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1.

GLP-1受容体作動薬が2型糖尿病患者の椎体骨折リスクを低下させる可能性

 GLP-1受容体作動薬(GLP-1RA)が処方されている2型糖尿病患者は、椎体骨折のリスクが低いことを示すデータが報告された。国立成功大学(台湾)のWei-Thing Khor氏らの研究によるもので、「JAMA Surgery」に12月10日、レターとして掲載された。 近年、GLP-1RAが血糖降下以外のさまざまな副次的作用を有することを示す臨床データが報告されてきているが、2型糖尿病がリスク因子となり得る椎体骨折への影響についてはデータがまだ十分でない。この点についてKhor氏らは、世界各地の医療機関の電子医療記録を統合したリアルワールドのデータベースである「TriNetX」を用いて検討した。 2015年1月1日~2022年1月1日に2型糖尿病と診断され、診断後6カ月以内にGLP-1RA(セマグルチド、リラグルチド、デュラグルチドのいずれか)の処方記録のある患者25万9,162人と、GLP-1RA処方の記録のない患者128万9,637人を特定。その患者群から傾向スコアマッチングにより、GLP-1RA処方群と非処方群を1対1で抽出し、それぞれ19万3,563人から成るコホートを作成した。なお、2型糖尿病診断前に椎体骨折、脊椎腫瘍、椎体形成術などの既往のある患者、および、心理・社会的要因による潜在的健康リスクを有する患者は除外されている。 GLP-1RA処方群において、デュラグルチドの処方が9万2,757人、リラグルチドが9万399人、セマグルチドが3万3,187人に記録されていた。平均年齢は58.1±11.3歳、女性52.5%、BMI35.9±8.0、HbA1c8.4±2.2%であり、その他の臨床検査値、および糖尿病や骨粗鬆症に対する薬剤の処方状況も、GLP-1RA非処方群とよく一致していた。 評価項目を、椎体骨折の発生、および、椎体形成術などの外科的介入の記録とし、GLP-1RAの処方開始(非処方群については2型糖尿病の診断)から最長10年間追跡した。その結果、椎体骨折はGLP-1RA処方群で2,826件(発生率1.5%)、非処方群で3,402件(同1.8%)発生しており、オッズ比(OR)0.83(95%信頼区間0.79~0.87)と、処方群のオッズが有意に低かった。また、外科的介入についても、同順に156件(0.08%)、195件(0.10%)、OR0.80(0.65~0.99)であり、やはり処方群のオッズが有意に低かった。 著者らは、「これらの研究結果は、GLP-1RAが骨折リスク抑制作用を有する可能性を裏付けるものと言える。因果関係の検証と、この関係の根底にあるメカニズムを解明するため、前向き研究が必要とされる」と述べている。

2.

肥満症薬物療法の「出口戦略」なき処方への警鐘!(解説:島田俊夫氏)

1. はじめに:体重減量薬ブームの陰に潜む「不都合な真実」 GLP-1受容体作動薬などの新薬の登場により、肥満症治療は劇的な変貌を遂げました。しかし、これら「魅惑の肥満治療薬」がもたらす減量は、果たして「治癒」と言えるのでしょうか。2026年1月にBMJ誌に掲載されたOxford大学Sam West氏らの体系的レビュー/メタ解析論文は、薬物療法の中止後に待ち受ける過酷なリバウンドの現実を浮き彫りにし、現在の安易な処方ブームに冷や水を浴びせています。2. 論文が示す衝撃的なデータ:リバウンドの速度と健康指標の消失 本論文は、肥満治療薬(WMM)と行動療法(BWMP)の中止後を比較し、以下の事実を明らかにしました。・リバウンドの「速さ」:薬物療法を中止すると、月平均0.4kgという猛烈な速度で体重が戻ります。これは行動療法中止後のリバウンド速度の約4倍に相当します。・「元のもくあみ」までの期間:薬を中止してから平均1.7年で、元の体重に完全に逆戻りすると予測されています。・健康指標の消失:薬で改善した血圧、血糖値、脂質代謝などの臨床的ベネフィットも、中止から約1.4年以内にその利得のほとんどが失われます。3. 臨床的な解釈:高血圧モデルとの類似と相違 肥満症を「慢性的で再発しやすい疾患」と捉えるならば、高血圧や慢性心不全と同様に「生涯にわたる薬物管理」が必要であるという議論もあります。しかし、現実には約50%の患者が1年以内に服薬を中止しています1)。急性感染症に対する抗菌薬が「原因をたたく」ものであるのに対し、現在の肥満治療薬は、食欲という生体システムを「薬理的に強制修正」しているにすぎません。「病態生理に基づいた包括的アプローチ」を欠いたままでは、薬はやめた瞬間に生体側の強力な巻き返し(リバウンド)を招く、いわば「addiction(依存)」に近い構造を作り出しかねません。4. 内科医が取るべき「治療の王道」 論文の結論は、安易な短期的投薬に「注意喚起」を促しています。内科医が目指すべきは、以下のような戦略的治療ではないでしょうか。・「敵」と「己」を知る:薬をやめれば猛烈なリバウンドが来ること(敵)をあらかじめ認識し、薬に頼らない自己調整能力(己)をどこまで高められるかを治療の主眼に置くことを忘れない。・薬を「行動療法の窓」として活用する:薬物療法は「目的」ではなく、生活習慣を劇的に変えるための「強力な補助手段(スターター)」と位置付ける2)。体重が減少して体が動きやすくなった時期を逃さず、睡眠時無呼吸の改善、食事の質の是正、適度な運動の定着を図る。・出口戦略の同時並行:投薬開始時から「どうやって薬を減らし、薬から離脱するか」を患者と共有する。生活習慣改善の努力なしに薬による上面だけの治療の危うさを、エビデンスに基づき説明することが大事ではないでしょうか。5. 真の患者利益のためのメッセージ 「痩せればいい」という短絡的な思考は、医療費を増大させ、患者を終わりのない薬物依存へと誘うリスクをはらんでいます。この論文が真にアピールしているのは、**「薬は介入のきっかけであっても、解決そのものではない」**臨床の原点です。 臨床医は、最新の薬を賢く使いつつも、その限界を冷徹に見極め、患者が自律的に健康を維持できる「王道」へと導く伴走者であるべきではないでしょうか。

3.

腎不全リスク別にみたSGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性

 2型糖尿病患者において、腎不全リスクの高低によるSGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の腎不全や心血管アウトカムを調査した結果、GLP-1受容体作動薬は腎不全の中等度リスクの患者に、SGLT2阻害薬は高度リスクの患者にそれぞれより有益である可能性が、米国・ユタ大学のSydney E. Hartsell氏らによって報告された。Clinical Journal of the American Society of Nephrology誌オンライン版2026年1月13日号掲載の報告。 研究グループは、2018年1月1日~2021年12月31日にSGLT2阻害薬、GLP-1受容体作動薬(非エキセンジン系)またはインスリン グラルギンのいずれかを新たに開始した2型糖尿病を有する米国退役軍人コホートを用いて観察研究を行った。対象は16万428例で、治療確率逆重み付けを用いてベースライン特性のバランスを調整し、2023年3月31日までの追跡データを用いて各薬剤の新規使用者間でアウトカムを比較した。評価項目には、腎不全(慢性腎臓病のステージ5または腎代替療法)、主要心血管イベント(MACE[心不全、心筋梗塞、脳卒中])、心血管・腎・代謝(CKM)複合エンドポイント(腎不全またはMACE)、全死因死亡、死亡を含む複合アウトカムが含まれた。また、将来の腎不全発症リスクを推定する腎不全リスク方程式(Kidney Failure Risk Equation:KFRE)スコアを用いて、SGLT2阻害薬とGLP-1受容体作動薬の有効性の差が腎不全リスクの高低によって異なるかを検証した。 主な結果は以下のとおり。・新規に使用開始した薬剤は、SGLT2阻害薬が53%、GLP-1受容体作動薬が14%、インスリン グラルギンが34%であった。・SGLT2阻害薬群とGLP-1受容体作動薬群の死亡リスクは同程度であったが、SGLT2阻害薬群で腎不全リスクが低下する傾向にあった(ハザード比[HR]:0.89、95%信頼区間[CI]:0.74~1.06)。・SGLT2阻害薬群では、GLP-1受容体作動薬群と比較してMACE(HR:1.14、95%CI:1.09~1.20)およびCKM複合エンドポイント(HR:1.13、95%CI:1.08~1.19)の発生リスクが有意に高かった。・中等度の腎不全リスク(KFRE 2~6%未満)の患者ではGLP-1受容体作動薬が腎不全、MACEおよびCKM複合エンドポイントに対してより保護的であることが示唆された一方で、高度の腎不全リスク(KFRE 6%以上)の患者ではSGLT2阻害薬がより保護的であることが示唆された。

4.

