脳神経外科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:3

ランダム化試験より個別最適化医療の論理が必要?(解説:後藤信哉氏)

心房細動の脳梗塞予防には抗凝固薬が広く使用されるようになった。しかし、脳内出血の既往のある症例に抗凝固薬を使用するのは躊躇する。本研究は過去に頭蓋内出血の既往のある症例を対象として、心房細動症例における抗凝固薬介入の有効性と安全性の検証を目指した。319例をDOAC群と抗凝固薬なし群に割り付けて中央値1.4年観察したところ、DOAC群の虚血性脳卒中は0.83(95%信頼区間[CI]:0.14~2.57)/100人年、抗凝固薬なし群では8.60(同:5.43~12.80)/100人年と差がついた。しかし、頭蓋内出血イベントはDOAC群が5.00(95%CI:2.68~8.39)/人年、抗凝固薬なし群では0.82(同:0.14~2.53)/人年であった。

超迅速遺伝子検査が脳腫瘍の手術の助けに

 慎重を要する脳腫瘍患者の腫瘍の摘出で、実験段階にある超迅速遺伝子検査が外科医の助けとなることが、米ニューヨーク大学(NYU)グロスマン医学部神経外科・病理学准教授のDaniel Orringer氏らによる新たな研究で示唆された。この検査では、組織標本中のがん細胞の量を15分以内に測定することができる。これは、患者が手術室にいる間に外科医がフィードバックを得るのに十分な速さだ。また、腫瘍辺縁部の1mm2当たり5個未満という低密度のがん細胞も検出可能であるという。詳細は、「Med」に2月25日掲載された。  Orringer氏らは、「その迅速性と正確性から、脳腫瘍の手術中にリアルタイムでがん細胞を検出できる、この種のものとしては初の実用的なツールになる」と結論付けている。Orringer氏は、「脳腫瘍をはじめとする多くのがんにおいて、がんの手術の成功と再発の予防は、できる限り安全に腫瘍とその周囲のがん細胞を切除することが前提となる」とNYUのニュースリリースの中で述べている。

強度を徐々に上げる歩行運動は脳卒中後の患者の転帰を向上させる

 脳卒中後の標準的なリハビリテーションに1日30分の強度を徐々に上げる歩行運動(以下、漸増負荷歩行運動)を加えることで、退院時の患者の生活の質(QOL)と運動能力が著しく改善したとする研究結果が報告された。ブリティッシュコロンビア大学(カナダ)理学療法学教授のJanice Eng氏らによるこの研究は、米国脳卒中学会(ASA)の国際脳卒中会議(ISC 2025、2月5〜7日、米ロサンゼルス)で発表された。Eng氏は、「ガイドラインでは、脳卒中後には体系的なリハビリテーション(以下、リハビリ)や運動療法を段階的に進めることを推奨しているものの、十分な強度を持つこうしたアプローチがリハビリプログラムに広く採用されているとは言えない」と米国心臓協会(AHA)のニュースリリースで述べている。

認知症の臨床診療ガイドライン―韓国認知症協会の推奨事項

 韓国・江原大学校のYeshin Kim氏らが、エビデンスに基づく推奨事項をまとめた韓国認知症協会の臨床診療ガイドラインについて、アルツハイマー病およびその他のタイプの認知症に対するコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)およびN-メチル-D-アスパラギン酸(NMDA)受容体拮抗薬に関する推奨事項に焦点を当て、Dementia and Neurocognitive Disorders誌2025年1月号に発表した。また同誌にて、同国・カトリック大学校のGihwan Byeon氏らは本ガイドラインについて、患者のQOLや介護者の負担に影響を及ぼす認知症の行動・心理症状(BPSD)に対する、抗精神病薬、抗うつ薬、抗認知症薬など薬理学的治療に関する臨床実践ガイドラインとして提示した。

救急隊員によるnerinetideの入院前静注は脳虚血患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)

ESCAPE-NA1試験では、nerinetideが血栓溶解療法後の患者には効果がなかったのは、血栓溶解薬により産生されたプラスミンがnerinetideを分解して不活化してしまうためと考えられたことから、ESCAPE-NEXT試験では血栓溶解療法との併用は検討されなかった。一方、FRONTIER試験では、病院に到着して血栓溶解療法が行われる前にnerinetideが投与されたので、神経保護と血栓溶解による再灌流の相乗効果が期待された。このアプローチは、発症から治療開始までの時間が短い利点があるが、脳梗塞以外に脳出血、TIA、脳卒中と紛らわしい疾患が混入する欠点もある。

