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1.

日本人2型糖尿病へのGLP-1薬、MACE・死亡リスクへの影響は?

 日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究において、2型糖尿病患者に対するGLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)の使用は、心血管イベントにおいてほかの血糖降下薬との有意差は認められなかったが、全死因死亡率はGLP-1薬群で有意に低く、これらの知見は残余交絡を反映している可能性があることを、千葉大学の越坂 理也氏らが示した。研究成果はDiabetes, Obesity and Metabolism誌オンライン版2026年8月11日号で発表された。日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究 本研究は、約190万人規模の日本の大規模レセプトデータベースを用いたリアルワールド研究である。2型糖尿病患者のうち、2014~21年にGLP-1薬を新規処方された患者をGLP-1薬群、ほかの血糖降下薬を新規開始した患者を対照群とした。評価項目は心血管・脳血管イベント、全死因死亡などとした。解析には説明変数を用いたロジスティック回帰分析を実施し、群間で最近傍法による傾向スコアマッチングを行った。新規薬剤開始からイベント発生までの期間をCox比例ハザードモデルで解析した。全死因死亡率はGLP-1薬群が有意に低い 適格患者46万9,461例のうち、GLP-1薬群2,401例、対照群5万3,946例が抽出された。傾向スコアマッチング後、各群2,147例が解析対象となり、追跡期間の中央値は12ヵ月であった。複合心血管イベント(3-point MACE)の発生率はGLP-1薬群7.08%(152例)、対照群8.20%(176例)であり、有意差は認められなかった(ハザード比[HR]:0.920、95%信頼区間[CI]:0.740~1.143、p=0.450)。一方、全死因死亡率はGLP-1薬群5.36%(115例)、対照群7.36%(158例)であり、GLP-1薬群で有意に低かった(HR:0.776、95%CI:0.610~0.987、p=0.039)。 これらの結果より、研究グループは「GLP-1薬は3-point MACEとの関連性は認められなかったが、全死因死亡率の低下を示した。これらの結果は、残余交絡の影響を反映している可能性がある」とまとめた。

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GLORY-2:肥満症に対するmazdutideの減量効果と真の治療ゴール(解説:永井聡氏)

 mazdutideはEli Lilly社によって創製されたオキシントモジュリン由来のペプチドアナログであり、グルカゴン(GCG)/GLP-1受容体デュアルアゴニストである。GLP-1受容体介在性の食欲抑制効果に加え、GCG受容体を介した脂肪分解および肝臓でのエネルギー消費亢進による減量効果が期待されており、現在、中国の製薬企業が同国内での治験を進めている。 GLORY-2試験は、BMI30以上の肥満を有する中国人患者を対象とした第III相試験である。60週間にわたるmazdutide 9mgの週1回皮下投与により、プラセボ群と比較して−15.15%の体重減少を達成した。直接比較試験ではないものの、チルゼパチドに迫る強力な減量効果を示している。安全性に関しては、GLP-1関連薬に共通する嘔気・嘔吐などの消化器症状が高頻度に認められたが、本薬特異的な重篤な有害事象は報告されていない。 現時点において、mazdutideは中国以外での開発予定はない。しかし、同クラスのGCG/GLP-1受容体デュアルアゴニストとしては、survodutideが日本や欧米を含めてグローバルで開発中である。すでに強力な減量効果を持つチルゼパチドが上市されている中、「経口薬でもなく、減量率も同等レベルの新規注射薬」には、それほどのインパクトがないと感じられるかもしれない。 ここで改めて強調したいのは、「肥満」と「肥満症」の違いである。単なる美容目的や「減量のみ」を目的としたGLP-1関連薬の不適切使用は社会的な問題となっており、メディアでも多く取り上げられている。過度な減量の裏には、消化器症状などの副作用や、るい痩(筋肉量減少)のリスクが潜んでいる。しかし、われわれの日常的な「適正な肥満症治療」の現場においても、無意識のうちに「体重が何キロ減ったか」という成果ばかりを強調してしまってはいないだろうか。日進月歩で新薬の開発が進むGLP-1関連薬の領域は、ともすれば「減量率の競争」に陥りつつあるのが現実である。 体重減少のみを目的とするならば、極端に言えば「たまたま血圧が高い肥満者に、単なる減量目的で薬剤を投与している」ことと大差なくなってしまう。肥満症治療において真に求められるのは、高血圧、脂質異常症、MASLD/MASHといった肥満関連合併症の改善であり、さらにその先にある長期的な心血管イベントの抑制、生命予後の改善、そしてQOLの向上であるはずだ1)。 この点において、mazdutideは単なるGLP-1受容体作動薬とは異なり、GCG受容体を介して肝臓でのエネルギー消費亢進と脂肪の分解・酸化を直接的に促すという強みを持つ。本試験でも肝内脂肪の著明な低下が示されており、MASLD/MASHを合併する肥満症への効果が強く期待される。興味深いことに、最近、GLP-1受容体作動薬であるセマグルチドがアルコール使用障害に対しても臨床的有用性を示すことが報告され、注目を集めている2)。mazdutideのようなデュアルアゴニストは、その特長を生かし、「アルコール使用障害」と「肝内脂肪の改善・線維化抑制」に対する同時治療を可能にするポテンシャルを秘めているかもしれない。 これからの肥満症治療は、単一の減量指標にとらわれず、患者個々の病態に沿った薬剤の「使い分け」が求められる時代となるだろう。そのためにも、日常診療においては単なる「減量率の競争」から脱却し、患者さんの声にしっかりと耳を傾けながら、その人にとっての「真の治療ゴール」は何かを共に考え、対話を重ねて治療を進めていただきたい。もちろん、現時点ではmazdutideが長期的な生命予後やQOLを改善するという直接的なエビデンスは確立されておらず、今後のさらなるデータ蓄積が待たれる。

3.

OSASの根本的要因の「肥満」への治療に期待/リリー・田辺ファーマ

 日本イーライリリーと田辺ファーマは、2026年5月に持続性GIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチド(商品名:ゼップバウンド)が「中等症以上の閉塞性睡眠時無呼吸症候群(以下"OSAS")」における効能・効果追加の承認を取得したことに寄せて、「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)の実態と新たな治療選択肢」をテーマに都内でメディアセミナーを開催した。セミナーでは、OSASの病態やリスク、チルゼパチドの概要、診療でのアンメットニーズなどが説明された。 両社では今回の追加承認により、OSASの根本的な要因である肥満へアプローチできる治療として期待を寄せるとともに、適正使用の推進に取り組むとしている。わが国のOSAS患者数は約943万人 「閉塞性睡眠時無呼吸症候群の実態と課題 新たな治療選択肢の登場」をテーマに葛西 隆敏氏(順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学 先任准教授)が、OSASの診療、チルゼパチドの臨床試験結果などを説明した。 OSASは、睡眠中に気道が閉塞することにより、無呼吸や低呼吸が発生する疾患であり、主な症状として「いびき」「無呼吸」「日中の眠気」「起床時の頭痛」などがある。わが国のOSAS患者数は約943万人と推定され、東アジア人では顔面形態の影響からOSASになりやすいといわれている。 発症の機序としては、上気道周囲の軟部組織の脂肪沈着などを介し、舌容積増大に伴う上気道の虚脱と上気道の閉塞が起こるとされる。そして、OSAS患者の80%以上は高度または中等度の上気道虚脱を有しており、そのほとんどは肥満と関連している。 OSASの定義としては、睡眠1時間当たり5回以上の無呼吸または低呼吸イベント(AHI≧5回/時間)がみられる疾患であり、OSASの重症度は無呼吸低呼吸指数(AHI)を用いて、軽症(5≦AHI<15回/時間)、中等症(15≦AHI<30回/時間)、重症(AHI≧30回/時間)で判定される。 OSASでは、高血圧、2型糖尿病、心房細動、心不全、冠動脈疾患、脳卒中、死亡などの心血管系および代謝系の併存疾患のリスク増加にも関与しており、とくに心・脳の血管疾患1)や高血圧と深く関与すると指摘されている。 また、重症OSAS患者では、致死的・非致死的CVDリスクが高くなることが報告されている2)。OSASの最大の危険因子は「肥満」である。肥満が気道閉塞や肺容積減少によりOSASを引き起こす一方で、OSASが睡眠の断片化やホルモン分泌を乱すことで肥満を引き起こすという悪循環が見られる。そのため体重が10%増加すると、中等症以上のOSASを発症するリスクが6倍に増大するとされる一方で、10%の減量によりAHIが26%改善したという報告もある3)。肥満治療がOSASの治療の鍵となるが、生活習慣への介入だけでは、体重減少と維持が不十分な場合があり、他の治療法を検討する必要もある4,5)。チルゼパチドの使用は最適使用推進ガイドラインに沿って 睡眠時無呼吸症候群の診療アルゴリズムによれば、現在中等症以上のOSASの標準治療は持続陽圧呼吸療法(CPAP)となる。また、肥満を併発しているOSASでは、CPAP療法以外の治療法もあわせて検討される。 OSASの治療法には、「OA(マウスピース)療法」「CPAP療法」「手術」「減量」があるが、各々の治療法で利点と課題がある。たとえばCPAP療法では、上気道の開存性の維持やAHIの低下(OSAS症状の改善)という利点がある一方で、アドヒアランス不良などの影響でOSASに対する治療効果が維持できない、CPAP療法に対する忍容性が悪い患者の存在などの課題もある。その他、CPAP療法での治療患者は年々増加している(2022年時点で73万人)、その一方で、未診断・未治療の患者も多数存在する(約943万人)と葛西氏は指摘する。 こうした診療環境の中でGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドがOSAS治療にも適応となった。チルゼパチドは、中枢神経系における食欲調節と脂肪細胞における脂質などの代謝亢進を通じて体重減少に寄与する。この体重減少作用が、「OSASの病態の根本原因の1つにアプローチする治療となる可能性がある」と葛西氏は期待を寄せる。 チルゼパチドによる治療対象は、中等症以上のOSASでBMIが27以上の患者であり、その使用では「最適使用推進ガイドライン」に沿ってさまざまな要件が必要とされる。処方に際しては2つの要件があり、施設要件として循環器内科、呼吸器内科などの標榜診療科、学会認定教育研修施設、専門医の常勤などがある。また、医師要件としては、OSASの診療に5年以上の臨床経験を有していることや日本循環器学会や日本呼吸器学会などの学会の専門医であることが要件とされている。とくに前者の要件のハードルが高く、教育研修施設など大きな医療機関での使用に限定されている。チルゼパチドは無呼吸低呼吸指数の改善と変化率、体重などを有意に低下 次に中等症から重症のOSASを有する日本人を含む国際共同第III相臨床試験(SURMOUNT-OSA試験)について説明した。この試験は、AHIが15以上のOSASを有するBMI30以上(わが国の実施医療機関ではBMI27以上)の患者を対象とし、多施設共同、無作為化、並行群間、プラセボ対照、二重盲検比較試験で行われた。 それぞれ最大耐用量(MTD)のチルゼパチド(10または15mg)を週1回投与したときのプラセボ投与に対する優越性を検討し、投与52週時点のベースラインからのAHIの低下を指標とすることを目的に、次の2つの試験を実施した。 ・GPI1試験は、気道陽圧(positive airway pressure:PAP)療法を使用できないまたは望まない患者234例(うち日本人7例)。 ・GPI2試験は、スクリーニング前に少なくとも3ヵ月連続してPAP療法を実施中であり、試験期間中にPAP療法を継続する予定の患者235例(うち日本人13例)。 方法として二重盲検下でGPI1およびGPI2試験それぞれについて1:1でチルゼパチド(10または15mg)、プラセボ群に対象を無作為に割り付けた。また、チルゼパチドの開始用量を2.5mgとして週1回4週間投与後、MTD(10または15mg)に到達するまで4週間隔で2.5mgずつ増量し52週間投与した。 主要評価項目は、AHIのベースラインから投与52週時点の変化量(件/時)を評価した。その結果、投与52週時点のAHIのベースラインからの変化量について、GPI1試験ではチルゼパチド群(114例)で-25.3、プラセボ群(120例)で-5.3、GPI2試験ではチルゼパチド群(119例)で-29.3、プラセボ群(114例)で-5.5であり、プラセボ群に対し有意に減少した。また、主な副次評価項目である投与52週時点のAHIのベースラインからの変化率について、GPI1試験ではチルゼパチド群で-50.7、プラセボ群で-3.0であり、GPI2試験ではチルゼパチド群で-58.7、プラセボ群で-2.5と、プラセボ群に対し有意に低下した。同じく投与52週時点の体重のベースラインからの変化率について、GPI1試験ではチルゼパチド群で-17.7、プラセボ群で-1.6となり、GPI2試験ではチルゼパチド群で-19.6、プラセボ群で-2.3と、プラセボ群に対し有意に低下した。 安全性については、他のSURMOUNT試験と同等の安全性が示唆され、死亡などの重篤な有害事象はなかった。主な有害事象は下痢、悪心、嘔吐の順で多く、消化器症状が多く報告されていた。 最後に葛西氏は「OSASは、心不全や脳卒中などの重篤な合併症リスクが高く、生命にかかわる治療すべき疾患であり、肥満がOSASの最大の危険因子となる。肥満を合併したOSASでは減量が重要な治療法の1つであり、チルゼパチドは、OSAS治療で重要な治療選択肢として期待できる」と展望を述べ、講演を終えた。

