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1.

多枝冠動脈疾患、ステント留置後のDAPT延長は有効か/NEJM

 多枝病変を伴う冠動脈疾患で、薬剤溶出性ステント留置後に抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を12ヵ月間受けた時点で安定状態にある患者において、アスピリン単独療法をさらに12ヵ月間受ける場合と比較して、クロピドグレルとアスピリンによるDAPTの12ヵ月間の延長は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合のリスクを低下させ、かつ出血リスクの増加を認めないことが、中国・ハルビン医科大学のJinwei Tian氏らが実施した「DAPT-MVD試験」で示された。研究の成果は、NEJM誌2026年7月16日号で報告された。中国97施設で実施した無作為化試験 DAPT-MVD試験は、中国の97施設で実施した非盲検(評価者盲検)無作為化試験(中国国家自然科学基金委員会[NSFC]などの助成を受けた)。2020年10月~2024年3月に、年齢18~75歳、多枝冠動脈病変を有し、薬剤溶出性ステント留置後に12ヵ月間のDAPTを受け、この間に重度の虚血イベントや出血イベントの発生を認めなかった患者を登録した。 被験者8,250例(平均年齢61歳、女性2,497例[30.3%])を、DAPT(クロピドグレル+アスピリン)を受ける群(4,125例)またはアスピリン単独療法を受ける群(4,125例)に無作為に割り付け、12ヵ月間投与した。 有効性の主要評価項目は、心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中の複合とした。安全性の主要評価項目は、臨床的に意義のある出血または大出血(BARC出血基準[タイプ:0~5、数値が大きいほど出血の重症度が高度]のタイプ2以上)であった。有効性の主要評価項目、DAPT群5.8%vs.アスピリン単独群6.8% 初回PCI前の診断名は、ほぼ全例(8,109例[98.3%])が急性冠症候群(心筋梗塞2,806例[34.0%]を含む)であった。初回PCIから無作為化までの平均(±SD)日数は378.6(±19.8)日だった。 無作為化前のDAPTの内訳は、5,534例(67.1%)がクロピドグレル+アスピリン、2,716例(32.9%)がチカグレロル+アスピリンであった。ベースラインで2,323例(28.2%)が糖尿病を有していた。追跡期間中央値は34.3ヵ月(四分位範囲[IQR]:24.3~42.2)。 有効性の主要評価項目の発生(無作為化から36ヵ月後の累積発生率のKaplan-Meier推定値)は、DAPT群5.8%(222例)、アスピリン単独群6.8%(266例)であり、DAPT群が有意に優れた(ハザード比[HR]:0.82、95%信頼区間[CI]:0.69~0.98、p=0.03)。 また、全死因死亡はDAPT群3.1%、アスピリン単独群3.0%(HR:1.02、95%CI:0.79~1.32)、心血管死はそれぞれ2.0%、1.9%(HR:0.96、95%CI:0.70~1.33)、非致死的心筋梗塞は1.8%、2.5%(HR:0.68、95%CI:0.50~0.93)、非致死的脳卒中は2.5%、3.1%(HR:0.80、95%CI:0.61~1.04)に認められた。 ステント血栓症は、DAPT群では発現せず、アスピリン単独群で2例(0.1%)にみられた。安全性の主要評価項目は1.4%vs.1.5%で同等 安全性の主要評価項目(BARCタイプ2以上)の発生(無作為化から36ヵ月後の累積発生率のKaplan-Meier推定値)は、DAPT群で1.4%(51例)、アスピリン単独群で1.5%(57例)に認められ、両群間に有意な差はなかった(HR:0.89、95%CI:0.61~1.30、p=0.54)。 大出血(BARCタイプ3以上)は、DAPT群で0.8%(29例)、アスピリン単独群で0.9%(33例)にみられ、両群間に有意な差はなかった(HR:0.87、95%CI:0.53~1.43、p=0.59)。 また、重篤な有害事象は、DAPT群で1,143例(27.7%)に1,750件、アスピリン単独群で1,156例(28.0%)に1,701件発現した(p=0.77)。 著者は、「これらの結果は、急性冠症候群を呈し多枝病変を有する患者において、その時点までに虚血イベントや出血イベントを認めていない患者であっても、標準的な12ヵ月間のDAPTでは不十分である可能性を示唆する」としている。 また、「DAPT延長による有効性の主要評価項目の改善は、主に心筋梗塞のリスクが大きく低下したことによるものであった。注目すべきは、この虚血イベントのリスク低減が、臨床的に意義のある出血や大出血のリスク、あるいは死亡リスクの増加を伴っていない点である」と指摘している。

2.

PSSA菌血症、ペニシリンG vs.抗ブドウ球菌ペニシリン/Lancet

 ペニシリン感受性黄色ブドウ球菌(PSSA)菌血症の治療について、90日死亡率に関するベンジルペニシリン(ペニシリンG)の抗ブドウ球菌ペニシリン(flucloxacillinまたはクロキサシリン)に対する事前既定の非劣性基準は満たされなかった。しかし、非劣性の事後確率は96.1%であり、急性腎障害(AKI)のリスク低減が認められたことが、オーストラリア・メルボルン大学のJoshua S. Davis氏らStaphylococcus aureus Network Adaptive Platform(SNAP)Trial Groupによる、研究者主導の国際的な多施設共同無作為化非盲検試験「SNAP試験」の結果で示された。過去にはまれであると考えられていたPSSA菌血症が世界的に再興している。ペニシリンGは薬物動態や有害事象の面で優れる可能性があるが、検出できないペニシリン耐性への懸念から、重症感染症には抗ブドウ球菌ペニシリンを基本とする抗菌薬治療が推奨されている。Lancet誌オンライン版2026年6月17日号掲載の報告。90日時点の全死因死亡についてペニシリンGの非劣性を評価 SNAP試験は8ヵ国(オーストラリア、カナダ、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ共和国、英国)で実施されている現在進行中の試験で、複数の臨床疑問に取り組んでいる(ジャーナル四天王「MSSA菌血症、セファゾリンは抗ブドウ球菌ペニシリンに非劣性/NEJM」)。本論では、黄色ブドウ球菌菌血症に対する複数の治療(例:抗菌薬治療、クリンダマイシン併用療法、早期の経口薬への切り替えなど)を評価している研究グループの、抗菌薬治療のPSSAに関する結果が報告された。 研究グループは8ヵ国の67病院に黄色ブドウ球菌菌血症で入院したあらゆる年齢層の患者を登録し(本論では18歳以上の成人に関する結果を報告)、ペニシリンG投与群、flucloxacillinまたはクロキサシリン投与群のいずれかに1対1の割合で無作為に割り付け、ペニシリンGの非劣性を評価した。推奨標準投与量は、ペニシリンGが1.8g(4時間ごと)または2.4g(6時間ごと)静脈内投与、flucloxacillinは2.0g(6時間ごと)静脈内投与、クロキサシリンは2.0g(4時間ごと)静脈内投与。クロキサシリンはflucloxacillinが承認されていない国(カナダ、イスラエル、シンガポール、南アフリカ共和国)でのみ使用された。 主要アウトカムは、試験登録後90日時点の全死因死亡であり、データが得られた全患者を対象とするITT集団で評価した。解析には階層ベイズロジスティック回帰モデルが用いられ、ペニシリンGの非劣性は補正後オッズ比(OR)が1.20未満であることと定義した。解析は、500例の被験者が90日間の追跡期間を完了するごとに行われた。90日死亡率のaORは0.67、AKI発生のaORは0.50 試験は第4回の中間解析後、データ安全性モニタリング委員会から、flucloxacillinまたはクロキサシリン群においてAKI増加が認められたことを理由に、早期の被験者登録の中断が要請され、2024年8月7日に終了した。 2022年2月18日~2024年6月21日に、PSSAが検出された成人493例のうち適格基準を満たした281例が無作為化された(ペニシリンG群156例、flucloxacillinまたはクロキサシリン群125例)。患者背景は、年齢中央値67歳(四分位範囲:56~77)、87例(31%)が女性、194例(69%)が男性であった。 主要アウトカムの90日死亡率は、ペニシリンG群21/152例(14%)、flucloxacillinまたはクロキサシリン群26/121例(22%)、補正後オッズ比(aOR)は0.67(95%信用区間[CrI]:0.35~1.28)であり、ペニシリンG群の非劣性の事後確率は96.1%、優越性の事後確率は88.9%であった。 AKIの発生は、ペニシリンG群17/153例(11%)、flucloxacillinまたはクロキサシリン群27/124例(22%)、aORは0.50(95%CrI:0.26~0.94)であり、ペニシリンG群の非劣性の事後確率は99.8%、優越性の事後確率は98.4%であった。 重篤な有害事象は、ペニシリンG群6/156例(4%)から7件、flucloxacillinまたはクロキサシリン群9/125例(7%)から10件が報告された。 結果を踏まえて著者は、「成人PSSA菌血症の治療について、有効性改善の可能性および安全性が良好であるという観点から、flucloxacillinまたはクロキサシリンよりもペニシリンGを優先すべきであることが示唆された」とまとめている。

3.

MSSA菌血症、セファゾリンは抗ブドウ球菌ペニシリンに非劣性/NEJM

 メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)菌血症患者において、90日死亡率に関して抗ブドウ球菌ペニシリン(flucloxacillinまたはクロキサシリン)に対するセファゾリンの非劣性が認められ、急性腎障害の発生率はセファゾリンで低かった。カナダ・マギル大学のTodd C. Lee氏らStaphylococcus aureus Network Adaptive Platform(SNAP)Trial Groupが、多施設共同無作為化非盲検非劣性試験「SNAP試験」の結果を報告した。黄色ブドウ球菌菌血症は死亡率が高い。MSSA菌血症の治療において、セファゾリンと抗ブドウ球菌ペニシリンのどちらが望ましいかは明らかになっていなかった。NEJM誌2026年6月18日号掲載の報告。セファゾリンとflucloxacillinまたはクロキサシリンを比較 SNAP試験は、8ヵ国(オーストラリア、カナダ、イスラエル、オランダ、ニュージーランド、シンガポール、南アフリカ共和国、英国)の91施設において実施されている現在進行中のベイジアン・アダプティブ・プラットフォーム試験で、黄色ブドウ球菌菌血症に対する複数の治療(例:抗菌薬治療、クリンダマイシン併用療法、早期の経口薬への切り替えなど)を評価している。今回は、抗菌薬治療のMSSAに関する結果が報告された。 研究グループは、ペニシリン耐性MSSA菌血症の18歳以上の入院患者を、血液培養(黄色ブドウ球菌が初めて陽性となった培養)の検体採取後72時間以内に登録し、セファゾリン群とflucloxacillinまたはクロキサシリン群に1対1の割合で無作為に割り付けた。セファゾリンは2gを8時間ごと(重症例または心内膜炎の場合は6時間ごと)、flucloxacillinは2gを6時間ごと(重症例または心内膜炎の場合は4時間ごと)、クロキサシリンは2gを4時間ごとに静脈内投与し、腎機能に応じて用量を調整した。 投与期間は、非複雑性菌血症で最低14日間、複雑性菌血症で28~42日間とした。なお、非複雑性菌血症の場合は7日目に、複雑性菌血症の場合は14日目に、適格であれば早期の経口薬への切り替えを評価するドメインへの移行が許可された。 主要アウトカムは登録後90日以内の全死因死亡で、階層ベイズロジスティック回帰モデルを用いて解析し、セファゾリンがflucloxacillinまたはクロキサシリンに対して非劣性である事後確率(非劣性基準は補正後オッズ比[OR]<1.2と事前に規定、これはflucloxacillinまたはクロキサシリン群の死亡率が15%の場合に死亡率の絶対差が2.5%ポイント未満に相当することを示す)、ならびに優越性の事後確率(基準は補正後OR<1.0)を評価した。安全性の評価項目には、14日以内の急性腎障害の発症が含まれた。90日死亡率、セファゾリン群15%、flucloxacillinまたはクロキサシリン群17% 2022年2月17日より登録を開始し、2024年6月21日に、事前に計画された第4回中間解析に基づき、データ安全性モニタリング委員会から急性腎障害に関する安全性シグナルを理由に患者登録の中断が要請された。その時点の解析で非劣性の基準が満たされたことから、2024年8月7日に試験は終了した。 計1,341例が無作為化され、671例がセファゾリン、670例がflucloxacillinまたはクロキサシリンの投与を受け、追跡不能例等を除く1,287例(セファゾリン群645例、flucloxacillinまたはクロキサシリン群642例)が主要アウトカムの解析対象となった。 90日死亡率は、セファゾリン群15.0%(97/645例)、flucloxacillinまたはクロキサシリン群17.0%(109/642例)、補正後ORは0.81(95%信頼区間[CI]:0.59~1.12)であり、非劣性の事後確率は99.2%、優越性の事後確率は89.8%であった。 14日以内の急性腎障害は、セファゾリン群で660例中92例(13.9%)に、flucloxacillinまたはクロキサシリン群では648例中127例(19.6%)に認められた(補正後OR:0.67、95%CI:0.50~0.89、優越性の事後確率99.7%)。

4.