妊娠前・妊娠初期におけるGLP-1受容体作動薬の中止による影響(解説:小川大輔氏)

 妊娠中に初めて発見または発症した糖代謝異常である「妊娠糖尿病」と、妊娠前から糖尿病を患っている「糖尿病合併妊娠」は、どちらも高血糖が胎児の発育に影響を与えるため妊娠中の血糖管理が非常に重要になる。そして妊娠中の糖尿病の薬物療法はインスリン療法が原則となる。妊娠前から経口血糖降下薬などで治療していた場合でも、妊娠する前、あるいは妊娠が判明した時点でインスリンへの変更が必要となる1)。これは、経口血糖降下薬が胎盤を通して胎児に運ばれ、低血糖を引き起こす可能性があるためである。 GLP-1受容体作動薬に関しては、ラットやラビットを用いた動物実験でGLP-1受容体作動薬の投与により胎児の構造異常、子宮内での発育制限、胎児の死亡などが報告されており、妊娠中はGLP-1受容体作動薬の使用を避けるべきとされている1)。ただ、GLP-1受容体作動薬の中止により、妊娠中の体重の過剰増加や血糖コントロールの悪化も懸念されている。これまでに妊娠前あるいは妊娠初期にGLP-1受容体作動薬を中止することで、母体や胎児にどのような影響が出るかを検討した報告はなかったが、今回妊娠14万9,790例を対象とした後ろ向きコホート研究の結果が報告された2)。 妊娠前3年間および妊娠後90日間に、GLP-1受容体作動薬の処方が確認された妊婦を曝露群、確認されなかった妊婦を非曝露群として、曝露群1例につき非曝露群3例を傾向スコアでマッチングした。その結果、妊娠中の体重増加量は曝露群で有意に多く、過剰体重増加のリスクも高かった。また、曝露群で早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが高かったが、巨大児および低出生体重児のリスク、帝王切開のリスクには差がなかった。 妊娠を契機にGLP-1受容体作動薬をインスリンに変更し、妊娠中に過剰な体重増加や血糖コントロールの悪化を経験することがしばしばある。妊娠出産を考えている女性に対するGLP-1受容体作動薬の使用は、開始前によく検討する必要があるだろう。妊娠前あるいは妊娠初期でのGLP-1受容体作動薬の中止は、母体の体重増加のほか、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク上昇と関連する可能性が示唆され、今後さらなる検討が必要と思われる。

5.

GLP-1受容体作動薬は大腸がんリスクを低下させる?

 オゼンピックやウゴービなどのGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)受容体作動薬は、減量や糖尿病の管理だけでなく、大腸がんの予防にも役立つ可能性のあることが、新たな研究で示唆された。GLP-1受容体作動薬の使用者では、アスピリン使用者と比べて大腸がんを発症するリスクが26%低かったという。米テキサス大学サンアントニオ校血液腫瘍内科のColton Jones氏らによるこの研究結果は、米国臨床腫瘍学会消化器がんシンポジウム(ASCO GI 2026、1月8〜10日、米サンフランシスコ)で発表された。 Jones氏は、「これまでアスピリンの大腸がん予防効果について研究されてきたが、効果は限定的であり、また、出血リスクが使用の妨げになる。糖尿病や肥満の治療で広く使われているGLP-1受容体作動薬は、代謝管理とがん予防の両面で、より安全な選択肢になる可能性がある」と述べている。 米国では、2025年には約15万人が大腸がんと診断され、5万人以上が死亡したと推定されている。GLP-1受容体作動薬は、インスリンや血糖値の調節を助け、食欲を抑え、消化を遅らせるホルモンであるGLP-1の作用を模倣する薬剤である。代表的な薬剤には、オゼンピックやウゴービなどのセマグルチド、マンジャロやゼップバウンドなどのチルゼパチドがある。 今回の研究では、商業医療データベースTriNetXから、GLP-1受容体作動薬の使用者と、アスピリン使用者を傾向スコアマッチング後に14万828人ずつ(計28万1,656人、平均年齢58歳、女性69%)抽出し、大腸がんの発症を比較した。各薬剤の初回処方日を起点に、その6カ月後から追跡を開始した。追跡期間中央値は、GLP-1受容体作動薬群で2,153日、アスピリン群で1,743日であった。 その結果、GLP-1受容体作動薬群ではアスピリン群と比較して、大腸がんリスクが26%低いことが明らかになった(リスク比0.741、95%信頼区間0.612〜0.896)。絶対リスク差から算出した治療必要数(NNT)は2,198であった。この結果は、追跡開始後12カ月および36カ月を対象とした感度解析においても、また、年齢層、BMI、糖代謝などで層別化したサブグループ解析においても、概ね一貫していた。GLP-1受容体作動薬を個別に解析すると、セマグルチドのみが有意な効果を示した。副作用については、GLP-1受容体作動薬使用者の方が、腎障害、胃潰瘍、消化管出血といった重篤な副作用は少なかった一方で、下痢や腹痛はより多く発生していた。 この研究をレビューした米クリーブランド・クリニックTaussig Cancer CenterのJoel Saltzman氏は、「GLP-1受容体作動薬は、体重減少以上の恩恵をもたらす可能性がある。これらの結果は、がん予防戦略においても重要な役割を果たす可能性を示している。アスピリンや非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、スタチンの大腸がん予防効果は長年研究されてきたが、今回のリアルワールドデータは、GLP-1受容体作動薬がこの分野で有望な役割を担う可能性を示唆している」と述べている。 なお、学会発表された研究結果は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

6.

GLP-1受容体作動薬、乾癬患者の死亡および心血管系・精神系リスクを低減/BJD

 糖尿病または肥満を有する乾癬患者において、GLP-1受容体作動薬による治療は、ほかの抗糖尿病薬または抗肥満薬による治療と比較し、心血管系および精神疾患系の合併症リスク、ならびに全死因死亡リスクを低減し、そのリスク低減効果は乾癬のないコホートと比較して高いことが明らかになった。ドイツ・リューベック大学のHenning Olbrich氏らは、米国のリアルワールドデータを用いた大規模コホート研究結果を、British Journal of Dermatology誌2026年1月号に報告した。 本研究は後ろ向きの人口ベースコホート研究であり、米国・TriNetXのリアルワールドデータを使用し、2年間の追跡期間中にGLP-1受容体作動薬による糖尿病または肥満治療を受けた乾癬患者を、ほかの全身性抗糖尿病薬または抗肥満薬により治療した患者と比較した。関連するリスク因子について1:1の傾向スコアマッチングを行った後、各コホートに3,048例の参加者が組み入れられた。主要評価項目には、心血管代謝系・精神疾患系・自己免疫系の合併症リスクのほか、全死因死亡、薬剤による潜在的有害事象が含まれた。非乾癬患者のコホートを使用して解析を繰り返し、(1)異なる(より最近の)追跡期間、(2)膿疱性乾癬患者を除外した2つの感度分析を通じて結果を検証した。 主な結果は以下のとおり。・GLP-1受容体作動薬で治療した乾癬患者(女性:60.4%、平均年齢:56.94[SD 12.02]歳)と、ほかの抗糖尿病薬および抗肥満薬で治療した乾癬患者(女性:61.9%、平均年齢56.42[14.16]歳)のマッチドコホートにおける比較の結果、GLP-1受容体作動薬による治療は全死因死亡リスク(ハザード比[HR]:0.219、95%信頼区間[CI]:0.123~0.391、p<0.001)および主要心血管イベントリスク(HR:0.561、95%CI:0.442~0.714、p<0.001)の有意な低下と関連していた。・さらに、アルコール(HR:0.346、95%CI:0.174~0.685、p=0.009)および薬物乱用(HR:0.510、95%CI:0.350~0.743、p=0.002)リスク低下との関連が認められた。・GLP-1受容体作動薬コホートにおける典型的な薬物有害事象の頻度は高くなかった。・乾癬患者のコホートでは、乾癬のない肥満や糖尿病患者のコホートと比較しリスクの減少がより顕著であった。 著者らは今回の結果を受けて、「医師は、乾癬患者が肥満または糖尿病を併発している場合、GLP-1受容体作動薬の使用を検討すべき」としている。

7.