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GLP-1受容体作動薬、自己免疫疾患患者の死亡・血栓リスク低下と関連

 肥満を伴う関節リウマチ、乾癬性関節炎、炎症性腸疾患などの自己免疫疾患の患者の中で、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が処方されている人は、死亡リスクや血栓症のリスクが低いという研究結果が報告された。米フロリダ大学のAmy Sheer氏らが、フロリダ州などの3州にある14の医療機関の電子カルテ情報を用いて検討したもので、詳細は6月6日付で「Journal of the American Heart Association(JAHA)」に掲載された。 GLP-1RAは、2型糖尿病の血糖管理のほかに減量目的でも用いられている。肥満では、全身性の慢性炎症や血管内皮機能の低下により血栓が形成されやすいことが知られていて、また自己免疫疾患も炎症反応を強めるために、肥満を伴う自己免疫疾患患者では、心血管イベントや血栓イベントのリスクが高いと考えられている。Sheer氏らは、2014~2024年の電子カルテデータから、自己免疫疾患と肥満のある18歳以上の成人患者を抽出。背景因子を傾向スコアでマッチングさせ、GLP-1RAが処方されていた患者と処方されていない患者、各群1万3,204人のデータセットを作成し、全死亡や心血管・血栓イベントのリスクを比較した。解析対象者全体の平均年齢は54.7±14.5歳、女性73.4%で、BMIは37だった。 解析の結果、GLP-1RAの処方は、全死亡リスクが44%低いことと関連していた(ハザード比〔HR〕0.56〔95%信頼区間0.47~0.66〕)。また、脳卒中・一過性脳虚血発作(HR0.87〔同0.76~0.99〕)、肺塞栓症(HR0.69〔0.56~0.86〕)、静脈血栓塞栓症(HR0.83〔0.72~0.95〕)、救急外来受診(HR0.79〔0.75~0.83〕)のリスクも有意に低かった。一方、心筋梗塞リスクについては有意な低下は認められなかった。 この結果について、米マサチューセッツ総合病院のFatima Cody Stanford氏は、「肥満と自己免疫疾患を併発している患者において、全死因リスクが44%減少したという結果は注目すべき発見だ」と述べている。米国心臓協会(AHA)ライフスタイル・心血管代謝評議会の一員でもある同氏は、「肥満の専門医・研究者として普段から複雑な炎症性疾患を抱える患者を診察している立場からすると、今回の研究結果はわれわれが抱いていた臨床疑問と期待に答えるものだ。つまり、GLP-1RAのメリットは血糖コントロールや体重減少にとどまらず、最もリスクの高い自己免疫疾患患者の一部において、疾患の経過そのものを変える可能性があるということだ」と話している。 研究者らは、この結果について、「GLP-1RAは免疫系を調節し、血液凝固能を抑制することが知られている。今回の研究結果はそのような作用によって説明できるのではないか」と述べている。またSheer氏は、「既存の自己免疫疾患治療薬とGLP-1RAの併用効果に期待される。過体重や肥満を伴う自己免疫疾患患者にとって本研究は、処方薬が心血管疾患のリスク軽減にもつながっている可能性を示す、希望の兆しとも言えるのではないか」としている。

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第308回 手足口病、全国25都道県で警報レベル 東北でも感染拡大/JIHS