抗凝固療法適応の心房細動患者、左心耳閉鎖術の非劣性を確認/NEJM

 抗凝固療法適応の心房細動患者において、Watchman Flx(米国・Boston Scientific製)デバイスを用いた左心耳閉鎖術は非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)療法と比較し、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合エンドポイントに関して非劣性、かつ3年時の手技に関連しない出血に関して優越性が示された。米国・Cedars-Sinai Smidt Heart InstituteのShephal K. Doshi氏らCHAMPION-AF Investigatorsが、16ヵ国の141施設で実施中の無作為化試験「CHAMPION-AF試験」の、3年追跡解析結果を報告した。心房細動患者では、脳卒中予防のための経口抗凝固療法は出血リスクによって制限される。左心耳閉鎖術は、長期抗凝固療法が適さない患者で検討されるが、抗凝固療法適応患者における臨床的意義は確認されていなかった。NEJM誌2026年6月4日号掲載の報告。抗凝固療法適応の脳卒中リスクが高い心房細動患者を無作為化 研究グループは、抗凝固療法の適応となる脳卒中のリスクが高い心房細動患者(CHA2DS2-VAScスコアが男性は≧2、女性は≧3[スコア範囲:0~9、高スコアほど脳卒中リスクが高いことを示す])を、Watchman Flxデバイスを用いた左心耳閉鎖術群(デバイス群)またはNOAC群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 デバイス群では、無作為化14日以内にデバイスを留置し、その後3ヵ月間、NOAC+アスピリン併用療法、NOAC単剤療法、または抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)のいずれかを行った後、アスピリンまたはP2Y12阻害薬の単剤療法を推奨した。NOAC群のレジメンは、標準臨床ガイドラインに準拠した。 有効性の主要エンドポイントは、3年時の心血管死、脳卒中または全身性塞栓症の複合で、非劣性マージンを4.8%とした。安全性の主要エンドポイントは、3年時の手技に関連しない出血(ISTH基準の大出血または臨床的に重要な非大出血)とし、有意水準両側0.05で優越性を評価した。3年時の心血管死・脳卒中・全身性塞栓症の複合、デバイス群5.7%vs.NOAC群4.8% 計3,000例が無作為化された(デバイス群1,499例、NOAC群1,501例)。患者背景は、平均(±SD)年齢71.7±7.5歳、女性が31.9%で、平均CHA2DS2-VAScスコアは3.5±1.3であった。 3年時の有効性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で81例(Kaplan-Meier推定値5.7%)、NOAC群で65例(4.8%)に発生した。群間差は0.9%(95%信頼区間[CI]:-0.8~2.6)であり、95%CIの上限が事前に設定された非劣性マージンを下回った(非劣性のp<0.001)。 安全性の主要エンドポイントのイベントは、デバイス群で154例(Kaplan-Meier推定値10.9%)、NOAC群で260例(19.0%)に発生した。ハザード比は0.55(95%CI:0.45~0.67)で、優越性が示された(優越性のp<0.001)。 なお、著者らは、非劣性マージンを絶対値で設定したこと、使用した左心耳閉鎖デバイスは1種類のみであったこと、対象患者の大半はCHA2DS2-VAScスコアが4以下であったため最もリスクの高い患者には一般化できない可能性があることなどを研究の限界として挙げている。

5.

心房細動患者における左心耳閉鎖術の効果は薬物治療と同等ではない(解説:高月誠司氏)

 CLOSURE-AF試験は、平均年齢77.9歳、CHA2DS2-VAScスコア5.2点で脳卒中および出血リスクが高い心房細動患者を対象に、左心耳閉鎖術(LAAC)と医師主導の最適内科治療(主にDOAC)を比較した多施設無作為化試験である。888例を対象とし、脳卒中、全身性塞栓症、大出血、心血管死または原因不明死の複合エンドポイントを主要評価項目とした。 追跡期間中央値3年で、主要イベント発生率はLAAC群16.8/100患者年、内科治療群13.3/100患者年であり、LAACは内科治療に対する非劣性を示さなかった。脳卒中発生率自体は両群でほぼ同等(2.6 vs.2.7/100患者年)であった一方、大出血の減少は認められず、周術期合併症や術後の二重抗血小板療法(DAPT)が利益を相殺した可能性が考えられた。また、高齢・高リスク患者では死亡が競合リスクとしてイベント評価に影響した可能性もあり、今後は手技安全性の向上や術後抗血栓療法の最適化が課題と考えられる。

6.

中等症脳梗塞、血栓溶解療法への早期DAPT追加は有効か/Lancet

 発症後4.5時間以内に静注血栓溶解療法を受けた中等症の虚血性脳卒中患者において、発症後6時間以内の経口抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の開始により、90日時点の機能的アウトカムの改善が得られる可能性が示された。中国・首都医科大学のAnxin Wang氏らTAPIS Investigatorsが、同国で実施した二重盲検プラセボ対照試験「TAPIS試験」の結果を報告した。急性期虚血性脳卒中の患者に対して、静注血栓溶解療法に抗血小板療法を早期に追加することを支持するエビデンスは得られていなかった。Lancet誌2026年5月16日号掲載の報告。中国の60病院で試験、90日時点の優れた機能的アウトカムを評価 TAPIS試験は、中国の60病院で、発症後4.5時間以内に静注血栓溶解療法を受けた、National Institutes of Health Stroke Scaleスコア4~10の虚血性脳卒中患者を登録して行われた。 研究グループは被験者を発症後6時間以内(血栓溶解療法の前・中・後のいずれか)に、経口投与のアスピリン100mg錠1錠+チカグレロル90mg錠2錠(早期DAPT)群またはプラセボ群に1対1の割合で無作為に割り付けた。早期DAPT群は1日目および2~7日目にチカグレロルを投与され、2~90日目は両群に非盲検下でアスピリン100mg錠1錠が投与された。患者、診療担当医、治験責任医師は割り付けを盲検化された。 有効性の主要アウトカムは、90日時点の優れた機能的アウトカム(修正Rankinスケールスコア0~1)。安全性の主要アウトカムは、36時間以内の症候性頭蓋内出血であった。有効性の評価に有意差、ただし症候性頭蓋内出血のリスク増大は排除できない 2024年4月3日~2025年9月30日に、1,382例が早期DAPT群(690例[49.9%])、プラセボ群(692例[50.1%])に無作為化された。年齢中央値は65.6歳(四分位範囲:58.3~72.0)、男性991例(71.7%)、女性391例(28.3%)であった。 90日時点で、早期DAPT群474例(68.7%)、プラセボ群429例(62.0%)で優れた機能的アウトカムを達成した(リスク比[RR]:1.11、95%信頼区間[CI]:1.03~1.20、p=0.0089)。 36時間以内の症候性頭蓋内出血の発現は、早期DAPT群6例(0.9%)、プラセボ群5例(0.7%)で報告された(RR:1.20、95%CI:0.37~3.93、p=0.76)。 結果を踏まえて著者は、「症候性頭蓋内出血に関しては対照群との有意差は認められなかったが、CI値の範囲が大きく、リスク増大への懸念を排除することはできない」と述べている。

7.

HOST-EXAM 10年フォローアップの再考―長期抗血小板療法におけるクロピドグレルの位置付け(解説:野間重孝氏)

 PCI後抗血小板療法の基本は、長い間、2剤併用療法(DAPT)の後にアスピリン単剤を継続するというものであった。とくにベアメタルステントから初期の薬剤溶出性ステントの時代においては、ステント血栓症への警戒が強く、アスピリンは事実上「長期継続が前提」の薬剤として扱われていた。このため、DAPT終了後にどの薬剤を残すかという問題自体が臨床上の大きな議論となることは少なく、アスピリン継続は半ば慣習的に受け入れられていた側面もあった。 しかし2010年代後半に入り、新世代薬剤溶出性ステントの普及によりステント血栓症のリスクが低下すると、抗血小板療法における出血リスクが改めて問題となるようになった。この流れの中で、DAPT期間の短縮、さらにはアスピリンを中止しP2Y12阻害薬単剤へ移行する戦略が検討されるようになった。2018年前後から複数のランダム化試験により、P2Y12阻害薬単剤戦略の安全性と有効性が示され、従来の「アスピリン長期継続」という考え方は徐々に見直されるようになった。 このような流れの中で、DAPT終了後にアスピリンとクロピドグレルのいずれを単剤として選択すべきかを直接比較したHOST-EXAM試験は、臨床的に重要な位置を占める研究となった。本試験はクロピドグレル単剤の優位性を示し、長期維持療法における抗血小板薬選択に新たな視点を提示したものである。もっとも、この試験は2年間のランダム化比較の後、治療選択が担当医に委ねられるという設計であり、長期フォローアップ結果の解釈には一定の注意を要する側面もある。今回の10年フォローアップは、このような試験デザインの特徴を踏まえつつ、PCI後慢性期における抗血小板療法の在り方を再考するうえで重要な知見と位置付けられる。それは、本研究では10年間の追跡が行われているものの、無作為化された抗血小板療法は最初の24ヵ月に限定され、その後の治療は担当医の判断に委ねられている。それにもかかわらず、解析はintention-to-treat原則に基づいて行われており、長期フォローにおける実際の抗血小板療法の影響を必ずしも反映していない可能性もありうるからである。 また、intention-to-treat解析は、無作為化によって得られた患者背景の均衡を維持し、治療選択に伴うバイアスを回避する目的で広く用いられる方法である。しかし本研究のように、無作為化治療が2年間に限られ、その後長期にわたり治療内容が変更されうる状況では、実際の治療効果をどこまで反映しているかは慎重に検討される必要がある。 さらに、本研究ではper-protocol解析においてイベント抑制効果がより顕著となり、NNTはITT解析の33から17へと変化している。この差は、長期フォローにおけるアドヒアランスや治療変更の影響が結果に関与している可能性を示唆しており、本研究結果の解釈において重要な点と考えられている。 したがって、本研究の結果は「クロピドグレル単剤治療を10年間継続した場合の効果」を直接示すものというよりも、「初期にクロピドグレルまたはアスピリンに割り付けられた患者群の長期予後の差」を示したものとして解釈するのが適切と考えられる。 また、本試験はopen-label設計であり、盲検化が行われていない点にも留意が必要である。とくにACSによる再入院や再血行再建などのエンドポイントは担当医の判断に依存する要素を含むため、治療内容の認識がイベント判定に影響を与える可能性がある。 さらに、本研究は韓国における単一民族コホートで行われており、東アジア人特有の薬物代謝特性の影響も考慮する必要がある。CYP2C19 loss-of-function alleleは東アジア人において高頻度に認められ、クロピドグレルの薬効に影響を与えることが知られている。このため、本研究の結果を日本人を含む他集団へそのまま外挿できるかについては慎重な検討が必要であると考えられる。 もっとも、本研究は抗血小板薬単剤療法を比較した無作為化試験の長期追跡としては、現時点で最長の10年フォローを報告した点で大きな価値を有する。抗血小板療法はPCI後に生涯にわたり継続されることが多いにもかかわらず、従来のランダム化試験の多くは2〜5年程度の追跡にとどまっていた。本研究は長期抗血小板療法の臨床経過に関する貴重な知見を提供するものであり、イベント曲線が長期間にわたり乖離していく傾向が示された点は注目に値する。 一方で、本研究ではクロピドグレル群において主要複合エンドポイントの有意な減少が認められたものの、全死亡には差が認められなかった点は重要である。抗血小板療法の長期的意義を評価するうえで、最も客観的なエンドポイントである全死亡に差が認められなかったことは、本研究の臨床的意義を解釈する際に慎重な姿勢を求めるものと考えられる。 また、クロピドグレル群では出血イベントの減少が認められているが、抗血小板薬単剤による重篤な出血は臨床的には必ずしも頻繁に経験されるものではない。さらに本研究における出血イベントの絶対差は比較的小さく、その臨床的意義については慎重に解釈する必要があると考えられる。 なお、近年のガイドラインの動向として、2024年ESCガイドラインではクロピドグレル単剤に対してClass I, Level Aの推奨が与えられており、抗血小板薬単剤戦略に対する評価は大きく変化しつつある。このようにガイドライン自体もクロピドグレル単剤の有効性を支持する方向へ進んでいるが、本研究の結果を踏まえても、無作為化期間が限定されている点や長期フォローの解釈上の問題を考慮すると、クロピドグレル単剤を広く第1選択として推奨するには、なお慎重な解釈が必要と考えられる。 本研究はPCI後慢性期における抗血小板療法の選択について重要な長期データを提示した点で価値の高い研究である。しかしながら、本研究は前半は無作為化比較試験として、後半は観察研究的性格を帯びた延長試験として理解すべきものであり、その結果は臨床実践に直ちに適用すべき決定的証拠というよりも、今後の抗血小板療法の在り方を再考するための重要な長期資料と位置付けられるべきであると考えられる。 評者の結論としては、実臨床においては、クロピドグレル単剤を有力な選択肢の1つとして考慮しつつも、患者背景、出血リスク、薬剤反応性などを踏まえた個別化治療の重要性は依然として変わらないと考えるものである。