第46回 「飲むだけで痩せる」時代の到来か? ついに登場した経口薬、その驚きの効果と意外な「落とし穴」

肥満症治療における「決定的瞬間」がついに訪れた、と言っても言い過ぎではないのかもしれません。 2026年1月、米国において、肥満症治療薬として初めてとなる経口薬のGLP-1受容体作動薬が広く利用可能になりました。これまで「ウゴービ(Wegovy)(一般名:セマグルチド)」として知られていた薬は、週に1回の自己注射が必要でしたが、この新薬の登場によって、注射針への恐怖心や手間から治療を躊躇していた人に、新たな扉が開かれたと言えるでしょう。 しかし、単に「注射が飲み薬に変わっただけ」と考えるのは早計かもしれません。臨床試験のデータを紐解くと、確かな効果の一方で、日常生活で守らなければならない「非常にシビアなルール」が存在することも見えてきました。注射と変わらぬ実力 まず、最も気になる「痩せる効果」について見ていきましょう。FDA(米国食品医薬品局)の承認の根拠となった第III相臨床試験1)の結果は、非常に有望なものでした。 64週間にわたる試験で、この経口薬を服用した肥満または過体重の参加者は、平均して体重を約14%減らすことに成功しました。これに対し、偽薬(プラセボ)を服用したグループの体重減少率は約2%にとどまりました。 既存の注射版ウゴービ(2.4mg)の効果が、68週間で約15%の減量であったことと比較すると、飲み薬になってもその効果はほぼ同等であることがわかります2)。 薬のポテンシャルとしては、注射か飲み薬かで効果に大きな差はないと考えてよさそうです。効果を引き出すための「厳格すぎる」朝の儀式 しかし、ここで注意が必要なのが、この飲み薬には注射薬にはない、服用上の大きな制約があるという点です。 注射薬との最大の違いは、その吸収効率にあります。注射薬は皮下脂肪に直接注入されるため効率よく体内に吸収されますが、飲み薬は消化管を通って吸収されなければなりません。そのため、注射薬よりもはるかに多い量の薬剤が必要となります。実際、注射薬の維持用量が週1回2.4mgであるのに対し、飲み薬は最大で1日25mgと、桁違いの量を毎日服用することになります。 そして、この吸収を最大限に高めるために、患者には以下のような「厳格な服用ルール」が課されます1)。 朝一番の空腹時に服用する 112g(約4オンス)以下の水で飲み込む 服用後、少なくとも30分間は食事、飲み物、他の薬を一切口にしない これらを守らなければ、吸収される薬の量が減ってしまうというわけです。朝起きてすぐにコーヒーを飲みたい人や、慌ただしい朝を過ごす人にとって、「起床後30分間の完全な絶飲食」を毎日続けることは、想像以上に高いハードルになるかもしれません。 一方、注射薬であれば、週に1回、自分の好きなタイミングで打つだけで済みます。専門家たちが懸念しているのは、臨床試験のような管理された環境ではなく、実際の生活の中で、どれだけの人がこの厳格なルールを完璧に守り続けられるかという点です。コストとライフスタイル、どちらを選ぶ? それでも、飲み薬には大きなメリットがあります。それは「針への恐怖」からの解放と「コスト」です。 注射針が怖い、あるいは自分で注射をすることに抵抗がある人にとって、飲み薬は非常に魅力的な代替手段となります。また、製造コストの面でもメリットがあります。錠剤は注射のペンに比べて安価に製造でき、大量生産も容易であるため、昨今問題となっているGLP-1薬の供給不足を緩和する可能性があります。 価格面でも変化が見られます。ノボ ノルディスク社の広報担当者によると、自己負担の場合、飲み薬の月額費用は149ドルから299ドル程度になるとされています。これは、最近値下げされた注射薬の月額349ドルと比較しても安価です3)。 とくに2026年に入り、多くの保険会社が減量目的のGLP-1注射薬に対する補償を削減・制限している現状を考えると、患者によっては、飲み薬が唯一の利用可能な選択肢となるケースも出てくるでしょう。未来への第一歩としての「飲み薬」 結局のところ、注射を選ぶか飲み薬を選ぶかは、個人のライフスタイルや好み、そして懐事情に委ねられることになるでしょう。 柔軟性を重視するなら週1回の注射が適しているかもしれませんし、毎朝のルーチンをきっちり守れる人であれば、安価で痛みのない飲み薬の方が管理しやすいと感じるかもしれません。 すでに注射薬を使用している人でも、最終投与から1週間空ければ、飲み薬への切り替えが可能とされています。ただし、高用量への急な切り替えは胃腸障害などの副作用リスクを伴うため、医師の指導の下で慎重に行う必要があります。 今回のウゴービ経口薬の承認は、あくまで始まりに過ぎません。現在、競合のイーライリリー社も、食事や水の制限がない経口GLP-1薬の開発を進めています。 肥満症治療は今まさに、より多くの人々にとってアクセスしやすく、続けやすいものへと進化しようとしています。今回のニュースが、その大きな一歩であることは間違いないでしょう。 参考文献 1) Wharton S, et al. Oral Semaglutide at a Dose of 25 mg in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2025;393:1077-1087. 2) Wilding JPH, et al. Once-Weekly Semaglutide in Adults with Overweight or Obesity. N Engl J Med. 2021;384:989-1002. 3) Schweitzer K. What to Know About the Wegovy Pill for Obesity. JAMA. 2026 Jan 16. [Epub ahead of print]

8.

Orforglipronは抗肥満薬として2型糖尿病を合併した肥満症に対して有効である(解説:住谷哲氏)

 GLP-1はG蛋白質共役受容体(G-protein coupled receptor:GPCR)の1つであるGLP-1受容体に結合して細胞内にシグナルを伝達するが、そのシグナルにはGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン(arrestin)依存的シグナルとがある。前者はcAMPなどのセカンドメッセンジャーを介して細胞内Ca濃度を上昇させることでGLP-1作用を発揮する。後者は従来GLP-1受容体の脱感作を誘導すると考えられてきたが、近年その他の多様な細胞内シグナル伝達を担っていることが明らかになりつつある。 本試験で用いられたorforglipronは、もともと中外製薬で中分子医薬品として創薬されたOWL833が2018年にEli Lillyに導出されて臨床開発が継続されてきた薬剤であり、GLP-1受容体に結合してGタンパク質依存的シグナルのみを活性化しβアレスチン依存的シグナルを活性化しないことが知られている。このようにGPCRを介したGタンパク質依存的シグナルとβアレスチン依存的シグナルとを選択的に活性化させる分子はバイアスドリガンド(biased ligand)と呼ばれる1)。 本試験はorforglipronの体重減少効果を主要評価項目として、2型糖尿病を合併した肥満患者を対象として実施された。結果は、36mgの投与による72週後の体重変化量は-9.6%であった。これはATTAIN-1で示された2型糖尿病を合併しない肥満患者における体重変化量の-11.2%と比較するとやや小さかった2)。参考までにこれまで報告されているGLP-1受容体作動薬の体重減少効果については、リラグルチド3mgの-6.0%、セマグルチド2.4mgの-9.6%、チルゼパチド15mgの-14.7%、経口セマグルチド14mgの-4.7%、同25mgの-7.3%と比較するとセマグルチド2.4mgとほぼ同等の体重減少効果が認められたことになる。 現在わが国では、GLP-1受容体作動薬のセマグルチドとGIP/GLP-1受容体作動薬のチルゼパチドが抗肥満薬として承認されているが、いずれも注射薬である。一方で、米国FDAは経口セマグルチド25mgを昨年12月に抗肥満薬として承認して、本年より発売開始予定である。経口セマグルチドはペプチドホルモンであるためバイオアベイラビリティが低く、服薬方法にかなりの制約があるのが難点であるが、orforglipronはその問題点をクリアしている。したがって、服薬アドヒアランスの点ではorforglipronに一日の長があるといえよう。いずれにせよ熾烈な抗肥満薬開発競争は、まだまだ続きそうである。

9.

