サイト内検索

検索結果 合計:625件 表示位置:1 - 20

1.

診療科別2025年下半期注目論文5選(消化器内科編~肝胆膵領域)

The Lancet Commission on addressing the global hepatocellular carcinoma burden: comprehensive strategies from prevention to treatmentChan SL, et al. Lancet. 2025;406:731-778.<Lancet誌委員会レビュー>:肝がん、2050年に全世界で倍増する可能性肝がんは、適切な対策を講じなければ2050年に152万人へと倍増する可能性があるとLancet誌が報告しています。地域ごとの背景は大きく異なり、中国では肝がん対策の進展が停滞し、欧州や北米ではMASLDやアルコール関連肝障害に伴う発がんが増加しています。またアフリカでは、人口増加に加え高いウイルス性肝炎の有病率が危惧されています。この“倍増の危機”を抑えるためには、国際的な協調や対策の強化が喫緊の課題です。Association between longitudinal weight change and clinical outcome in individuals with MASLDShi Y, et al. Hepatology. 2025 Oct 8. [Epub ahead of print]<1万例超対象の国際共同研究>:MASLD患者における体重変化の臨床転帰への影響国際共同研究によるMASLD 10,014例の解析により、これまで漠然と重要視されてきた“体重変化”が、治療評価に直結する強力なエビデンスとして示されました。5%超の体重増加は肝関連イベントの増加と肝硬度悪化、5%超の減量は改善と関連。GLP-1RA/SGLT2i使用を調整しても、体重変化自体が独立した主要因でした。Risk of de novo HCC in patients with MASLD following direct-acting antiviral-induced cure of HCV infectionLiu CH, et al. J Hepatol. 2025;82:582-593.<DAA後の新規肝がん発症リスク>:MASLDを有する患者では発がん率が約2倍C型肝炎は直接作用型抗ウイルス薬(DAA)でほぼ100%治癒する時代ですが、その後の肝がん管理は依然として重要です。本研究ではC型肝炎治療後の1,598例を解析し、MASLDを有する患者では発がん率が約2倍に上昇していました。MASLDはそれ自体が肝がんリスクを高めるだけでなく、肥満や糖尿病などの心代謝危険因子(CMRFs)を介して肝がん発症を促す“橋渡し役”にもなっていることが明らかになりました。ウイルス学的著効(SVR)後もMASLDとCMRFsの適切な管理と、継続的なHCCサーベイランスが不可欠です。Neoadjuvant FOLFIRINOX versus neoadjuvant gemcitabine-based chemoradiotherapy in resectable and borderline resectable pancreatic cancer (PREOPANC-2): a multicentre, open-label, phase 3 randomised trialJanssen QP, et al. Lancet Oncol. 2025;26:1346-1356.<PREOPANC-2試験>:切除可能・境界切除可能膵がんに対するFOLFIRINOX、OSに有意差認めずFOLFIRINOXは切除可能・境界切除可能膵がんに対し、ゲムシタビン併用化学放射線療法と比較して全生存期間(OS)の延長を示しませんでした。安全性は両群で許容可能と判断され、どちらの術前療法も臨床的に選択肢となりうることが示されました。IgG4-related disease in the Japanese population: a whole-genome sequencing studyZhang YO, et al. Lancet Rheumatol.2026;8:e11-e22.<日本のIgG4関連疾患における全ゲノム解析>:HLA・FCGR2Bに加え、C4コピー数変動が新たな感受性因子として同定日本人における自己免疫性膵炎をはじめとしたIgG4関連疾患患者を対象とした全ゲノム解析により、既知のHLA・FCGR2Bに加え、補体C4が独立した遺伝的感受性因子であることが示されました。また、PTCH1およびlncRNA LOC102724227がミクリッツ病特異的な感受性遺伝子として明らかになり、IgG4関連疾患の臓器多様性を生む遺伝的多様性が示唆されました。

2.

DM合併冠動脈疾患、Abluminus DES+シロリムスステントの有用性は?/Lancet

 経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受ける糖尿病合併患者において、血管壁側(abluminal)およびバルーン表面をコーティングしたシロリムス溶出ステント(Abluminus DES+SES)は、XIENCE耐久性ポリマーエベロリムス溶出ステント(XIENCE EES)と比較し、12ヵ月時の虚血による再度の標的病変血行再建術および標的病変不全の発生率が高く、非劣性は認められなかった。ブラジル・Heart Institute of University of Sao PauloのAlexandre Abizaid氏らが、16ヵ国74施設で実施した無作為化非盲検比較試験「ABILITY Diabetes Global試験」の結果を報告した。著者は、「糖尿病合併患者における治療成績の最適化が依然として課題であることが浮き彫りとなり、この患者集団における虚血リスクを低減するためステント設計および補助的薬物療法のさらなる革新が必要である」とまとめている。Lancet誌2026年1月17日号掲載の報告。Abluminus DES+SESのXIENCE EESに対する非劣性を評価 研究グループは、慢性冠症候群または非ST上昇型急性冠症候群で少なくとも1つの新規冠動脈病変に対しPCIを施行する1型または2型糖尿病の成人(18歳以上)患者を、Abluminus DES+SES群またはXIENCE EES群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 Abluminus DES+SES群では、薬剤移行を促進するためにバルーン拡張時間を45秒以上とすることが推奨された。また、全例に、臨床ガイドラインおよび現地の標準治療に基づいて2剤併用抗血小板療法を行った。 主要エンドポイントは、per-protocol集団における12ヵ月時点の虚血による再度の標的病変血行再建術(ID-TLR)および標的病変不全(TLF)(心血管死、標的血管心筋梗塞、またはID-TLRの複合エンドポイントと定義)の2つで、非劣性マージンはそれぞれ2.8%および3.0%とした。いずれも累積発生率はKaplan-Meier法で推定し、Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比(HR)とその95%信頼区間(CI)を算出した。複合主要エンドポイントのID-TLRとTLFの発生、非劣性基準を満たさず 2020年6月12日~2022年9月9日に、3,032例がAbluminus DES+SES群(1,514例)またはXIENCE EES群(1,518例)に無作為に割り付けられた。3,032例中2,931例(96.7%)が死亡までまたは24ヵ月間の追跡調査を完了した。年齢中央値は68.0歳(四分位範囲:60~74)で、879例(29.0%)が女性、2,153例(71.0%)が男性であった。 per-protocol集団における12ヵ月時のID-TLRは、Abluminus DES+SES群で1,421例中67例(Kaplan-Meier推定値:4.8%、95%CI:3.9~6.2)、XIENCE EES群で1,446例中30例(2.1%、1.6~3.2)に認められ、絶対リスク群間差は2.7%(95%CI:1.3~4.1)で非劣性基準を満たさなかった(非劣性のp=0.44)。 また、TLFはAbluminus DES+SES群で137例(Kaplan-Meier推定値:9.7%、95%CI:8.4~11.5)およびXIENCE EES群で89例(6.2%、5.3~7.8)に認められ、絶対リスク群間差は3.5%(95%CI:1.5~5.5)であり(非劣性のp=0.68)、いずれの主要エンドポイントも絶対リスク群間差の95%CIの下限が0を上回った。 TLFを個別にみると、標的血管心筋梗塞は、Abluminus DES+SES群のほうが発生率は高かったが(Kaplan-Meier推定値:5.2%[95%CI:4.1~6.5]vs.3.1%[2.4~4.3])、心血管死(2.9%[2.1~3.9]vs.2.1%[1.5~3.0])および全死因死亡(3.7%[2.8~4.8]vs.3.3%[2.5~4.4])に有意差は認められなかった。 結果は、24ヵ月時点でもITT集団において一貫性が認められたが、12ヵ月から24ヵ月までのランドマーク解析では、両群間に有意差は認められなかった。

3.

急性筋骨格系損傷の小児、イブプロフェン単独療法vs.併用療法/JAMA

 非観血的急性筋骨格系損傷の小児(6~17歳)において、薬剤投与60分後の疼痛スコアは、イブプロフェン+アセトアミノフェン併用投与またはイブプロフェン+ヒドロモルフォン併用投与を行っても、イブプロフェン単独投与と比較して有意な改善は認められず、副作用の発現割合はヒドロモルフォン併用投与で約4倍高かった。カナダ・アルバータ大学のSamina Ali氏らが、カナダの3次医療施設6施設の小児救急部門で実施した無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Non-Steroidal or Opioid Analgesia Use for Children With Musculoskeletal Injuries:No OUCH試験」の結果を報告した。イブプロフェンは、筋骨格痛に対する第1選択薬であるが、小児の3例に2例がイブプロフェン単独では十分な疼痛緩和が得られず、中等度から重度の筋骨格痛に対する鎮痛薬の追加併用の有効性は不明であった。JAMA誌オンライン版2026年1月8日号掲載の報告。オピオイド併用の3群比較試験と、非オピオイド併用の2群比較の2試験を実施 No OUCH試験は、オピオイド試験と非オピオイド試験の2試験で構成され、保護者および患者がいずれに参加するかを決定できる治療選好を考慮した補完的試験デザインで実施された。 対象は6~17歳の小児で、発症後24時間以内の急性筋骨格系損傷(明らかな変形や神経血管障害を伴わない)を呈し、verbal numerical rating scale(vNRS)による疼痛スコアが10点満点中5点以上の患者とした。 研究グループは、適格患者を、オピオイド試験では(1)イブプロフェン+ヒドロモルフォン群、(2)イブプロフェン+アセトアミノフェン群、(3)イブプロフェン単独群のいずれかに、非オピオイド試験では(1)イブプロフェン+アセトアミノフェン群、または(2)イブプロフェン単独群のいずれかに無作為に割り付け、それぞれ単回経口投与した。 両試験とも、イブプロフェンは10mg/kg(最大600mg)、アセトアミノフェンは15mg/kg(最大1,000mg)、ヒドロモルフォンは0.05mg/kg(最大5mg)を投与した。 有効性の主要アウトカムは、投与後60分時点の自己申告によるvNRS疼痛スコア(スコア範囲:0[無痛]~10[最悪の痛み]、臨床的意義のある最小群間差:1.5[SD 2.7])、安全性の主要アウトカムは、治療関連有害事象の発現割合であった。平均疼痛スコアは3群間で有意差なし 2019年4月~2023年3月に8,098例がスクリーニングされ、適格患者699例が無作為化された(オピオイド試験249例[イブプロフェン+ヒドロモルフォン群110例、イブプロフェン+アセトアミノフェン群70例、イブプロフェン単独群69例]、非オピオイド試験450例[イブプロフェン+アセトアミノフェン群225例、イブプロフェン単独群225例])。2試験の患者の平均(SD)年齢は11.5(3.5)歳、47.4%が女性で、登録時の平均(SD)vNRSスコアは6.4(1.8)であった。 有効性の解析対象集団653例において、投与60分後の平均(SD)vNRSスコアはイブプロフェン+ヒドロモルフォン群4.8(2.6)、イブプロフェン+アセトアミノフェン群4.6(2.4)、イブプロフェン単独群4.6(2.3)であった(p=0.78)。 治療関連有害事象の発現割合は、イブプロフェン+ヒドロモルフォン群で28.2%と、イブプロフェン+アセトアミノフェン群6.1%、イブプロフェン単独群5.8%と比較して高かった。重篤な有害事象は報告されなかった。

