血液内科の海外論文・最新ニュースアーカイブ|page:33

未治療骨髄腫に対するダラツムマブ、レナリドミド、デキサメタゾン併用療法に期待するモノ(解説:藤原弘氏)-1075

新規治療薬開発が進み、QOLの改善と全生存率の延長が進む多発性骨髄腫だが、いまだに治癒しない。そこで、次の治療戦略が微小残存病変陰性完全寛解の達成から無増悪生存の延長、その先に治癒を見据えるのは理にかなっている。Proteosome阻害剤、iMIDsに加えて抗体製剤の登場が、その流れを加速させている。最近、自己造血幹細胞移植適応のない未治療MMに対するダラツムマブ併用レナリドミド/デキサメタゾン療法のLd療法に対する優位性を示す大規模な第III相臨床試験の結果が、Facon T.博士らのグループからNew England Journal of Medicine誌に掲載された(内容はすでに2018年、米国血液学会で報告されていたが)。

SCARLET試験:敗血症関連凝固障害に対する遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリンの有効性(解説:小金丸博氏)-1066

敗血症関連凝固障害はINR延長や血小板数低下で定義され、28日死亡率と相関することが報告されている。遺伝子組み換えヒト可溶性トロンボモジュリン(rhsTM)製剤は、播種性血管内凝固(DIC)が疑われる敗血症患者を対象とした第IIb相ランダム化試験の事後解析において、死亡率を下げる可能性が示唆されていた。今回、敗血症関連凝固障害に対するrhsTM製剤の有効性を検討した第III相試験(SCARLET試験)の結果が発表された。本試験は、26ヵ国159施設が参加した二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験であり、集中治療室に入室した心血管あるいは呼吸器障害を伴う敗血症関連凝固障害患者を対象とした。

ダラツムマブ併用で、多発性骨髄腫の厳格な完全奏効が改善/Lancet

 初発多発性骨髄腫の治療において、自家造血幹細胞移植の前後に、ボルテゾミブ+サリドマイド+デキサメタゾン(VTd)にダラツムマブ(商品名:ダラザレックス)を併用した薬物療法(D-VTd)を行うと、VTd単独と比較して、厳格な完全奏効(sCR)の割合が有意に改善し、毒性は許容範囲内であることが、フランス・University Hospital Hotel-DieuのPhilippe Moreau氏らが実施したCASSIOPEIA試験で示された。研究の成果はLancet誌オンライン版2019年6月3日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするIgG1κモノクローナル抗体。多発性骨髄腫の第III相試験において、ボルテゾミブ+デキサメタゾン、レナリドミド+デキサメタゾン、ボルテゾミブ+メルファラン+プレドニゾンに、それぞれダラツムマブを併用すると、病勢進行または死亡のリスクが、少なくとも50%低減し、微小残存病変陰性の割合が3倍になることが確認されている。

ダラツムマブ追加で、多発性骨髄腫の無増悪生存が改善/NEJM

 自家造血幹細胞移植の適応がない新規診断の多発性骨髄腫患者の治療において、標準治療であるレナリドミド+デキサメタゾンにダラツムマブを併用すると、標準治療単独に比べ病勢進行または死亡のリスクが有意に低減することが、フランス・リール大学のThierry Facon氏らが行ったMAIA試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年5月30日号に掲載された。ダラツムマブは、CD38を標的とするヒトIgGκモノクローナル抗体であり、直接的な抗腫瘍活性と免疫調節活性を有する。多くの治療歴のある患者への単剤による有効性や、新規診断および再発・難治例への標準治療との併用による有効性が報告されている。

日本のAYA世代がん患者が終末期ケアに望むこと

 2018年3月に「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(厚生労働省)が改訂され、本人が望むエンドオブライフ・ケア(EOLケア)がいっそう推進されているが、国立がん研究センター 中央病院の平野 秀和氏らは、日本のAYA世代(思春期・若年成人、15~39歳)のがん患者が、どのようなEOLケアを選好するのか、初となる調査を行った。同センターによれば、日本のAYA世代では、年間約2万人ががんの診断を受けているという。Journal of Pain and Symptom Management誌オンライン版2019年5月8日号掲載の報告。