<先週の動き> 1.手足口病、全国25都道県で警報レベル 東北でも感染拡大/JIHS 2.千葉の豪雨で25市町に災害救助法、マイナ保険証なくても受診可能に/厚労省 3.地域ごとに「推奨薬」選定へ 地域フォーミュラリ普及を本格化/厚労省 4.チルゼパチドの薬価25%減 低価格化による不適正使用を懸念/リリー 5.MMR混合ワクチンを個別接種へ 接種率低下と感染拡大に懸念/米国 6.沢井製薬が46品目販売中止、低薬価・設備老朽化で安定供給が課題に/沢井 1.手足口病、全国25都道県で警報レベル 東北でも感染拡大/JIHS国立健康危機管理研究機構(JIHS)の感染症動向調査によると乳幼児を中心に流行する手足口病が、東北各県で高い水準となっている。青森県では8月3~9日の患者報告数が257人で、6週間ぶりに減少したものの、1定点医療機関当たり7.56人と警報基準の5人を上回った。県内6保健所管内のうち5管内が警報レベルで、青森市・東津軽では10.33人、八戸市・三戸では9.14人だった。その一方で、岩手県では同期間の患者数が415人と前週から69人増加。1定点当たり15.37人で10週連続の増加となり、警報基準の3倍を超えた。一関27.0人、中部26.5人、県央25.0人など、10管内中7管内が警報レベルとなっている。宮城県も1定点当たり10.45人と今季最多を更新し、4週連続で警報基準を超えた。同じく福島県でも9.71人と2週連続で今季最多となり、警報レベルが4週続いている。全国では7月27日~8月2日の定点当たり報告数は6.03人。2週連続で減少したものの、25都道県で警報基準を超えており、依然として広範な流行が続いている。手足口病はエンテロウイルスなどによる感染症で、多くは軽症だが、まれに脳炎などの中枢神経合併症を来す。飛沫や接触のほか便を介して感染し、症状消失後も数週間にわたり便中へウイルスが排泄されることがある。医療現場では乳幼児の発熱、口腔内病変、手足の発疹に加え、意識障害、けいれんなど重症化を示唆する症状に注意が必要である。家庭や保育施設では石けんと流水による手洗い、タオルの共用回避、おむつ交換時の排泄物処理の徹底が求められる。 参考 1) 手足口病の減少続くも、感染性胃腸炎やコロナは増転【感染症動向調査第31週:7月27日~8月2日】(Medical Tribune) 2) 青森「手足口病」感染者数減少も依然5保健所管内で警報レベル(NHK) 3) 岩手県内「手足口病」患者数さらに増加 警報基準の3倍余に(同) 4) 福島県内 「手足口病」今季最多に お盆休みの感染対策徹底を(同) 2.千葉の豪雨で25市町に災害救助法、マイナ保険証なくても受診可能に/厚労省8月13日に千葉県を中心に発生した記録的豪雨で、県内の医療機関にも浸水や停電などの被害が広がっている。厚生労働省によると、14日午前10時時点で大規模病院を含む22医療機関から被害報告があり、千葉市、柏市、八千代市などを中心に影響が確認された。内閣府は多数の住民が生命・身体に危害を受ける、またはその恐れがあるとして、千葉県の21市4町、計25市町に災害救助法を適用した。厚労省は14日、被災者の保険診療や診療報酬に関する特例措置を通知した。避難時にマイナンバーカードや資格確認書を紛失、または自宅に残した場合でも、氏名、生年月日、連絡先に加え、被用者保険では事業所名、国保・後期高齢者医療では住所などを申し立てれば保険診療を受けられる。医療機関は可能な限り保険者を確認した上でレセプト請求するが、特定できない場合も住所や事業所名、連絡先などを記載して請求できる。被災者受け入れに伴う診療報酬上の特例も適用される。許可病床数を超えて患者を受け入れても減額措置を適用せず、DPC病院も従来通り診断群分類点数表による算定が可能となる。患者急増や災害支援への職員派遣によって看護配置や夜勤時間などの施設基準が一時的に満たせなくなった場合も、一定範囲では変更届を不要とする。また、被災医療機関からの転院患者については、平均在院日数や重症度、医療・看護必要度などの算定から除外できる場合があり、ICU・HCUにやむを得ず本来の対象外患者を収容した場合も特例が設けられた。そのほか、避難所で継続的な診療が必要な通院困難患者には、条件を満たせば在宅患者訪問診療料の算定も認められる。その一方で、保団連は医療機関や介護施設、在宅人工呼吸器・酸素療法、人工透析患者への電力・水供給の早期確保、医薬品・医療材料の供給、被災者の医療費窓口負担免除などを政府に要望した。豪雨災害では直接的な外傷だけでなく、停電・断水による透析や在宅医療の継続困難、慢性疾患治療の中断も重要な課題となる。 参考 1) 令和8年8月13日からの大雨に伴う災害に係る災害救助法の適用について(内閣府) 2) 令和8年8月13日からの大雨に伴う災害の被災者に係るマイナ保険証又は資格確認書の提示等について(厚労省) 3) 千葉豪雨 県内の22の医療機関から被害報告 厚労省(テレビ朝日) 4) 千葉の大雨、死者8人に…被災者の“医療費免除”と“最大850万円の支給”を医師団体が国に緊急要望(弁護士JPニュース) 5) 2026年8月13日からの千葉県を中心とする大雨被害、保険診療受診や診療報酬算定に関する特例を適用-厚労省(Gem Med) 3.地域ごとに「推奨薬」選定へ 地域フォーミュラリ普及を本格化/厚労省厚生労働省は、地域ごとに使用を推奨する医薬品を定める「地域フォーミュラリ」の普及を本格化させる。今秋をめどに、医療関係者らを対象とした全国説明会を開き、制度への正確な理解を広げる方針。地域フォーミュラリは、高血圧、脂質異常症、胃潰瘍などの治療薬について、有効性、安全性、費用、供給状況などを踏まえ、地域で推奨する医薬品をリスト化する仕組み。院内フォーミュラリと異なり、病院だけでなく診療所や薬局も含む地域全体で運用する。医師の処方権を制限するものではなく、標準的な薬物療法の共有、後発医薬品の適正使用、医薬品の安定供給を目的とする。日本フォーミュラリ学会によると、2026年2月時点で18都道府県30地域に導入が済んでおり、31地域が準備中。大阪府八尾市ではスタチンなど10薬効群、茨城県つくば地域では14薬効群について策定している。学会も31薬効群の「モデルフォーミュラリ」を公開しており、各地域はこれを参考に独自の事情を加味して策定できる。2026年度診療報酬改定では、医科・調剤の施設基準に、地域の医療機関、薬局、関係団体と医薬品の品目情報を共有し、安定供給に向けた事前の取り決めを行うことが望ましいとの考え方が盛り込まれた。現時点では努力目標だが、国が地域フォーミュラリを政策的に後押しする姿勢が鮮明になった。厚労省は全都道府県に医師会や薬剤師会などが参画する検討会の設置を求める。普及の背景には医療費適正化に加え、後発薬の供給不安や災害対応がある。健保連は2019年、高血圧、脂質異常症、糖尿病で後発薬への切り替えが進めば、全国で年間3,100億円の薬剤費削減につながると試算している。また、地域で使用薬をある程度集約すれば、薬局の在庫負担軽減や供給途絶時の代替、災害時の備蓄・配送にも役立つ。今後は、地域の実情を反映しながら、医師の処方判断とどう両立させるかが普及の鍵となる。 参考 1) 地域フォーミュラリ、厚労省が「全国説明会」今秋、医療関係者ら向けも(MEDIFAX) 2) 高血圧・脂質異常症・胃潰瘍…地域ごとに異なる「使用が推奨される医薬品」、リスト作りを国が推進(読売新聞) 3) 報酬改定も策定を後押し、広がる地域フォーミュラリ(日経メディカル) 4.チルゼパチドの薬価25%減 低価格化による不適正使用を懸念/リリー日本イーライリリーは、2型糖尿病治療薬チルゼパチド(商品名:マンジャロ皮下注)の薬価が8月1日付で25%引き下げられたことを受け、「画期的な医薬品に対する不当に不利益な対応」とする声明を発表した。今回の引き下げは、販売額が想定を上回った医薬品の価格を調整する「持続可能性特例価格調整」の適用によるもの。厚生労働省によると、同薬の保険診療での年間販売額は1,000~1,500億円規模に達している。薬価は2.5mg製剤で1本1,443円、15mg製剤で8,658円となった。リリーは、日本の価格は従来からG7で最も低い水準にあり、今回の引き下げにより同規模の経済圏でも最低水準になるとしている。同社は低価格化により、適応外となる痩身目的での不適正使用、海外からの医療ツーリズム、利益目的の買い占めや海外転売が拡大し、本来治療を必要とする2型糖尿病患者への安定供給に影響する可能性があると警告。政府に海外転売を厳格に規制する措置を求めている。チルゼパチドは週1回投与のGIP/GLP-1受容体作動薬で、食欲を抑制する作用も有する。わが国では2023年に2型糖尿病治療薬として発売されたほか、2025年には肥満症治療薬として別製品が発売されている。その一方で、糖尿病治療用製剤を美容・ダイエット目的で自由診療に使用する例が広がっており、適応外使用に伴う健康被害や、医薬品副作用被害救済制度の対象外となる可能性も指摘される。リリーは、今回の薬価引き下げについて、研究開発や国内投資の予見可能性を損ない、将来的なドラッグラグ・ドラッグロスにつながる恐れもあると主張している。高額な革新的医薬品による医療費増大への対応と、適正使用、安定供給、創薬イノベーションをどう両立させるか、薬価政策のあり方が改めて問われている。 参考 1) マンジャロの大幅な薬価引き下げに対する声明を発表~国際競争下における日本への長期的投資の持続のために、そして患者さんがイノベーションを享受するためには、予見可能で透明性の高い政策環境が不可欠~(日本イーライリリー) 2) 糖尿病薬マンジャロ「インドより安い」 不適正使用の助長に懸念(日経新聞) 3) 英アストラゼネカCSO 革新医薬への支出「先進国で公平負担を」(同) 4) リリー、マンジャロ薬価引き下げは「不当に不利益な対応」(AnswersNews) 5.MMR混合ワクチンを個別接種へ 接種率低下と感染拡大に懸念/米国米国のトランプ大統領は8月10日、小児のワクチン接種方針を見直す大統領令に署名した。麻しん、おたふく風邪、風しんを予防するMMR混合ワクチンについて、それぞれを別の機会に接種することを推奨するとともに、すべての小児に一律で推奨するワクチンを従来の17種類から11種類に縮小する方針を示した。A型・B型肝炎、ロタウイルス、髄膜炎菌、インフルエンザ、新型コロナワクチンなどは、医師と保護者による個別判断に移行するとしている。トランプ氏はワクチン接種数の増加と自閉症との関連を示唆しているが、米国小児科学会は「数百万人を対象とした多くの研究で関連がないことが示されている」と反論し、今回の見直しを「危険で誤解を招く」と批判している。WHOも、ワクチンと自閉症との因果関係を示す証拠はなく、MMRを単独接種に分ける医学的利点を裏付ける根拠もないとしている。さらに、麻しん・風しん・おたふく風邪の単独ワクチンは現在米国内では入手ができず、分割接種には製造体制の整備が必要となる。接種回数や受診回数の増加により、接種完遂率が低下するとの懸念も強い。米国では今年、8月6日時点で麻疹患者が2,465人に達しており、専門家はワクチン忌避の拡大がさらなる流行につながる可能性を警告している。なお、接種義務の決定権は各州にあり、大統領令のみでただちに接種スケジュールや保険適用が変更されるわけではない。 参考 1) 米、混合ワクチンを個別接種に 推奨対象も削減(共同通信) 2) 「ワクチンと自閉症が関連」が持論のトランプ氏、混合ワクチンを別々に接種する方針打ち出す…感染リスク拡大の恐れ(読売新聞) 3) 米医師ら、トランプ氏の大統領令に懸念 家庭でのワクチン離れにつながるか(CNN) 6.沢井製薬が46品目販売中止、低薬価・設備老朽化で安定供給が課題に/沢井沢井製薬は、後発医薬品22成分46品目について、在庫がなくなり次第、順次販売を中止すると医療関係者に通知した。大半は安定供給体制の構築と生産効率改善を目的とした製品構成の見直しによるもので、一部は協業する日医工グループ製品などへ統合する。対象にはアテノロール、アマルエット配合錠、アルファカルシドール、エバスチン、クアゼパム、テルミサルタンOD錠、ドネペジル、ニフェジピン、フルボキサミン、ブロナンセリン、メマンチンなど、日常診療で処方される薬剤も多数含まれる。沢井製薬は各品目について代替品・代替候補品を提示している。たとえばアマルエット配合錠はアムロジピンとアトルバスタチンの単剤、セチリジンOD錠は通常錠、ドネペジル錠は同社OD錠への切り替えが候補とされている。在庫消尽時期は品目ごとに異なり、多くは2027年4月だが、プロブコールは2026年10月、ザルトプロフェンやプロピベリン20mgは同年11月、ニフェジピンカプセルは2028年3月とされる。その一方で、アテノロールやアルファカルシドール、クアゼパムなどはすでに供給停止中となっている。経過措置期間の満了は2028年3月の予定。背景には後発薬業界の構造的な供給問題がある。日本製薬団体連合会の調査では、医療上の必要性が高い2,882品目のうち255品目、約9%で将来の供給継続が困難と回答された。主因は薬価低下や製造設備の老朽化であり、なかには全身麻酔薬や注射用抗菌薬など重要薬も含まれている。臨床現場では今後、単なる銘柄変更だけでなく、剤形や規格、配合剤から単剤への変更が必要となるケースもあり、処方時には院内採用品や地域薬局の在庫状況を含めた確認が求められる。 参考 1) 販売中止品目のお知らせ(沢井製薬) 2) 沢井製薬、後発薬46品目を販売中止へ 供給安定へ製品構成見直し(日経新聞) 3) 沢井製薬が46品目、高田製薬が31品目を販売中止に(日経メディカル) 4) 重要度高い薬「供給継続できず」1割 低薬価や老朽化で、日薬連調査(日経新聞) 5) 医療用医薬品供給状況報告(厚労省)