4.

アルツハイマー病に伴うアジテーション、最適なブレクスピプラゾールの投与量は?

 アルツハイマー病に伴うアジテーションは、患者の転帰と介護者の負担に重大な影響を及ぼす。ブレクスピプラゾールは有望な治療選択肢と考えられている。しかし、至適用量は依然として不明であった。サウジアラビア・King Faisal UniversityのMahmoud Kandeel氏らは、アルツハイマー病に伴うアジテーションの治療におけるブレクスピプラゾールの異なる用量の有効性と安全性を比較するため、システマティックレビューおよびネットワークメタ解析を実施した。Journal of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年12月8日号の報告。 PRISMAガイドラインに従い、2025年1月までに公表された研究をPubMed、Embase、Web of Science、Scopusより検索した。ブレクスピプラゾールの異なる用量(0.5~3mg/日)とプラセボを比較した4件のランダム化比較試験(1,451例)を解析に含めた。主要アウトカムは、Cohen-Mansfield Agitation Inventory(CMAI)、Clinical Global Impression-Severity Scale(CGI-S)、Neuropsychiatric Inventory-Nursing Home Version(NPI-NH)スコアの変化と安全性評価とした。 主な結果は以下のとおり。・ブレクスピプラゾール2mgは、プラセボと比較し、CMAIスコア(平均差[MD]:-5.88、95%信頼区間[CI]:-8.13~-3.63)、CGI-Sスコア(MD:-0.48、95%CI:-0.95~-0.01)の有意な改善が認められた。・複数回投与においてNPI-NHスコアの有意な改善が認められ、高用量(2~3mg)投与で最も効果が高かった(MD:-4.60、95%CI:-7.54~-1.66)。・高用量(2~3mg)では、治療下で発現した有害事象が増加した(リスク比:1.20~1.33)。しかし、重篤な有害事象についてはプラセボと比較して有意な差は認められなかった。 著者らは「アルツハイマー病に伴うアジテーションに対するブレクスピプラゾール2mgによる治療は、良好な安全性プロファイルを維持しながら、最適な治療効果をもたらすことが明らかとなった。これらの知見は、個々の反応と忍容性に基づき、低用量から治療を開始しながら2mgまで慎重に漸増することを支持している」とし「今後の研究では、長期的なアウトカムと実臨床における有効性に焦点を当てるべきである」としている。

5.

2型糖尿病患者は難聴の有病率が高い

 2型糖尿病と難聴リスクとの関連が報告された。罹病期間が長い糖尿病患者は難聴有病率が高いことなどが示されている。バルセロナ大学(スペイン)のMiguel Caballero-Borrego氏、Ivan Andujar-Lara氏の研究によるもので、詳細は「Otolaryngology-Head and Neck Surgery」11月号に掲載された。 慢性高血糖に伴う神経や血管の障害は全身性であることから、聴覚系にも影響を及ぼす可能性がある。これまでにも、糖尿病患者では内耳毛細血管の超微細構造に変化が生じているという報告など、糖尿病と難聴の関連性を示すエビデンスが報告されている。ただし、実臨床での研究結果には一貫性が見られず、糖尿病罹病期間や性別などにより関連性が異なるのではないかとの考え方もある。Caballero-Borrego氏らはこれを背景として、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。 論文検索にはPubMed、Scopusを用い、2019年1月~2024年4月に収載された論文を対象とした。包括基準は、糖尿病と難聴との関連を検討したコホート研究、横断研究、症例対照研究で、英語またはスペイン語の論文とし、糖尿病以外の要因による聴覚障害の可能性を否定できない研究、1型糖尿病患者のみを対象とした研究、聴力検査の信頼性が低いと判定される研究などは除外した。 一次検索で8,354件の論文がヒットし、重複削除、タイトルと要約に基づくスクリーニング、全文精査を経て17件を抽出した。これらの研究の参加者数は糖尿病群が計3,910人、対照群が4,084人であり、糖尿病群の難聴の有病率は40.6~71.9%の範囲だった。 有病率を比較可能な4件の研究(糖尿病群2,358人、対照群3,561人)を統合した解析で、糖尿病群の難聴有病率は有意に高いことが明らかになった(オッズ比〔OR〕4.19〔95%信頼区間1.22~14.37〕)。また、糖尿病群の純音聴力閾値は対照群より有意に高く(3.19dB〔同1.08~5.19〕)、低音域(1.11dB〔0.62~1.57〕)および高音域(2.3dB〔1.97~2.63〕)も同様に、糖尿病群の方が有意に高かった。 HbA1cと難聴の重症度との関連も示された。例えば中等度難聴の糖尿病群は対照群に比し平均HbA1cが0.57%(0.1~1.05)高値であり、より重度の難聴の糖尿病群は対照群に比し0.95%(0.02~1.87)高値だった。また、糖尿病の診断後10年以上経過している患者は10年未満の患者に比べ、難聴有病率が有意に高いことも分かった(OR2.07〔1.45~2.94〕)。一方、性別は難聴の有病率に有意な影響を与えていなかった。 著者らは、「糖尿病における難聴は、潜在的に生じている可能性のある細小血管症の結果として現れるのではないか。つまり、糖尿病患者に見られる聴力の低下は早期の警告サインと考えられる。よって糖尿病患者に聴力低下を認めた場合、より綿密なモニタリングを行うとともに、難聴への進行リスクを最小限に抑えるため、治療内容を再検討する必要があるだろう」と述べている。

6.

単純性淋菌感染症、単回投与の新規抗菌薬zoliflodacinが有効/Lancet

 単純性淋菌感染症の治療において、zoliflodacinはセフトリアキソン+アジスロマイシンの併用療法に対して非劣性であり、安全性プロファイルは同等であることが、スイス・Global Antibiotic Research & Development PartnershipのAlison Luckey氏らZoliflodacin Phase 3 Study Groupが行った海外第III相無作為化非盲検非劣性試験の結果で示された。淋菌(N. gonorrhoeae)は複数の第1選択薬および第2選択薬に対して耐性を獲得しており、新たな治療薬の開発が世界的な公衆衛生上の最優先事項となっている。zoliflodacinは、新規作用機序で細菌のDNA複製を阻害するファーストインクラスの経口スピロピリミジントリオン系抗菌薬で、新たな標的(GyrB)を有し、多剤耐性菌株を含む淋菌に対して強力なin vitro活性を有することが示されていた。著者は、「本検討で示されたデータは、zoliflodacinが単純性淋菌感染症に有効な経口治療選択肢の1つとなりうる可能性を示唆するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年12月11日号掲載の報告。zoliflodacin単回投与vs.セフトリアキソン+アジスロマイシン併用投与 本検討の被験者の適格要件は、臨床的に泌尿生殖器系の単純性淋菌感染症が疑われる12歳以上とされ、試験は、ベルギー、オランダ、南アフリカ共和国、タイ、米国の17の外来クリニックで実施された。試験参加国は、疾患有病率が高い国が選定され、参加施設は、HIVまたは性感染症とその治療に精通した研究経験のある主任研究者によって選定された。Feasibility調査票と試験前訪問調査で、性感染症症例管理ガイドライン、臨床サービス、リソース(施設、スタッフ、試験チームの構成案、試験参加施設で提供される標準的な性感染症サービス、検査能力の評価、試験経験、臨床試験の倫理レビューなど)の評価が行われた。 適格被験者は、zoliflodacin 3g(経口)単回投与群(zoliflodacin群)またはセフトリアキソン500mg(筋注)+アジスロマイシン1g(経口)の併用投与群(対照群)に2対1の割合で無作為に割り付けられた。治療の割り付けは被験者と試験担当医師には知らされたが、細菌検査室のスタッフおよび試験スポンサーの中央試験チームは、データベースがロックされるまで盲検化された。 主要エンドポイントは、細菌学的ITT集団における治癒判定(Test Of Culture[TOC]、6±2日目)時に細菌学的治癒(尿道または子宮頸管検体の培養検査で淋菌陰性または検出不能)を達成した患者の割合であった。有効性の主要解析で、治療群間差(対照群-zoliflodacin群)の両側95%信頼区間(CI)の上限が非劣性マージンの12%を下回った場合、非劣性と判定された。推定治療群間差は5.3%、zoliflodacin単回投与の非劣性を確認 2019年11月6日~2023年3月16日に1,011例がスクリーニングされ、スクリーニング基準を満たさなかった81例を除く930例が無作為化された(zoliflodacin群621例、対照群309例)。被験者の平均年齢は29.7歳(SD 9.4)、815/930例(88%)が出生時男性に、115/930例(12%)が出生時女性に分類された。514/930例(55%)が黒人またはアフリカ系米国人、285/930例(31%)がアジア人、113/930例(12%)が白人であった。 泌尿生殖器系の細菌学的ITT集団におけるTOCに基づく細菌学的治癒率(主要有効性エンドポイント)は、zoliflodacin群90.9%(460/506例、95%CI:88.1~93.3)、対照群96.2%(229/238例、92.9~98.3)であり、推定治療群間差は5.3%(95%CI:1.4~8.6)で、事前に規定した非劣性マージンの要件を満たした。 zoliflodacin群の忍容性は概して良好で、有害事象は治療群間で類似していた。治療中に発現した主な有害事象は、zoliflodacin群では頭痛(61/619例[10%])、好中球減少症(42/619例[7%])、白血球減少症(24/619例[4%])で、対照群では注射部位疼痛(38/308例[12%])、好中球減少症(24/308例[8%])、下痢(22/308例[7%])であった。有害事象の大半の重症度は軽度または中等度であった。重篤な有害事象は報告されなかった。