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PCI後DAPT終了後のクロピドグレルvs.アスピリン、10年追跡結果(HOST-EXAM)/Lancet

 韓国・ソウル大学病院のJeehoon Kang氏らは、経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)終了後の抗血小板薬単剤による長期維持療法を評価した「HOST-EXAM試験」の10年追跡調査の解析結果を報告し、クロピドグレルはアスピリンと比較して主要複合エンドポイント、血栓性エンドポイントおよび出血のリスクが低いことを示した。ただし、全死因死亡の有意差は認められなかった。著者は、「今回の結果は、PCI後の慢性維持期における長期抗血小板薬単剤療法において、アスピリンの代替としてクロピドグレルを検討することを支持するものである」とまとめている。Lancet誌オンライン版2026年3月29日号掲載の報告。PCI後のDAPT終了患者を、クロピドグレル単剤とアスピリン単剤に無作為化 HOST-EXAM試験は、韓国の37施設が参加した医師主導の無作為化非盲検試験で、対象は薬剤溶出性ステント(DES)を用いたPCI施行後6~18ヵ月間、臨床的イベントを発症することなくDAPTを終了した20歳以上の患者であった。 研究グループは、適格患者をクロピドグレル(75mgを1日1回投与)群またはアスピリン(100mgを1日1回投与)群に1対1の割合で無作為に割り付け、24ヵ月間投与し、最長10年間にわたり年1回、臨床経過観察を行った。 主要エンドポイントは、全死因死亡、非致死的心筋梗塞、脳卒中、急性冠症候群による再入院およびBARC出血基準タイプ3以上の出血の複合とした。副次エンドポイントは心血管死、非致死的心筋梗塞、虚血性脳卒中、急性冠症候群による再入院、ステント血栓症(確定または疑い)の血栓関連複合エンドポイント、およびあらゆる出血(BARCタイプ2以上)とし、ITT解析が行われた。10年後も、クロピドグレル単剤が良好 2014年3月26日~2018年5月29日に5,530例が登録され、このうち5,438例がアスピリン群(2,728例)またはクロピドグレル群(2,710例)に無作為化された。 データカットオフ日の2025年5月1日時点で、追跡期間中央値はPCI後10.5年(四分位範囲[IQR]:9.4~11.4)、生存者では10.7年(IQR:9.8~11.5)であり、全体の追跡完了率は92.8%(5,048例)であった。 主要エンドポイントは、クロピドグレル群で646例(Kaplan-Meier推定発生率25.4%)、アスピリン群で739例(28.5%)に発生し、ハザード比(HR)は0.86(95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、log-rank検定のp=0.0050)であり、クロピドグレル群が有意に良好であった。 クロピドグレル群はアスピリン群と比較し、血栓関連複合エンドポイント(17.3%vs.20.0%、log-rank検定のp=0.0024)、およびあらゆる出血(9.1%vs.10.8%、log-rank検定のp=0.020)の発生率も低かったが、全死因死亡リスクは両群で差はなかった(13.4%vs.12.5%、HR:1.07[95%CI:0.92~1.24]、log-rank検定のp=0.399)。 なお、著者は、本試験の限界として、割り付け治療を2年間投与した後は抗血小板療法を義務付けなかったこと、東アジア人のみを対象としているため結果を他の集団に一般化できるかは限定的であること、非盲検試験であるため特定の臨床エンドポイントの判定においてバイアスを生じさせる可能性があること、などを挙げている。

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術後の状態管理(術後出血は大丈夫?)【医療訴訟の争点】第19回