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1日1回経口投与のzenagamtide、2型糖尿病の血糖改善効果は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、1日1回経口投与のzenagamtide(6、25、50mgの3用量ともに)はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬である。2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象とした初期の臨床試験では、皮下投与および経口投与の両製剤について評価が行われ、いずれも2型糖尿病患者を対象とした第II相の用量反応試験における検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌2026年8月15日号掲載の報告。1日1回経口投与の有効性と安全性に関する用量反応試験(6、25、50mg) 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの1日1回経口投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国(ブルガリア、クロアチア、ドイツ、ギリシャ、ハンガリー、日本、ポーランド、ルーマニア、スロバキア、スペイン、米国)の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、1日1回経口投与のzenagamtide群またはプラセボ群に5対1の割合で割り付けられ、さらに3つの用量群(6、25、または50mg)のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide経口投与は1.5mgで開始し、維持用量(6、25、50mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量は-0.9%~-1.4% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち186例(20%)が、経口zenagamtide群(6mg群54例、25mg群51例、50mg群51例)またはプラセボ群(30例)に無作為化され、全例が解析対象集団に組み入れられた。 ベースライン特性は治療群間で類似しており、平均年齢は55.6歳(SD 9.7)、平均HbA1c値は8.0%(SD 0.8、各群平均値の範囲:7.9~8.1%)、平均BMI値は34.8(SD 6.3)であり、平均糖尿病罹病期間は8年(SD 6)であった。113/186例(61%)が男性であった。 36週時点のベースラインからのHbA1c推定変化量は、zenagamtide 6mg群が-0.9%(対プラセボの推定治療群間差[ETD]:-0.54%、95%信頼区間[CI]:-1.04~-0.04、p=0.033)、zenagamtide 25mg群が-1.3%(ETD:-0.99%、95%CI:-1.49~-0.49、p=0.0001)、zenagamtide 50mg群が-1.4%(ETD:-1.09%、95%CI:-1.59~-0.59、p<0.0001)であった。 有害事象の大部分は消化器系の事象で、zenagamtide 6mg群14/54例(26%)、zenagamtide 25mg群21/51例(41%)、zenagamtide 50mg群24/51例(47%)、およびプラセボ群7/30例(23%)に発現した。 重篤な有害事象は、zenagamtide全投与群の7/186例(4%)で報告された(6mg群2例、25mg群2例、50mg群3例)。プラセボ群において重篤な有害事象は報告されなかった。試験期間中に死亡は認められなかった。 著者は、「全体として、試験で報告された知見は臨床的に意義のあるものであり、第III相試験におけるzenagamtideの1日1回経口投与に関する検討を支持するものであった」とまとめている。

7.

肥満症治療薬単独では血管の健康改善効果は限定的

 GLP-1受容体作動薬などの肥満症治療薬は、肥満治療を大きく変えつつある。しかし、血管の健康の維持には、運動が依然として決定的な役割を果たす可能性を示した研究が、6月24日付で「Nature Metabolism」に掲載された。論文の上席著者であるコペンハーゲン大学(デンマーク)生物医学分野教授のSigne Torekov氏は、「本研究は、薬物療法は体重維持を支える一方で、血管の健康を改善するのは、薬物療法の有無にかかわらず運動であることを示している」と述べている。 肥満と身体活動不足は、血管内皮機能の低下や動脈硬化と関連付けられている。この研究では、8週間の低カロリー食による減量プログラムにより平均約13.7 kgの減量に成功した肥満の成人130人を対象に、運動とGLP-1受容体作動薬のリラグルチドが、減量後の血管の健康に与える影響が検討された。対象者は52週間にわたる体重維持のための介入として、1)運動を行う群、2)リラグルチドを使用する群、3)運動とリラグルチド使用を併用する群、4)プラセボを使用する群のいずれかにランダムに割り付けられた。 その結果、52週間の介入後に、心疾患や脳卒中リスクの指標とされる頸動脈の内膜中膜複合体厚(cIMT)は、運動群で7%、併用群で6%減少した。また、運動群では炎症性サイトカインであるインターロイキン(IL)-6とインターフェロン(IFN)-γが低下し、併用群では対象とした4種類の血管内皮機能マーカーのうちの3種類(sICAM-1、sVCAM-1、tPA)も改善した。一方、リラグルチド単独群では、cIMTの変化や血管内皮機能マーカーの改善は認められなかった。 Torekov氏は、「肥満症治療薬は重要な治療手段であるが、本研究の結果は、それが運動の代わりにはならないことを示している。心臓や血管を守るためには、身体活動が依然として不可欠である」と述べている。 では、どの程度の運動が必要なのだろうか。世界保健機関(WHO)は、中強度の運動を週に150分以上、または高強度の運動を週に75分以上行うことを推奨している。本研究の参加者が実施した運動プログラムは、この推奨内容に一致するよう設計されていた。

8.

2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの効果(解説:小川大輔氏)

 2型糖尿病の治療薬としてGLP-1受容体作動薬が登場し、その後GIP受容体に対する作用を併せ持つGIP/GLP-1受容体作動薬が使用されるようになった。そしてGIP受容体、GLP-1受容体に加え、グルカゴン受容体を同時に刺激するGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬、いわゆる「トリプルアゴニスト」が開発されている。今回2型糖尿病に対するトリプルアゴニストretatrutideの第III相試験の結果が報告された1)。 食事療法と運動療法で血糖コントロール不良(HbA1c 7.0~9.5%)の2型糖尿病患者を対象に、retatrutide群(4mg、9mg、12mg)とプラセボ群に無作為に割り付け、40週間投与した。retatrutideはGLP-1受容体作動薬セマグルチドやGIP/GLP-1受容体作動薬チルゼパチドと同じく週1回投与の注射製剤である。主要エンドポイントであるベースラインから40週時のHbA1cの変化量は、プラセボ群と比較しretatrutide群で有意差を認めた(retatrutide 4mg群-0.88%、9mg群-1.04%、12mg群-1.12%)。 グルカゴンは膵臓のα細胞から分泌されるホルモンで、肝臓でのグリコーゲン分解促進、糖新生の促進、脂肪組織での脂肪分解の促進などの作用により血糖値を上げる働きをする。retatrutideのグルカゴン受容体刺激により血糖値上昇が懸念されるが、グルカゴン受容体への作用が低親和性に調整されていること、またGLP-1およびGIPによるインスリン分泌作用、食欲抑制作用および胃排泄遅延作用により実際には血糖値は上昇しない2)。またretatrutideのグルカゴン受容体への作用により、エネルギー消費量の増加、肝臓の脂肪代謝改善、中枢性の食欲抑制などにより血糖値はむしろ低下し、さらに体重減少効果もあると考えられている3)。 GLP-1とGIPの受容体に働くデュアルアゴニストのチルゼパチドは、血糖降下作用に加えて体重減少効果もあり、現在実臨床でよく使用されている。そしてGLP-1、GIPに加え、グルカゴン受容体にも働くトリプルアゴニストのretatrutideは、グルカゴン受容体の刺激が加わることで、食欲抑制やインスリン分泌だけでなく、エネルギー消費や脂肪燃焼の効果がさらに高まると考えられ、チルゼパチドよりも強力なのではないかと期待されている。現在、retatrutideをシングルアゴニストのセマグルチドと比較する試験や、腎障害のある糖尿病患者を対象とした試験が行われており、今後の報告に注目したい。

9.