敗血症関連凝固障害への遺伝子組換えトロンボモジュリン製剤、第III相試験結果/JAMA

 敗血症関連凝固障害がみられる重症患者の治療において、遺伝子組換えヒト可溶性トロンボモデュリン(rhsTM)製剤ART-123はプラセボと比較して、28日以内の全死因死亡率を改善しないことが、ベルギー・Universite Libre de BruxellesのJean-Louis Vincent氏らが実施した「SCARLET試験」で示された。研究の詳細はJAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。rhsTMは、播種性血管内凝固症候群(DIC)が疑われる敗血症患者を対象とする無作為化第IIb相試験の事後解析において、死亡率を抑制する可能性が示唆されていた。

「豪華盛り合わせ」のパワーとオトク感(解説:今中和人氏)-1056

ひと昔前は「80代に心臓手術の適応があるか? ないか?」と真剣に議論されていた(ちなみに結論は「ケース・バイ・ケース」がお約束)が、手術患者は明らかに高齢化しており、そんなのいまや日常的。ただ、高齢者に多い併存症の1つに貧血がある。一方、心臓外科の2割前後はいわゆる「急ぎ」の症例で、その方々は自己血貯血どころではなく、昨今の情勢では待期手術でも、まったりした術前入院など許されない。だから心臓手術の患者に貧血があって、何か即効性のある良いことができないか、というのはきわめて現実的なシナリオである。

敗血症、新規の臨床病型4つを導出/JAMA

 敗血症は異質性の高い症候群だという。米国・ピッツバーグ大学のChristopher W. Seymour氏らは、患者データを後ろ向きに解析し、宿主反応パターンや臨床アウトカムと相関する敗血症の4つの新たな臨床病型を同定した。研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年5月19日号に掲載された。明確に分類された臨床病型が確立されれば、より精確な治療が可能となり、敗血症の治療法の改善に結び付く可能性があるため、検討が進められていた。

骨髄腫治療におけるCAR-T細胞療法が示す可能性とその問題点(解説:藤原弘氏)-1055

この令和元年5月初めに、NCIのKochenderfer博士等のグループからB-cell maturation antigen(BCMA)を標的分子として難治性多発性骨髄腫を対象疾患とするCAR-T細胞の1つであるbb2121を用いた第I相臨床試験の有望な観察結果がNew England Journal of Medicine誌に報告された。bb2121はBCMAを認識するマウス抗体の短鎖・長鎖可変領域を一本鎖とした細胞外ドメイン(scFv)と4-1BBとCD3ζを直列につないだ細胞内ドメインを持つ第2世代CAR-T細胞である。CD19 CAR-T細胞での経験と同様に、CD28型第2世代CAR-T細胞(Brudno JN, et al. J Clin Oncol. 2018;36:2267-2280.)に比較して、輸注細胞の体内生存期間の延長傾向が得られている。このCAR-T細胞はBlueBird Bio/Celgeneが開発を進め、2017年にはFDAのBreakthrough Therapy designationを受けるなど、難治性骨髄腫に対する画期的な治療薬として期待されてきた経緯がある。日本国内でも、Celgeneが第II相試験(JapicCTI-184195)を計画している。

経済毒性を日本人がん患者対象に要因別に評価した結果

 先ごろ約3,500万円の医薬品が登場し社会的関心を集めたが、高額な治療費・医薬品費がどのような“副作用”をもたらすのか。愛知県がんセンター中央病院の本多 和典氏らは、米国で開発されたがん患者の経済毒性(financial toxicity)を測定するツール「COmprehensive Score for Financial Toxicity:COST」の日本語版を作成し、これまで予備的研究として日本人がん患者におけるCOSTツールの使用可能性を少数例で評価していた。その実績を踏まえて今回、同氏らはCOSTツールを用いて日本人がん患者の経済毒性を評価する前向き調査を行い、日本人がん患者における経済毒性を要因別に評価した。