症例PCI(経皮的冠動脈形成術)は虚血性心疾患に対する標準的治療として広く行われている一方、穿刺部合併症や後腹膜出血など、まれではあるが致命的となり得る合併症も知られている。本稿では、PCI後に循環動態の破綻を来し、最終的に死亡に至った症例について、出血性ショックの見落としが争われた東京地裁令和6年12月26日判決を紹介する。<登場人物>患者75歳・女性原告患者の夫および子2名(相続人)被告地方自治体(市立病院を開設)被告医師ら循環器内科医(PCI担当医)事案の概要は以下の通りである。平成30年10月24日胸部圧迫感を主訴として被告病院内科外来を受診。労作性狭心症が疑われ、循環器内科へ紹介。10月26日循環器内科の医師1が診察。11月6日冠動脈造影検査および左心室造影検査を実施。その結果、左前下行枝に99%の高度狭窄が認められ、抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)によりアスピリンおよびプラスグレルの内服開始。薬物療法のみでは不十分と判断され、PCIが予定。11月13日12時19分本件PCIの開始13時19分本件PCIの終了11月14日5時15分死亡 【本件PCI施行中の経過】平成30年11月13日正午過ぎより、右大腿動脈アプローチによりPCIが開始された。穿刺が2~3回試みられた後、6Frのロングシースが挿入された。手技中、患者は急性冠閉塞を来し、意識レベル低下、血圧測定不能となるなど心原性ショックの状態に陥った。これに対し、被告医師らは酸素投与、輸液負荷、昇圧剤投与を行い、バルーン拡張により冠血流を再開させた。循環動態は一旦改善し、左前下行枝に薬剤溶出性ステントが留置された。最終造影では血流良好であり、穿刺部には止血デバイスが使用され、PCIは終了した。PCI施行中の詳細はこちら 12時19分本件PCIの開始12時25分医師2が本件患者の右鼠径部から右大腿動脈を2、3回穿刺したが血管内に挿入できなかったため、医師3に交代し、医師3が、本件患者の右大腿動脈内に太さ6Frのロングシースを挿入。ヘパリン5,000単位が投与。12時55分本件患者の意識レベルが低下し、声掛けや痛み刺激に反応がなく、血圧は測定不能、SpO2は90%、心拍数は68で、急性冠閉塞を発症し、心原性ショックとなる。12時56分酸素マスクによる4L/分の酸素投与および輸液全開投与を開始し、医師3は、本件患者の左前下行枝7番狭窄部位を2回バルーン拡張。12時59分5mL/時で昇圧剤(塩酸ドパミン注キット)の投与を開始。本件患者は、声掛けに対して反応して会話が成立し、全身に発汗が著明にみられる状態。13時頃心拍数112、血圧84/57mmHg、SpO2は100%。13時3分左前下行枝7番に薬剤溶出性ステントを挿入。13時9分冠動脈造影により左前下行枝7番の血流が良好であり、急性冠閉塞などの所見は認められないことを確認。13時12分大腿動脈穿刺部止血デバイスを挿入して穿刺部を止血。13時18分心拍数90、血圧141/63mmHg、SpO2は100%。13時19分本件PCIの終了【本件PCI後の経過】PCI終了後、患者はHCUへ移動したが、その後、再び頻脈と血圧低下を認めるようになった。心電図ではST低下や虚血性変化が出現し、被告医師らは、急性ステント血栓症やNo reflow(造影剤の流れが血液の代わりに冠動脈中を占拠することによって、実質的には血流がなくなる状態)など、再度の心原性イベントを疑った。この時点でのHb値は明らかな低下を示しておらず、穿刺部にも明らかな血腫や出血所見は確認されなかった。そこで、循環動態不安定の原因精査のため、再度冠動脈造影が行われたが、ステントは開存しており、急性冠閉塞は否定された。さらに、腹部大動脈から腸骨動脈、大腿動脈近位部にかけて血管造影が行われたものの、造影剤の血管外漏出など、明確な出血所見は認められなかった。また、心エコー検査では心嚢液貯留はなく、壁運動も保たれており、心タンポナーデは否定的と評価された。Hb値も午後4時49分時点で12.4g/dLと基準範囲内であった。これらの所見を踏まえ、被告医師らは、出血性ショックよりも、頻脈性不整脈を背景とした心原性ショックの可能性が高いと判断し、循環補助を目的としてIABPを導入した。しかし、IABP導入後も循環動態は安定せず、昇圧剤投与が継続された。夜間以降も頻脈と低血圧は遷延し、翌未明には意識障害が進行、心停止に至った。蘇生処置が行われたものの、平成30年11月14日午前5時15分、死亡が確認された。PCI後の詳細な経過はこちら 11月13日13時19分本件PCIの終了13時29分HCU(高度治療室)に移動し、昇圧剤(塩酸ドパミン注キット)は5mL/時で継続13時42分血圧98/56mmHgであり、13時43分の12誘導心電図検査(ECG)の結果、STの低下14時39分12誘導ECGの結果、心拍数125で洞性頻脈、ST変化、急性心筋梗塞波形および外側心筋障害。医師1は、医師2らと本件患者の血圧低下の原因について検討し、本件施術中に冠動脈に血流低下が生じたことおよびHCU入室後の12誘導ECGの結果ST低下が出現したことから、急性ステント血栓症の可能性があると判断し、同日中に再度、冠動脈造影検査(CAG)を実施し、血圧を調整するために大動脈内バルーンパンピング(IABP)を留置する方針とした。14時56分血圧55/40mmHgであったため、医師1は、昇圧剤を6mL/時に増量し、15時頃には7mL/時に、15時15分頃には8mL/時に増量するとともに、15時10分頃にヘパリンの投与を開始。15時29分12誘導ECGの結果、心拍数156で洞性頻脈、下壁心内膜障害疑い。医師1は、本件患者の心筋虚血が進行している可能性があると判断16時6分心拍数148、血圧69/48mmHg、呼吸数24であり、16時30分頃に3mL/時で昇圧剤(ノルアドレナリン)の投与が開始されたが、16時31分頃には、心拍数155、血圧65/36mmHg、呼吸数20、16時44分頃には、心拍数154、血圧70/49mmHg。16時45分簡易心エコー検査を実施。可視範囲内では心臓壁運動は良好であり、心嚢液の貯留はみられなかった。16時49分Hb値は12.4g/dL。17時30分血圧71/49mmHg、呼吸数24であり、12誘導ECGの結果、心拍数153で洞性頻脈、ST異常、下壁心内膜障害疑い、心筋虚血疑い。医師1は、心タンポナーデや後腹膜出血によるショックの可能性は低く、心エコー検査の結果からすると、ポンプ失調の可能性も低いところ、単に洞性頻脈に伴う血圧低下の可能性もあるが、本件施術後のno flowなどの可能性もあり再検すべきであると考えた。18時12分左冠動脈造影を実施したが、急性冠閉塞の所見は認めず。医師1らは、「本件患者がステント血栓症による心原性ショックを発症したものではない」と判断した。18時15分頃までに右冠動脈、腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影を行ったところ、活動性のある出血や出血点は確認されなかった。医師1らは、後腹膜出血による出血性ショックを生じているのではなく、頻脈性不整脈による心原性ショックを生じているものと考えた。18時26分IABPを挿入し、駆動を開始。18時40分脈拍152、血圧62/38mmHg、午後6時45分頃には、脈拍155、血圧68/24mmHg、午後6時50分頃には、脈拍153、血圧90/29mmHg。医師1は、頻拍の原因として心房粗動が疑われることから、夜間はrate controlで経過観察とし、頻拍が持続すれば除細動も考慮することとした。19時シース固定部位に少量の出血が認められたが、シース固定部および穿刺部に出血などの異常はみられなかった。19時49分12誘導ECGの結果、心拍数154、洞性頻脈であり、ST異常がみられた。20時Hb値10.921時57分腸骨大腿動脈造影を施行。その結果、造影剤の血管外漏出像は認めず、医師1は、有意なHb値の低下もないため、出血性ショックも否定的であることから、遷延するショックの原因は頻脈以外に挙げることはできないと考えた。22時30分オーグメンテーション圧(IABPバルーン拡張期圧)低下のアラームが鳴り、本件患者は胸部症状がみられ、嘔吐。22時40分心拍数126、血圧72/43mmHg(観血)11月14日3時07分オーグメンテーション圧低下アラームが鳴り、呼吸下顎様となり、意識レベルはJCS 2に低下、心拍数100台、血圧50/29mmHg(観血)へと低下3時16分意識レベルJCS 3(-300:痛み刺激に反応しない状態)3時31分心静止状態となったため心臓マッサージが開始5時15分死亡【病理解剖および医療事故調査・支援センターの評価】本件患者の死後実施された病理解剖では、両側大腿動脈周囲から後腹膜に連続する広範な出血が認められ、明確な血管損傷部位は特定できなかった。医療事故調査・支援センターは、病理検査の結果を踏まえ、微小血管からの持続的出血が抗血栓療法の影響で止血されず、出血性ショックに至ったと評価した。実際の裁判結果本件では、原告らは、本件患者が、本件施術中から穿刺部を中心とした微小出血が持続したことにより平成30年11月13日14時40分頃に出血性ショックを生じ、それ以降死亡に至るまで出血性ショックの状態が遷延していたことを前提とし、被告病院の医師らについて、〔1〕14時40分の時点、〔2〕16時49分の時点、〔3〕18時12分の時点、および〔4〕20時の時点において、本件患者の心原性ショックのみならず、出血性ショックを疑い、CT検査または腹部エコーによる検査で出血の有無を確認し、出血性ショックを診断の上、ヘパリンを中止し、輸液・輸血や出血点の治療を行う義務があったにもかかわらず、これを怠った旨を主張した。裁判所は、以下の点を指摘し、「本件患者が、午後2時40分頃に出血性ショックを生じ、以後、出血性ショックの状態が続いていたと認めることはできない」として原告らの主張はその前提を欠くと判断した。出血性ショックにおいて血圧低下が生じるのは、重度の循環血液量減少(血液量の40%超え)が起きている場合であるから、仮に、14時40分以降の低血圧が、14時40分頃に生じた出血性ショックによるものであるとすれば、本件施術の実施(大腿動脈穿刺を開始した12時25分頃)から14時40分頃までの約2時間前後の間に血液量の40%を超える出血があったことになる。しかし、18時15分頃に行われた腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影検査の結果、活動性のある出血や出血点は確認されておらず、病理解剖の結果からも、出血部位は同定できず、本件施術による穿刺部や周囲小血管からの微小出血が、施術に伴う抗血栓療法の影響で凝固せずに長時間持続したため、大量出血に至ったと考えられるとされていること本件患者のHb値は、16時49分頃には12.4g/dLとまだ基準値内にとどまっており、20時に至っても10.9と被告病院において設定されている下限値(11.6)をわずかに下回る程度で、急性出血に対する外科的適応として輸血を必要とする値にも達していなかったこと本件患者に約2時間前後の間に重度の循環血液量減少が生じるほどの急激かつ大量の出血が生じたのであれば、出血からHb値の低下までに時間差があるとしてもHb値は急激に低下するはずであるが、本件PCI以降、16時49分頃に12.4g/dL、20時頃に10.9と緩やかに低下しており、14時40分までに出血性ショックを惹起させる大量の出血があったことと整合しないことまた、裁判所は、原告らの主張する各時点における検査義務について、それぞれ以下の点を指摘し、いずれも「CT検査または腹部エコー検査を行うべき義務を負っていたとは認められない」と判断した。1)14時40分の時点について14時40分頃、ショック症状と矛盾しない低血圧および頻脈が出現していたものの、ほかに出血性ショックや後腹膜出血を疑わせる症状はみられていないこと本件PCI中の12時55分頃に急性冠閉塞を発症し、心原性ショックをきたしたことやHCU入室後の12誘導ECGの結果からすると、14時40分頃に生じたショック症状も心原性ショックである可能性は十分にあり得たこと上記のことから、被告医師らが、急性ステント血栓症の可能性があると考えたことが不合理とはいえないこと2)16時49分の時点について16時49分の時点においてもHb値は12.4g/dLと基準値の範囲内であったこと14時40分頃と同様に、低血圧と頻脈以外に出血性ショックや後腹膜出血を疑わせる症状はみられていないこと16時45分頃に簡易心臓エコー検査を行った結果、心タンポナーデの可能性は低いと判断しているものの、未だ急性ステント血栓症の可能性は否定されていないこと3)18時12分の時点について被告医師らは、18時12分の左冠動脈造影検査に引き続いて、18時15分頃までに右冠動脈、腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影を行っており、同検査で活動性のある出血や出血点は確認されていないこと本件PCIから14時40分頃までの約2時間前後で後腹膜出血により低血圧に陥るほどの重度の出血性ショックに陥ったのであれば、活動性のある出血や出血点が造影検査で確認できないほど微小であるとは考え難いことからすると、医師らが、この造影検査の結果を踏まえて、本件患者が後腹膜出血による出血性ショックを生じているのではないと判断したことは不合理とは言い難いこと4)20時の時点について本件患者のHb値は、20時頃には、基準値をやや下回る10.9となっているが、これ自体は輸血を要するような値ではないこと本件PCI以降、Hb値は16時49分頃に12.4g/dL、20時頃に10.9と緩やかに低下しているものの、低血圧が生じるとされる重度の循環血液量減少が生じていると疑わせるような著しい低下はみられていないこと。むしろ、この時点では、3回の観血的処置による出血や輸液の投与により血液が希釈されたことにより生じたHb値の低下である可能性も否定できないこと18時15分頃の右冠動脈、腹部大動脈、腸骨動脈および大腿動脈近位部の造影検査において、後腹膜出血が生じていることを示す活動性のある出血や出血点は確認されなかったこと同時点までに穿刺部やその周辺に血腫を疑わせる腫脹等の異常がみられず、本件患者が後腹膜出血の症状である頑固な背部痛および腰部痛を訴えていなかったこと上記からすると、医師らが、Hb値の低下が出血性ショックによるものであると判断しなかったことが不合理であるとまでは言い難いこと注意ポイント解説本稿も、第17回と同様にショックが問題となったケースであるが、本判決の特徴は、結果として死因が出血性ショックであったにもかかわらず、診療過程での判断が過失とはされなかった点にある。本件で裁判所が過失と判断しなかったのは、以下の点による。診療当時のHb値が出血性ショックを惹起させる大量出血と整合しない推移であったことPCI後(PCI中の急性冠閉塞を含む)であったこと診療経過に鑑みて心原性のショックであることが十分に疑われる状況であったこと後腹膜出血を疑わせる所見がなかったことこのため、Hb値が出血性ショックを惹起させる大量出血と整合するものであったり、後腹膜出血を疑わせる所見があったりする場合には、異なる結論となり得たことに留意する必要がある。同様に、そもそも診療中に原因を探る検査がほとんど行われていない場合、原因探求のための検査を怠り漫然と対応したとして過失(注意義務違反)が認められる可能性があることにも留意する必要がある。なお、本件では、被告病院の院内調査委員会が詳細な検討を経て作成した報告書において、医師の過失を認める記述がなされており、原告らは、この報告書に基づく被告医師らの過失を主張していた。これについて裁判所は、以下のとおり判示し、この報告書に基づいて過失を認めることはできないとした。「本件報告書は、調査の目的が“医療安全の確保であり、個々の責任を追及するためのものではない”とされているとおり、患者の死亡の原因究明や将来における安全性の高い医療の提供確保の観点から作成されたものであって、被告病院の医師に法的に過失があるか否かという観点から作成されたものではない。本件報告書の内容からしても、後方視的にみて、本件患者の後腹膜出血を疑うべき積極的所見がなくても、Hb値が低下しているのであるからCT検査を行う必要があったとするにとどまるものであり、被告病院の医師らによる診療行為について、その当時の具体的な状況および医療水準に照らし、前方視的にみて注意義務違反があったと評価するものではない。そうである以上、本件報告書の記載をもって被告病院の医師に過失があると認めることはできないことは明らかである」過失については、後方視的に評価するものではなく、診療時点に認識できた事実に基づいて前方視的に評価すべきであるという原則を確認するものであるが、この点が確認されたことは、然るべき事故原因の調査報告がなされ安全性の高い医療提供に寄与する(責任逃れのための調査報告書が作成されることを回避できる)ものであり、意義がある。医療者の視点PCI後の循環動態不安定において、「心原性ショック」と「出血性ショック」の鑑別は実臨床でも常に悩ましい問題です。本件のように術中に急性冠閉塞の既往がある場合、術者はまずステント血栓症などの心原性要因を除外することに全力を注ぎます。抗血栓療法を中断すれば致死的な転帰に直結するため、出血源が特定できない段階での判断は極めて困難です。今回の判決で注目すべきは、裁判所が「急性出血におけるHb値低下のタイムラグ」という生理学的現象を正しく認定した点です。実臨床において、急激な出血であっても直後の採血データには反映されないことは常識ですが、これが司法の場でも認められた意義は大きいです。また、IABP駆動中の不安定な患者をCT室へ搬送するリスクとベネフィットの天秤についても、現場の判断が尊重されました。さらに、院内事故調査委員会が再発防止の観点から「過失」を認める記載をしていても、裁判所はこれを後方視的な評価として法的責任とは切り離しました。これは、医療安全文化の醸成と法的紛争を混同すべきではないという重要なメッセージであり、われわれが萎縮せずに検証を行うための支えとなる判断です。本判決は、結果のみにとらわれず、その時々の臨床判断のプロセスが正当に評価されることを示しており、日々の診療において、なぜその判断に至ったか、という思考過程を記録に残すことの重要性を再認識させてくれます。Take home messagePCI後の循環不全では、心原性ショックと出血性ショックの鑑別が常に問題となる急性出血ではHb低下が遅れることがあるが、その時点の数値と所見に基づく判断の合理性が評価される結果的に重篤な合併症が判明しても、当時の臨床判断が医学的に説明可能であれば、注意義務違反とはされない場合があるキーワードPCI、後腹膜出血、出血性ショック、心原性ショック、Hb値、IABP

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DES留置後1年以上の心房細動、NOAC単剤vs.NOAC+クロピドグレル併用/NEJM