週1回皮下投与のzenagamtide、2型糖尿病に対する有効性は?/Lancet

 2型糖尿病患者において、zenagamtide 0.4~40mgの週1回皮下投与はプラセボと比較して、ベースラインから36週までのHbA1c変化量において、臨床的に意義のある改善がみられ、その差は統計学的にも有意であった。安全性および忍容性プロファイルは、他のGLP-1受容体作動薬およびアミリン受容体作動薬と同程度であった。米国・テキサス大学サウスウェスタン医療センターのPablo Mora氏らが、36週の第II相多施設共同無作為化並行群間二重盲検プラセボ対照用量設定試験の結果を報告した。zenagamtide(旧称amycretin)は、GLP-1受容体、アミリン受容体、カルシトニン受容体に作用する単分子ペプチド作動薬で、2型糖尿病を伴わない過体重または肥満者を対象に評価が行われた初期の臨床試験において、2型糖尿病患者を対象としたさらなる検討を支持する知見が示されていた。Lancet誌オンライン版2026年7月30日号掲載の報告。週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応試験 2型糖尿病の成人患者を対象に、プラセボと比較したzenagamtideの週1回皮下投与の有効性と安全性に関する用量反応関係を検討する試験は、11ヵ国の83の病院およびクリニックで行われ、3週のスクリーニング期間、36週の投与期間、4週のフォローアップ期間で構成された。 対象は、2型糖尿病(HbA1c値7.0~10.0%[53~86mmol/mol])の成人(18~75歳)で、SGLT2阻害薬投与の有無を問わずメトホルミン安定用量で治療を受けている患者とした。BMI値は23.0以上50.0未満を適格とした。 被験者は、無作為化・治験薬管理システムを用いて、週1回皮下投与のzenagamtide群またはプラセボ群に6対1の割合で割り付けられ、さらに6つの用量群(0.4、1.5、5、10、20、または40mg)のいずれかに1対1対1対1対1対1の割合で無作為に割り付けられた。プラセボ群に割り付けられた被験者も同様に、各投与スケジュールに対応する適合プラセボ投与群に割り付けられた。無作為化では、スクリーニング時のHbA1c値(8.5%未満または8.5%以上)、居住国(日本またはその他)で層別化も行われた。 zenagamtide皮下投与は0.2mgで開始し、維持用量(0.4~40mg)に到達するまで4週ごとに漸増した。被験者および試験スタッフは、各用量群においてプラセボまたはzenagamtideの割り付けを盲検化された。 主要評価項目は、ベースラインから36週までのHbA1c変化量とした。主要評価項目は、無作為化された全被験者を対象とし、レスキュー薬を投与することなく治験薬の投与を継続している間に収集されたデータに基づくefficacy estimandを用いて評価された。安全性は、治験薬の投与を受けた無作為化された全被験者を対象に評価された。36週時点のHbA1c推定変化量、6用量群で-0.9%~-1.7% 2024年8月7日~12月27日に、スクリーニングされた915例のうち262例(29%)が、zenagamtide群(225例)またはプラセボ群(37例)に無作為化された。被験者はさらに、6用量群のいずれか1用量群(0.4mg群38例、1.5mg群36例、5mg群37例、10mg群38例、20mg群38例、40mg群38例)またはプラセボ群(37例)に無作為化され、261例が治験薬の投与を受けた。 ベースラインにおける全群のHbA1c平均値は7.8%(SD 0.8)であった。36週時点で、HbA1c推定変化量は、zenagamtide 0.4mg群の-0.9%(対プラセボの推定治療群間差:-0.77%、95%信頼区間[CI]:-1.26~-0.28、p=0.0021)からzenagamtide 40mg群の-1.7%(同:-1.56、95%CI:-2.05~-1.07、p<0.0001)の範囲にわたっていた。 有害事象の大部分は消化器系のもので、重症度は軽度~中等度であった。重篤な有害事象は、21/261例(8%)で報告された(0.4mg群4例、1.5mg群3例、5mg群2例、10mg群5例、20mg群3例、40mg群1例、プラセボ群3例)。死亡は報告されなかった。

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第331回 ポストバイオティックがGLP-1を増やして体重を減らす

小規模ながら二重盲検のプラセボ対照無作為化試験で、経口服用の不活化細菌サプリメント(ポストバイオティック)が肥満/過体重成人の体重を有意に減らしました1,2)。GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)が肥満治療の主役に一気に躍り出たものの、治療が長続きしないことは少なくないようです。たとえば米国成人の4~5割ほどが開始から1年と経たずにGLP-1薬の使用を止めてしまっており、胃腸の有害事象を生じた患者はとくにそうでした3,4)。それゆえ、GLP-1薬のような生理作用をGLP-1薬が強いる負担なしでもたらす治療選択肢を必要とする患者は多いようです。有益作用をもたらす不活化微生物やその成分であるポストバイオティックがその需要に応えられるかもしれません。たとえばオリーブやキムチなどの発酵食品を介して口に入る細菌のラクチプランチバチルス プランタルム(Lactiplantibacillus plantarum[L. plantarum])にその可能性があります。熱で不活化したL. plantarumが短鎖脂肪酸(SCFA)を作る乳酸菌などの細菌を増やし5)、SCFAが豊富だと腸細胞からのGLP-1分泌が促進すること6)が先立つ研究で示されています。ゆえに不活化L. plantarumはGLP-1伝達を介して体重管理を助ける働きがあるかもしれません。そこでアラバマ大学のCharitharth Vivek Lal氏らは、不活化L. plantarumを含むポストバイオティック製品の体重への効果などを米国の過体重/肥満成人80人を募って試みました。使われた製品はResMと呼ばれ、不活化L. plantarumに加えてビタミンなどの微量栄養素と植物抽出物を含みます。被験者は1対1の割合で1日1回ResM服用群かプラセボ服用群に割り振られました。2ヵ月後、ResM群に割り振られた被験者の体重は、ベースライン時に比べて平均3%(2.6kg)減っていました。一方、プラセボ群の体重は減らず、ベースライン時より0.5kg増えていました。また、ResM群の血中のGLP-1活性はベースライン時に比べて2倍ほどに上昇していました。一方、プラセボ群ではほとんど変化がみられませんでした。GLP-1薬につきものの胃腸症状の心配はResMでは比較的少ないらしく、今回の試験で胃腸症状はむしろプラセボ群により多く生じました。深刻な有害事象はResM群とプラセボ群のどちらでもみられませんでした。GLP-1薬がすでに経ているような大規模試験で長期投与の効果持続のほどなどを今後調べる必要があります。それに、ResMの種々の成分の体重低下への寄与のほどもはっきりさせなければなりません。それらのさらなる検討で確かな裏付けが晴れて確立すれば、ResMはGLP-1薬に比べて副作用がより少なくて安上がりな体重減量や減った体重の維持手段を担うようになるかもしれません。参考(1)Pala OSK, et al. medRxiv. 2026 Jul 27. [Epub ahead of print](2)Postbiotic supplement boosts body’s own GLP-1 and weight loss / NewScientist(3)Do D, et al. JAMA Netw Open. 2024;7:e2413172.(4)Rodriguez PJ, et al. JAMA Netw Open. 2025;8:e2457349.(5)Huang Y, et al. Foods. 2025;14:2799.(6)Tolhurst G, et al. Diabetes. 2012;61:364-371.

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GLP-1薬は骨折リスクを上げる?下げる?

 GLP-1受容体作動薬(以下「GLP-1薬」)の投与開始は、DPP-4阻害薬の投与開始と比較して、2型糖尿病患者における脆弱性骨折リスクの低下と関連することが、米国・カリフォルニア大学のChristopher D. Hamad氏らの研究で示された。一方、GLP-1薬開始群と非開始群を比較した糖尿病の有無別の感度分析では、非2型糖尿病患者においてGLP-1薬使用は骨折リスク増加と関連していた。JAMA Network Open誌オンライン版2026年7月24日号掲載の報告。 これまでの研究では、BMIと脆弱性骨折リスクとの間にはU字型の関連があり、低体重や肥満では骨折リスクが高くなること、急速または大幅な体重減少でも骨折リスクが高くなることが報告されている。GLP-1薬は臨床試験で有意な体重減少をもたらしているため、骨への影響が懸念されているものの、その影響については十分なエビデンスが得られていない。そこで研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1薬開始と脆弱性骨折リスクとの関連について、DPP-4阻害薬開始を比較対照として検討する標的試験エミュレーションを実施した。 米国の電子カルテデータベースTriNetXを用いて、2015年1月1日~2022年12月31日に新たにGLP-1薬またはDPP-4阻害薬を開始した50~90歳の2型糖尿病患者を対象とした。患者は骨折、死亡、365日を超える医療受診の中断、または3年間の追跡終了まで追跡された。主要評価項目は、立位からの転倒など低エネルギー外傷による脆弱性骨折の発生とした。糖尿病の有無による違いを検討するため、GLP-1薬開始群と非開始群を比較する感度分析を実施したほか、BMIおよびHbA1cの変化が骨折リスクとの関連を媒介するかどうかについても解析した。 主な結果は以下のとおり。・傾向スコアマッチング後、13万3,606例(各群6万6,803例)の患者が解析に含まれた。GLP-1薬開始群およびDPP-4阻害薬開始群の平均年齢は63.2歳vs.63.8歳、男性が52.7%vs.54.0%、平均BMIは33.0 vs.32.9、平均HbA1cは8.48 vs.8.40であった。・3年間の追跡調査期間中、GLP-1薬開始群2,030例とDPP-4阻害薬開始群2,484例に脆弱性骨折が発生した。・GLP-1薬の開始は、DPP-4阻害薬の開始と比較して脆弱性骨折リスクの低下と関連していた。 -ハザード比(HR):0.79(95%信頼区間[CI]:0.76~0.83) -絶対リスク減少:0.79%(95%CI:0.60~0.99) -治療必要数:126(95%CI:101~168)・骨折リスク低下との関連は1年目と2年目で有意に認められたが、3年目には有意ではなくなった。 -1年目 HR:0.72(95%CI:0.67~0.78) -2年目 HR:0.77(95%CI:0.71~0.83) -3年目 HR:0.94(95%CI:0.86~1.02)・骨折リスク低下との関連は年齢、性別、フレイルの程度にかかわらず一貫して認められた。最も大きなリスク低下は、椎骨骨折および股関節・大腿骨骨折であった。・媒介分析では、GLP-1薬使用による骨折リスク低下の大部分は、BMIやHbA1cの低下を介さない直接効果によることが示唆された(HR:0.81[95%CI:0.76~0.86])。・糖尿病の有無別にGLP-1薬開始群と非開始群を比較した感度分析では、GLP-1薬使用は2型糖尿病患者では骨折リスク低下と関連した一方、非2型糖尿病患者では骨折リスク増加と関連していた(交互作用のp<0.001)。 -2型糖尿病患者 HR:0.91(95%CI:0.88~0.95) -非2型糖尿病患者 HR:1.13(95%CI:1.04~1.23) これらの結果より、研究グループは「2型糖尿病患者へのGLP-1薬の投与開始は、DPP-4阻害薬の投与開始と比較して、BMIおよびHbA1cの変化では説明されない形で3年間の脆弱性骨折リスク低下と関連していた。因果関係を確立し、骨への長期的な影響を明らかにするためには前向き研究が必要である」とまとめた。