7.

SGLT2阻害薬のCKD進行抑制:糖尿病およびアルブミン尿の有無にかかわらず得られる絶対的ベネフィット/JAMA(解説:栗山哲氏)

本論文は何が新しいか? SMART-C(SGLT2 Inhibitor Meta-Analysis Cardio-Renal Trialists' Consortium)は、SGLT2阻害薬のランダム化比較試験(RCT)における心・腎アウトカムをメタ解析する国際共同研究組織である。SMART-C研究の成果は、2024~25年にLancet誌などに4編の論文として主要誌に報告された。そのうち2編は主として腎保護効果に焦点を当てた解析であり、JAMA誌オンライン版(2025年11月7日号)に同時掲載された。 その第1報はNeuenらによる論文で、これは「腎アウトカム」のクラスエフェクトを解析した研究である。ここでは、SGLT2阻害薬の腎保護作用が、糖尿病の有無にかかわらず、eGFRが低下したステージ4の患者や尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が低い群においても相対的効果が認められることが示された(CLEAR!ジャーナル四天王「SGLT2阻害薬の腎保護作用:eGFR低下例・低アルブミン尿例でも新たな可能性/JAMA」)。 第2報は、Staplinらによる今回紹介するJAMA誌掲載論文である。本論文では、腎疾患イベントに加え、「死亡および入院」に関する絶対リスクの評価を中心としたメタ解析が行われた。その結果、糖尿病の有無やUACRの値にかかわらず、腎機能、入院、死亡といったアウトカムにおいて、SGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットが確認された。これらの新知見は、SGLT2阻害薬の適応や治療選択肢の拡大の可能性を支持するものである。本SMART-C研究の主な成績 腎疾患を適応とするSGLT2阻害薬を使用したRCT8件を対象に解析を行った。解析対象は5万8,816例で、平均年齢は64±10歳、女性は35%であった。内訳は、糖尿病患者4万8,946例、非糖尿病患者9,870例である。主要評価項目は、腎・安全・全般アウトカムとして、腎疾患進行、急性腎障害(acute kidney injury:AKI)、全入院および全死亡とした。統計解析は逆分散重み付け法によるハザード比(hazard ratio:HR)の統合を行い、糖尿病の有無およびUACR<200mg/gと≧200mg/gで層別化して異質性を評価した。絶対効果は、各サブグループにおけるプラセボ群のイベント率に統合相対リスクを適用して推計した。 その結果、腎疾患進行に対するHRは、糖尿病ありで0.65(95%信頼区間[CI]:0.60~0.70)、糖尿病なしで0.74(95%CI:0.63~0.85)であった。推計イベント率は、糖尿病ありで33対48/1,000人年、糖尿病なしで32対46/1,000人年(いずれもSGLT2阻害薬群vs.プラセボ群)であった。AKIについては、糖尿病ありでHR:0.77(95%CI:0.69~0.87)、糖尿病なしでHR:0.72(95%CI:0.56~0.92)であり、糖尿病の有無にかかわらずAKIリスクの有意な低下が認められた。全入院は、糖尿病ありでHR:0.90(95%CI:0.87~0.92)、糖尿病なしでHR:0.89(95%CI:0.83~0.95)であった。全死亡は、糖尿病ありでHR:0.86(95%CI:0.80~0.91)、糖尿病なしでHR:0.91(95%CI:0.78~1.05)であり、非糖尿病群では統計学的に境界的であった。さらに、UACRによる層別サブグループ解析では、相対効果はUACR≧200mg/g群と<200mg/g群でおおむね同程度であったが、ベースラインの高いUACR≧200mg/g群では、腎疾患進行に対する絶対的ベネフィットがより大きかった。一方、全入院に対する絶対的ベネフィットは、UACR<200mg/g群においても明瞭に認められた。2つのSMART-C研究のインパクト KDIGOガイドライン(Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) CKD Work Group. Kidney Int. 2024;105:S117-S314.)では、糖尿病の有無やUACRの程度により推奨の強さが異なるため、臨床現場において「SGLT2阻害薬はどのような患者に、どれだけの絶対的利益が期待できるのか」という点には不確実性が残されていた。本論文で報告されたSMART-C研究第2報は、糖尿病の有無およびUACR200mg/gを閾値として層別化したサブグループごとに治療効果を統合し、入院や死亡といったアウトカムに対する「絶対評価」を行うことで、この不確実性を明らかにしようとした試みである。 SMART-C研究第1報が、SGLT2阻害薬の「腎アウトカム」におけるクラスエフェクトに焦点を当てたのに対し、第2報では、「入院・死亡」を含む臨床的に重要なアウトカムに対するSGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットに焦点を当てたわけである。言い換えれば、第1報の解析が「どの程度まで進行した腎疾患に有効か」という相対的観点から検討したのに対し、第2報の解析は、「誰がどれだけ利益を得るのか」を糖尿病の有無やUACRによって具体的に層別化して検討した点に特徴がある。その結果、本研究により、SGLT2阻害薬がもたらす絶対的ベネフィットが明確に示された。本論文のインパクトは、現行ガイドラインにおける適応基準の再検討や、より多様な患者集団に対する個別化治療の拡大につながる可能性を示唆する。実臨床の視点からSMART-C研究を紐解く SMART-C研究の解析結果は、統計学的に妥当性はあるとしても、SGLT2阻害薬は決して「腎保護の万能薬」となるわけではない。実臨床において本結果をどのように活用するかの各論は、3大腎疾患である糖尿病性腎臓病(DKD)、慢性糸球体腎炎(CGN)、腎硬化症(NS)によりおのずと異なる。DKDおよびCGNにおいては、UACRの多寡にかかわらずSGLT2阻害薬を選択することに大きな異論はないが(ただし、大規模RCTの多くはRAS阻害薬併用が前提となっている点には留意が必要)、高齢者ではUACRが比較的少ないNSでは注意が必要である。DKDやCGNの病態の主体は糸球体過剰濾過である(Kanbay M, et al. Nephrol Dial Transplant. 2024;39:1228-1238.)。一方、NSの病態の基本は、これとは異なり糸球体虚血である。 SGLT2阻害薬は、DKDでは糖尿病により拡張した輸入細動脈を収縮させ、CGNではRAS活性化により収縮した輸出細動脈を拡張させることで、糸球体過剰濾過を改善し、腎保護作用を発揮する。一方、輸入細動脈の狭小化を特徴とするNSでは、糸球体はむしろ虚血腎の状態にあり、病態生理学的には、過剰濾過改善機序による腎保護効果は期待しにくい。また、SGLT2阻害薬導入時の安全面への配慮として、脱水や低血圧の確認、DKDにおけるシックデイ時の対応やケトアシドーシス予防、AKIリスクの管理、尿路感染症への注意なども決して軽視できない。確かにSMART-Cの本論文の結果は、UACRの多寡を問わずSGLT2阻害薬の絶対的ベネフィットを示した点で朗報である。しかしながら、高齢者に多い高血圧性腎硬化症においても同様のベネフィットが再現され、末期腎不全や透析導入の減少に結びつくのか、さらに長期安全性や副作用リスクをどこまで担保できるのかについては、今後の実臨床の積み重ねとリアルワールドデータによる検証が不可欠である。

8.