脳保護薬nerinetideは血栓溶解療法を行わない血栓除去術施行患者に有効か?(解説:内山真一郎氏)

nerinetideは、急性期虚血性脳卒中の前臨床モデルで多くの研究が行われてきたイコサペプチドであり、再灌流療法前の脳損傷の進行を阻止することによる転帰改善効果が期待されている。nerinetide投与前にアルテプラーゼ治療を受けなかった患者では効果があり、受けた患者では効果がなかったが、アルテプラーゼの先行投与により産生されるプラスミンがnerinetideを分解して不活化してしまうためであると考えられている。

アルツハイマー病リスクに影響する食べ物とは?

 食習慣とアルツハイマー病との因果関係を評価するため、中国・The First Affiliated Hospital of Ningbo UniversityのYi Huang氏らは、2サンプルのメンデルランダム化(MR)解析を用いて、本研究を実施した。Food & Function誌2025年2月17日号の報告。  ゲノムワイド関連研究(GWAS)データと並行し、2サンプルのメンデルランダム化解析を用いて、17食品の食習慣とアルツハイマー病リスクとの因果関係を包括的に評価した。結果のロバストを保証するため、単変量MR解析および多変量MR解析の両方を使用した。すべての分析には、逆分散重み付け(IVW)法を用いた。感度分析には、最尤法、MR-RAPS法、MR-Egger法を用いた。

3年間の長期抗CGRPモノクローナル抗体治療は、片頭痛の経過にどう影響するか

 抗カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)モノクローナル抗体を3年以上使用することが片頭痛の経過にどのような影響を及ぼすかを判断するため、イタリア・IRCCS San Raffaele RomaのPiero Barbanti氏らは、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体治療を3回繰り返した後、治療を中止した際の片頭痛頻度を明らかにするため、多施設プロスペクティブ実臨床試験を実施した。Journal of Neurology誌2025年1月25日号の報告。  対象は、12ヵ月間の抗CGRPモノクローナル抗体の皮下投与を1サイクルとし、3回完了した高頻度片頭痛または慢性片頭痛患者212例。中止期間(D1、D2、D3)は、3回の治療サイクル(T1、T2、T3)後、最初の1ヵ月間と定義した。主要エンドポイントは、D2と比較したD3での50%以上の治療反応率とした。副次的エンドポイントには、1ヵ月当たりの片頭痛日数(MMD)、1ヵ月当たりの頭痛日数(MHD)、1ヵ月当たりの鎮痛薬摂取量(MAI)、数値評価尺度(NRS)、頭痛影響テスト(HIT-6)、D3とD1およびD2の50%以上治療反応率の変化、慢性片頭痛の再発率、薬物過剰使用の再発率を含めた。

脳出血既往AFに対する脳梗塞予防、DOACは有用か?/Lancet

 直接経口抗凝固薬(DOAC)は、心房細動を伴う脳内出血生存者の虚血性脳卒中予防に有効ではあるが、その有益性の一部は脳内出血再発の大幅なリスク増加により相殺されることが示された。英国・インペリアル・カレッジ・ロンドンのRoland Veltkamp氏らPRESTIGE-AF Consortiumが、欧州6ヵ国75施設で実施された第III相無作為化非盲検評価者盲検比較試験「PRESTIGE-AF試験」の結果を報告した。結果を踏まえて著者は、「これら脆弱な患者集団における脳卒中予防を最適化するには、さらなるエビデンスと無作為化データのメタ解析が必要である。特定の患者に対しては、より安全な薬物療法または機械的代替療法の評価も求められる」と述べている。DOACは、心房細動患者において血栓塞栓症の発症頻度を低下させるが、脳内出血生存者に対するベネフィットとリスクは不明であった。Lancet誌オンライン版2025年2月26日号掲載の報告。

スタチンは片頭痛予防に有効か?~メタ解析

 近年、スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)が片頭痛のリスクを低減し、予防治療として有効である可能性が示唆されているが、そのエビデンスは確証されていない。エジプト・Minia大学のHamdy A. Makhlouf氏らの研究チームは、スタチンの片頭痛の予防効果について、システマティックレビューおよびメタ解析で評価した。その結果、スタチンは片頭痛予防に有効であり、片頭痛頻度を有意に減少させることなどが判明した。The Journal of Headache and Pain誌2025年2月3日号に掲載。