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orforglipronはSGLT2阻害薬を超えた存在になるか?:ACHIEVE-2試験から(解説:永井聡氏)

 orforglipronは、空腹時の服用や飲水制限といった条件が不要で、食後投与が可能な経口GLP-1受容体作動薬である。本剤の2型糖尿病に対する実薬対照RCTとしてはすでにACHIEVE-3試験が発表されており、低用量(12mg)でも経口セマグルチド14mgに対して有意なHbA1c低下を示し「勝利」を収めている1)。 今回取り上げるACHIEVE-2試験は、メトホルミンでコントロール不十分な2型糖尿病患者を対象に、orforglipron(3/12/36mgカプセル)とSGLT2阻害薬ダパグリフロジン10mgを比較した国際多施設共同試験である。結果は、orforglipronが全用量においてダパグリフロジンに対し血糖降下作用の非劣性および優越性を示し、再び「完全勝利」となった。PIONEER 2試験において経口セマグルチド14mgがエンパグリフロジン25mgを凌駕したことを踏まえれば2)、この結果は想定内とも言えるが、実臨床に与える影響は小さくない。 本邦の2型糖尿病の薬物治療アルゴリズム3)では、病態に応じた薬剤選択(肥満)の推奨薬として、メトホルミン、SGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬の順に記載されている。SGLT2阻害薬が優先される理由は、豊富な心血管・腎臓への保護効果のエビデンスに加え、既存の経口GLP-1受容体作動薬が服用条件に制約があるのに対し、処方や内服が容易であるためである。しかし、他の降圧薬等と一包化も可能で服薬条件に縛られないorforglipronの登場は、血糖降下作用と利便性の両面でSGLT2阻害薬を上回る存在になりうる。現在実施中の心血管アウトカム試験(ACHIEVE-4)の結果次第では、将来的に推奨順位が逆転する可能性もある。 一方で、試験結果の解釈は慎重にすべき点もある。第一に、orforglipron群は盲検化されたがダパグリフロジン群は非盲検であったため、新薬への「期待バイアス」が生じた可能性は否めず、orforglipronの臨床効果は過大評価となった可能性である。第二に、消化器症状による脱落率の高さである。本試験では、ダパグリフロジン群の6%に対し、orforglipron群では15%以上と高率であった。継続できなければ期待される恩恵にあやかれない。第三に、DECLARE-TIMI 58やDAPA-CKDなどで確立された長期安全性や心腎保護、二次予防の観点では、依然としてダパグリフロジンに軍配が上がることである。新薬への「期待バイアス」は患者だけではなく処方する医師にも起こりうる。さらに盲点となるのが薬物相互作用である。CYP3A4に関連する薬剤(クラリスロマイシンやイトラコナゾール)などではorforglipronとの併用注意・併用回避が必要な場合があり、多剤併用中の高齢者への処方はとくに注意が必要である。 ともあれ、かつて脂質異常症の治療は食事療法が主体であったが、ストロングスタチンの登場により、厳格な食事指導が緩和された歴史がある。糖尿病においても食事療法が基本であることに変わりはないが、強力な食事制限なしに血糖値と体重の改善をもたらすorforglipronは、まさに糖尿病領域における「ストロングスタチン」となる可能性がある。日進月歩でGLP-1関連薬は次々と新薬開発が進むが、個々のライフスタイルに合わせた処方や早期介入が進むことで、糖尿病寛解が夢物語でなくなることを願うばかりである。

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経口GLP-1受容体作動薬elecoglipronは新たな肥満症治療薬として有効である(解説:住谷哲氏)

 elecoglipronはAstraZeneca社が開発中の経口GLP-1受容体作動薬である。先行するEli Lilly社のorforglipronと同じく絶食時の服用などの制限がなく、新たな肥満症治療薬として期待されている。本試験VISTAはelecoglipronの第IIb相の用量設定試験である。用量は5mgから75mgに設定された。対象は2型糖尿病を合併していない肥満/過体重患者である。主要評価項目は2つ設定され(dual primary endpoints)、26週後の体重減少率と26週後に5%以上の体重減少を来した患者の割合とされた。 主要評価項目の1つである26週後の体重減少率は、プラセボ群、5mg投与群、75mg投与群でそれぞれ-0.6%、-2.6%および-10.5%であり、すべての投与群でプラセボ群と比較して有意に減少していた。26週後に5%以上の体重減少を来した患者の割合は、プラセボ群、5mg投与群、75mg投与群でそれぞれ15.6%、40.4%および88.8%であった。さらに、副次評価項目である36週後の体重減少率は75mg投与群で-11.8%であり、26週時点では体重減少がプラトーに達していないことが示された。安全性についても、これまでのGLP-1受容体作動薬と同様に消化器系有害事象が多く認められた。 肥満症治療薬としての経口GLP-1受容体作動薬については、経口セマグルチド(商品名:Wegovy錠25mg)がすでに欧米で承認されており、米国ではorforglipron(商品名:Foundayo)も承認されている。第IIb相である本試験の結果を受けて、AstraZeneca社は第III相臨床開発プログラムであるEMBOLD試験をすでに開始している。さらに、他のglipron薬と同じく血糖降下薬としての承認を目指したSOLSTICE試験の結果もLancetの同日号に報告された1)。わが国でも経口薬による肥満症治療が可能になる日が近づいている。