血友病B遺伝子治療、いわゆる発売用量の5年間の成績(解説:長尾梓氏)

 血友病の遺伝子治療は発売後にまったく売れずに発売を中止したり、発売してみたけどやっぱり売れないからといって発売国を限定し、挙げ句に製品ごと他の会社に売りたいです~と言ってみたり...当初の期待からすると残念な道をたどる製品が続いた。 抗体製剤を含めた利便性と効果の高い薬剤がどんどん発売されシェアが拡大し、「遺伝子治療って必要?」という空気が蔓延しようとしており、国際学会団体は共同で「開発をやめないで!」というジョイントステートメントを出したくらいの状況である(WFH. Critical juncture in hemophilia treatment: global organizations issue urgent call to action. 2025 May 5.)。 遺伝子治療はなんで期待したより使われないの?(Pierce GF, et al. Res Pract Thromb Haemost. 2025;9:102948.)という論文では、血友病Aの遺伝子治療はとくに効果・持続性に個人差があること、肝機能障害などの副作用があること、再投与ができないこと、価格が高すぎること、長期安全性データが不足していること、他の有効な治療選択肢があること、などが挙げられている。さもありなん。 さて、今回の論文である。これまでも初期の治験の投与量での長期成績は発表されていたが、今回はいわゆる発売量(米国の添付文書[package insert]で確認)2×1013ゲノムコピー/kg体重の投与を受けた例の5年間の成績が発表された。 平均FIX活性は5年後でも36.1±15.7%で、80%の対象者が5年後も第IX因子活性12%以上を維持した。もちろん出血も減って、従来の定期補充療法を中止できた対象者は51/54例だった。中止できなかった3例は、1例はもともと持っていた抗AAV抗体が高すぎたことで反応なし、1例は途中で投与をやめてしまって効果がなかった、1例は投与後2ヵ月で第IX因子活性が3.6%まで下がったため定期補充療法を再開したとのことである。 この製品は他製品と異なり抗AAV抗体が陽性でも投与できる。今回の例のように抗体価が高すぎると効果はないようなので日本で発売時には測定が前提になるのだろうか...。 大事な安全性については副作用の大半(91/100件)は6ヵ月以内に発生したことから半年乗り切れば少し安心と言えるのかもしれない。肝細胞がん、MDS、シュワノーマ各1例ずつの報告も、主要組織のDNA解析などから遺伝子治療との関連性は否定されたそう。血友病患者も長生きしてがんになることもあろう。このとき、遺伝子治療の副作用とどう区別するのかは難しいのではないかと個人的には思っている。

9.

2025年を振り返って【Dr. 中島の 新・徒然草】(612)

六百十二の段 2025年を振り返って今年もあとわずかですが、去年の能登半島地震に匹敵するほどの自然災害はありませんでした。とはいえ、まだ数日残っているので油断大敵です。それよりは今年の漢字「熊」に象徴されるクマのほうに話題が集まりました。熊害は「ゆうがい」と読むそうですが、山の中でいきなりクマと出くわしたらどうやって対処したらいいのでしょうか。相手が狼のようなイヌ系の動物だったら、フリスビーを投げたら本能的にそれを追いかけてどこかに行ってくれるかもしれません。ライオンとかトラのようなネコ系の動物だったら、これはボールですね。ヨハネスブルグ動物園では、サッカーボールを与えられたライオンが夢中になって追いかけるビデオがあります。Big Cat Plays Football! Amazing Lion, Johannesburg zoo一方、ネコがピンポン球で遊ぶ動画もYouTubeに大量に上がっています。ただ、元卓球部員の私に言わせれば、ピンポン球は転がすものではなく、弾ませるもの。ネコにとっても、そのほうが楽しそうです。ちょっとユーチューバーたちにアドバイスしてもいいかもしれません。さて、クマです。山の中でいきなり出くわしたら、はたしてクマはフリスビーやサッカーボールで納得してくれるのでしょうか。これはちょっと想像がつきません。実は今年の夏休みに出かけた旅行先も、田舎の山のほうだったので、ちょっとクマが怖かったです。なので、私なりにクマへの対処法を考えて行きました。まずはクマスプレー。対人用のものと違ってデカイ!350mLのペットボトルくらいあります。こんなデカイものでないと効かないとは。あらためてクマの恐ろしさを感じさせられます。次に音響兵器。こちらは小さく、スティック糊より一回り大きいくらいのサイズです。ボタンを押すと、とてつもない音がして耳が痛くなります。クマは聴覚が鋭敏なので、これで驚いて逃げてくれるといいのですが。そしてフラッシュライト。これは点滅する大光量で相手の視覚を奪うというもの。はたしてクマは怯んでくれるのか?こういった武器を3つも持っていれば気休めにはなります。ただ、人間の腕は2本しかありません。武器は3つ、手は2つ。さて、どうしたものか……。あと、クマスプレーは風上から発射しないと相手に届きません。風下から発射すると中身が戻ってきて自爆してしまいます。いろいろと悩むことがあって大変ですね。ともかく入念に準備をしていたせいか、旅行先ではクマに遭遇せずにすみました。熊といえばもう一つの話題。かの猫熊、パンダですよ。高市首相の発言に機嫌を損ねた中国が、来年早々に日本のパンダを全部引き揚げるというニュースが報じられました。そのためか、上野動物園ではパンダを一目見るために3,000人以上が行列を作っているのだそうです。思い起こせば40年以上も前のこと。私も東京に出かけたときに、上野動物園のパンダを見に行ったことがあります。その時も1時間くらい並んで1分くらいの対面でした。正直なところ「並んでまで見るほどのものか?」と思ったものです。付き合ってくれた友達には申し訳なかったのですが。令和の日本に話を戻しましょう。驚いたことに、パンダ2頭に対して年間約1億円のレンタル料を中国に支払っているのだとか。知りませんでした。「日本からパンダがいなくなったら、楽しみにしている子供たちがかわいそうだ」という人がいるのだとか。が、むしろ子供たちが国際情勢の厳しさや、お金の現実を学ぶ良い機会になるかと思います。というわけで熊に終始した2025年。読者の皆さま、よい年をお迎えください。今年最後の1句 年末や パンダを見るのも これっきり

10.

早期アルツハイマー病に対するドナネマブの78週間二重盲検長期延長試験の結果

 ドナネマブのピポタルスタディである国際第III相試験「TRAILBLAZER-ALZ 2(AACI)試験」では、76週間のプラセボ対照期間中に、早期アルツハイマー病患者の臨床進行をドナネマブが有意に遅延させることが示された。米国・イーライリリーのJennifer A. Zimmer氏らは、AACI試験を完了した患者に対し、78週間の二重盲検長期継続試験を実施し、その結果を報告した。The Journal of Prevention of Alzheimer's Disease誌オンライン版2025年12月1日号の報告。 対象は、AACI試験を完了した参加者のうち、ドナネマブ群に割り当てられた患者(継続群)およびプラセボ群に割り当てられた患者(投与開始群)。アミロイド治療コース完了基準を満たした患者は、プラセボへ切り替えた。外部対照コホートとして、AD Neuroimaging Initiative(ADNI)の参加者を用いた。 主な結果は以下のとおり。・継続群では、ADNI対照群と比較し、ドナネマブ投与により認知症の重症度評価尺度CDR-SBにおける疾患進行が、3年時点で有意な遅延を認めた(-1.2ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.7~-0.7)。・投与開始群では、ADNI対照群と比較し、76週時点においてCDR-SBにおける疾患進行の遅延が認められた(-0.8ポイント、95%CI:-1.3~-0.3)。・52週までに治療を完了した患者においても、3年時点でCDR-SBにおける疾患進行が同様に遅延した。・継続群は、投与開始群と比較し、3年間のCDR-Globalにおける疾患進行リスクが有意に低かった(ハザード比:0.73、p<0.001)。・両群ともに、ドナネマブ投与開始後76週目にPET評価を行った参加者の75%超がアミロイド除去(24.1センチロイド未満)を達成していた。・長期試験のデータを事前モデルに追加することで、再蓄積率の中央値は年間2.4センチロイドと予測された。・これまでの報告と比較し、ドナネマブの安全性プロファイルについては、新たな安全性シグナルは認められなかった。 著者らは「投与期間を3年間に限定することで、ドナネマブ投与を受けた早期アルツハイマー病患者は、臨床的ベネフィットの増加と一貫した安全性プロファイルを示すことが明らかとなった」と結論付けている。

11.

「TAVI弁展開後における弁尖可動不良事象に関するステートメント」公表/THT協議会

 経カテーテル的大動脈弁植込み術(TAVI)による弁展開直後や追加手技後に弁尖の一部または複数が可動不良となり、重度の急性大動脈弁閉鎖不全を呈する事象(frozen leaflet/stuck leaflet)が複数報告されていることから、経カテーテル的心臓弁治療関連学会協議会(THT)は12月11日付で医療安全情報ステートメントを公表した。 Frozen leaflet発生時には、重度の急性大動脈閉鎖不全が生じ、急速な血行動態悪化を認めることがあるが、まれな事象であることから診断に至りにくく死亡例も報告されているという。ほかにもECMOの使用を要する例も報告されており、3例中2例が死亡に至っている。また、追加治療として施行されたTAV-in-TAVにより冠動脈閉塞を来し死亡した例や自己拡張型においても報告があり、いずれの製品においても注意が必要であることから、本ステートメントではハートチームに向けて以下のような留意点が示された。―――1.発生要因:未解明ですが、サピエン弁(エドワーズ製)においては84%がpost balloon後に発生しており、関連が示唆されています。2.診断の難しさ:TAVI弁留置後の血行動態不安定化や重度逆流を認めた際には、frozen leafletを鑑別に含める必要があります。3.治療選択肢:TAV-in-TAVが第1選択となりますが、冠動脈閉塞リスクを伴うため、冠動脈プロテクションの併用を検討してください。4.緊急手術:速やかな開胸移行は重要な救命手段の一つであり、外科チームによる緊急手術体制の整備を行ってください。――― なお、本ステートメントではサピエン弁における現時点での集計概要も公表されている。・対象機種:SAPIEN 3 Ultra RESILIA・集計期間:2023年3月〜2025年2月・症例数:25例・発生頻度:約0.1%<患者背景>・平均年齢:83.0歳(71〜92)・性別:男性4例(16.0%)、女性21例(84.0%)<デバイスサイズ>・20mm:6例(24.0%)・23mm:15例(60.0%)・26mm:3例(12.0%)・29mm:1例(4.0%)<発症タイミング>・留置直後:4例(16.0%)・Post balloon後:21例(84.0%)<その後の対応>・TAV-in-TAV:25例(100%)└左冠動脈プロテクション併用:2例・開胸手術移行:2例(8.0%)└いずれもCABGを施行・ECMO使用:3例(12.0%)・死亡例:3例(12.0%)

12.