2型糖尿病/肥満者の体重減少、GLP-1RA vs.SGLT2i vs.頭蓋磁気刺激

 2型糖尿病患者および肥満者の体重減少に寄与する薬剤以外の有効な治療方法にはどのようなものがあるであろう。イタリア・ミラノのIRCCSマルチメディカ内分泌・栄養・代謝疾患科のAnna Ferrulli氏らの研究グループは、肥満および2型糖尿病患者を対象に、GLP-1受容体作動薬セマグルチド(0.5mg/週)、SGLT2阻害薬、および肥満に対する新たな治療法として登場した反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の有効性を比較した。その結果、rTMS治療は、セマグルチドと同等の体重減少効果を示すことがわかった。この結果はObesity誌オンライン版2025年12月26日号に公開された。反復経頭蓋磁気刺激とセマグルチドの効果は同等 研究グループは、SGLT2阻害薬治療を受けた40例、セマグルチド治療を受けた37例、rTMS治療を受けた30例を後ろ向きに解析した。rTMSは週3回、5週間実施したほか、全患者は中程度のカロリー制限(-300kcal/日)に関する食事指導を受けた。 主な結果は以下のとおり。・12ヵ月後の体重減少量では、rTMS群(-8.2±1.0kg)とセマグルチド群(-5.7±0.9kg)に有意差は認められなかった。・SGLT2阻害薬群の減少量(-2.0±0.7kg)は、セマグルチド群およびrTMS群と比較して有意に少なかった(それぞれp=0.01、p<0.0001)。・SGLT2阻害薬群では6ヵ月目から12ヵ月目にかけて体重が再増加した一方で、セマグルチド群およびrTMS群では体重が漸減した。 以上の結果から研究グループは、「rTMS治療は、セマグルチド(0.5mg/週投与)と同等の体重減少効果を示し、肥満および2型糖尿病治療における有望な介入法となる」と結論付けている。

10.

炭酸脱水酵素阻害薬は睡眠時無呼吸症候群を改善(解説:山口佳寿博氏/田中希宇人氏)

本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群の疫学と治療の現状 本邦における閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA:Obstructive Sleep Apnea)の人口当たりの発症頻度は男性で3~7%(40~60代に多発)、女性で2~5%(閉経後に多発)と報告されており、男女合わせて500万例以上、総人口の約4%にOSA患者が存在すると考えられている。本邦における成人OSAに対する有効な治療法としては経鼻/経口の持続陽圧呼吸(CPAP:Continuous Positive Airway Pressure)が中心的位置を占める。CPAP不適あるいは不認容の非肥満(BMI<30kg/m2)患者に対する植込み型舌下神経(XII神経)電気刺激も有効な方法である。その他、比較的軽症のOSA患者に対するマウスピースや特殊な原因に対する耳鼻科的・口腔外科的手術/処置が有効な場合もある。いずれにしろ、OSA患者に施行されている治療はCPAPに代表される機械的治療が中心であり、現在のところ、有効性が確認され、かつ、保険適用を受けた薬物治療は存在しない。 本邦におけるOSA患者に対するCPAPの導入率はCPAP必要患者の15%前後と低く、米国の70%を大きく下回っている。その意味で、本邦におけるOSA患者に対する治療は不十分であり、OSAを“扇の要”として関連する種々の疾患(病的肥満、糖尿病、治療抵抗性高血圧、冠動脈疾患、心房細動、心不全、脳卒中、大動脈解離、認知症など)の管理に少なからず影響を与えている(OSAを頂点とするMetabolic Domino現象)。さらに、OSA患者では明確な機序不明であるがメラノーマ、腎臓がん、膵臓がんなどの悪性腫瘍の発生率が高いことも注意すべき事項の1つである。以上の諸点を鑑みると、今回論評の対象としたRanderath氏らの論文で明らかにされた内服の炭酸脱水酵素(CA:Carbonic Anhydrase)阻害薬のOSA抑制効果は近未来のOSAに対する治療を質的に変化させる可能性がある。抗糖尿病薬GIP/GLP-1受容体作動薬であるチルゼパチド(商品名:マンジャロ)もOSAを改善することが報告されている(Malhotra A, et al. N Engl J Med. 2024;391:1193-1205.)。しかしながら、チルゼパチドは、あくまでも肥満の軽減を介して2次的に無呼吸頻度を低下させるものであり、OSA自体を1次的に改善させるものではない。それ故、チルゼパチドは今回の論評には含めない。 睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)には中枢性のもの(CSA:Central Sleep Apnea)も存在するが、その頻度はOSAに比べ有意に低いこと(SAS全体の10%以下)、発症機序に不明な点が多いことなどから本論評においては詳細な評価を割愛した。炭酸脱水酵素(CA)と睡眠時無呼吸の関係 CAは生体細胞に広く分布し、細胞内代謝の結果として産生されるCO2とH2Oとの反応を触媒しH2CO3を産生する。H2CO3はH+とHCO3ーに自然解離し、HCO3ーはクロライド・シフトを介して細胞外に排出、H+は細胞内の蛋白に吸着され細胞内pHは一定に維持される(生理的pH下ではγ-グロブリン以外の蛋白は陰イオンとして存在しH+と結合)。生体には臓器特異的に15~16種類に及ぶCAのアイソザイムが存在することが報告されており、各臓器において細胞内pHの恒常性維持に寄与している。このような細胞内環境下でCAの活性を阻害すると、細胞内でのCO2処理が遅延し細胞内CO2濃度が上昇、細胞内アシドーシスが招来される。その結果として、脳幹部(延髄、橋)に局在する呼吸中枢神経群(延髄表層に存在するCO2感受性の中枢化学受容体を含む)のCO2感受性が亢進し、換気応答が活性化される。さらに、細胞内アシドーシスは咽頭/喉頭に存在する上気道筋群の筋緊張を維持する。以上の機序を介して、CAの阻害は睡眠時の閉塞性無呼吸の発生を1次的に抑制するとされているが、これ以外の未知の機序が関係する可能性も指摘されている。CA阻害薬の分類と臨床 臨床的に使用可能なCA阻害薬には点眼薬と内服薬の2種類が存在する。点眼薬(商品名:ドルゾラミド、ブリンゾラミドなど)は主として眼圧低下と緑内障治療薬として使用される。内服薬のうち1954年に緑内障治療薬としてFDAに承認された歴史的薬剤であるアセタゾラミド(商品名:ダイアモックス)は静注薬としても使用可能であり、緑内障以外にてんかん、メニエール病、急性高山病、尿路結石症の発作予防など幅広い保険適用を獲得している。最近認可された内服CA阻害薬として本論評の対象としたスルチアム(商品名:オスポロット)が存在するが、スルチアムは、本邦においては精神運動発作(てんかん)のみに使用が限定されている。CA阻害薬のOSAに対する治療効果-大規模研究の結果 SAS(OSA、CSA)発症にかかわる重要な因子としてCAが関与する化学反応が長年注目されてきたが確証が得られるには至らなかった。しかしながら、2020年、Christopher氏らはアセタゾラミド内服薬のSAS抑制効果に関して28研究(OSA:13研究、CSA:15研究)を基にメタ解析を施行した(Schmickl CN, et al. Chest. 2020;158:2632-2645.)。彼らの解析結果によると、アセタゾラミド内服(36~1,000mg/日)によってSAS患者の無呼吸/低呼吸指数(AHI:Apnea-Hypopnea Index)が37.7%(絶対値として13.8/時)低下すること、さらには、AHIの低下はOSA患者とCSA患者でほぼ同等であることが示された。アセタゾラミドによる無呼吸抑制効果は投与量依存性を示し、薬剤量が高いほど顕著であった。Christopher氏らの解析結果は、アセタゾラミドの内服がOSAのみならずCSAの治療にも有効である可能性を示している。 本論評の対象としたRanderath氏らの論文は、OSAに対するCA阻害薬スルチアムの効果を解析した第II相二重盲検無作為化プラセボ対照用量設定試験(FLOW試験)の結果を報告した(欧州5ヵ国、28病院における治験)。対象は未治療、中等症以上のOSA患者298例で、プラセボ群(75例)、スルチアム100mg群(74例)、同200mg群(74例)、同300mg群(75例)の4群に振り分けられた。観察期間は、薬物投与量が一定になってから12週間(薬剤投与開始から15週間)と設定された。スルチアムの1日1回就寝前投与は、AHI、夜間低酸素血症、日中の傾眠傾向(Epworth Sleepiness Scaleによる評価)などOSAに付随する重要な症状を用量依存的に改善した。スルチアム投与によって重篤な有害事象は認められなかったが、知覚異常を中心とする中等症以下の多彩な有害事象が発生した。“治療効果と副反応”の比はスルチアム200mgの連日投与で最も高く、この用量がOSA治療に最も適していると結論された。 以上のように、OSA治療におけるCA阻害薬の有効性が実証されつつあり、本邦においてもCPAPにかわる新たな治療法としてCA阻害薬の内服治療の有効性を検証する臨床治験が早急に実施されることを期待するものである。この問題に関連して、2025年4月、本邦の塩野義製薬は米国Apnimed社と合弁会社を設立し(Shionogi-Apnimed Sleep Science)、睡眠時無呼吸症候群に対するスルチアムを含めた新たな薬物治療戦略を世界レベルで開始しており、今後の動向が注目される。