 1年以上前に薬剤溶出ステント(DES)の留置を受けた心房細動患者において、非ビタミンK拮抗経口抗凝固薬(NOAC)単剤療法はNOAC+クロピドグレルの併用療法と比較し、全臨床的有害事象(NACE)に関して非劣性であることが認められた。韓国・Yonsei University College of MedicineのSeung-Jun Lee氏らが、同国32施設で実施した研究者主導の無作為化非盲検非劣性試験「Appropriate Duration of Antiplatelet and Thrombotic Strategy after 12 Months in Patients with Atrial Fibrillation Treated with Drug-Eluting Stents trial:ADAPT AF-DES試験」の結果を報告した。ガイドラインの推奨にもかかわらず、DES留置後の心房細動患者におけるNOAC単剤療法の使用に関するエビデンスは依然として限られていた。NEJM誌オンライン版2025年11月8日号掲載の報告。第2または第3世代DES留置後1年以上の高リスク心房細動患者が対象 研究グループは、心房細動と診断され、登録の1年以上前に第2世代または第3世代のDESを留置するPCIを受け、CHA2DS2-VAScスコアが2以上の19~85歳の患者を、NOAC単剤療法群またはNOAC+クロピドグレル併用療法群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 NOACは担当医師の選択としたが、試験ではアピキサバンまたはリバーロキサバンのみを使用した。 主要エンドポイントは、無作為化後12ヵ月時点における全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、全身性塞栓症または大出血もしくは臨床的に重要な非大出血の複合であるNACEで、非劣性マージンは主要エンドポイント発現率の群間差の片側97.6%信頼区間(CI)の上限が3.0%とし、ITT解析を行った。なお、非劣性が認められた場合、主要エンドポイントにおけるNOAC単剤療法の優越性を第1種過誤率4.8%(両側)として検定することが事前に規定された。12ヵ月時のNACE発現率、単剤群9.6%vs.併用群17.2% 2020年4月~2024年5月に計1,283例がスクリーニングされ、このうち960例が無作為化された(単剤療法群482例、併用療法群478例)。平均年齢は71.1歳、女性が21.4%であった。 主要エンドポイントのイベントは単剤療法群で46例(Kaplan-Meier推定値9.6%)、併用療法群で82例(17.2%)に発現し、絶対群間差は-7.6%(95.2%CI:-11.9~-3.3、非劣性のp<0.001)、ハザード比(HR)は0.54(95.2%CI:-0.37~0.77、優越性のp<0.001)であった。 大出血もしくは臨床的に重要な非大出血は、単剤療法群で25例(5.2%)、併用療法群で63例(13.2%)に発現した(HR:0.38、95%CI:0.24~0.60)。大出血の発現率はそれぞれ2.3%および6.1%(HR:0.37、95%CI:0.18~0.74)、臨床的に重要な非大出血の発現率は2.9%および7.1%(0.40、0.21~0.74)であった。

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抗胸腺細胞グロブリンは発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能低下を抑制する(解説:住谷哲氏)

 膵島関連自己抗体が陽性の1型糖尿病は正常耐糖能であるステージ1、耐糖能異常はあるが糖尿病を発症していないステージ2、そして糖尿病を発症してインスリン投与が必要となるステージ3に進行する1)。抗CD3抗体であるteplizumabはステージ2からステージ3への進行を抑制することから、8歳以上のステージ2の1型糖尿病患者への投与が2022年FDAで承認された。現在わが国でも承認のための臨床試験が進行中である。さらにステージ3に相当する発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能の低下もteplizumabの投与により抑制されることが報告された2)。 抗胸腺細胞グロブリンantithymocyte globulin(ATG)は、わが国でも、抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン製剤が商品名アトガム、抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン製剤が商品名サイモグロブリンとして薬価収載されて使用可能である。アトガムの適応は中等症以上の再生不良貧血のみであるが、サイモグロブリンはそれに加えて種々の臓器移植後のGVHDに対して適応を有している。ATGは通常の投与量では免疫抑制作用 immunosuppressionを発揮するが、低用量では免疫調節作用immunomodulationを発揮し、発症直後の1型糖尿病患者のβ細胞機能低下を抑制する可能性が示唆されている3)。 そこでATGの適切な投与量を決定するために第II相用量設定試験である本試験が実施された。本試験ではadaptive designが用いられたが、adaptive designは中間解析の結果に基づき、各群への被験者の割り付け割合の変更、特定の群の中止、目標症例数の見直しなど、進行中の臨床試験のデザインに変更を加える多段階試験の総称である4)。試験の結果、これまでの臨床試験に主として用いられてきた2.5mg/kgと比較して、低用量である0.5mg/kgは同様に有効であり有害事象の発生がより少ないことが明らかにされた。 今回の第II相の結果に基づいて第III相試験が遠からず実施されることになると思われる。ATGは異種抗体であり、頻回投与による効果の減弱や有害事象としての種々のアレルギー反応は避けられない。コストとベネフィット、およびリスクとベネフィットとのバランスの追求が今後の課題となるだろう。

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PCI後のDAPT、出血高リスク患者の最適期間は?/Lancet

 出血リスクが高い(HBR)患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の投与期間について、1ヵ月間の投与は3ヵ月間の投与に対して全臨床的有害事象(NACE)に関する非劣性は示されなかった。一方、非HBR患者では、3ヵ月間の投与は12ヵ月間の投与に対してNACEおよび主要心血管/脳血管イベント(MACCE)に関して非劣性が示され、出血に関して優れることが示された。韓国・Seoul National University HospitalのJeehoon Kang氏らが、同国の50ヵ所の心臓病センターで行った非盲検無作為化試験「HOST-BR試験」の結果を報告した。出血リスクに応じたPCI後のDAPT投与の最適期間は十分に確立されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月23日号掲載の報告。PCIによるDES留置成功後の患者をHBRと非HBRに層別化し最適期間を評価 HOST-BR試験は、出血リスクに応じたPCI冠動脈ステント留置後のDAPTの最適期間を評価した研究者主導の非盲検無作為化試験。対象は、PCIによる薬剤性溶出ステント(DES)留置に成功した19歳以上の患者で、登録後、Academic Research Consortium for High Bleeding Risk(ARC-HBR)基準に基づきHBRまたは非HBRに層別化された。 研究グループは、HBR群の患者をDAPT投与1ヵ月群または同3ヵ月群に1対1の割合で無作為に割り付け、非HBR群の患者をDAPT投与3ヵ月群または同12ヵ月群に1対1の割合で無作為に割り付けた。 主要エンドポイントは、NACE(全死因死亡、非致死的心筋梗塞、definite/probableステント血栓症、脳卒中、または大出血)、MACCE(心臓死、非致死的心筋梗塞、definite/probableステント血栓症、または虚血性脳卒中)、および無作為化後1年間のあらゆる非外科的出血の3つであった。主要エンドポイントはITT集団において階層的に評価が行われた。HBR群:1ヵ月DAPT群の3ヵ月DAPT群に対する非劣性は認められず 2020年7月24日~2023年9月25日に、4,897例の患者が登録された(HBR群1,598例、非HBR群3,299例)。HBR群(1ヵ月DAPT群798例、3ヵ月DAPT群800例)の年齢中央値は76歳(四分位範囲:68~81)、女性が33.5%であり、非HBR群(3ヵ月DAPT群1,649例、12ヵ月DAPT群1,650例)の年齢中央値は64歳(57~70)、女性が20.9%であった。 HBR群において、1ヵ月DAPT群の3ヵ月DAPT群に対するNACEに関する非劣性は示されなかった(144/798例[18.4%]vs.110/800例[14.0%]、ハザード比[HR]:1.337、95%信頼区間[CI]:1.043~1.713、非劣性のp=0.82)。MACCEは、1ヵ月DAPT群で74例(9.8%)、3ヵ月DAPT群で44例(5.8%)に発現した。出血は、1ヵ月DAPT群で105例(13.8%)、3ヵ月DAPT群で122例(15.8%)に発現した。非HBR群:3ヵ月DAPT群の12ヵ月DAPT群に対する非劣性が認められる 非HBR群では、3ヵ月DAPT群の12ヵ月DAPT群に対するNACE(47/1,649例[2.9%]vs.72/1,650例[4.4%]、HR:0.657、95%CI:0.455~0.949、非劣性のp<0.0001)およびMACCE(36/1,649例[2.2%]vs.37/1,650例[2.3%]、0.984、0.622~1.558、非劣性のp=0.0082)に関する非劣性がいずれも認められ、3ヵ月DAPT群が12ヵ月DAPT群よりも出血に関して優れることが認められた(120/1,649例[7.4%]vs.190/1,650例[11.7%]、0.631、0.502~0.793、p<0.0001)。

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DLBCL 1次治療の動向と課題、今後の展望/日本血液学会

 第87回日本血液学会学術集会で企画されたシンポジウム「B細胞リンパ腫に対する新規治療」において、九州大学の加藤 光次氏が、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)に対する1次治療の動向と課題、今後の展望について講演した。標準治療はPola-R-CHOPへ DLBCLは悪性度が高いが治癒も望める疾患であり、1次治療の成否が予後を大きく左右する。1次治療は20年以上にわたりR-CHOP療法が標準治療であったが、「約30%の患者が再発または治療抵抗性となる点が大きな課題であった」と加藤氏は指摘した。 そのような中、ポラツズマブ ベドチンとR-CHOPを併用するPola-R-CHOPをR-CHOPと比較した国際共同第III相POLARIX試験において、主要評価項目である無増悪生存期間(PFS)を有意に改善し、その効果は5年時点でも維持されていることを紹介した。この結果は国内の大規模リアルワールドデータ研究によっても裏付けられつつあり、Pola-R-CHOPは新たな標準治療として確立しつつあると述べた。DLBCL 1次治療における3つの課題 しかしながら、このような進歩にもかかわらず、治癒可能なDLBCLの1次治療には3つの重要な臨床的課題に直面していると加藤氏は述べ、1)初回治療抵抗性が残ること、2)初回治療後も20~30%が再発すること、3)患者の半数以上が70~80歳以上の高齢であることを挙げた。 なかでも高齢者治療は喫緊の課題である。リアルワールドデータでは、80歳以上の患者に対してもPola-R-CHOPは良好な奏効率(ORR:87.3%)を示しているが、実際には副作用を懸念して化学療法(とくにシクロホスファミドやドキソルビシン)が半量となっている場合が多く、最適な治療強度をいかに維持するかが鍵となると指摘した。 この課題に対し、日本では高齢者機能評価を導入し、高齢患者の治療前状態(Fit/Frail)を評価するG-POWER試験や、減量レジメン(R-mini-CHOP)とポラツズマブ ベドチンの併用を検討するPOLAR mini-CHP試験などが進行中であることを紹介した。分子サブタイプに基づく個別化医療へ 治療抵抗性や再発の根本的な原因として、加藤氏は、DLBCLが単一の疾患ではなく、生物学的に多様な不均一性を持つことを挙げた。 近年、DLBCLはABC型、GCB型といった従来の分類に加え、より詳細な分子サブタイプに分類されるようになり、特定のサブタイプに合わせた分子標的治療の開発が進行している。POLARIX試験のサブ解析においても、Pola-R-CHOPによるPFS改善は、DLBclassによる特定の分子サブタイプ(C5)で顕著であったことが報告されている。加藤氏は、これらの分子サブタイプ分類は、リスク層別化を強化し、今後プレシジョン・メディシンのアプローチにつながると期待を示した。今後の展望~ctDNAと新規薬剤 加藤氏は今後の展望として、治療効果をより早期かつ正確に判断するため、循環腫瘍DNA(ctDNA)や微小残存病変(MRD)評価の重要性を語った。POLARIX試験において、治療1コース後にctDNA量が多い患者は予後が悪かったことが報告されている。治療の早期にctDNAをモニタリングし、その後の再発リスクを予測することで、治療のescalationやde-escalationを判断するresponse-adapted strategyへの期待を語った。 加藤氏はその一例として第II相ZUMA-12試験を挙げ、1次治療早期に効果不十分な高リスク患者に対して、早期にCAR-T細胞療法に切り替えた場合、完全奏効率が86%と有望な成績が得られたことを紹介した。 現在、1次治療として二重特異性抗体、CAR-T療法、BTK阻害薬などの多くの新しい治療法が開発されている。加藤氏は「2028年には何を選ぶべきか決断を迫られるだろう」と予測し、さらに「将来の治療選択は、分子サブタイプ、患者特異的因子、response-oriented approachによって導かれるだろう」と述べ、講演を終えた。

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国内WATCHMANの左心耳閉鎖術の現状(J-LAAO)/日本心臓病学会

