある予測因子は確定できなかった。カナダ・トロント大学のJanice L. Kwan氏らが、臨床意思決定支援システムによって得られた改善効果と、多様な臨床設定と介入ターゲットにわたるプール効果の不均一性を調べるために行ったシステマティックレビューとメタ解析の結果を報告した。電子健康記録に組み込まれている臨床意思決定支援システムは、推奨されるケアプロセスを提供するように臨床医を促すが、こうした臨床意思決定支援システムのケア改善の可能性に対する期待にもかかわらず、2010年に行われたシステマティックレビューでは、ケアが改善した患者の割合は5%未満とわずかであった。BMJ誌2020年9月17日号掲載の報告。

胃バイパス術による2型糖尿病改善効果はほとんどすべてが体重減少で説明できる(解説:住谷哲氏)-1291

肥満外科手術bariatric surgeryが肥満合併2型糖尿病患者の糖代謝異常を大幅に改善することが明らかとなっている。肥満外科手術の術式には、本試験で用いられた胃バイパス術(Roux-en-Y gastric bypass surgery)、スリーブ状胃切除術(sleeve gastrectomy)が代表的であるが、わが国で保険適用となっているのは後者のみであり、主としてこちらの術式が用いられている。これまでの報告で、腸管の連続性ntestinal continuityを解除する胃バイパス術が他の術式に比べて糖代謝異常改善効果が高いことが示唆されていたが、統計解析上交絡因子が十分に調整されていないとの批判があり疑問が持たれていた。本試験はその点を明らかにするため、胃バイパス術群と食事療法群との2群において、体重減少の程度(約18%)をマッチさせたうえで、前後における種々の糖代謝パラメータを詳細に比較検討した非ランダム化前向きコホート試験である。

低血糖時の救急処置に初の点鼻薬、バクスミー発売/日本イーライリリー

 2020年10月2日、日本イーライリリーは、「低血糖時の救急処置」を効能・効果として、低血糖時救急治療剤「バクスミー点鼻粉末剤3mg」(一般名:グルカゴン)を発売したと発表した。本剤はグルカゴン点鼻粉末剤で、注射剤以外の低血糖治療剤として初の製剤。室温(1~30℃)で持ち運びができる1回使い切りの製剤で、看護者(家族等)が投与することにより重症低血糖の救急処置を行うことができる。また、鼻粘膜から吸収されるため、重症低血糖に陥り意識を失っている患者に対しても使用可能である。薬剤は噴霧器に充填されており、点鼻容器の先端を鼻に入れ、注入ボタンを押すことで緊急時に迅速かつ簡便に投与できる。

統合失調症患者のCOVID-19による院内死亡率

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により入院が必要となる統合失調症患者の特徴やアウトカムに関する情報は限られている。フランス・エクス=マルセイユ大学のG. Fond氏らは、COVID-19に罹患した統合失調症患者の臨床的特徴およびアウトカムを明らかにするため、統合失調症でない感染者との比較検討を行った。L'Encephale誌オンライン版2020年7月30日号の報告。  本検討は、南フランス・マルセイユの4つの公的支援急性期医療病院に入院したCOVID-19患者の症例対照研究として実施した。入院を必要とするCOVID-19患者は、鼻咽頭サンプルのPCR検査および/または胸部CTの陽性結果で確認した。主要アウトカムは院内死亡率とし、副次的アウトカムはICU入室とした。