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多くの患者はPHQの質問内容を正しく解釈できていない

 診察前に渡される質問票に記入しているとき、意味がよく分からず目がうつろになった経験はないだろうか。それは、あなただけではないようだ。症状に関する質問票に患者が混乱することは珍しくなく、それが身体的疾患や精神疾患の診断や治療の妨げになっている可能性のあることが、新たな研究で示された。米アリゾナ大学ツーソン校心理学分野のZachary Cohen氏らによるこの研究結果は、「JAMA Psychiatry」に12月17日掲載された。 この研究は、うつ病の重症度評価ツールとして広く用いられているPatient Health Questionnaire(PHQ)に焦点を当てたもの。PHQには、PHQ-2、PHQ-8、PHQ-9など質問項目の数に応じて複数のバージョンがある。しかし、最もよく用いられているPHQ-9でも、質問内容が患者にとって分かりにくい場合があると研究グループは指摘している。この研究では、PHQの質問が症状にどの程度、悩まされたかを尋ねる一方で、回答選択肢は症状の発生頻度に焦点を当てている点に着目し、参加者がこれらの質問と選択肢をどのように理解して反応したかが検討された。 Cohen氏らは、Amazon Mechanical Turk(MTurk)で募集した一般集団503人(平均年齢40.63歳)およびOPTIMA研究の参加者である中等度から重度の抑うつを有する349人(平均年齢33.44歳)を対象に、PHQ-8に回答してもらった。その後、PHQ-8の指示内容をどのように解釈したかを、以下の3つの質問で評価した。まず、「ほぼ毎日眠り過ぎているが、そのことに悩まされていない」という睡眠に関する仮想シナリオを参加者に考えてもらい、その上でPHQ-8の「眠り過ぎ」の質問に回答してもらった。この質問では、「0(全くない)」の回答が「眠り過ぎていることに悩まされていない」を意味する。次に、先の回答は、症状に悩まされた程度に基づいたのか、症状の発生頻度に基づいたのか、それともその両方かを尋ねた。最後に、再びPHQに答える際には2つ目の質問で挙げた3つのうちどれを基準に回答するかと尋ねた。 その結果、仮想シナリオに関してPHQ-8の質問の意図を正しく理解できていた、つまり、症状にどの程度悩まされたかを回答していた人の割合は、MTurk群で54.7%、OPTIMA群では15.5%にとどまっていた。この質問についてCohen氏は、「PHQ-8の指示文を文字通り読めば、この場合は『全くない』と答えるはずだ」と指摘している。また、2つ目の質問について、「症状にどの程度悩まされたか」に基づいて回答したと答えた人の割合は、MTurk群で21.3%、OPTIMA群で11.7%にとどまり、さらに、次回以降も同じ解釈をすると答えた人の割合はそれぞれ22.3%と9.9%であった。 Cohen氏は、「これらの結果は、PHQによる評価は患者が実際に経験していることを正確に反映していないことを示唆している。われわれは多くの場合、患者の抑うつ症状について把握するためにPHQを使う。そうした意味で、『どの程度悩まされていたか』という点は非常に重要だ」と話す。同氏は、「例えば、GLP-1受容体作動薬による減量治療が急増しているが、オゼンピック使用者の食欲低下はうつ症状として数えるべきではない。それが薬を使っている主な理由なのだから」と述べ、「PHQが普及している状況に鑑みると、こうした誤解や理解のずれは、非常に広範な問題につながりかねない」と懸念を示している。 Cohen氏はさらに、「同じ経験をしているのに、人によって正反対の回答をするという状況が望ましいとは考えにくい。それが良い結果をもたらすはずがない。この論文は、実際にそれが起きていること、そしてそれが問題になり得ることを示した」と述べている。その上で同氏は、「今後の研究では、患者にとってより分かりやすくなるよう、質問文の言い回しを変更することに焦点を当てるべきだ」との考えを示している。

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肥満症の治療にアミリン受容体作動薬は登場するか?(解説:小川大輔氏)

 肥満症の治療において最も基本となるものが食事療法と運動療法であるが、これらに取り組んでも効果が不十分な場合は薬物療法が検討される。GLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬は糖尿病治療薬として開発されたが、体重減少効果もあるため近年は肥満症治療薬としても承認されている。GIPやGLP-1以外にも肥満症の新しい治療標的が探索されているが、その1つがアミリン(amylin、別名:IAPP)と呼ばれるホルモンである。 アミリンは、インスリンと共に膵臓のβ細胞から分泌されるホルモンで、胃の動きを遅らせて糖の吸収を穏やかにする、あるいはグルカゴン分泌を抑制するなど、血糖値の調節に関わることが知られている。また脳に作用して満腹感を高める作用もあり、食欲抑制に重要な役割を果たしていると考えられている。アミリンの働きを模倣するアミリンアナログが糖尿病や肥満症の治療薬として開発され、米国ではすでにpramlintideが糖尿病の治療薬として承認されているが、作用時間が短く1日3回の注射製剤のため使用は限定的である。 eloralintideは長時間作用の選択的アミリン受容体作動薬で、今回肥満患者を対象とした第II相試験の結果が発表された1)。プラセボ群と比較しeloralintide投与群では48週後の体重の平均変化率が9~20%減少と、有意な体重減少効果を認めた。主な有害事象としては悪心、便秘、下痢などの消化器症状と疲労であった。 肥満症の治療薬としてGLP-1受容体作動薬やGIP/GLP-1受容体作動薬がすでに使用されており、今後「トリプルアゴニスト」と呼ばれるGIP/GLP-1/グルカゴン受容体作動薬や、新規の経口GLP-1受容体作動薬が登場する予定である。アミリン受容体作動薬としては2021年にcagrilintideが第II相試験で肥満症に対して有効性が確認され2)、さらに2025年にcagrilintideとGLP-1受容体作動薬セマグルチドの配合薬が肥満・過体重の減量に効果があることが報告された3)。今後eloralintideを含め、アミリン受容体作動薬が肥満症の治療薬として日本で使用できるようになるか、引き続き注目したい。

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セマグルチドは抗肥満薬から第2のスタチンになりうるか?(解説:住谷哲氏)

 セマグルチド注2.4mgは、抗肥満薬(商品名:ウゴービ)としてわが国でも薬価収載されている。本論文はASCVDの既往を有する肥満患者(2型糖尿病患者は含まれていない)に対するセマグルチドの有用性を、MACE(非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中および心血管死の複合)を主要評価項目として評価したSELECT試験1)の事前指定された解析に関する報告である。本解析は、試験開始時の肥満指標adiposity measures(体重および腹囲)、試験開始後20週までの肥満指標の変化および試験終了時(104週)までの肥満指標の変化とMACEリスクとの関連を明らかにすることを目的とした。 結果は予想どおり試験開始時の体重および腹囲ともにMACEリスクと正に相関していた。つまり、より太った患者がよりMACEリスクが大きかった。また、セマグルチドのMACE抑制作用は試験開始時の体重および腹囲とは関連がなかった。しかし試験開始後20週までの体重減少量は20週以降のMACEリスクの減少と関連せず、一方で20週までの腹囲の減少は20週以降のMACEリスクの減少と関連していた。試験終了時までの体重および腹囲の減少とMACEリスクとの関連も同様であった。さらに媒介解析mediation analysisによると、MACEリスク減少の33%は腹囲の減少で説明可能であった。 腹囲の減少を単純に内臓脂肪量の減少と考えれば、セマグルチドは内臓脂肪量を減少させることでMACEリスクを減少させると解釈することもできる。しかし媒介解析の結果からは、それは主要なメカニズムではないだろう。本解析の結果からは、セマグルチドのMACE抑制作用は体重減少および腹囲減少によるものではない可能性が高い。多様なメカニズムが考えられるが、筆者はセマグルチドの抗炎症作用が鍵ではないかと考えている2)。 SELECT試験の選択基準はBMIが27kg/m2以上なので、それよりBMIの小さい患者に今回の結果が外挿できるかは不明である。しかし著者らがDiscussionの最後に“the reconceptualization of GLP-1RAs as potential cardiovascular disease-modifying agents”と記載しているように、セマグルチドが心血管イベント2次予防における第2のスタチンになるのも夢物語ではないかもしれない。