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フィネレノンは糸球体疾患由来のCKDに対しても腎保護的である可能性がある(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しい? フィネレノン(商品名:ケレンディア)は、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(mineralocorticoid receptor antagonist:MRA)であり、ミネラルコルチコイド受容体(MR)の活性を抑制する。従来、本剤は糖尿病性慢性腎臓病(CKD)を適応とし、心・腎保護を目的に使用されてきた。 今回のFIND-CKD試験では、新たに非糖尿病性CKD患者を対象として、フィネレノンの腎保護効果が評価された。FIND-CKD試験の結果は、非糖尿病性CKD患者全体を対象とした主要解析を報告したNEJM論文(Heerspink HJL, et al. N Engl J Med. 2026 Jun 4. [Epub ahead of print])と、糸球体疾患を有するCKD患者を対象に事前規定された探索的サブグループ解析を報告したJAMA論文(本論文)の2報として公表されている。 NEJM論文では、主要アウトカムとしてフィネレノンによるeGFRスロープの有意な改善が示された。一方、本JAMA論文では、糸球体疾患を有するCKD患者においても、先行するNEJM論文の結果を支持する腎保護効果が示された。MRAによる腎保護療法の流れ 現在、糖尿病性CKDに対する腎保護を目的とした薬物療法として推奨されているのは、RAS阻害薬、SGLT2阻害薬、非ステロイド型ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(nonsteroidal mineralocorticoid receptor antagonist:nsMRA)、およびGLP-1受容体作動薬である。このうち、RAS阻害薬とSGLT2阻害薬は第1選択薬として推奨されている一方、nsMRAはこれら2剤に追加して使用する薬剤として位置付けられており、推奨度はやや低い(Levin A, et al. Kidney Int. 2024;105:684-701.)。 nsMRAであるフィネレノンは、糖尿病性CKD患者を対象としたFIGARO-DKD試験、FIDELIO-DKD試験、および両試験の統合解析であるFIDELITYにおいて、心血管アウトカムおよび腎複合アウトカムの改善効果が示されている。これらのエビデンスを踏まえ、2024年KDIGOガイドラインでは、RAS阻害薬およびSGLT2阻害薬に追加する治療薬として、糖尿病性CKDの早期から心・腎保護を目的に使用することが推奨されている。 今回報告されたFIND-CKD試験は2報から構成されており、NEJM論文では非糖尿病性CKD患者全体を対象としてフィネレノンの腎保護効果が検証された。一方、JAMA論文(本論文)では、その対象集団のうち糸球体疾患を有するCKD患者に限定した事前規定の探索的サブグループ解析が報告された。FIND-CKD試験(JAMA論文)の結果の概要 FIND-CKD試験は、24の国・地域で実施された第III相無作為化二重盲検プラセボ対照試験であり、非糖尿病性CKD患者を対象とした。本試験の結果は2報として報告されており、NEJM論文では登録された全1,584例を対象とした主要解析が、一方、本JAMA論文では、そのうち糸球体疾患由来のCKDと診断された903例を対象とした事前規定の探索的サブグループ解析が報告された。 対象患者の平均年齢は51.1歳、女性は40.1%、アジア人は61.9%を占め、平均eGFRは48.8mL/min/1.73m2であった。また、尿蛋白/クレアチニン比(UPCR)も評価された。約80%の患者では腎生検により組織学的診断が確定しており、その内訳はIgA腎症46.1%、巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)23.8%、膜性腎症10.0%、膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)1.8~3.9%で、一部は高血圧性腎硬化症であった。 全例で試験開始前に最大忍容量のRAS阻害薬が4週間以上投与されており、その上乗せ治療としてフィネレノンの有効性が検討された。その結果、ベースラインから32ヵ月までのeGFRスロープは、フィネレノン群で−3.50mL/min/1.73m2/年、プラセボ群で−4.23mL/min/1.73m2/年となり、群間差は0.73mL/min/1.73m2/年(95%信頼区間[CI]:0.22~1.24)であった。また、フィネレノン群ではベースラインから12ヵ月までのUPCRが42%(95%CI:35~48)低下した。さらに、腎不全への進行またはeGFRが40%以上低下する複合腎アウトカムの発生リスクは、プラセボ群と比較して26%低下した(100患者年当たり7.42件vs.9.60件、ハザード比:0.74、95%CI:0.57~0.97)。 以上より、フィネレノンは糸球体疾患を有する非糖尿病性CKD患者において、腎機能低下の抑制、蛋白尿の減少、および腎アウトカムの改善を示し、腎保護作用を有する可能性が示唆された。FIND-CKDから学ぶこと 本研究の最大のポイントは、非糖尿病性CKD患者を対象としたFIND-CKD試験において、糸球体疾患サブグループでもフィネレノンの腎保護効果を支持する結果が得られた点である。 まず留意すべき点は、既報のFIGARO-DKD試験およびFIDELIO-DKD試験と同様に、FIND-CKD試験もRAS阻害薬による標準治療にフィネレノンを上乗せした治療の有効性を検証した試験であり、フィネレノン単独の効果を評価したものではないことである。また、NEJM論文は、非糖尿病性CKD患者全体を対象としてフィネレノンの有効性を検証するために計画された確証的試験である。一方、本JAMA論文は、試験計画時から糸球体疾患患者を対象とした事前規定の探索的サブグループ解析として実施されたものである。したがって、その結果は仮説的・補足的な位置付けであり、統計学的な確証的結論を導くものではないことを明記しておく必要がある。 そのような制約があるにもかかわらず、本JAMA論文では、主要評価項目であるeGFRスロープの改善に加え、事前に設定された腎複合エンドポイントおよび心血管エンドポイントについても、一貫してフィネレノンに有利な傾向が認められた。したがって、IgA腎症をはじめとする糸球体疾患由来の非糖尿病性CKD患者においても、フィネレノンの腎保護作用を支持する結果が得られたと解釈することは妥当と思われる。ただし、その有効性が確立されたと結論付けるには、今後の独立した確証試験による検証が必要である。 MRA投与時の高カリウム血症について、糖尿病性CKDと非糖尿病性CKDで差異があるかどうかも興味深い点である。高カリウム血症の発現率は、糖尿病性CKDを対象としたFIGARO-DKD試験では10.8%(プラセボ群5.3%、群間差5.5%)、FIDELIO-DKD試験では18.3%(同9.0%、群間差9.3%)であった。一方、非糖尿病性CKDを対象としたFIND-CKD試験では17.0%(同13.3%、群間差3.7%)であり、プラセボ群との差は3試験中で最も小さかった。各試験の平均eGFRは、FIGARO-DKD試験で約68、FIDELIO-DKD試験で約44、FIND-CKD試験で約49mL/min/1.73m2であった。これらの試験間比較からは、(1)高カリウム血症の発現頻度は腎機能低下の程度と関連する可能性、(2)非糖尿病性CKDでは糖尿病性CKDと比べてフィネレノン投与に伴う高カリウム血症の増加幅が小さい可能性、の2点が示唆される。ただし、これらは異なる試験間の比較から得られた知見であり、患者背景や試験デザインの違いによる影響を受ける可能性があるため、これには慎重な解釈が必要である。一般に、糖尿病性CKDでは低レニン性低アルドステロン症(hyporeninemic hypoaldosteronism:HRHA)、インスリン作用不足、代謝性アシドーシスなどが高カリウム血症の誘因となりやすいことが知られている。今回のFIND-CKD試験の結果は、糸球体疾患を主体とする非糖尿病性CKDでは、nsMRA投与に伴う高カリウム血症の頻度が少ない可能性を示唆しており、副作用の観点からも注目される。 今後は、IgA腎症をはじめとする糸球体疾患由来の非糖尿病性CKD患者に対し、フィネレノンが真に腎保護作用を有するかどうかを検証する独立した確証試験の実施が期待される。

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経口GLP-1受容体作動薬elecoglipronは新たな血糖降下薬として有効である(解説:住谷哲氏)

 elecoglipronはアストラゼネカ社が開発中の経口GLP-1受容体作動薬である。先行するイーライリリー社のorforglipronと同じく絶食時の服用などの制限がなく、新たな血糖降下薬として期待されている。本試験SOLSTICEはelecoglipronの第IIb相の用量設定試験である。用量は5mgから75mgに設定され、対照にはプラセボ群と実薬対照としてセマグルチド14mgが投与された。主要評価項目は26週後のHbA1cの変化量とされた。 主要評価項目のHbA1cは5mg投与群の-0.91%から75mg投与群の-1.88%とすべての投与量でプラセボ群と比較して有意な減少を示した。対照のセマグルチド14mg投与群では-1.28%であった。安全性についてもこれまでのGLP-1受容体作動薬と同様に消化器系有害事象が多く認められた。 血糖降下薬である経口GLP-1受容体作動薬としてはセマグルチド(商品名:リベルサス)がすでに登場しているが、早朝空腹時に少量の水で服用し、その後少なくとも30分は絶飲食を必要とするため服薬アドヒアランスに問題がある。さらに吸収に個人差が大きく、血中有効濃度にも大きなばらつきがあるのが問題であった1)。その問題をクリアしたorforglipronが近々わが国でも承認される予定であり、それに続くのが本試験のelecoglipronとなる。 第IIb相である本試験の結果を受けて、アストラゼネカ社は第III相臨床開発プログラムであるELUMINATE試験をすでに開始している。さらに他のglipron薬と同じく肥満症治療薬としての承認を目指したVISTA試験の結果もLancetの同日号に報告された2)。この領域における新薬開発競争はまだまだ続きそうである。

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GLP-1受容体作動薬、脱毛症リスクは高いか/BMJ

 GLP-1受容体作動薬の潜在的な有害作用として、脱毛(脱毛症)が市販後調査により報告されている。米国・ペンシルベニア大学のHuilin Tang氏らは、2型糖尿病患者では、GLP-1受容体作動薬の使用はSGLT2阻害薬やDPP-4阻害薬と比較して、臨床的に記録された脱毛症、とくに非瘢痕性脱毛症のリスク上昇と関連することを示した。研究の成果は、BMJ誌2026年7月22日号に掲載された。脱毛症リスクを標的試験エミュレーションで評価 研究グループは、2型糖尿病患者におけるGLP-1受容体作動薬の脱毛症リスクを評価する目的で標的試験エミュレーション(target trial emulation)を行った(米国国立衛生研究所[NIH]などの助成を受けた)。 データの収集には、ペンシルベニア大学健康システム(Penn Medicine)の電子健康記録を用いた。対象は、年齢18歳以上、2019年1月~2024年9月に新たにGLP-1受容体作動薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬の投与を開始した2型糖尿病患者であった。 主要評価項目は、新規発症の脱毛症およびその亜型とした。sIPTW調整後の発生率が高い GLP-1受容体作動薬とSGLT2阻害薬の比較では、それぞれ1万2,004例(平均年齢58.1歳、女性55.5%)および1万5,221例(平均年齢64.5歳、女性38.1%)の新規投与開始例を、GLP-1受容体作動薬とDPP-4阻害薬の比較では、それぞれ1万1,964例(平均年齢58.0歳、女性55.5%)および1万1,233例(平均年齢66.9歳、女性48.1%)を登録した。 安定化逆確率重み付け(sIPTW)で調整後の脱毛症の発生率は、SGLT2阻害薬群(平均追跡期間2.36年)が5.04/1,000人年であったのに対し、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.39年)は6.91/1,000人年と高い値を示した(ハザード比[HR]:1.37、95%信頼区間[CI]:1.08~1.73)。 同様に、DPP-4阻害薬群(平均追跡期間2.95年)のsIPTW調整後の脱毛症発生率が3.89/1,000人年であったのに比べ、GLP-1受容体作動薬群(平均追跡期間2.91年)は6.53/1,000人年であり、より高率だった(HR:1.68、95%CI:1.28~2.20)。円形・アンドロゲン性などとの関連はない 脱毛症の亜型別の解析では、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性は非瘢痕性脱毛症に特有のものだった。SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群と比較したGLP-1受容体作動薬群における非瘢痕性脱毛症のハザード比は、それぞれ1.53(95%CI:1.18~1.97)および1.72(95%CI:1.28~2.31)であった。一方、GLP-1受容体作動薬群は、SGLT2阻害薬群およびDPP-4阻害薬群に比べ、円形脱毛症、アンドロゲン性脱毛症、瘢痕性脱毛症の発生率が高かったが、いずれも有意な関連は認められなかった。 著者は、「これらの知見は、GLP-1受容体作動薬による治療を検討する際の共有意思決定に役立つ可能性があり、今後の研究において皮膚科関連アウトカムの評価をさらに進める必要性を強調するものである」としている。 また、GLP-1受容体作動薬と脱毛症の関連性の基盤となる最も可能性の高いメカニズムとして、治療による体重減少およびカロリー摂取量の減少を挙げ、「これが生理的ストレスや微量栄養素(鉄、亜鉛、ビオチンなど)の欠乏を招き、毛髪の成長サイクルを乱す可能性がある」とし、「すなわち、脱毛は薬剤の直接的な作用というよりは、代謝性変化による下流の影響を反映している可能性が示唆される」と指摘する。 さらに、「最も頻度の高い亜型である非瘢痕性脱毛症は、急速な体重減少と関連することが多く、通常は可逆的である。この事実は、患者を安心させ、治療継続を支援する一助となりうる」と指摘している。

