うつ病に対する抗うつ薬の治療パターンとアウトカム

提供元:ケアネット

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公開日:2021/08/11

 

 米国において、うつ病は重大な問題となっている。うつ病に対するケアは、非常に多様であり、文書化された報告も限られている。米国・スタンフォード大学のMaurice M. Ohayon氏らは、米国の一般集団におけるうつ病の有病率と治療パターンについて調査するため、縦断的研究を実施した。CNS Spectrums誌2021年4月号の報告。

 2002~15年の間に2回のWeb調査を実施した。1回目の調査(W1)は、米国8州の18歳以上の一般集団1万2,218人を対象に実施した。2回目の調査(W2)は、W1で3年後の再調査に同意した1万931人を対象に実施した。W1およびW2に回答した1万931人を分析対象とした。うつ病の診断は、DSM-V基準に従った。

 主な結果は以下のとおり。

・3年間のうつ病発症率は、3.4%(95%CI:3.1~3.7)であった。
・うつ病有病率は、W1で5.1%(95%CI:4.7~5.5)、W2で4.2%(95%CI:3.8~4.6)であった。
・部分寛解または完全寛解に達した患者の割合は、以下のとおりであった。
 【部分寛解】
  ●W1:4.4%(95%CI:4.0~4.8)
  ●W2:7.9%(95%CI:7.4~8.4)
 【完全寛解】
  ●W1:3.9%(95%CI:3.5~4.3)
  ●W2:4.4%(95%CI:4.0~4.8)
・部分寛解および完全寛解に達した患者を含めたうつ病の有病率は、W1で13.4%、W2で16.5%であった。
・W1でうつ病と診断された患者のうち、併存疾患を有していた患者の割合は、61.9%であった。
・W1でうつ病と診断された患者のうち、W2でも抑うつ症状が報告された患者の割合は、41.8%であった。
・W1で部分寛解に達した患者の19.9%および完全寛解に達した患者の5.5%は、W2で寛解に達していなかった。
・うつ病患者のうち、抗うつ薬が使用されていた患者の割合は、W1で52.2%、W2で42.9%であった。最も使用されていた薬剤クラスは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)であり、W1で34.7%、W2で28.3%の患者に使用されていた。
・抗うつ薬を処方した医師の内訳は、プライマリケア医45.7%、精神科医31.4%、神経内科医2.5%、その他7.9%であった。
・平均治療期間は、36.9ヵ月(SE:2.4)であった。
・W1において、抗うつ薬を使用していた患者の3分の1以上が抗うつ薬治療に不満を持っており、W2での抗うつ薬の種類の変更につながっていた。

 著者らは「米国におけるうつ病有病率は、13.4~16.5%であった。抗うつ薬が使用されていたうつ病患者は、約半数程度(52%)にとどまっており、多くの患者で治療が不十分であることが示唆された。本研究では、うつ病患者の4人に1人以上は、初期の抗うつ薬治療で寛解が得られておらず、うつ病治療の課題が浮き彫りとなった」としている。

(鷹野 敦夫)