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生活保護受給者、糖尿病の受診動向と転帰は?/筑波大学ら

 日本において生活保護受給者は医療費が免除されているが、医療費無償化の健康アウトカムに対する効果はどの程度なのか。糖尿病患者を対象に、生活保護受給者と国民健康保険加入者の治療と転帰の違いを調査した研究が行われた。筑波大学 医学医療系 ヘルスサービスリサーチ分野の山岡 巧弥氏らによる本研究は、Journal of Diabetes Investigation誌オンライン版2025年12月4日号に掲載された。 本研究は後ろ向き観察研究で、2017年4月〜2022年3月につくば市で収集された基本住民台帳・生活保護調査・医療保険請求データを用いた。対象は20〜68歳で2型糖尿病と診断され、糖尿病薬を使用している患者だった。主な評価項目は「年次の眼科検診受診」「SGLT2阻害薬およびGLP-1受容体作動薬の使用率」「医療費(総額・外来・入院)」「健康アウトカム(低血糖および入院発生率)」であり、多変量回帰モデルにより治療プロセスの差と転帰のリスク比や発生率比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・対象となったコホートは、2018〜20年の横断データで1万1,385〜1万1,566例、縦断データで計1万8,655例だった。・全期間を対象とした解析では、生活保護群は年1回の眼科検診を受ける割合が高かった(調整リスク比:1.15、95%信頼区間[CI]:1.08~1.22)。・生活保護群では、SGLT2阻害薬の使用割合が高く(1.22、1.13~1.31)、GLP-1受容体作動薬の使用割合はさらに高かった(1.63、1.41~1.90)。・生活保護群では総医療費(1.16、1.09~1.23)と外来医療費(1.31、1.24~1.38)が高かった反面、入院医療費(0.85、0.77~0.94)は低かった。・一方で、生活保護群のほうが低血糖の発生率が高かった(2.21、1.38~3.54)。 研究者らは「本研究では、医療費免除や所得補償がある生活保護受給者は適切な治療を受けやすいことが示された。しかし、低血糖リスクの上昇や健康アウトカムの改善が限定的であることは、単なる医療アクセス改善だけでは健康格差の解消に至らないことを示唆している。これは、病態の複雑さ、生活習慣、教育・自己管理支援の不足、社会的ストレスなど多因子の影響が考えられる。医療費免除のみでは健康アウトカムの改善が十分でないため、低血糖予防や継続的な患者教育・自己管理支援、社会的環境改善の施策など、包括的支援の必要性が高いと考えられる」としている。

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若々しい脳を保つ秘訣は筋肉量の維持と脂肪のカット

 身体が健康的で筋肉量が多いと脳の健康状態が良好に維持されやすいことが、米セントルイス・ワシントン大学放射線学・神経学准教授のCyrus Raji氏らによる新たな研究で示された。Raji氏は、「筋肉量が多く内臓脂肪が少ない健康的な身体では、脳もより健康的で若々しい傾向にある」と話している。この研究結果は、北米放射線学会年次学術集会(RSNA 2025、11月30日~12月4日、米シカゴ)で発表された。 Raji氏は、「年齢を重ねると、筋肉量が減り内臓脂肪が増えることは広く知られているが、こうした健康指標が脳の老化そのものに関連していることが、今回の研究で示された。体内の筋肉量と脂肪量は、脳年齢に基づいた脳の健康状態を反映する重要な指標であることが明らかになった」と説明している。 Raji氏らは今回の研究で、1,164人の健康な成人(平均年齢55.17歳、52%女性)の全身のMRI画像を収集した。MRI画像は、脂肪は明るく、体液は暗く映るT1強調画像という手法を使って撮影された。次に、AIアルゴリズムを用いて各参加者の筋肉量や脂肪量(皮下脂肪と内臓脂肪)、および推定「脳年齢」を数値化し、それらの指標と脳年齢との関係を解析した。 その結果、内臓脂肪と筋肉の比率が高い人ほど脳年齢が高いことが明らかになった。一方、皮下脂肪は脳年齢とはほとんど関係していなかった。この結果についてRaji氏は、「筋肉量が多い参加者では脳が若々しい傾向にあった一方、筋肉量に対して内臓脂肪の量が多い参加者では脳が老化している傾向にあった」と言う。また、同氏は「皮下脂肪は脳の老化には関連していなかった。つまり、筋肉量が多く、筋肉量に対する内臓脂肪量の比率が低いほど脳が若いということだ」と説明している。 Raji氏は、この研究は身体と脳の健康が密接に結び付いていることを示していると指摘し、「この研究は、体組成のバイオマーカーと脳の健康との関連について広く信じられていた仮説を実証し、今後のさまざまな代謝介入や治療の臨床試験に、これらのバイオマーカーを組み込む基盤を提供するものだ」と述べている。 またRaji氏は、「本研究から、筋肉量を維持しながら脂肪、特に内臓脂肪を減らすことが、脳の老化や脳の健康に最も良い影響を与えることが示唆された」と述べている。近年、GLP-1受容体作動薬の登場により、多くの人が余分な脂肪を減らすためにこれらの減量薬に頼るようになっている。しかし、Raji氏らによれば、GLP-1受容体作動薬は筋肉量を減らす可能性もあるという。この点を踏まえ同氏は、「今回の研究から得られた知見は、内臓脂肪のみを標的とし、筋肉量への影響を最小限に抑えたGLP-1受容体作動薬の開発に役立つ可能性がある」との見方を示している。 なお、学会発表された研究は、査読を受けて医学誌に掲載されるまでは一般に予備的なものと見なされる。

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糖尿病患者は心臓突然死リスクが極めて高い

 1型か2型かにかかわらず糖尿病患者は、心臓突然死のリスクが極めて高いとする論文が、「European Heart Journal」に12月4日掲載された。コペンハーゲン大学病院(デンマーク)のTobias Skjelbred氏らの研究によるもので、心臓突然死が多いことが一因となり、糖尿病患者は寿命も短いという実態も示されたという。 この研究では、デンマーク全国民の医療記録データベースが解析に用いられた。2010年の1年間で6,862件の心臓突然死が記録されており、そのうち97件が1型糖尿病、1,149件が2型糖尿病の患者だった。心臓突然死の発生率は一般集団と比較して、1型糖尿病では3.7倍、2型糖尿病では6.5倍だった。年齢層別に解析すると若年層で発生率の差がより大きく、50歳未満の糖尿病患者は一般集団の7倍であり、特に30代の1型糖尿病患者では22.7倍と極めて高値だった。 糖尿病患者は寿命が短く、その影響の一部は心臓突然死に起因していることも分かった。例えば30歳の一般集団の寿命は80.7歳だが、1型糖尿病患者の寿命はそれより14.2年短い66.5歳、2型糖尿病患者では7.9年短い72.8歳だった。このような寿命短縮のうち、心臓突然死による影響が、1型糖尿病では3.4年、2型糖尿病では2.7年と計算された。同様に、60歳の一般集団の寿命は83.0歳だが、1型糖尿病患者の寿命はそれより8.0年、2型糖尿病患者では5.0年短く、心臓突然死による影響が同順に1.5年、1.6年と計算された。 論文の筆頭著者であるSkjelbred氏によると、糖尿病はいくつかのメカニズムで心臓突然死のリスクを高める可能性があり、高血糖や合併症の神経障害などが心臓病や不整脈を引き起こすことが関係しているという。ただし同氏は、「これは観察研究であり、糖尿病と心臓突然死の関連性が示されたものの因果関係の証明にはならない」とし、慎重な解釈を促している。また同氏は、「心臓突然死を予測して予防することは困難だが、今回得られた知見は、糖尿病患者が心血管疾患リスクを抑制するために医師と協力することの重要性を、改めて示すものだ」とも付け加えている。 Skjelbred氏はさらに、SGLT2阻害剤やGLP-1受容体作動薬などの新しい糖尿病治療薬の登場によって、糖尿病患者が良好な血糖コントロールを維持しやすくなってきたことで、近年は心臓突然死のリスクが低下している可能性を指摘。加えて、突然心停止のリスクが高い人には、心停止を検知して電気ショックを与え正常な心拍を再開させるインプラントを植え込むという治療法があることを紹介。あわせて、糖尿病患者の中でこのような治療が有益な集団を特定できるようにするため、今後の研究への期待を述べている。 本論文に対して、アムステルダム大学(オランダ)のYaxuan Gao氏とHanno Tan氏が付随論評を寄せている。その中でTan氏は、「突然心停止を検知して、倒れた本人に代わり救急要請を通報する機能付きスマートウォッチは、糖尿病患者にとって有益かもしれない。このような機能は特に1型糖尿病患者により有用と考えられる。なぜなら、1型糖尿病患者は、目撃者のいない状況での突然心停止の発生率が高いからだ」と記している。

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MASH(代謝異常関連脂肪性肝炎)に対するGLP-1/グルカゴン共受容体作動薬ペムビドチド24週間治療の成績;肝線維化ステージは改善せず(解説:相澤良夫氏)