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基礎インスリンで治療中の2型糖尿病患者における、cagrilintide/セマグルチド配合薬の追加治療の有効性と安全性(解説:田村嘉章氏)

 cagrilintide(C)は長時間作用型アミリンアナログであり、満腹感の増加、食欲抑制効果により体重減少効果をもつ。また食後のグルカゴン分泌を抑制し血糖降下作用を示すと考えられている。CagriSemaは、CとGLP-1受容体作動薬セマグルチド(S)との配合薬であり、2型糖尿病患者への投与の効果をみたREDEFINE 2試験では、CagriSema投与群ではHbA1c、体重とも、S単独群より減少効果が大きいことが示されている1)。 本研究(REIMAGINE 3)は、1日1回の基礎インスリン投与を行っている2型糖尿病患者に対し、CagriSemaをアドオン投与することによる有効性と安全性を評価するプラセボ対照二重盲検試験である。日本を含む6カ国(アジア人46%)のBMI≧25、HbA1c 7.0~10.5%の2型糖尿病患者274例(平均年齢59歳、平均HbA1c 8.8%、平均BMI 31.6、85%でメトホルミンを併用)を、2:2:1:1の割合で、CagriSema(C、Sともに)2.4mg群、CagriSema(C、Sともに)1.0mg群、それぞれの実薬群用量に対応するプラセボ(P)群に割り付けた。CagriSema群では4週ごとに薬剤がそれぞれ4回、2回増量された。基礎インスリンは、HbA1c≦8%の患者では開始時に20%減量し、以降は空腹血糖80~130mg/dLとなるように調節された。主要エンドポイントは40週におけるHbA1cの変化、2次エンドポイントはHbA1cの目標達成率、体重減少率、インスリン投与量の変化などである。 全体として85%以上の患者に投与完了(80%以上で目標量に到達)した。40週のHbA1cは2.4mg群で-2.33%、1.0mg群で-2.10%、P群では-0.66%で、実薬群で有意に低下し、HbA1c<7%を2.4mg群で75%、1.0mg群では70%で達成した(P群では16%)。インスリンはP群で18U増加したのに対し、実薬群ではいずれも2U減少した。体重は2.4mg群で-12.0%、1.0mg群で-10.4%、P群で+1.1%で、実薬群で有意に減少した。有害事象は、消化器系の異常が2.4mg群で57%、1.0mg群で45%(P群23%)と多かったが、軽~中等度であった。重症低血糖はなく、非重症低血糖の頻度はP群と同等であった。なお、収縮期血圧や、HDL-C、non-HDL-Cなどの脂質プロファイルにも改善が認められた。 この結果は、基礎インスリン使用でコントロールが不十分であるが低血糖リスクや体重増加の懸念により治療強化が困難な2型糖尿病患者に対し、CagriSemaが追加治療の有効な選択肢となることを示した点で重要である。ただし、本試験ではC単独群やS単独群が設定されていないため、各単剤と比較したCagriSemaの効果については明らかではない。なお、CagriSemaもSと同様に心血管イベント抑制効果を有することが期待されるが、これを支持する直接的なエビデンスは現時点では得られていない。現在、心血管疾患を有する患者における心血管イベントへの影響を検証するための第III相試験(REDEFINE 3)が進行中であり、結果が待たれる。

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セマグルチド使用拡大で誤使用による相談が急増

 米国では、GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)のセマグルチドが肥満症治療薬として承認されて以降、中毒情報センターへの電話相談が急増しているという実態が報告された。その多くは、投与量を間違えてしまったという相談だという。米テキサス大学サンアントニオ校のJordan Miller氏らの研究によるもので、詳細は「Journal of Medical Toxicology」4月号に掲載された。 GLP-1RAは当初、2型糖尿病(T2DM)の治療薬として上市されたが、米国では2021年に肥満症治療薬としても承認され、それを機に処方が拡大した。特に、週1回皮下注射するタイプのセマグルチドが承認された後に、より顕著な増加が生じた。 GLP-1RAの副作用として、消化器症状が高頻度に生じることは、T2DM治療に用いられていた時点で明らかにされていた。しかし、肥満症治療目的で使用されるようになって以降に、薬の使用に伴う問題の発生状況がどのように変化したかは十分研究されていない。これを背景にMiller氏らは、中毒情報センターで受け付けた症例情報が集約されている、全米中毒データシステム(NPDS)のデータを用いた検討を行った。 解析対象期間は2012~2023年とし、米食品医薬品局(FDA)が週1回投与タイプのセマグルチドを肥満症治療薬として承認した2021年6月4日以降の変化を評価するため、同年7月1日を境に承認前後の期間に分けた。GLP-1RA関連の相談件数や患者背景が、同薬の承認前後でどのように変化したかを解析した。 対象期間中に報告されたGLP-1RA関連の相談は1万33件だった。このうち承認前は3,113件であったのに対して、承認後は6,920件であり約2.2倍となっていた。患者の年齢は、承認前が57.0±13.3歳、承認後は51.6±14.7歳と有意に若年化し、女性の割合は68.9%から78.2%へと有意に上昇していた(いずれもP<0.001)。 報告件数をGLP-1RAの種類別に見た場合、承認前はリラグルチドが33.9%で最多であり、次いでデュラグルチドが29.5%、セマグルチドは24.6%で3位だった。しかし承認後はセマグルチドが64.2%を占め、次いでデュラグルチドが12.7%、リラグルチドが8.8%の順に変化していた。著者らは、セマグルチド関連の相談増加の背景として、同薬への注目度の高まりや利用者の急増が影響した可能性を挙げている。 報告事例の多くは患者の意図的な不適切使用ではなく、投与量などを誤ってしまったことによるものだった。頻繁に報告されていた誤りには二つのパターンがあり、一つはセマグルチドを週1回ではなく毎日注射してしまったというもの、もう一つは段階的に増量する手順を守らず、最初から最大量を注射してしまったというものだった。報告された症状の大半は軽度の消化器症状であったが、医療機関で管理された、または医療機関への紹介を要した患者の割合は、承認前の23.0%から承認後は33.5%へ増加していた。 著者らは、「報告に見られたミスの多くは予防できる内容であり、患者教育の改善によって減らすことができる」と述べている。

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J-CLEAR特別座談会(10)「慢性腎臓病(CKD)治療の新時代―新規治療薬の使い分けと注意点」

J-CLEAR特別座談会(10)「慢性腎臓病(CKD)治療の新時代―新規治療薬の使い分けと注意点」糖尿病や心不全の治療薬としても用いられるSGLT2阻害薬、非ステロイド型選択的MR拮抗薬フィネレノン、GLP-1受容体作動薬は、今や慢性腎臓病(CKD)治療を大きく変革する腎保護薬として主役を担っています。今回のJ-CLEAR特別座談会では、非糖尿病患者を含むCKDへの効果、IgA腎症の最新動向、脱水や高カリウム血症など、臨床現場での注意点と使い分けを専門医が多角的に議論します。なお、この番組は2026年6月10日に収録したもので、当時の情報に基づく内容であることをご留意ください。慢性腎臓病(CKD)治療の新時代―新規治療薬の使い分けと注意点司会    桑島 巖 氏臨床研究適正評価教育機構 理事長、東都クリニック 高血圧専門外来出演    栗山 哲 氏東京慈恵会医科大学 客員教授石上 友章 氏横浜市立大学 特任教授浦 信行 氏札幌西円山病院 名誉院長オブザーバー吉岡 成人 氏NTT東日本札幌病院 院長

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リラグルチドの胃排出遅延は食欲抑制に直接影響せず

 GLP-1受容体作動薬の作用として胃排出遅延と食欲抑制は知られているが、両者に関連性はあるのだろうか。このテーマに関して、米国・モネル化学感覚研究所のMark I. Friedman氏らの研究グループは、リラグルチド投与群の症例の胃排出と満腹感の測定値およびエネルギー摂取量との相関関係を検討した。その結果、胃排出遅延は、リラグルチドの食欲抑制作用において直接的な役割をほとんど果たしていないことが示唆された。この結果はObesity誌オンライン版2026年7月2日号で公開された。リラグルチドの胃排出遅延は食欲抑制作用に数%だけ影響 研究グループは、GLP-1受容体作動薬リラグルチド投与中の胃排出遅延と食欲抑制との関連性評価を目的に、肥満患者を対象とした16週間の無作為化プラセボ対照リラグルチド試験の2次データ解析を実施した。ベースライン時および治療終了時において、コホート全体、および試験を完了したプラセボ群とリラグルチド投与群について、固形食の胃排出と満腹感の測定値およびエネルギー摂取量との相関関係を検討した。また、治療中に正常な胃排出、持続的な胃排出遅延、または一過性の胃排出遅延を示したリラグルチド投与群の参加者間で食欲に関する指標を比較した。 主な結果は以下のとおり。・全コホートにおいて、ベースライン時および試験終了時、胃排出はエネルギー摂取量と有意な相関を示し、ベースライン時には満腹感の指標の1つとも有意な相関を示した。・胃排出は、これらの食欲関連指標の変動のわずか4~6%にしか影響していなかった。・プラセボ群またはリラグルチド投与群のいずれか単独では、このような相関は認められなかった。・リラグルチド治療中に異なる胃排出パターンを示したサブグループ間において、食欲関連指標に差は認められなかった。 研究グループは、これらの結果から「胃排出の遅延は、リラグルチドによる食欲抑制に直接的な役割をほとんど果たしていないことが示唆された。今後の研究で、胃排出遅延や、ほかのGLP-1受容体作動薬による胃腸管への影響が、食欲に直接的または間接的に影響を与えるかどうかを検証する必要がある」と考察している。

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