知っていますか?「リバース聴診器」法【Dr. 倉原の“おどろき”医学論文】第295回

知っていますか?「リバース聴診器」法皆さんは、「リバース聴診器」ってご存じでしょうか? 私も実はあまり知らなくてですね、今日おどろき論文のコーナーで紹介するに至りました。Zhang Q, et al. Application of a reverse stethoscope to overcome communication barriers: A case report of an elderly patient with illiteracy and profound hearing loss. Medicine (Baltimore). 2025 Oct 24;104(43):e45546.あくまで補聴機器がすぐ使えない状況での当座のツールとして、難聴患者さんが聴診器イヤーピースをつけて、医療従事者がベルに優しく話すという手法が紹介されています。これを「リバース聴診器」法と呼びます(写真)。写真. 「リバース聴診器」法(CC BY 4.0)(文献より引用)画像を拡大するこの論文の主人公は74歳の男性で、末期腎不全に対する血液透析が必要でした。患者さんは82dBの音圧でやっと知覚できるレベルの重度難聴で、文字の読解はほぼ不可能、家族や支援資源にも乏しく、補聴器や人工内耳の使用歴もありませんでした。初診時には問診が立ち行かず、腰部痛を身ぶりで示す以外の情報が得られないうえ、透析手技の説明が伝わらず、不安のため頻脈を呈していました。医療チームは大声での会話、身ぶりによる説明、図表を用いた簡易マニュアルと三段階で試みましたが、音の歪みや抽象的図像の解釈困難のため、どれも失敗に終わりました。標準化した10問で理解度を評価すると、正答は1問のみ(10%)、1問当たり平均4.5分、総面談時間45分に達し、患者さんは退室しようとするほど苛立っていました。代替手段が急務であったため、チームは「リバース聴診器」法を導入しました。患者さんの外耳道に優しく挿入し、医師は胸部ピースを口から約2cmに構えて通常会話と同程度の音量(60~70dB)で発語しました。介入後、同じ10問で再評価すると、正答は8/10(80%)へ改善し、総時間は12分、1問当たり1.2分に短縮しました。生理学的指標も落ち着き、心拍数は110/分から78/分へ改善しました。これによりインフォームドコンセントがうまくいき、穿刺手順やリスクの理解が得られ、同意のうえで透析が実施できました。間に合わせの手法として、「リバース聴診器」法も知っておきたいところですね。

13.

鉱質コルチコイド受容体拮抗薬(MRA)とSGLT2阻害薬の併用が慢性腎臓病(CKD)治療の基本となるか(解説:浦信行氏)

 CKDに対する腎保護効果に関して、従来はアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬やアンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)の使用が基本であった。また、一層の腎保護効果を期待してこの両者の併用も分析されたことがあったが、作用機序が近いこともあって相加効果は期待し難かった。 最近はMRAやSGLT2阻害薬の腎保護効果が次々と報告されるようになり、それぞれ複数の薬剤で有意な効果が報告されている。この両者の併用効果に関しては、2型糖尿病に伴うCKDを対象としたフィネレノンとエンパグリフロジン併用のCONFIDENCE試験が先行して行われ、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)で相加効果が確認されている。フィネレノンは従来のMRAとはMRへの結合の際の立体構造の変化が異なると報告され、その結果、高K血症の発症が少ないとされたが11.4%に認めた。エンパグリフロジンとの併用で9.3%に減少すると報告されたが、期待されたほど少なくはなかった。 このたびは、MRAのbalcinrenoneとSGLT2阻害薬のダパグリフロジン併用の腎保護効果を、2型糖尿病の有無にかかわらずUACR陽性のCKDで検討した(MIRO-CKD試験)。その結果は2025年11月27日配信のジャーナル四天王に概説されているが、ダパグリフロジン単独群より22.8~32.8%のUACRの有意な減少効果を示した。また、サブ解析では2型糖尿病の有無にかかわらず同等の効果を示し、腎機能障害の程度にかかわらず同等の効果を示している。問題は高K血症であるが6~7%にとどまり、ダパグリフロジン単独群の5%と大差がなく、対象324例で重症例はなかった。その機序は不明だが、尿中Na/K比に有意な変化はなかったことからbalcinrenoneによるK排泄の変動が大きくなかったと考えられるが、MRに対する他MRAとの相違の有無などの可能性は考察されていない。今後は、より多数例でより長期の試験が望まれ、ハードエンドポイントでの評価が望まれる。

14.

ESMO2025レポート 肺がん(後編)

レポーター紹介2025年10月17~21日に、欧州臨床腫瘍学会(ESMO Congress 2025)がドイツ・ベルリンで開催された。善家 義貴氏(国立がん研究センター東病院)が肺がん領域における重要演題をピックアップし、結果を解説。後編では、Presidential symposiumの2演題とドライバー陰性切除不能StageIII非小細胞肺がん(NSCLC)の1演題、進展型小細胞肺がん(ED-SCLC)の1演題を取り上げ、解説する。前編はこちら[目次]Presidential symposium1.HARMONi-62.OptiTROP-Lung04ドライバー陰性切除不能StageIII NSCLC3.SKYSCRAPER-03ED-SCLC4.DeLLphi-303Presidential symposium1.進行扁平上皮NSCLCの初回治療として、化学療法+チスレリズマブと化学療法+ivonescimabを比較する第III相試験:HARMONi-6本試験は、StageIII~IVでEGFR、ALK遺伝子異常のない、未治療進行扁平上皮NSCLCを対象に、標準治療群としてカルボプラチン(AUC 5、Q3W)+パクリタキセル(175mg/m2、Q3W)+チスレリズマブ(PD-1阻害薬)と、試験治療群のカルボプラチン+パクリタキセル+ivonescimab(20mg/kg、Q3W)を比較する第III相試験で、中国のみで実施された。ivonescimabは、PD-1とVEGFを標的とする二重特異性抗体である。ivonescimab群と標準治療群にそれぞれ266例ずつ割り付けられ、患者背景は両群でバランスがとれていた。扁平上皮NSCLCでは一般的に抗VEGF抗体が使用されない、中枢病変や大血管浸潤、空洞のある患者や喀血の既往歴がある患者も含まれた。今回の発表は、事前に規定された中間解析の結果であり、観察期間中央値は10.28ヵ月であった。主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)の中央値は、ivonescimab群/標準治療群で11.14ヵ月/6.9ヵ月(ハザード比[HR]:0.60[95%信頼区間[CI]:0.46~0.78]、p<0.0001)であり、ivonescimab群が良好であった。奏効割合(ORR)は75.9%/66.5%(p=0.008)とivonescimab群で高く、PD-L1の発現状況によらずivonescimab群が良好であった。Grade3以上の有害事象は、ivonescimab群/標準治療群で63.9%/54.3%に認められ、治療関連死亡や免疫関連有害事象(irAE)の頻度は両群で大差なく、ivonescimab群でVEGFに関連する毒性を認めたが、多くはGrade1~2であった。<結論>化学療法+ivonescimabは進行扁平上皮NSCLCにおいて、有意にPFSを延長し、今後の新規治療になりうる。<コメント>事前に規定された中間解析で観察期間が短いが、PFSは有意に化学療法+免疫チェックポイント阻害薬(ICI)と比較し延長したことは評価したい。しかしながら、標準治療となるにはOSの延長が必要であり、さらなるフォローアップデータが求められる。2.EGFR-TKI治療後に増悪したEGFR遺伝子変異陽性NSCLCに対する、プラチナ製剤併用化学療法とsacituzumab tirumotecan (sac-TMT)を比較する第III相試験:OptiTROP-Lung04本試験は、第3世代EGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)治療後の増悪例、もしくは第1、2世代EGFR-TKI治療増悪後にT790M陰性かつEGFR感受性変異陽性例に対して、化学療法(カルボプラチンまたはシスプラチン+ペメトレキセド)とsacituzumab tirumotecan(sac-TMT:TROP2標的抗体薬物複合体[ADC])(5mg/kg IV、Q2W)を比較する第III相試験である。本試験も中国のみで実施された。sac-TMT群、化学療法群にそれぞれ188例ずつ割り付けられた。患者背景は両群でバランスがとれており、初回治療で第3世代EGFR-TKIによる治療を受けた患者は、sac-TMT群/化学療法群で118例(62.8%)/117例(62.2%)、EGFR遺伝子サブタイプはEx19delが106例(56.4%)/118例(62.8%)、L858Rが84例(44.7%)/71例(37.8%)、脳転移ありは33例(17.6%)/36例(19.1%)であった。主要評価項目であるPFSの中央値は、sac-TMT群/化学療法群で8.3ヵ月(95%CI:6.7~9.9)/4.3ヵ月(同:4.2~5.5)であり、sac-TMT群で有意な延長を認めた(HR:0.49[95%CI:0.39~0.62])。さらにOSは、sac-TMT群/化学療法群で未到達(95%CI:21.5~推定不能)/17.4ヵ月(同:15.7~20.4)であり、こちらもsac-TMT群で有意な延長を認めた(HR:0.60[95%CI:0.44-0.82])。ORRはsac-TMT群/化学療法群で60.6%/43.1%(群間差17.0%[95%CI:7.0~27.1])であった。後治療は72.3%/85.5%で実施された。毒性について、有害事象の頻度は両群で差がなく、sac-TMT群の主な有害事象は貧血(85%)、白血球減少(84%)、脱毛(84%)、好中球数減少(75%)、胃炎(62%)であった。眼関連の有害事象を9.6%に認めたが多くはGrade1~2であり、ILDは認めなかった。<結論>sac-TMTはEGFR-TKI治療後に増悪した進行EGFR遺伝子変異陽性NSCLCにおいて、化学療法と比較してPFS、OSを延長し有望な治療選択となる。<コメント>中国のみで実施された第III相試験で、薬剤の承認にglobal試験の必要性が問われる。今後は同対象への初回治療での試験が進行中であり、進行EGFR遺伝子変異陽性NSCLCの初回治療は目まぐるしく変わっていくと予想される。ドライバー陰性切除不能StageIII NSCLC3.切除不能StageIII NSCLCに対する、プラチナ同時併用放射線治療後のデュルバルマブとアテゾリズマブ+tiragolumabを比較する第III相試験:SKYSCRAPER-03本試験は、EGFR遺伝子変異、ALK融合遺伝子異常を除く、切除不能StageIII NSCLCに対して、化学放射線治療(CRT)後に、標準治療であるデュルバルマブ群と試験治療群であるアテゾリズマブ+tiragolumab群を比較する第III相試験である。アテゾリズマブ+tiragolumab群/デュルバルマブ群にそれぞれ413/416例が割り付けられ、患者背景は両群でバランスがとれていた。白人は55.7%/59.6%、PD-L1<1%は49.4%/49.5%、1~49%は25.7%/28.1%、≧50%は24.9%/22.4%、扁平上皮がんは59.1%/59.9%であった。主要評価項目であるPD-L1≧1%集団のPFSの中央値は、アテゾリズマブ+tiragolumab群/デュルバルマブ群で19.4ヵ月/16.6ヵ月(HR:0.96[95%CI:0.75~1.23]、p=0.7586)、副次評価項目であるOSの中央値はアテゾリズマブ+tiragolumab群/デュルバルマブ群で未到達/54.8ヵ月(HR:0.99(95%CI:0.73~1.34)であり、いずれもアテゾリズマブ+tiragolumab群は延長を示せなかった。毒性については、両群で有害事象の頻度に差がなく、アテゾリズマブ+tiragolumab群で掻痒感、皮疹などが多く認められた。<結語>本試験は主要評価項目であるPFSの延長を示せず、新規治療とはならなかった。毒性は新規プロファイルのものはなかった。<コメント>2018年にCRT後のデュルバルマブが標準治療として確立されて7年経過するが、新規治療法の承認がされていない。近年、術前導入化学免疫療法が良好な成績を示しており、StageIII NSCLCの治療戦略は大きく変化している。SCLC4.ED-SCLCに対するプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬+タルラタマブの治療成績:DeLLphi-303(パート2、4、7)初回治療としてプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬(アテゾリズマブまたはデュルバルマブ)の併用療法を1サイクル実施したED-SCLC患者を対象に、導入療法と維持療法へのタルラタマブ上乗せの安全性、有効性を確認する第Ib相試験(パート2、4、7)が実施された。96例が登録され、PD-L1阻害薬の内訳はアテゾリズマブ56例(58.3%)、デュルバルマブ40例(41.7%)であった。全体で男性が67%、アジア人が16%、白人が74%、非喫煙者が7%であった。全体で、タルラタマブ開始時からのORR、奏効期間中央値はそれぞれ71%、11.0ヵ月であった。OS中央値は未到達で、1年OS割合は80.6%であった。毒性について、サイトカイン放出症候群(CRS)と免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)は、いずれもサイクル1での発現が多く、ほとんどがGrade1/2であった。タルラタマブに関連した死亡は認められていない。<結論>標準治療であるプラチナ製剤+エトポシド+PD-L1阻害薬および維持療法としてのPD-L1阻害薬へのタルラタマブ上乗せは、有望な治療成績を示した。現在、初回治療におけるプラチナ製剤+エトポシド+デュルバルマブおよび維持療法としてのデュルバルマブと比較するDeLLphi-312試験(NCT07005128)が進行中である。<コメント>タルラタマブは2次治療、初回治療へ順次適応範囲を広げていく予定である。初回治療での化学療法+PD-L1阻害薬との併用は、有効性、安全性ともに問題なく、第III相試験の結果が待たれる。ADC製剤の開発も盛んに行われており、SCLCも治療が数年で目まぐるしく変わっていくと予想される。