 GLP-1/グルカゴン共受容体作動薬pemvidutideのMASH(線維化ステージF2およびF3)に対する週1回皮下注射24週間治療の効果について、疾患活動性の抑制および肝線維化ステージの改善を指標として検討した。その結果、pemvidutideは安全性・忍容性に優れ、肝線維化を悪化させることなしにMASHの活動性を強力に抑制した。しかし肝組織内の線維量は減少したものの線維化ステージの改善には至らなかった。なお、治療期間中は体重減少が継続して認められた。 pemvidutideを含むインクレチン関連薬で体重減少効果を認めMASH治療効果が期待される薬物として、本邦ではGLP-1受容体作動薬セマグルチドが皮下注射薬だけでなく経口薬(商品名:リベルサス)も保険収載されているが、適用疾患は2型糖尿病であることから、肥満やMASLD(代謝異常関連脂肪性肝疾患)を合併した2型糖尿病に用いられている。セマグルチド製剤(商品名:ウゴービ)は2024年2月から肥満症を適用疾患として販売されているが、適用条件や施設基準が厳しく一般診療での使用は困難である。なお、セマグルチドは本邦施設も参加したMASHに対する72週間治療の国際共同第III相試験で肝線維化改善を含む治療効果が認められている。 より強力な作用が期待されるGIP/GLP-1共受容体作動薬チルゼパチドも2型糖尿病治療薬として2023年4月から発売開始となり、2024年末には肥満症治療薬(商品名:ゼップバウンド)として製造販売承認されたが、ウゴービと同様に適用条件は厳格である。チルゼパチドも本邦施設を含む国際共同第II相試験(52週間治療)で肝線維化の改善を含むMASH治療効果と体重減少効果が認められた。 海外では、さらにGIP/GLP-1/グルカゴントリプル受容体作動薬retatrutideが開発され、強力な体重減少作用が報告されている。 pemvidutideに関しては、他のインクレチン関連薬をしのぐMASH治療効果が示されること、とくに36週治療以降での肝線維化ステージ改善効果が他のインクレチン関連薬を凌駕することが焦点となるものと思われ、pemvidutideの優位性が確認されればMASHを適用疾患としてわが国にも導入される可能性がある。 なお、MASH治療薬としては唯一2024年3月に肝指向性のresmetirom(選択的甲状腺ホルモン受容体β作動薬)が米国FDAから承認されたが、その治療効果は必ずしも強力ではない。 今後、全世界で若年層を中心に肥満者が増加し、肥満と密接な関係にあるMASHも増加すると考えられ、健康に悪影響を及ぼす重大疾患として広く認識されることが予想される。このような事情を背景に、今後もより効果的なMASH治療薬の開発が進むものと予想される。

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第299回 Novo社の経口抗肥満薬ウゴービ錠を米国承認

Novo社の経口抗肥満薬ウゴービ錠を米国承認GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)ウゴービ(セマグルチド)を世に出して肥満治療の新たな時代を切り拓いたNovo Nordiskが、肥満に使う経口GLP-1薬の初の米国承認1)を手にして再び肥満治療を進歩させます。ウゴービ錠は先週の月曜日22日に米国で承認されました。注射のウゴービと同様に、心血管疾患を経ている過体重か肥満の成人患者の心血管疾患イベント(心血管死、心筋梗塞、脳卒中)リスクを減らす用途と、肥満か体重に関連する疾患を有する過体重の成人患者の過剰な体重を減らして体重減少を維持する用途が許可されました2)。胃腸の有害事象を被り難くするために、ウゴービ錠の服用量は徐々に増やしていきます。まずは1.5 mgを30日間1日1回服用し、大丈夫そうなら次の30日間(31~60日)は1日4mg、その次の30日間(61~90日)は1日9mgを服用し、91日目以降は維持用量の1日25mgを服用し続けることを目指します。患者が1日25mg服用に耐えられないなら、ウゴービ1.7mg注射に切り替えることを考慮します。ウゴービ錠の体重減少効果はOASIS 4と銘打つ第III相試験で裏付けられています。同試験には肥満か体重に関連する疾患を有する過体重の非糖尿病成人307例が参加し、ウゴービ群に割り振られた205例の64週時点での体重はベースラインに比べて14%減っていました2,3)。プラセボ群102例の64週時点の体重はほとんど変わらず2%ほど減ったのみでした。Novo Nordiskの経口GLP-1薬による肥満症治療が米国承認一番乗りしたわけですが、肥満治療分野でしのぎを削るEli Lillyの足音も近づいています。Eli Lillyの経口GLP-1薬orforglipronは今月中旬に発表された第III相ATTAIN-MAINTAIN試験の目標達成をもって準備が整い、米国にすでに承認申請しています4)。ウゴービ錠と同じくorforglipronも承認申請受理から1~2ヵ月以内に審査を済ませる優遇の対象となっており、順調にことが運べば早くも来年3月には米国承認に漕ぎ着ける段取りとなっています5)。第III相ATTAIN-1試験で、orforglipron高用量は過体重か肥満の患者の72週時点の体重をベースラインに比べて平均11.2%減らしています6)。よく効く注射のGLP-1薬の類いがここ数年で使えるようになったとはいえ、薬による治療を求める肥満患者は依然としてごく一握りのようです。Novo Nordiskの幹部の1人のMartin Holst Lange氏の説明によると、米国の肥満患者のうち薬を使っているのは2%足らずです7)。ウゴービ錠は注射を嫌う患者にも選ばれる可能性があり、冷やして保管する手間が要りません。これまで治療を求めなかったり受け入れなかったりした患者がウゴービ錠で助かると信じている、とNovo Nordiskの米国事業を率いるDave Moore氏は言っています1)。ウゴービ錠は米国で来年1月早々に発売されます。米国政府との取り決め8,9)に基づき、開始用量1.5mgの1ヵ月分が149ドルで提供されます。Eli Lillyのorforglipronも承認されたら最も低用量の開始分が同じく149ドルで提供されます10)。参考1)FDA approves Novo Nordisk's Wegovy pill, the first and only oral GLP-1 for weight loss in adults2)Wegovy PRESCRIBING INFORMATION3)Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1077-1087.4)Lilly's orforglipron helped people maintain weight loss after switching from injectable incretins to oral GLP-1 therapy in first-of-its-kind Phase 3 trial5)Novo's Wegovy pill to test demand from consumers with cash6)Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1796-1806.7)Novo Nordisk wins FDA approval for Wegovy in a pill, introducing first oral GLP-1 option for obesity8)Fact Sheet: President Donald J. Trump Announces Major Developments in Bringing Most-Favored-Nation Pricing to American Patients9)Novo Nordisk, Lilly strike deal with Trump to slash weight-loss drug prices10)What to know about orforglipron: An investigational oral GLP-1

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『肝細胞癌診療ガイドライン』改訂――エビデンス重視の作成方針、コーヒー・飲酒やMASLD予防のスタチン投与に関する推奨も