 2019年9月より経皮的左心耳閉鎖デバイスWATCHMANが保険適用となり、それと同時に本邦の患者を対象としたJ-LAAOレジストリがスタートした。それから6年が経ち、これまでに7,690例が登録されてきた。その間にデバイスも進化を遂げ、今では3代目となるWATCHMAN FLX Proが主流となり、初期と比べより安全に左心耳閉鎖が実施できるようになってきている。第73回日本心臓病学会学術集会(9月19~21日開催)のシンポジウム「循環器内科が考える塞栓症予防-左心耳閉鎖、PFO閉鎖、抗凝固療法-」では、草野 研吾氏(国立循環器病研究センター 心臓血管内科部長)が「我が国の左心耳閉鎖術の現状-J-LAAOレジストリからの報告-」と題し、2025年3月までに登録された日本人におけるWATCHMAN最新モデルを含めた安全性・有効性を報告した。 J-LAAOレジストリは、全7学会(日本循環器学会、日本心エコー図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心臓血管外科学会、日本心臓病学会、日本脳卒中学会、日本不整脈心電学会)共同の非弁膜症性心房細動(NVAF)患者を対象とした経皮的左心耳閉鎖システムによる塞栓予防の有効性・安全性を調査した多施設レジストリ研究である。今回、脳梗塞スコア(CHADS2またはCHA2DS2-VASc)に基づく脳卒中および全身性塞栓症のリスクが高い患者、抗凝固療法が推奨される患者で、とくに出血リスクスコア(HAS-BLED)が3点以上の出血リスクが高い患者を選択基準とし、本レジストリ登録者のうち7,036例の急性期の手技情報、有害事象、術後の抗凝固療法などが解析された。留置後の薬物療法としては、海外試験のレジメンにならい、留置~45日はワルファリン+アスピリン、45日~6ヵ月は抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)、その後はアスピリン単剤療法を推奨している。 主な結果は以下のとおり。 ※いずれの結果も各デバイスでフォローアップ期間が異なる点には注意・平均年齢は78.0歳(FLX Pro群:79.0歳)であった。・各スコアの中央値は、CHADS2が3点、CHA2DS2-VAScが5点、HAS-BLEDが3点であった。・アブレーション治療歴は約1/3にみられ、心房細動の種類としては発作性が2,780例(39.5%)、持続性が4,252例(60.4%)であった。・モヤモヤエコー(smoke like echo)は1,971例(28.0%)にみられた。・最終留置デバイスモデルは約11.3%で40mm、全体の2/3で31mmを超えるデバイスが選択されていた。・手術情報について、手術成功例は97.9%、手術時間は平均52.0分(G2.5:60.0分、FLX:51.0分、FLX Pro:47.0分)で、透視時間も短縮傾向、造影剤投与量も減少傾向であった。・心嚢液リスクはデバイスの形状変化に伴い減少し、G2.5は23例(3.1%)、FLXは40例(0.9%)、FLX Proは9例(0.6%)で認められた。・術45日後の左心耳有効閉鎖率(complete sealもしくは残留血流の最大幅が5mm以下の症例)はG2.5で99.7%、FLXで98.3%、FLX Proで98.3%に認められた。・術45日後の残留血液はG2.5で27%、FLXで13%、FLX Proで9.4%に認められた。・有害事象について、術直後のデバイスごとの心タンポナーデと心嚢液貯留の発生率(G2.5、FLX、FLX Proの順)は、心タンポナーデで0.7%vs.0.2vs.0.1%、心嚢液貯留で1.7%vs.1.0%vs.1.1%であった。・このほかの有害事象は、以下のような結果であった。◯デバイス血栓3.2%(G2.5:36例[4.8%]、FLX:170例[3.7%]、FLX Pro:19例[1.3%])◯うっ血性心不全4.5%(73例[9.7%]、226例[4.9%]、21例[1.4%])◯脳卒中2.5%(36例[4.8%]、131例[2.8%]、11例[0.7%])・死亡者数は全体で415例(5.8%)、G2.5では92例(12.2%)、FLXでは298例(6.5%)、FLX Proでは25例(1.7%)であった。・デバイス移動は全11例(0.16%)、機器の外科的摘出は全9例(0.13%)、経皮的デバイス抜去は全3例(0.04%)であった。 本結果について草野氏は「患者背景をみると、日本人は米国人と比べて発作性心房細動症例の割合が少なく、左心耳入口部が比較的大きい。その点が選択デバイスの大きさに反映されていた。残留血液量も減少傾向にあり、心タンポナーデの発生率の少なさからも安全に手技が行われていたことがうかがえる」とコメントした。外科的摘出の原因として、デバイス血栓・脱落、左房血栓などがみられた点については、「1年以上経過後に発生していることに留意が必要」とし、加えて「FLXでは手術当日にデバイス血栓を生じている症例が複数例あった。一方で、留置後2年後にも生じているケースも散見される。デバイス血栓を発症した患者はシリアスな病態には至っていないものの、これらの結果を踏まえて継続的なフォローアップを行ってほしい」と強調した。なお、いずれの結果を見るうえで、FLX Proは発売からフォローアップまでの期間が短いことには注意が必要である。国内ガイドラインでの推奨は… 日本での左心耳閉鎖術に関する推奨は、『2021年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈非薬物治療』1)において、「NVAFに対する血栓塞栓症の予防が必要とされ、かつ長期的な抗凝固療法の代替が検討される症例に左心耳閉鎖術を考慮してもよい(推奨クラスIIB、エビデンスレベルB)」となっていた。しかし、2024年にフォーカスアップデート版として公開された『2024年JCS/JHRSガイドラインフォーカスアップデート版不整脈治療』では、症例数の乏しさから左心耳閉鎖術に関する項目に変更は示されず“長期的な抗凝固療法が必要ではあるが、出血リスクが高く抗凝固療法が適切ではない患者においては、左心耳閉鎖デバイスを用いた経皮的左心耳閉鎖術や胸腔鏡下左心耳閉鎖術を症例に応じて考慮してもよい”(p.59)にとどまっている。これについて草野氏は「J-LAAOを経年的に見ても、植込み対象での出血2次予防の割合が減少し、塞栓予防目的の植込みが増加している。今後は海外ガイドラインに準じて、脳梗塞高リスク例への広がりが期待される」と述べた。 最後に国内の状況について、同氏は「米国と日本では左心耳閉鎖術の実施件数に10倍もの差があり、欧米に比べると国内での実施件数は少ない。またレジストリでは、少数ながら脱落が外科手術に至った例があり、安全を心がけた植込み術も重要である」と締めくくった。

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急性心筋梗塞に対するPCI後1ヵ月でアスピリンを中止してDAPTからSAPTへ変更することは問題なし(解説:上田恭敬氏)

 急性心筋梗塞に対して7日以内にPCIによる完全血行再建に成功し、1ヵ月の時点までイベントがなかった1,942症例を、アスピリン中止によってDAPTからSAPTへ変更する群(P2Y12阻害薬単剤群961症例)とDAPTを継続する群(DAPT群981症例)に無作為化し、12ヵ月までのイベントを比較した欧州40施設での多施設無作為化試験(TARGET-FIRST試験)の結果が報告された。 主要評価項目である全死亡・心筋梗塞・ステント血栓症・脳卒中・BARK type3/5出血の複合エンドポイントは、P2Y12阻害薬単剤群で2.1%、DAPT群で2.2%と差がなく、非劣性が証明された(p=0.02)。さらに、BARK type2/3/5出血はDAPT群で5.6%であったのに対して、P2Y12阻害薬単剤群で2.6%と有意に少なかった(p=0.002)。ただし、PCIは全例でDESを留置しており、造影上の有意狭窄をすべて治療することを完全血行再建としている。 以上により、急性心筋梗塞に対してPCIによる完全血行再建が施行された症例では、1ヵ月の時点でアスピリンを中止してDAPTからSAPTへ変更することによって、12ヵ月までの上記主要評価項目の発生頻度はDAPTを継続する場合と同等であり、出血性イベントは減少することが示された。 STOPDAPT-2 ACS試験では示されなかった1ヵ月DAPTの12ヵ月DAPTに対する非劣性が本試験では示された理由の1つとして、筆者らは早期の解剖学的完全血行再建を挙げている。PCI後のイベントは、主にステント留置部位からではなく、非治療部位から発生することから、解剖学的完全血行再建によってそのリスクを低減できたのではないかと考えている。よって、リスクの高い症例の場合にも1ヵ月DAPTが12ヵ月DAPTと同等とは限らず、症例ごとにDAPTの期間を考える必要があるだろうと指摘している。

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低リスク急性心筋梗塞、PCI後1ヵ月でアスピリンは中止可能か/NEJM

 低リスクの急性心筋梗塞で、血行再建術を受けた後、合併症の発現なく1ヵ月間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した患者では、1年後(無作為化から11ヵ月後)の心血管・脳血管イベントの発生に関して、P2Y12阻害薬単剤療法はDAPTに対し非劣性であり、出血イベントの発生率は低減したことが示された。イタリア・University of Padua Medical SchoolのGiuseppe Tarantini氏らTARGET-FIRST Investigatorsが、多施設共同非盲検無作為化対照比較試験「TARGET-FIRST試験」の結果を報告した。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2025年8月31日号で発表された。欧州40施設で1,942例を登録 TARGET-FIRST試験は、最新の薬剤溶出性ステント(DES)を用いた経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受け、虚血イベントや出血イベントのリスクが低い急性心筋梗塞患者の抗血小板療法において、DAPTを1ヵ月間行った時点でのアスピリン早期中止の、DAPT継続に対する非劣性を検証する目的で、2021年3月~2024年3月に、欧州の40施設で参加者を登録して行われた(フランス・MicroPortの助成を受けた)。 対象は、年齢18歳以上、急性心筋梗塞発症から7日以内に生体分解性ポリマーを用いたrapamycin(和名:シロリムス)溶出性ステント(MicroPort製)による血行再建術が成功し、その後1ヵ月間、虚血イベントや大出血イベントの発現なしにDAPT(P2Y12阻害薬[プラスグレル、チカグレロル、クロピドグレルから選択]+アスピリン)を完了した患者であった。 被験者を、アスピリンの投与を中止してP2Y12阻害薬単剤に移行する群、またはDAPTを継続する群に、1対1の割合で無作為に割り付け、11ヵ月間投与した。 1,942例を登録し、P2Y12阻害薬単剤群に961例、DAPT継続群に981例が無作為化された。PCI施行から無作為化までの期間中央値は37日であった。全体の平均(±SD)年齢は61.0(±10.6)歳、78.4%が男性で、14.5%が糖尿病、38.7%が高血圧、27.8%が高コレステロール血症を有していた。 無作為化の時点で、P2Y12阻害薬は74.0%でチカグレロル、20.9%でプラスグレル、5.1%でクロピドグレルが処方されていた。また、97.0%がスタチン、79.1%がβ遮断薬、76.7%がACE阻害薬またはARBの投与を受けていた。主要複合アウトカムは非劣性 主要アウトカムは、無作為化から11ヵ月の時点での全死因死亡、心筋梗塞、ステント血栓症、脳卒中、大出血(BARC出血基準タイプ3または5)の複合とした。非劣性マージンは1.25%ポイントと定義した。 11ヵ月後の主要アウトカムのイベントは、P2Y12阻害薬単剤群で20例(2.1%)、DAPT継続群で21例(2.2%)に発現し(群間差:-0.09%ポイント、95%信頼区間[CI]:-1.39~1.20、非劣性のp=0.02)、P2Y12阻害薬単剤群のDAPT継続群に対する非劣性が示された。 主要アウトカムの個別の構成要素のイベント発生状況は次のとおりだった。(1)全死因死亡(P2Y12阻害薬単剤群0.4%vs.DAPT継続群0.2%、ハザード比[HR]:2.04[95%CI:0.37~11.14])、(2)心筋梗塞(0.7%vs.1.1%、0.72[0.27~1.88])、(3)ステント血栓症(definiteまたはprobable)(0.1%vs.0%)、(4)脳卒中(0.3%vs.0.2%、1.53[0.26~9.18])、(5)大出血(0.7%vs.0.7%、1.02[0.36~2.91])。BARCタイプ2、3、5の出血イベントが有意に改善 主な副次アウトカムであるBARC出血基準タイプ2、3、5の出血イベントは、DAPT継続群で54例(5.6%)に発生したのに対し、P2Y12阻害薬単剤群では25例(2.6%)と有意に少なく(HR:0.46、95%CI:0.29~0.75、優越性のp=0.002)、P2Y12阻害薬単剤群の優越性を確認した。 重篤な有害事象の頻度は両群で同程度であり、P2Y12阻害薬単剤群で108例(11.2%)に144件、DAPT継続群で122例(12.4%)に157件が報告された。 著者は、「今回得られた知見は、虚血イベントや出血イベントのリスクが低い患者を慎重に選択した集団における、早期の解剖学的に完成度の高い血行再建術という特定の条件下で解釈すべきであり、広範で異質性の高い患者集団に直接的に一般化できるものではない」としている。

