出血リスクが高い(HBR)患者における経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)の投与期間について、1ヵ月間の投与は3ヵ月間の投与に対して全臨床的有害事象(NACE)に関する非劣性は示されなかった。一方、非HBR患者では、3ヵ月間の投与は12ヵ月間の投与に対してNACEおよび主要心血管/脳血管イベント(MACCE)に関して非劣性が示され、出血に関して優れることが示された。韓国・Seoul National University HospitalのJeehoon Kang氏らが、同国の50ヵ所の心臓病センターで行った非盲検無作為化試験「HOST-BR試験」の結果を報告した。出血リスクに応じたPCI後のDAPT投与の最適期間は十分に確立されていなかった。Lancet誌オンライン版2025年10月23日号掲載の報告。
PCIによるDES留置成功後の患者をHBRと非HBRに層別化し最適期間を評価
HOST-BR試験は、出血リスクに応じたPCI冠動脈ステント留置後のDAPTの最適期間を評価した研究者主導の非盲検無作為化試験。対象は、PCIによる薬剤性溶出ステント(DES)留置に成功した19歳以上の患者で、登録後、Academic Research Consortium for High Bleeding Risk(ARC-HBR)基準に基づきHBRまたは非HBRに層別化された。
研究グループは、HBR群の患者をDAPT投与1ヵ月群または同3ヵ月群に1対1の割合で無作為に割り付け、非HBR群の患者をDAPT投与3ヵ月群または同12ヵ月群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、NACE(全死因死亡、非致死的心筋梗塞、definite/probableステント血栓症、脳卒中、または大出血)、MACCE(心臓死、非致死的心筋梗塞、definite/probableステント血栓症、または虚血性脳卒中)、および無作為化後1年間のあらゆる非外科的出血の3つであった。主要エンドポイントはITT集団において階層的に評価が行われた。
HBR群:1ヵ月DAPT群の3ヵ月DAPT群に対する非劣性は認められず
2020年7月24日~2023年9月25日に、4,897例の患者が登録された(HBR群1,598例、非HBR群3,299例)。HBR群(1ヵ月DAPT群798例、3ヵ月DAPT群800例)の年齢中央値は76歳(四分位範囲:68~81)、女性が33.5%であり、非HBR群(3ヵ月DAPT群1,649例、12ヵ月DAPT群1,650例)の年齢中央値は64歳(57~70)、女性が20.9%であった。
HBR群において、1ヵ月DAPT群の3ヵ月DAPT群に対するNACEに関する非劣性は示されなかった(144/798例[18.4%]vs.110/800例[14.0%]、ハザード比[HR]:1.337、95%信頼区間[CI]:1.043~1.713、非劣性のp=0.82)。MACCEは、1ヵ月DAPT群で74例(9.8%)、3ヵ月DAPT群で44例(5.8%)に発現した。出血は、1ヵ月DAPT群で105例(13.8%)、3ヵ月DAPT群で122例(15.8%)に発現した。
非HBR群:3ヵ月DAPT群の12ヵ月DAPT群に対する非劣性が認められる
非HBR群では、3ヵ月DAPT群の12ヵ月DAPT群に対するNACE(47/1,649例[2.9%]vs.72/1,650例[4.4%]、HR:0.657、95%CI:0.455~0.949、非劣性のp<0.0001)およびMACCE(36/1,649例[2.2%]vs.37/1,650例[2.3%]、0.984、0.622~1.558、非劣性のp=0.0082)に関する非劣性がいずれも認められ、3ヵ月DAPT群が12ヵ月DAPT群よりも出血に関して優れることが認められた(120/1,649例[7.4%]vs.190/1,650例[11.7%]、0.631、0.502~0.793、p<0.0001)。
(ケアネット)