 2025年10月、『肝細胞癌診療ガイドライン 2025年版』(日本肝臓学会編、金原出版)が刊行された。2005年の初版以降、ほぼ4年ごとに改訂され、今回で第6版となる。肝内胆管がんに独自ガイドラインが発刊されたことを受け、『肝癌診療ガイドライン』から名称が変更された。改訂委員会委員長を務めた東京大学の長谷川 潔氏に改訂のポイントを聞いた。Good Practice StatementとFRQで「わかっていること・いないこと」を明示 今版の構成上の変更点としては、「診療上の重要度の高い医療行為について、新たにシステマティックレビューを行わなくとも、明確な理論的根拠や大きな正味の益があると診療ガイドライン作成グループが判断した医療行為を提示するもの」については、Good Practice Statement(GPS)として扱うことにした。これにより既存のCQ(Clinical Question)の一部をGPSに移行した。 また、「今後の研究が推奨される臨床疑問」はFuture Research Question(FRQ)として扱うことにした。FRQは「まだデータが不十分であり、CQとしての議論はできないが、今後CQとして議論すべき内容」を想定している。これらによって、50を超える臨床疑問を取り上げることが可能になり、それらに対し、「何がエビデンスとして確立しており、何がまだわかっていないのか」を見分けやすくなった。診療アルゴリズム、3位以下の選択肢や並列記載で科学的公平性を保つ ガイドラインの中で最も注目されるのは「治療アルゴリズム」だろう。治療選択肢が拡大したことを受け、前版までは推奨治療に優先順位を付けて2位までを記載していたが、今版からはエビデンスがあれば3位以下も「オプション治療」として掲載する方針とした。たとえば、腫瘍が1~3個・腫瘍径3cm以内の場合であれば、推奨治療は「切除/アブレーション」だが、オプション治療として「TACE/放射線/移植」も選択肢として掲載している。これにより、専門施設以外でも自施設で可能な治療範囲を判断したり、患者への説明に活用したりしやすくなっている。 また、治療やレジメンの優先順位もエビデンスを基に厳格に判断した。たとえば、切除不能例の1次治療のレジメンでは、実臨床ではアテゾリズマブ+ベバシズマブ療法が副作用管理などの面で使用頻度が高い傾向にあるが、ガイドライン上ではほかの2つのレジメン(トレメリムマブ+デュルバルマブ、ニボルマブ+イピリムマブ)と差を付けず、3つの治療法を並列に記載している。実臨床での使いやすさや感覚的な優劣があったとしても、それらを直接比較した試験結果がない以上、推奨度には差を付けるべきではないと判断した。 結果として、多くの場面で治療選択肢が増え、実臨床におけるガイドラインとしては使い勝手が落ちた面があるかもしれないが、あくまで客観的なデータを重視し、科学的な公平性を保つ方針を貫いた。判断の根拠となるデータ・論文はすべて記載しているので、判断に迷った場合は原典にあたって都度検討いただければと考えている。予防ではコーヒー・飲酒の生活習慣に関するCQを設定 近年ではB/C型肝炎ウイルス由来の肝細胞がんは減少している一方、非ウイルス性肝細胞がんは原因特定が困難で、予防法も確立されていない。多くの研究が行われている分野ではあるので、「肝発癌予防に有効な生活習慣は何か?」というCQを設定し、エビデンスが出てきた「コーヒー摂取」と「飲酒」について検討した。結果として「コーヒー摂取は、肝発癌リスクを減少させる可能性がある」(弱い推奨、エビデンスの強さC)、「肝発癌予防に禁酒(非飲酒)を推奨する」(弱い推奨、エビデンスの強さC)との記載となった。いずれもエビデンスレベルが低く、そのまま実臨床に落とし込むことは難しい状況であり、今後のエビデンスの蓄積が待たれる。MASLD患者の予防にスタチン・メトホルミンを検討 世界的に増加している代謝機能障害関連脂肪性肝疾患(MASLD) では、とくに肝線維化進行例で肝がんリスクが高い。今版では新設CQとしてこの集団における肝発がん抑制について検討した。介入としては世界で標準的に使用されており論文数の多い薬剤としてスタチンとメトホルミンを選択した。ガイドラインの記載は「肝発癌予防を目的として、スタチンまたはメトホルミンの投与を弱く推奨する(エビデンスの強さC)」となった。ただ、予防目的で、高脂血症を合併していない患者へのスタチン投与、糖尿病を合併していない患者へのメトホルミン投与を行った研究はないため、これらは対象から外している。MASLD患者に対してはGLP-1受容体作動薬などが広く投与されるようになり、肝脂肪化および肝線維化の改善効果が報告されている。今後症例の蓄積とともにこれら薬剤の肝発がん抑制効果の検討も進むことが期待される。放射線治療・肝移植の適応拡大 その他の治療法に関しては、診断/治療の枠組みは大きく変わらないものの、2022年4月から保険収載となった粒子線(陽子線・重粒子線)治療の記載が増え、アルゴリズム内での位置付けが大きくなった。また、肝移植については、保険適用がChild-Pugh分類Bにも拡大されたことを受け、適応の選択肢が増加している。経済的だけでなく学術的COIも厳格に適用 改訂内容と直接は関係ないものの、今回の改訂作業において大きく変更したのがCOI(利益相反)の扱いだ。日本肝臓学会のCOI基準に従い、経済的COIだけでなく学術的COIについても厳密に適用した。具体的には、推奨の強さを決定する投票において、経済的なCOIがある者はもちろん、該当する臨床試験の論文に名前が掲載されている委員もその項目の投票を棄権するルールを徹底した。Minds診療ガイドライン作成の手法に厳格に沿った形であり、ほかのガイドラインに先駆けた客観性重視の取り組みといえる。投票結果もすべて掲載しており、委員会内で意見が分かれたところと一致したところも確認できる。今後の課題は「患者向けガイドライン」と「医療経済」 今後の課題としては、作成作業が追いついていない「患者・市民向けガイドライン」の整備が挙げられる。また、今版では医療経済の問題を「薬物療法の費用対効果の総説」としてまとめたが、治療選択における明確な指針の合意形成までには至らなかった。今後、限られた医療資源を最適に配分するために、医療経済の視点におけるガイドラインの継続的なアップデートも欠かせないと考えている。

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妊娠前/妊娠初期のGLP-1作動薬中止、妊娠転帰と体重変化は?/JAMA

 主に肥満の女性で構成されたコホートにおいて、GLP-1受容体作動薬の妊娠前または妊娠初期の使用とその後の中止は、妊娠中の体重増加の増大、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスク上昇と関連していた。米国・マサチューセッツ総合病院のJacqueline Maya氏らが、後ろ向きコホート研究の結果を報告した。GLP-1受容体作動薬は、妊娠中に禁忌であり、妊娠初期に投与を中止すると妊娠中の体重増加や妊娠転帰に影響を及ぼす可能性が示唆されていた。JAMA誌オンライン版2025年11月24日号掲載の報告。妊娠前3年間・妊娠後90日間、GLP-1受容体作動薬の処方妊婦vs.非処方妊婦を比較 研究グループは2016年6月1日~2025年3月31日に、マサチューセッツ州ボストン地域をカバーする15施設からなる学術医療研究機関Mass General Brighamにおいて、分娩に至った単胎妊娠14万9,790例を対象に後ろ向きコホート研究を行った。 妊娠前3年間および妊娠後90日間に、電子健康記録で少なくとも1回GLP-1受容体作動薬の処方が確認された妊婦を曝露群、確認されなかった妊婦を非曝露群として、曝露群1例につき非曝露群3例を傾向スコアでマッチングした。 主要アウトカムは妊娠中の体重増加。副次評価項目は、妊娠中の過剰体重増加、在胎期間に対する出生体重の過大・過小、妊娠週数と性別に基づく出生体重のパーセンタイル、出生身長、早産、帝王切開、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群であった。 解析では、妊娠中の体重増加が観察された正期産の妊娠体重増加コホート、出生体重および新生児の性別が記録されている正期産の出生体重コホート、在胎28週以上で分娩様式が記録されている産科コホートの3つのコホートを定義した。曝露群で、妊娠中の体重増加、早産、妊娠糖尿病、妊娠高血圧症候群のリスクが上昇 14万9,790例のうち、655例が妊娠前3年間および妊娠後90日間にGLP-1受容体作動薬に曝露していた。除外基準に該当した症例を除外し傾向スコアマッチング後に、妊娠体重増加コホートは曝露群448例、非曝露群1,344例、出生体重コホートはそれぞれ442例、1,326例、産科コホートはそれぞれ566例、1,698例となった。 妊娠体重増加コホートにおいて、曝露群は母体平均年齢が34.0歳(SD 4.7)、妊娠前BMI平均値が36.1(SD 6.5)、肥満が84%、糖尿病既往が23%で、いずれも非曝露群より高かった。また、曝露群は非曝露群と比べヒスパニック系(それぞれ30%、15%)、非ヒスパニック系黒人(11%、7%)の割合が高く、公的保険加入者の割合(10%、11%)は低かった。 妊娠体重増加コホートにおいて、妊娠期間中の体重増加量(平均値±SD)は、曝露群で13.7±9.2kgであり、非曝露群の10.5±8.0kgより有意に大きかった(群間差:3.3kg、95%信頼区間[CI]:2.3~4.2、p<0.001)。曝露群では、妊娠中の過剰体重増加のリスクも高かった(65%vs.49%、リスク比[RR]:1.32、95%CI:1.19~1.47)。 出生体重コホートでは、巨大児および低出生体重児のリスクは曝露群と非曝露群で同程度であったが、平均出生体重パーセンタイルは曝露群で高かった(58.4%vs.54.8%、差3.6%、95%CI:0.2~6.9)。 産科コホートでは、曝露群で早産(17%vs.13%、RR:1.34、95%CI:1.06~1.69)、妊娠糖尿病(20%vs.15%、RR:1.30、95%CI:1.01~1.68)、妊娠高血圧症候群(46%vs.36%、RR:1.29、95%CI:1.12~1.49)のリスクが高かった。出生身長、在胎期間に対する出生体重の過大・過小のリスク、帝王切開のリスクに差はなかった。

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