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冠動脈疾患2次予防、クロピドグレルvs.アスピリン/Lancet

 冠動脈疾患(CAD)の2次予防において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、大出血のリスク増加を伴うことなく、主要有害心・脳血管イベント(MACCE)の発生低下をもたらすことが、スイス・University of Italian SwitzerlandのMarco Valgimigli氏らによるシステマティックレビューとメタ解析で示された。CAD既往患者には、無期限のアスピリン単剤療法が推奨されているが、本検討の結果を受けて著者は、「CAD患者における2次予防は、アスピリンよりクロピドグレルを優先して使用することが支持される」とまとめている。Lancet誌オンライン版2025年8月31日号掲載の報告。CAD2次予防としてのクロピドグレルvs.アスピリン単剤療法を比較した無作為化試験をメタ解析 研究グループは、PubMed、Scopus、Web of Science、Embaseを用いて、データベース公開から2025年4月12日までに発表された、CADと確認された患者(かつ抗血小板薬2剤併用療法を中止、または開始していない患者)を対象に、クロピドグレル単剤療法とアスピリン単剤療法を比較した無作為化試験を系統的に検索し、無作為化後に導入期として抗血小板薬2剤併用療法を行った試験を組み入れ、個別の患者データのメタ解析を行った。 主要解析では、試験間のベースラインハザード差を調整するためのランダム切片と、治療効果の差を調整するためのランダムスロープを含む、セミパラメトリック共有対数正規フレイルティモデル(1段階解析)を用いた。 有効性の主要アウトカムは、心血管死、心筋梗塞または脳卒中の複合(MACCE)。安全性の主要アウトカムは大出血(BARC出血基準タイプ3または5、あるいは試験固有の定義)であった。MACCEリスク、クロピドグレル単剤療法がアスピリン単剤療法より有意に低い 検索で特定された1万1,754報のスクリーニングに基づき54件の研究が精査され、このうち適格と認められた7件の無作為化試験(ASCET、CADET、CAPRIE、HOST-EXAM、STOPDAPT-2、STOPDAPT-3、SMART-CHOICE 3)が解析に組み込まれた。 解析対象は計2万8,982例(クロピドグレル単剤療法群1万4,507例、アスピリン単剤療法群1万4,475例)で、追跡期間中央値は2.3年(四分位範囲:1.1~4.0)であった。 5.5年時点で、MACCEの発現頻度はクロピドグレル群(929件[2.61/100患者年])がアスピリン群(1,062件[2.99])より低かった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.77~0.96、p=0.0082)。 死亡および大出血の発現頻度は、クロピドグレル群(256件[0.71/100患者年])とアスピリン群(279件[0.77])で差はなかった(HR:0.94、95%CI:0.74~1.21、p=0.64)。

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冠動脈疾患への抗血栓療法、アウトカムに性差はあるか/BMJ

 冠動脈疾患の女性患者は、心血管リスクが男性患者に比べて高いにもかかわらず、いわゆる抗血栓療法への反応の違いを理由に、薬物療法やインターベンションを受ける機会が男性患者より少ないという。ジェンダーに基づくアウトカムに関する無作為化試験のデータは十分でないため、心血管治療における男女間の格差が今後も広がる可能性が指摘されている。イタリア・University of Naples Federico IIのRaffaele Piccolo氏らは、冠動脈疾患に対する抗血栓療法において、全死因死亡や心筋梗塞の発生、大出血のリスクに性差はないことを示した。研究の成果は、BMJ誌2025年7月29日号で報告された。有効性と安全性の性差の存在をメタ解析で評価 研究グループは、冠動脈疾患を有する患者における抗血栓療法(抗血小板薬、抗凝固薬)の有効性と安全性に性差が存在するかを評価する目的で系統的レビューとメタ解析を行った(イタリア教育省の助成を受けた)。 2025年4月の時点で、医学関連データベースに登録された文献を検索した。冠動脈疾患患者において抗血栓療法の比較を行い、性別に基づくアウトカム(虚血イベント、大出血イベントなど)の記述がある無作為化対照比較試験を対象とした。 主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、大出血(BARC基準のタイプ3または5)とした。抗血栓療法のレジメンを、高強度と低強度に分類(未分画ヘパリン±GP IIb/IIIa阻害薬vs.bivalirudin、抗凝固薬vs.プラセボ、静注P2Y12受容体阻害薬vs.クロピドグレル、長期DAPT vs.短期DAPTなど)して解析した。死亡、心筋梗塞に性別関連の異質性はない 1999~2025年に33件の試験に登録された27万4,433例を解析の対象とした。13万1,014例(52.4%)が高強度、11万9,189例(47.6%)が低強度の抗血栓療法に割り付けられた。7万2,601例が女性で、33試験の女性の比率中央値は25%(四分位範囲[IQR]:22~30.7)であった。全体の年齢中央値は64.5歳(IQR:62~67)だった。 22試験の参加者18万7,580例のうち6,018例が死亡した(高強度群3,064例、低強度群2,954例)。男性患者では、低強度群に比べ高強度群で全死因死亡のリスクがわずかに低かった(ハザード比[HR]:0.94[95%信頼区間[CI]:0.88~1.00]、p=0.05)が、女性患者ではこのような差はなかった(0.99[0.90~1.09]、p=0.90)。全体として、死亡の発生に関して性別に関連した異質性は認めなかった(交互作用のHR:1.06[95%CI:0.94~1.19]、pinteraction=0.33、I2=0.00%、pheterogeneity=0.76)。 心筋梗塞は、21試験の17万2,504例で7,558件発生した。男性患者では、低強度群に比べ高強度群で心筋梗塞のリスクが低く(HR:0.85[95%CI:0.80~0.90]、p<0.001)、女性患者でも有意に低かった(0.89[0.82~0.97]、p=0.01)。全体として、心筋梗塞の発生に関して性別に関連した異質性はみられなかった(交互作用のHR:1.05[95%CI:0.95~1.17]、pinteraction=0.36、I2=14.05%、pheterogeneity=0.28)。性別に依拠しない選択を 大出血は、28試験の24万4,179例で4,003件発現した(高強度群2,384件、低強度群1,619件)。男性患者では、低強度群に比べ高強度群で大出血のリスクが高く(HR:1.48[95%CI:1.37~1.60]、p<0.001)、女性患者でも有意に高かった(1.47[1.30~1.66]、p<0.001)。全体として、大出血のリスクに関して性別に関連した異質性はなかった(交互作用のHR:0.99[0.86~1.15]、pinteraction=0.93、I2=33.56%、pheterogeneity=0.05)。 著者は、「これらのデータは、虚血保護効果と出血リスクの程度は男女間でほぼ同じであると示唆している」「本研究の知見は、冠動脈疾患患者における抗血栓療法の選択は性別に依拠して行うべきではないとの考え方を裏付けるものである」「女性患者における抗血栓療法戦略の最適化に向けたさらなる研究の必要性が浮き彫りとなった」としている。

