脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:2

米国頭痛学会声明、片頭痛に対するCGRP標的療法の位置付け

 これまで第1選択治療として考えられてきたすべての片頭痛の予防的治療は、他の適応症のために開発され、その後片頭痛予防にも採用されている。これらの治療法は、有効性および忍容性の問題によりアドヒアランス低下が懸念されていた。前臨床および臨床エビデンスよりカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)が片頭痛発症に重要な役割を果たしていることが示唆され、いくつかの片頭痛特異的な治療法が開発された。これらのCGRPをターゲットとした治療法は、片頭痛のマネジメントに革新的な影響を及ぼしたものの、第1選択治療として広く普及しているとはいえない。米国・UCLA Goldberg Migraine ProgramのAndrew C. Charles氏らは、米国頭痛学会から表明された片頭痛予防に対するカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)をターゲットとした治療法に関する最新情報を報告した。Headache誌オンライン版2024年3月11日号の報告。

85歳以上のアルツハイマー病患者の認知機能に関連する因子と脳画像の特徴

 85歳以上の超高齢者のアルツハイマー病における認知機能低下の根底にある病態生理学は、これまで明らかになっていない。総合東京病院 認知症疾患研究センターの羽生 春夫氏らは、超高齢者のアルツハイマー病における認知機能に関連する因子と脳画像の特徴を明らかにするため、本研究を実施した。Journal of the Neurological Sciences誌2024年3月15日号の報告。  対象は、アルツハイマー病の可能性のある連続した外来患者456例(男性:145例、女性:311例、年齢範囲:51~95歳)。対象者は、74歳以下、75~84歳、85歳以上のサブグループに分類した。人口統計学的要因(教育レベル、初診時の罹病罹患、BMI、併存疾患、フレイル、余暇活動など)、画像検査の特徴(内側側頭葉の萎縮、白質病変、梗塞の重症度、脳低灌流の頻度など)の違いをサブグループ間で比較した。

高齢者への2価コロナワクチン、脳卒中リスクは?/JAMA

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するファイザー製またはモデルナ製のいずれかの2価ワクチンを接種後に脳卒中を発症した65歳以上の米国メディケア受給者において、接種直後(1~21日間)に脳卒中リスクが有意に上昇したことを示すエビデンスは確認されなかった。米国食品医薬品局(FDA)のYun Lu氏らが、自己対照ケースシリーズ研究の結果を報告した。2023年1月、米国疾病予防管理センター(CDC)とFDAは、ファイザー製の「BNT162b2」(2価:起源株/オミクロン株BA.4-5)を接種した65歳以上の高齢者における虚血性脳卒中に関する安全性の懸念を指摘していた。JAMA誌2024年3月19日号掲載の報告。

新型コロナウイルス感染症の認知機能障害は徐々に軽症化している(解説:岡村毅氏)

イングランドで80万例を対象にした、新型コロナウイルス感染症と認知機能の大規模調査である。まだよくわかっていないことの全体像をつかむための研究であり、規模が大きく、情報の確度も高く、適切な時期に適切な報告がなされたと思う。対象者は、期間(無症状/4週以内に完治/12週以内に完治/12週以上かかったが完治/12週以上かかってまだ症状がある)、感染株(オリジナル/アルファ/デルタ/オミクロン)、医療(救急受診/入院/集中治療室)などで分類している。認知機能は、直後再生、空間記憶、語義、抽象思考、空間操作、遅延再生などをみっちりとられる。なかなか大変である。まず、認知機能の全体を見ると、2020年1月に始まった世界的流行であるが、それから時間がたてばたつほどに感染者の認知機能低下は軽くなっている。古い株ほど、また症状の期間が長いほど、認知機能低下は重度である。常識的な結果といえる。

マイクロプラスチック・ナノプラスチックに関する記念碑的研究(解説:野間重孝氏)

環境問題がさまざまな方向から論じられるようになって久しい。しかし、いわゆる公害問題のように、原因・原因物質と結果として出現する疾病との関係が明らかであるような場合を除けば、環境内に伏在する危険因子・物質と疾病との相関が、疫学的に明快に究明された例はなかったといってよい。この研究は、マイクロプラスチック・ナノプラスチック(MNP)と心血管イベントの関係を疫学的な見地から明らかにした世界初の研究であるばかりでなく、環境問題の研究としても、まさしく記念碑的な研究であると位置付けられるものではないかと思う。ディスカッションの中で研究グループは、「われわれの結果は因果関係を証明するものではないことに注意することが重要である」と語っているが、これはMNPが心血管イベントを引き起こすメカニズムが明らかになっていないということを言っているのであって、彼らの疫学的手法は完璧なものであったと言ってよいと思う。今、バトンは疾病研究者たちにタッチされたのであって、これから細胞内組織研究部門から、このメカニズムについての究明的な研究が発表されるのが待たれるところである。