15.

balcinrenone/ダパグリフロジン配合薬、CKD患者のアルブミン尿を減少/Lancet

 疾患進行リスクの高い慢性腎臓病(CKD)患者において、balcinrenone/ダパグリフロジン配合薬はアルブミン尿の減少においてダパグリフロジン単独投与に対する優越性が示され、忍容性は良好で、カリウムへの影響も軽微であり、予期せぬ安全性の懸念は認められなかった。オランダ・フローニンゲン大学のHiddo J. L. Heerspink氏らMIRO-CKD study investigatorsが、北米・南米、アジア、欧州の15ヵ国106施設で実施した第IIb相無作為化二重盲検実薬対照用量設定試験「MIRO-CKD試験」の結果を報告した。新規ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬(MRA)であるbalcinrenoneは、小規模な臨床試験においてSGLT2阻害薬ダパグリフロジンとの併用によりアルブミン尿を減少させる傾向が示されていた。Lancet誌2025年11月22日号掲載の報告。12週時の尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)の相対変化量を評価 研究グループは、推定糸球体濾過量(eGFR)が25mL/分/1.73m2以上60mL/分/1.73m2未満、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)が100mg/g超5,000mg/g以下、および血清カリウム値が3.5mmol/L以上5.0mmol/L以下の成人患者を、balcinrenone 15mg/ダパグリフロジン10mg(balcinrenone 15mg併用)群、balcinrenone 40mg/ダパグリフロジン10mg(balcinrenone 40mg併用)群またはプラセボ/ダパグリフロジン10mg(ダパグリフロジン単独)群のいずれかに1対1対1の割合で無作為に割り付けた。 いずれも12週間投与した後、8週間休薬し投与中止後の効果も評価した。 ACE阻害薬またはARBの投与を受けている場合、スクリーニング前の少なくとも4週間、安定用量を投与されている患者は参加可能であった。 有効性の主要エンドポイントは、無作為化され少なくとも1回以上試験薬の投与を受けた患者における、ベースラインから投与12週時までのUACRの相対変化量とした。15mg併用および40mg併用ともダパグリフロジン単独に対して優越性を示す 2024年5月1日~12月18日に、613例がスクリーニングされ、適格基準を満たした324例が無作為化された(balcinrenone 15mg併用群108例、balcinrenone 40mg併用群110例、ダパグリフロジン単独群106例)。患者背景は、平均年齢64.6歳(SD 12.4)、女性110例(34%)、男性214例(66%)、アジア系103例(32%)、黒人またはアフリカ系アメリカ人23例(7%)、白人183例(56%)、平均eGFRは42.2mL/分/1.73m2(SD 10.5)、UACR中央値365mg/g(四分位範囲:157~825)で、56%がSGLT2阻害薬を服用していた。 主要エンドポイントにおいて、balcinrenone 15mg併用およびbalcinrenone 40mg併用のダパグリフロジン単独に対する優越性が認められた。ダパグリフロジン単独群に対する12週時におけるベースラインからのUACRの相対変化量は、balcinrenone 15mg併用群で-22.8%(90%信頼区間[CI]:-33.3~-10.7、p=0.0038)、balcinrenone 40mg併用群で-32.8%(90%CI:-42.0~-22.1、p<0.0001)であった。 高カリウム血症の有害事象は、balcinrenone 15mg併用群で6%(7/108例)、balcinrenone 40mg併用群で7%(8/110例)、ダパグリフロジン単独群で5%(5/106例)に発現した。低血圧および腎イベントの有害事象は少なく、治療群間で類似しており、重篤な事象は認められなかった。死亡が2例報告されたが、いずれも最終投与から28日以上経過後であった。

16.