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ASCO2025 レポート 泌尿器腫瘍

レポーター紹介米国臨床腫瘍学会(ASCO)の年1回の総会は、今年も米国イリノイ州のシカゴで行われ、2025年は5月30日から6月3日まで行われた。昨今の円安(5月30日時点で1ドル=143円台)および物価高は現地参加に対するモチベーションを半減させるほどの勢いであり、今年もOn-lineでの参加を選択した。泌尿器腫瘍の演題は、Oral abstract session 18(前立腺9、腎4、膀胱5)、Rapid oral abstract session18(前立腺8、腎4、膀胱5、陰茎1)、Poster session 221で構成されており、昨年と比べて多くポスターに選抜されていた。毎年の目玉であるPlenary sessionは、Practice changingな演題が5演題選出されるが、昨年に引き続き今年も泌尿器カテゴリーからは選出がなかった。Practice changingな演題ではなかったが、他領域に先駆けてエビデンスを創出した免疫チェックポイント阻害薬関連の研究の最終成績が公表されたり、新規治療の可能性を感じさせる報告が多数ありディスカッションは盛り上がっていた。今回はその中から4演題を取り上げ報告する。Oral abstract session 前立腺#LBA5006 相同組み換え修復遺伝子(HRR)変異を有する去勢感受性前立腺がんに対するニラパリブ+アビラテロン、rPFSを延長(AMPLITUDE試験)Phase 3 AMPLITUDE trial: Niraparib and abiraterone acetate plus prednisone for metastatic castration-sensitive prostate cancer patients with alterations in homologous recombination repair genes.Gerhardt Attard, Cancer Institute, University College London, London, United Kingdomニラパリブは、ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)-1/2の選択性が高く強力な阻害薬であり、日本では卵巣がんで使用されている。HRR遺伝子変異を有する転移性去勢抵抗性前立腺がん(mCRPC)ではMAGNITUDE試験で、ニラパリブ+アビラテロン+prednisone併用(Nira+AP)による画像上の無増悪生存期間(rPFS)の延長が示されている。ASCO2025において、HRR遺伝子変異を有する転移性去勢感受性前立腺がん(mHSPC)に対するNira+AP療法の有効性を検証したAMPLITUDE試験(NCT04497844)の結果が報告された。この試験のHRR遺伝子変異の定義は、BRCA1、BRCA2、BRIP1、CDK12、CHEK2、FANCA、PALB2、RAD51B、RAD54Lの生殖細胞系列または体細胞変異が含まれていた。患者はアビラテロン1,000mg+prednisone 5mgに加えて、ニラパリブ200mgあるいはプラセボを内服する2群にランダム化され、主要評価項目はrPFS、副次評価項目に症候性進行までの期間、全生存期間(OS)、安全性などが設定されていた。ランダム化された696例のうち、BRCA1/2変異は55.6%、High volume症例は78%であった。追跡期間中央値30.8ヵ月時点のrPFS中央値はNira+AP群で未到達、プラセボ+AP群で29.5ヵ月であり、ハザード比(HR)は0.63、95%信頼区間(CI):0.49~0.80、p=0.0001であった。BRCA1/2変異群でもHR=0.52(95%CI:0.37~0.72)、p<0.0001であった。OSは中間解析であるがHR=0.79(95%CI:0.59~1.04)、p=0.10と報告された。重篤な有害事象は、Nira+AP群で75.2%、プラセボ+AP群で58.9%であり、非血液毒性では貧血(29.1%vs.4.6%)、高血圧(26.5%vs.18.4%)が多く、治療中止割合はそれぞれ11.0%と6.9%であった。AMPLITUDE試験は、HRR遺伝子を有する症例に絞って実施した第III相ランダム化比較試験で、mHSPCにおいてもNira+AP併用療法はrPFSを有意に改善し、OSにおいても良好な傾向を示した。日本は本試験に参加しておらず、Nira+AP療法が保険適用を取得する可能性はないが、同じくmHSPCを対象に実施中のTALAPRO-3試験(タラゾパリブ+エンザルタミドvs.プラセボ+エンザルタミド)の結果に期待が広がる内容であった。#5003 転移性前立腺がんにおけるPTEN遺伝子不活化はADT+DTX治療の効果予測因子(STAMPEDE試験付随研究)Transcriptome classification of PTEN inactivation to predict survival benefit from docetaxel at start of androgen deprivation therapy (ADT) for metastatic prostate cancer: An ancillary study of the STAMPEDE trials.Emily Grist, University College London Cancer Institute, London, United Kingdomドセタキセル(DTX)は転移性の前立腺がんに対して有効な治療法であるが、その効果が得られる症例にはばらつきがある。STAMPEDE試験のプロトコルに参加し(2005年10月〜2014年1月)ADT単独vs.ADT+DTX±ゾレドロン酸またはADT単独vs.ADT+アビラテロン(Abi)に1:1でランダム化された転移性前立腺がん患者の腫瘍サンプルを用いて、全トランスクリプトームデータによりPTENの不活化が治療アウトカムに与える影響を検討した報告である。PTENの不活化は、既報のスコアリング手法(Liuら, JCI, 2021)に基づいて定義された(活性あり:スコア≦0.3、活性なし:スコア>0.3)。また、Decipherスコアは高リスク>0.8、低リスク≦0.8と定義した。Cox比例ハザードモデルを用い、治療割り付けとPTEN活性との交互作用を評価し、年齢、WHO PS、ADT前PSA、Gleasonスコア、Tステージ、Nステージ(N0/N1)、転移量(CHAARTED定義によるHigh volume/ Low volume)で調整した。主要評価項目はOSであり仮説の検定には部分尤度比検定を用いた。全トランスクリプトームプロファイルを832例の転移性前立腺がん患者から取得し、これは試験全体の転移性前立腺がんコホート(n=2,224)と代表性に差はなかった。PTEN不活性腫瘍は419例(50%)に認められ、PTEN mRNAスコアの分布はHigh volumeとLow volumeで差はなかった(p=0.310)。ADT+Abi群(n=182)では、PTEN不活性はOS短縮と有意に関連(HR=1.56、95%CI:1.06~2.31)し、ADT+DTX群(n=279)では、有意な差は認められなかった(HR=0.93、95%CI:0.70~1.24)。PTEN不活化とDTX感受性は有意な交互作用(p=0.002)があり、PTEN不活性腫瘍ではDTX追加により死亡リスクが43%低下(HR=0.57、95%CI:0.42~0.76)し、PTEN活性腫瘍では有意差なし(HR=1.05、95%CI:0.77~1.43)であった。この傾向は転移量にかかわらず一貫しており、Low volume患者(n=244)ではPTEN不活性:HR=0.53、PTEN活性:HR=0.82、High volume患者(n=295)ではPTEN不活性:HR=0.59、PTEN活性:HR=1.23であった。一方、アビラテロン群ではPTENの状態によらず治療効果は一定であり、PTEN不活性:HR=0.52、PTEN活性:HR=0.55(p=0.784)であった。また、PTEN不活性かつDecipher高リスク腫瘍にDTXを追加した場合、死亡リスクが45%低下(HR=0.55、99%CI:0.34~0.89)と推定された。このバイオマーカーの併用による層別化は、ADT+アビラテロン+ドセタキセルの3剤併用療法の適応を検討する際の指標として今後の臨床応用が期待されると演者は締めくくった。日本ではmHSPCへのupfront DTXはダロルタミドとの併用に限られるが、PTEN遺伝子に注目した戦略が重要と考えられ、ますます診断時からの遺伝子パネル検査の保険償還が待たれる状況となってきた。Oral abstract session 腎/膀胱#4507 VHL病関連悪性腫瘍におけるベルズチファンの長期効果 (LITESPARK-004試験)Hypoxia-inducible factor-2α(HIF-2α)inhibitor belzutifan in von Hippel-Lindau(VHL)disease-associated neoplasms: 5-year follow-up of the phase 2 LITESPARK-004 study.Vivek Narayan, Hospital of the University of Pennsylvania, Philadelphia, PAHIF-2α阻害薬のベルズチファンは、VHL病に関連する腎細胞がん(RCC)、中枢神経血管芽腫、膵神経内分泌腫瘍(pNET)を対象に、即時の手術が不要な症例に対して治療薬として日本でも2025年6月に承認された。これは、非盲検第II相試験のLITESPARK-004試験(NCT03401788)の結果に基づくものであるが、ASCO2025では5年以上の追跡期間を経た最新の結果が報告された。対象は以下を満たす症例であった:生殖細胞系列のVHL遺伝子異常を有する測定可能なRCCを1つ以上有する即時の手術が必要な3 cm超の腫瘍なし全身治療歴なし転移なしPS 0~1治療はベルズチファン120mgを1日1回経口投与で、病勢進行、不耐容、または患者自身の希望による中止まで継続された。主要評価項目は、VHL病関連RCCにおける奏効率(ORR)であった。追跡期間中央値は61.8ヵ月、ベルズチファンの投与を受けた61例中35例(57%)が治療継続中であった。ORRは、RCCで70%、中枢性神経血管芽腫で50%、pNETで90%、網膜血管芽腫(18眼/14例)では100%の眼において眼科的評価で改善を確認。奏効期間中央値は未到達(範囲:8.5~61.0ヵ月)であった。重篤な治療関連有害事象は11例(18%)に認められた。最も多かった貧血はAny gradeで93%、Grade 3以上で13%と報告された。そのマネジメントとしてエリスロポエチン製剤(ESA)のみを使用したのは11例(18%)、輸血のみは2例(3%)、ESAと輸血を用いたのは5例(8%)であり、その他の治療が39例(64%)で選択されていた。5年間の追跡後も、ベルズチファンは持続的な抗腫瘍効果と管理可能な安全性プロファイルが報告され、多数の患者が治療を継続していた。即時手術を要しないVHL病関連のRCC、中枢神経血管芽腫、pNET患者において有用な治療選択肢であり、今後われわれも使いこなさなければいけない薬剤である。Rapid Oral abstract session 腎/膀胱#4518 MIBCに対する術前サシツズマブ ゴビテカン+ペムブロリズマブ併用療法と効果に応じた膀胱温存療法(SURE-02試験)First results of SURE-02: A phase 2 study of neoadjuvant sacituzumab govitecan (SG) plus pembrolizumab (Pembro), followed by response-adapted bladder sparing and adjuvant pembro, in patients with muscle-invasive bladder cancer (MIBC).Andrea Necchi,Department of Medical Oncology, IRCCS San Raffaele Hospital,Vita-Salute San Raffaele University, Milan, Italy筋層浸潤性膀胱がん(MIBC)の標準治療は、術前化学療法を伴う膀胱全摘除術(RC)である。術前ペムブロリズマブ(Pem)やサシツズマブ ゴビテカン(SG)の単剤療法は、それぞれPURE-01試験およびSURE-01試験においてMIBCに対する有効性を示している。SURE-02試験(NCT05535218)は、術前SG+Pem併用療法および術後Pemを用いた第II相試験であり、臨床的奏効に応じた膀胱温存の可能性も含んでいる。ASCO2025ではその中間解析の結果が報告された。cT2~T4N0M0のMIBCと病理診断され、化学療法の適応がない、もしくは化学療法を拒否し、RC予定の患者を対象に、Pem 200mgをDay1に、SG 7.5mg/kgをDay1およびDay8に3週間間隔で4サイクル投与した。手術後はPemを3週間間隔で13サイクル投与した。臨床的完全奏効(cCR)を達成した患者(MRI陰性かつ再TUR-BTでviableな腫瘍が検出されない[ypT0]症例)については、RCの代わりに再TUR-BTが許容され、その後Pem 13サイクルを投与した。主要評価項目はcCR割合で、閾値30%、期待値45%としてα=0.10、β=0.20で検出するための症例数は48例と設定された。2段階デザインであり、1段階目を23例で評価し、cCR7例以上であれば2段階目に進む計画であった。ASCO2025では、SURE-02試験の中間報告がなされた。2023年10月~2025年1月までに40例が治療を受け、31例が有効性評価対象となった。cCR割合は12例(38.7%)、95%CI:21.8~57.8であり、全員が再TUR-BTを施行された。ypT≦1N0-x割合は16例(51.6%)であった。重篤な有害事象は4例(12.9%)で、SGの投与中止2例、1週間の投与延期1例があったが、SGの減量は不要であった。23例でトランスクリプトーム解析が行われ、病理学的完全奏効(ypT0)について、Luminal腫瘍では非Luminal腫瘍に比べてypT0率が高かった(73%vs.25%、p=0.04)。Lund分類においては、ゲノム不安定型では67%、尿路上皮型では57%、基底/扁平上皮型では20%、神経内分泌型では0%であった。間質シグネチャーが高い症例では非ypT0である割合が高く(p=0.004)、一方でTrop2(p=0.15)およびTOP1(p=0.79)の発現はypT0との関連を示さなかった。周術期におけるSG+Pembro療法は、良好なcCR率と許容可能な安全性プロファイルを示し、約40%の症例で膀胱温存が可能であった。本試験において、このまま主要評価項目を達成するかどうかは現時点で期待値以下であるため少し不安はあり、また得られる結果も決して確定的なものではない。しかしながら、中間報告の時点で膀胱温存の可能性を40%の症例で達成していることは非常に興味深い内容であった。今後、検証的な第III相試験においても膀胱温存が重要なアウトカムとして設定され、再発や死亡といった腫瘍学的に重要なアウトカムを損なわない結果が達成できる日が訪れることを期待したい。

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診療科別2025年上半期注目論文5選(循環器内科編)

Pulsed Field or Cryoballoon Ablation for Paroxysmal Atrial FibrillationReichlin T, et al. N Engl J Med. 2025;392;1497-1507.<SINGLE SHOT CHAMPION試験>:心房細動へのアブレーション、パルスフィールドか冷凍バルーンか心房細動へのアブレーションは本邦でも普及しています。従来の高周波や冷凍バルーンによる熱的アブレーションは、組織特異性が低く心筋周辺組織への影響が問題でした。非熱的アブレーション法であるパルスフィールドアブレーションを評価した研究です。冷凍バルーンに比べ、パルスフィールドアブレーションが再発予防効果において非劣性を示しました。この新技術の普及に弾みがつくのか注目されます。Lorundrostat Efficacy and Safety in Patients with Uncontrolled HypertensionLaffin LJ, et al. N Engl J Med. 2025;392;1813-1823.<Advance-HTN試験>:治療抵抗性高血圧へのアルドステロン合成酵素阻害薬に注目コントロール不良の治療抵抗性高血圧への新規降圧薬であるアルドステロン合成酵素阻害薬のlorundrostat(ロルンドロスタット)を評価した研究です。24時間平均収縮期血圧を有意に低下させ、安全性も許容範囲内にあると報告されました。難治性高血圧の患者は一定数存在します。循環器領域で血圧管理は本質的な命題であり、降圧薬開発は永続的なテーマです。Efficacy and safety of clopidogrel versus aspirin monotherapy in patients at high risk of subsequent cardiovascular event after percutaneous coronary intervention (SMART-CHOICE 3): a randomised, open-label, multicentre trialChoi KH, et al. Lancet. 2025;405;1252-1263.<SMART-CHOICE 3試験>:PCI患者のSAPTはクロピドグレルかアスピリンかPCI患者のDAPT完了後の抗血小板薬の単剤療法(SAPT)は、従来から慣れ親しんだアスピリンなのか、P2Y12阻害薬のクロピドグレルなのかは古くて新しい課題です。韓国で虚血イベント再発高リスク患者を対象にして施行されたこの無作為ランダム化試験では、クロピドグレル群で出血を増加させずに全死因死亡・心筋梗塞・脳卒中の複合リスクの低下をもたらしたことを報告しました。Cardiac Arrest During Long-Distance Running RacesKim JH, et al. JAMA. 2025;333;1699-1707.<RACER 2研究>:マラソンでの心停止は減少も一定数発生、冠動脈疾患が最多マラソン中の心停止の発生率と転帰を調べた臨床研究。2012年にNEJM誌に発表されたRACER1研究の続報的な内容です。2010~23年の間に米国で公認されたフルマラソンとハーフマラソン443大会での走行中の心停止事故は、2000~10年を対象としたRACER 1と比して発生率は同じでしたが心臓死は半減していました。原因は冠動脈疾患が最多でした。日本では市民参加型マラソン大会が全国各地で開催されており、参考になるデータと思われます。Phase 3 Open-Label Study Evaluating the Efficacy and Safety of Mavacamten in Japanese Adults With Obstructive Hypertrophic Cardiomyopathy - The HORIZON-HCM StudyKitaoka H, et al. Circ J. 2024;89:130-138.<HORIZON-HCM試験>:閉塞性肥大型心筋症の治療を変革する新規薬剤の日本人データ閉塞性肥大型心筋症(HCM)の選択的心筋ミオシン阻害薬であるマバカムテンの治療効果を日本人で検証した臨床研究です。30週の時点での有効性・安全性・忍容性について報告しています。2024年12月25日論文掲載であり、2024年下半期ではなく今回の2025年上半期での紹介となりました。2025年3月の日本循環器学会年次集会で54週のデータも報告されています。本邦の実臨床でも使用可能となったばかりの新規薬剤であり、今後も注目していきたいところです。

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