血管内血栓除去療法は大梗塞の長期予後も改善するか?(解説:内山真一郎氏)

前回は、不可逆的な虚血コアおよび救命しうる虚血部位(ペナンブラ)と、臨床転帰および血管内血栓除去療法(EVT)の治療効果との関係を検討したPROBEデザインによる国際多施設共同介入試験SELECT2の事後解析の成績を紹介したが、今回はSELECT2試験の長期転帰を解析した結果である。これまでは、どの試験も発症後24時間までの大血管閉塞による大梗塞例にEVTが短期(多くは3ヵ月まで)の転帰改善効果があるというエビデンスであったが、長期にわたる転帰改善効果は検討されていなかった。

日本における認知症教育による潜在的態度の変化

 東京大学の松本 博成氏らは、成人および高齢者における認知症に対する偏見などの潜在的な態度の測定に関して、その実現可能性と妥当性を評価し、仮想現実(VR)を用いた認知症フレンドリー教育が潜在的な態度に及ぼす影響を評価した。Australasian Journal on Ageing誌オンライン版2024年2月15日号の報告。  ランダム化比較試験のデータを2次分析した。東京在住の20~90歳が、VRの有無にかかわらず、認知症フレンドリー教育に参加した。認知症フレンドリー教育プログラム終了後、Implicit Relational Assessment Procedure(IRAP)を用いて、認知症に対するimplicitを測定した。

認知症リスクと喫煙に対する歯の喪失の影響~JAGESコホート研究

 歯の喪失には、さまざまな原因があるが、その原因別に健康への影響を評価した研究は、これまでなかった。東北大学の草間 太郎氏らは、現在また過去の喫煙歴と認知症リスクとの関連が、歯の喪失により媒介されるかを評価した。Journal of Clinical Periodontology誌オンライン版2024年2月7日号の報告。  65歳以上の成人を対象に、9年間のフォローアッププロスペクティブコホート研究を実施した。アウトカムは2013~19年の認知症罹患率、エクスポージャーは2010年の喫煙状況(非喫煙、喫煙歴あり、現在の喫煙)、メディエーターは2013年の残存歯数(19本以下、20本以上)として評価した。媒介分析を用いてCox比例ハザードモデルを適合させ、歯の喪失による認知症発症に対する喫煙の自然間接効果(NIE)のハザード比(HR)と95%信頼区間(CI)、およびそれらの媒介比率を推定した。

日本人の3つの食事パターン、脳が萎縮しやすいのは?

 日本人における食事パターンと脳容積の変化の関連はほとんど調べられていない。今回、国立長寿医療研究センターのShu Zhang氏らが、老化に関する長期縦断疫学研究プロジェクトで日本人の中高年を前向きに調査したところ、伝統的日本食を摂取する女性は、西洋食を摂取する女性より全灰白質の萎縮が少ないことが示された。一方、男性は食事パターンと脳萎縮との関連は認められなかったという。Nutrition Journal誌2024年3月12日号に掲載。

日本における片頭痛患者の治療パターンと特徴

 日本における片頭痛患者にみられる実際の臨床的特徴や治療実践については、十分に調査されていない。慶應義塾大学の滝沢 翼氏らは、近年の片頭痛の臨床実態、現在の治療選択肢では十分にコントロールできていない可能性のある患者の特徴を明らかにするため、レセプトデータベースを用いたレトロスペクティブコホート研究を実施した。The Journal of Headache and Pain誌2024年2月8日号の報告。  大規模レセプトデータシステムJMDCデータベースを用いて、調査を行った。2018年1月~2022年7月に頭痛または片頭痛と診断された患者を対象とした頭痛コホート、頭痛コホート内で片頭痛と診断され片頭痛治療薬を使用した患者を対象とした片頭痛コホートとして定義し、検討を行った。頭痛コホートでは、医療機関の特徴、二次性頭痛を鑑別するための画像検査の状況を検討した。片頭痛コホートでは、急性期およびまたは予防的治療では十分にコントロールできていない可能性のある患者の治療パターン、および特徴を評価した。