第294回 経口GLP-1抗肥満薬が注射に取って代わりうる効果あり

経口GLP-1抗肥満薬が注射に取って代わりうる効果ありLillyの経口GLP-1受容体作動薬(GLP-1薬)であるorforglipronが肥満の2型糖尿病(T2D)患者の体重を10%ほど減らし1,2)、本年中に承認申請が始まります3)。肥満に使うことが承認されているGLP-1薬2つ(リラグルチドとセマグルチド)とGLP-1受容体とGIP受容体の両方の作動薬(チルゼパチド)はどちらも注射薬で、ペプチドを成分とします。経口のセマグルチドはT2Dに使うことが承認されていますが、肥満への使用はまだ承認に至っていません。orforglipronはペプチドが成分のそれらの薬と違って低分子化合物ですが、働きは似ており、生来のホルモンであるGLP-1のように振る舞います。ATTAIN-1と銘打つ先立つ第III相試験で、orforglipronはT2Dではない肥満成人の体重を72週時点で平均して11%ほど減らしました4)。別の試験でのセマグルチド注射群の同様の期間での約15%の体重低下5)には及ばないものの、orforglipronはより手軽な経口薬であり、注射薬のように痛い思いをせずに済むという強みがあります。今回Lancet誌に結果が掲載された第III相ATTAIN-2試験は、肥満に加えてT2Dでもある患者にもorforglipronが有益なことを示すべく実施されました。試験は世界10ヵ国(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、中国、チェコ共和国、ドイツ、ギリシャ、インド、韓国、米国)の136施設から、BMIが27kg/m2以上でHbA1cが7~10%(53~86mmol/mol)の患者を募って実施されました。3千例弱(2,859例)から選定した1,613例が1日1回服用のorforglipron低(6mg)、中(12mg)、高(36mg)用量かプラセボに1:1:1:2の割合で割り振られました。72週時点でorforglipron高用量群の体重はベースラインに比べて平均10%ほど減っていました。中用量群と低用量群はそれぞれ7%と5%ほど減っており、どの用量もプラセボ群の約3%低下を有意に上回りました。orforglipronは血糖値も有意に下げました。高用量群のHbA1cはもとに比べて差し引きで2%近く低下し、およそ4例に3例ほどが目標水準の7%未満を達成しました。orforglipron中・高用量群のおよそ10例に1例はもっぱらGLP-1薬につきものの悪心、嘔吐、下痢などの胃腸有害事象で服薬を中止せざるを得ませんでした。とはいえ著者のDeborah Horn氏によると、ほとんどの被験者は副作用を乗り越えられるようです2)。orforglipronの副作用特徴はGLP-1薬と一致していました。ATTAIN-1試験に次いでATTAIN-2試験が今回完了したことを受けて、orforglipronの承認申請に必要な臨床情報がそろったとLillyは言っています3)。Lillyは本年中に同剤を承認申請し、来年には米国での承認を得ることを目指しています。orforglipronは体重減少と血糖改善に加えてウエスト周囲径を細くし、血圧、コレステロール、トリグリセライド値を下げもします。ゆえに心血管代謝に手広く有益なようです1)。それに、注射器や冷蔵が不要なので、製造して、保管して、患者に届けるのが注射GLP-1薬に比べて安く済みそうです2)。とくに低~中所得国で高価で入手困難となっている注射GLP-1薬に比べてorforglipronはより多くの患者に届けることができそうです。orforglipronの体重低下効果は注射GLP-1薬に若干見劣りするかもしれませんが、総合的には注射GLP-1薬に似た成績を達成しうるようであり、待望の経口薬として多くの患者の手に渡って肥満治療を様変わりさせるかもしれません(potentially shifting treatment paradigm)1)。 参考 1) Horn PDB, et al. LANCET. 2025 Nov 20. [Epub ahead of print] 2) Daily pill could offer alternative to weight-loss injections / NewScientist 3) Lilly's oral GLP-1, orforglipron, is successful in third Phase 3 trial, triggering global regulatory submissions this year for the treatment of obesity / PRNewswire 4) Wharton S, et al. N Engl J Med. 2025;393:1796-1806. O 5) Wilding JPH, et al. N Engl J Med. 2021;384:989-1002.

17.

1型糖尿病の高リスク乳児、経口インスリンの1次予防効果は?/Lancet

 膵島関連自己抗体発現リスクが高い乳児において、ヒト亜鉛インスリン結晶から製造された経口インスリンの高用量投与はプラセボと比較し、膵島関連自己抗体の発現を予防しなかった。ドイツ・Helmholtz MunichのAnette-Gabriele Ziegler氏らが、Global Platform for the Prevention of Autoimmune Diabetes(GPPAD)の7施設(ドイツ3施設、ポーランド・スウェーデン・ベルギー・英国各1施設)で実施した研究者主導の無作為化二重盲検プラセボ対照試験「Primary Oral Insulin Trial:POInT試験」の結果を報告した。1型糖尿病はインスリンを含む膵島抗原に対する自己免疫反応により発症するが、膵島関連自己抗体や疾患症状発現前の自己免疫反応予防を目的とした経口自己抗原免疫療法の有効性を評価する臨床試験は行われていなかった。Lancet誌オンライン版2025年11月11日号掲載の報告。主要アウトカムは、膵島関連自己抗体発現(2種類以上)または糖尿病発症 研究グループは、GPPAD遺伝子スクリーニングプログラムにより6歳までに2種類以上の膵島関連自己抗体発現リスクが10%超の、離乳食を開始している生後4~7ヵ月の乳児を特定し、経口インスリン群またはプラセボ群に、1対1の割合で、施設で層別化して無作為に割り付けた。すべての参加者とその家族、研究者、検査室スタッフは、研究期間中割り付けを盲検化された。 参加者には経口インスリンまたはプラセボが1日1回、7.5mgを2ヵ月間、その後22.5mgを2ヵ月間、その後67.5mgを3歳時まで投与し、ベースライン、投与開始後2ヵ月時、4ヵ月時、8ヵ月時、生後18ヵ月時、その後2024年6月28日の最終外来受診日まで6ヵ月ごとに検査を実施した。 主要アウトカムは、2種類以上の膵島関連自己抗体(IAA、GADA、IA-2A、ZnT8A)の発現(2つの中央検査施設において2回連続で陽性および少なくとも1検体で2種類目の自己抗体が確認された場合に陽性と定義)または糖尿病発症とした。副次アウトカムは、糖代謝異常または糖尿病発症であった。 適格基準を満たし割り付けられた全参加者のうち、ベースラインで主要アウトカムの要件を満たさなかった参加者を主要解析の対象とした。試験薬を少なくとも1回投与された参加者を安全性解析に含めた。経口インスリン群とプラセボ群で主要アウトカムの有意差なし 2017年7月24日~2021年2月2日に乳児24万1,977例がスクリーニング検査を受け、2,750例(1.14%)で膵島関連自己抗体発現リスクの上昇がみられ、このうち適格基準を満たした1,050例(38.2%)が2018年2月7日~2021年3月24日に無作為化された(経口インスリン群528例、プラセボ群522例)。年齢中央値6.0ヵ月(範囲:4.0~7.0)、男児531例(51%)、女児519例(49%)であった。 経口インスリン群で2例(1型糖尿病の家族歴に関する情報の誤り1例、ベースラインで2種類以上の膵島関連自己抗体を保有していた1例)が除外され、主要解析対象集団は経口インスリン群526例、プラセボ群522例であった。 主要アウトカムのイベントは経口インスリン群で52例(10%)、プラセボ群で46例(9%)に発現した。ハザード比(HR)は1.12(95%信頼区間[CI]:0.76~1.67)で両群間に有意差は認められなかった(p=0.57)。 事前に規定されたサブ解析の結果、主要アウトカムおよび副次アウトカムに関して治療とINS rs1004446遺伝子型の相互作用が認められた。非感受性INS遺伝子型を保有する経口インスリン群の参加者はプラセボ群と比較して、主要アウトカムのイベントが増加し(HR:2.10、95%CI:1.08~4.09)、感受性INS遺伝子型を保有する経口インスリン群の参加者はプラセボ群と比較して、糖尿病または糖代謝異常の発症が低下した(HR:0.38、95%CI:0.17~0.86)。 安全性については、血糖値50mg/dL未満は、インスリン群で7,210検体中2件(0.03%)、プラセボ群で7,070検体中6件(0.08%)に観察された。有害事象は、インスリン群で96.0%(507/528例)に5,076件、プラセボ群で95.8%(500/522例)に5,176件発現した。インスリン群で死亡が1例認められたが、独立評価により試験薬との関連はなしと判定された。

18.

国試勉強を“未来の武器”づくりだと考える【研修医ケンスケのM6カレンダー】第8回

国試勉強を“未来の武器”づくりだと考えるさて、お待たせしました「研修医ケンスケのM6カレンダー」。この連載は、普段は初期臨床研修医として走り回っている私、杉田研介が月に1回配信しています。私が医学部6年生当時の1年間をどう過ごしていたのか、月ごとに振り返りながら、皆さんと医師国家試験までの1年をともに駆け抜ける、をテーマにお送りして参ります。今年もあっという間に秋が過ぎ、寒く感じる日が続くようになりましたね。先月より埼玉県和光市内の国立保健医療科学院を中心に、公衆衛生の研修をしています。約1ヵ月経ってみて、改めて公衆衛生に魅了されています。この研修がなければまず初期臨床研修医の時点で行くことはなかったであろう、WHO本部やGavi、Global Fundをはじめ、厚生労働省や千葉県庁、習志野保健所など、さまざまな層の政策立案と現場を視察できて、毎日ワクワクが止まりません。皆さまいかがお過ごしでしょうか。卒業試験で心の余裕が全くない、そんな方でも気軽に読むことができるよう、少し変わったトピックを今月は扱おうと思います。なぜ国試の知識は役に立たないと言われるか?(WHO本部にて「そちらの方」)この記事を読む皆さんには、国試対策に真面目に取り組むことが、合格後の自分を大いに助けてくれるということを知ってほしいです。「国試の知識なんて、役に立たないよ」こんな言葉を耳にしたことはないでしょうか。実習に出た時に現場のドクターからの質問に答えられなかった時や、研修先の先輩からやる気をそがれるような一言を受けたときに、そう感じたことがあるかもしれません。ですが、あえてポジショントークをするなら、私は「そんなことない」と断言します。医師国家試験対策に真面目に取り組んでいたおかげで、初期臨床研修に出た時にその恩恵を受けたことが何度もあるからです。とはいえ、先ほどの「役に立たない」という発言にも一理あります。きっと「医学」と「医療」の違いが、背景にあるのだと思います。学生時代の座学が、実践の土台となる(スイスといえばチーズフォンデュ!美味しい!けど、物価高いぃ)「医療とは、医学の社会的実践である」これは元日本医師会長である武見太郎先生の言葉で、私が大学の卒業式答辞でも用いた言葉です。初期臨床研修は研修として学ぶ側面を持ちながら、仕事をする訳です。皆さんが持つ医学的知識を活用し診療をするには、さらなる座学の知識と、現場での多職種連携や、社会的側面も考慮した包括的な視点がなければなりません。研修の始めのうちは国家試験以上の知識や実践的なスキルがなく、病院独自のルールや物品の場所もわからないため、仕事ができないと責められることはありません。指導してくれる2年目の先輩が神様のように見えることでしょう。ところが、数ヵ月もすると、ある程度コツが掴めてくるようになります。少しずつ症例をこなすことができるようになります。そして、ここで重要なのは「仕事に慣れる」と「理解してできる」は違う、ということです。できなかった仕事ができる、より効率的にできるようになることは素晴らしいことです。ただここは冷静に、医学的な背景知識を理解して医療を実践できているか、は日々振り返るようにしてください。診療の中でもらったフィードバックや講義内容が実践できたか、そこがポイントです。そして、現場に出てから得た診療技術を根本から支えるのには、やはり学生時代に積み上げた座学の知識が欠かせません。実感が湧かないこともあると思いますが、研修医になってもなお国家試験問題を見ている私はそう思います。試験対策でつけた知識が、現場に出たあなたを支えてくれます。初期臨床研修医向けの本を1冊買う(クラシックな街並みにうっとり)近年の国家試験では、実践的な知識を直接問う問題はさすがに出題されませんが、知っておくと解くのが楽になる問題はあります。特にA・Dブロックの判断力を問う、得点差がつく臨床問題です。「臨床やっている立場からは当たり前に感じるけどな」と評される問題ですね。ところが、実践的な知識やTipsを医師国家試験対策用の教材から学ぶことはやや難しいです(MECのサマライズなど一部例外はありますが)。そこで私からの提案としては、初期臨床研修医向けの入門書を1冊買ってみることです。研修医になって遭遇する主な疾患や症候について概要がまとまっていて、かつ実践的なTipsも載っているので国家試験対策に役立つことはもちろん、社会人・研修医としての心構えについても記載されており、来年度以降の働き方や生活のイメージが膨らむことと思います。いずれ4月頃には1冊手にするようなものなので、肩の力を抜いて気分転換がてら、サクッと読んでみるのもありです。思わぬTipsと巡り合うかもしれませんよ。デジタルで、まとめの土台を作っておくところでみなさんは普段の学習には何を用いているでしょうか、どんなツールを用いているでしょうか。学部学生時代のうちに、研修医以降も使うことができるまとめ、的なものを作っておくと便利です。まとめを作ることが目的で肝心の試験対策が進まないのは本末転倒ですが、学生時代に使っていた教材や成果物が研修医になってすっかり忘れ去られるのはもったいないです。そして研修医になってから、自分なりのまとめがあると、診療や診療後の振り返りに非常に役立ちます。まとめはぜひデジタルデバイスを用いてください。有名どころだと、NotionやEvernote、PowerPointでもWordでも何でも良いです(筆者のおすすめはNotion)。必ずいつでも、どこでも見返す、編集できる形が好ましいです。タイピング操作が必要なまとめ方が良いです。研修医になってから苦労することの1つにカルテ入力があります。電子カルテの表示や操作はメーカーによってそれぞれなので仕方がないところが多いですが、よくよく聞くとタイピングが遅いだけでは?ということがあります。基本的な入力はもちろん、ショートカットキーも使いこなすことができるようにトレーニングしましょう。最後に(ジュネーブのシンボル大噴水とスイス国旗。綺麗で治安のいい街だな)いかがだったでしょうか。今月は卒業試験・国家試験対策に直接関わらない、合格後の生活に向けた、少し背伸びをした内容でした。研修医になってから医師国家試験を解いてみると、「この問題サラッと流していたけど、現場のここにつながるのか!」ということが多々あります。もしこの記事を読んでくださっている研修医の先生がいらっしゃったら、数問ぜひチャレンジしてみてください。試験対策に日々励むことは合格を勝ち取ることはもちろん、未来の診療技術向上に大いに役に立つと信じて、今日もまた頑張ってください!応援しています!

19.

サンフランシスコのTCT2025で大きな収穫【臨床留学通信 from Boston】第17回

サンフランシスコのTCT2025で大きな収穫先日、TCT(Transcatheter Cardiovascular Therapeutics)2025に参加してきました。今年は例年と異なり土日も含むスケジュールだったためか、参加者が多い印象を受けました。TAVR vs.SAVRの7年データ1)を筆頭に、昨今のTCTはさまざまなLate breaking trialが発表されます。とくにコロナ禍以降、AHA(米国心臓協会学術集会)の開催に近づけて、より多くのLate breakingをTCTで発表させようという学会側の意図が感じられます。開催場所は、2年前と同様のサンフランシスコでした。今回は私たちのチーム内で5つの発表があり、そのうち1つはCirculation: Cardiovascular Intervention誌との同時発表ができたことは、大きな収穫でした2)。とはいえ、サンフランシスコを訪れるのもこれで3回目。正直なところ少々飽きてしまい、3時間の時差ぼけも体に結構応えます。また、これまたコロナ以降よく言われることですが、サンフランシスコの治安は悪化しており、ホームレスや薬物中毒者を多く見かけます。そのため、あまり夜遅くは出歩かないようにしていました。学会では、MGH(マサチューセッツ総合病院)でお世話になったKenneth Rosenfield先生(通称ケニー、もしくはケン)にもお会いしました。彼は多分70歳くらいなのですが、今も元気にカテーテルを施術されています。そんなケニーがTCTのMaster Operator Awardで表彰されている姿を見ると、素晴らしいと思うと同時に、自分も70~75歳くらいまでは頑張りたいなと改めて思いました。そのためには、少しは筋トレして、放射線防護服による腰痛を予防しないといけませんね。ColumnTCTの後、オレゴンの河田 宏先生の病院にお邪魔させていただきました。河田先生は、以前ケアネットで「米国臨床留学記」を連載されていました。これまで数年にわたり何かと相談に乗っていただいていたのですが、実はお会いするのは今回が初めて。共通の友人もいたため話に花が咲きました。美味しいステーキまでご馳走になってしまいました。画像を拡大する参考1)Leon MB, et al. Transcatheter or Surgical Aortic-Valve Replacement in Low-Risk Patients at 7 Years. N Engl J Med. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]2)Kiyohara Y, Kuno T, et al. Comparison of Limus and Paclitaxel Drug-Coated Balloons, Second-Generation or Newer Drug-Eluting Stents, and Balloon Angioplasty: A Network Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. Circ Cardiovasc Interv. 2025 Oct 27. [Epub ahead of print]

20.

アルツハイマー病治療薬が自閉症にも有効か

 アルツハイマー病治療薬として2003年に米食品医薬品局(FDA)に承認されたメマンチンが、自閉症スペクトラム障害(ASD)の小児や若者の社会的機能を高めるのに役立つ可能性のあることが、新たな小規模臨床試験で明らかになった。社会性の障害に改善が見られた割合は、メマンチンを投与した群では56%であったのに対し、プラセボを投与した群では21%だったという。米マサチューセッツ総合病院のGagan Joshi氏らによるこの研究結果は、「JAMA Network Open」に10月1日掲載された。Joshi氏は、「メマンチンに反応を示した試験参加者は、ASDの軽度の特徴は引き続き見られたものの、社会的コンピテンスが向上しASD症状の重症度も軽減した」とMass General Brighamのニュースリリースで述べている。 アルツハイマー病などの神経変性疾患では、脳の学習や記憶に大きな役割を果たす興奮性神経伝達物質であるグルタミン酸が過剰に作用し、NMDA受容体が過剰に活性化した状態になっている。メマンチンは、このように過活性化されたNMDA受容体の働きを抑制することで神経細胞の損傷を防ぐ作用を持つ。Joshi氏らは、一部のASD患者は脳内のグルタミン酸濃度が異常に高いことから、メマンチンがこうしたASD患者にも有効かもしれないと考えた。 そこでJoshi氏らは今回、知的障害のないASDの若年者(8〜17歳)を対象に、社会性の障害に対するメマンチンの安全性と有効性を評価した。42人の参加者(平均年齢13.2歳、男性76.2%)が、12週間にわたりメマンチンまたはプラセボを投与する群に21人ずつランダムに割り付けられた。主要評価項目は治療に対する反応とし、これは保護者や教師などによるSRS-2(Social Responsiveness Scale-Second Edition)総合スコアの25%以上の改善、または臨床医によるCGI-I(Clinical Global Impression-Improvement)スケールによる評価で2点以下の場合と定義した。 試験を完了した参加者は、メマンチン群16人、プラセボ群17人の計33人だった。まず、試験期間中に少なくとも1回は再評価を受けた35人(メマンチン群16人、プラセボ群19人)を対象に解析した結果、治療に対する反応が認められたのは、メマンチン群で56.2%(9/16人)であったのに対し、プラセボ群では21.0%(4/19人)であった(オッズ比4.8、95%信頼区間1.1〜21.2)。メマンチンの認容性は良好で、有害事象の発生件数もプラセボ群と同程度だった。 次に、グルタミン酸を豊富に含む領域である前帯状皮質前部(pgACC)のグルタミン酸濃度に関するデータが得られたがASD患者37人と健康な対照16人を対象に、pgACCのグルタミン酸濃度が治療反応のバイオマーカーになり得るかを検討した。その結果、ASD群では健康な対照に比べてpgACCでのグルタミン酸濃度が有意に高く(95.5IU vs 76.6IU、P<0.001)、正常より1標準偏差以上高い参加者の割合は54%に上った。グルタミン酸の濃度が高かった参加者での治療反応率は、メマンチン群の80%(8/10人)であったのに対し、プラセボ群では20%(2/10人)であった。 Joshi氏は、「メマンチンが効いた患者は、社会参加が活発になったことが分かった」と話しつつも、「この薬がASDの治療にどれほど役立つ可能性があるのかをより正確に評価するには、さらなる研究が必要だ」との見解を示している。その上で同氏は、「より大規模な臨床試験の実施が、より幅広いASD患者集団におけるメマンチンの反応を評価するのに役立つ可能性がある」と述べている。

検索結果 合計:625件 表示位置:1 - 20