経皮的冠動脈インターベンション(PCI)後に標準的な期間の抗血小板薬2剤併用療法(DAPT)を完了した、虚血性イベントの再発リスクが高い患者の維持療法において、アスピリン単剤療法と比較してクロピドグレル単剤療法は、3年時の主要有害心・脳血管イベント(MACCE)が少なく、なかでも心筋梗塞のリスクが有意に減少し、出血の発生率は両群で差がなく、上部消化管イベントのリスクはクロピドグレル群で低いことが、韓国・Sungkyunkwan University School of MedicineのKi Hong Choi氏らSMART-CHOICE 3 investigatorsが実施した「SMART-CHOICE 3試験」で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2025年3月30日号で報告された。
韓国の無作為化試験
SMART-CHOICE 3試験は、薬剤溶出ステントによるPCI後に標準的な期間のDAPTを完了した患者における、クロピドグレル単剤とアスピリン単剤の有効性と安全性の比較を目的とする非盲検無作為化試験であり、2020年8月~2023年7月に韓国の26施設で参加者の適格性を評価した(Dong-A STの助成を受けた)。
年齢19歳以上、PCI後に標準的な期間のDAPTを完了し、虚血性イベントの再発リスクが高い患者(心筋梗塞の既往歴がある、糖尿病で薬物療法を受けている、複雑な冠動脈病変を有する)を対象とした。被験者を、クロピドグレル(75mg、1日1回)またはアスピリン(100mg、1日1回)を経口投与する群に、1対1の割合で無作為に割り付けた。
主要エンドポイントは、ITT集団におけるMACCE(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合)の累積発生率とした。
MACCEの推定3年発生率:4.4%vs.6.6%
5,506例を登録し、クロピドグレル群に2,752例、アスピリン群に2,754例を割り付けた。全体の年齢中央値は65.0歳(四分位範囲[IQR]:58.0~73.0)、1,002例(18.2%)が女性であった。2,247例(40.8%)が糖尿病(2,089例[37.9%]が糖尿病の薬物療法を受けていた)で、2,552例(46.3%)が急性心筋梗塞(1,330例[24.2%]が非ST上昇型、1,222例[22.2%]がST上昇型)でPCIを受けていた。PCI施行から無作為化までの期間中央値は17.5ヵ月(IQR:12.6~36.1)だった。
追跡期間中央値2.3年の時点で、MACCEはアスピリン群で128例に発生し、Kaplan-Meier法による推定3年発生率は6.6%(95%信頼区間[CI]:5.4~7.8)であったのに対し、クロピドグレル群では92例、4.4%(3.4~5.4)と有意に少なかった(ハザード比[HR]:0.71[95%CI:0.54~0.93]、p=0.013)。
MACCEの個々の項目(副次エンドポイント)の推定3年発生率は、全死因死亡がクロピドグレル群2.4%、アスピリン群4.0%(HR:0.71[95%CI:0.49~1.02])、心筋梗塞がそれぞれ1.0%および2.2%(0.54[0.33~0.90])、脳卒中が1.3%および1.3%(0.79[0.46~1.36])であった。
大出血の発生率にも差はない
出血(BARC type 2、3または5)(クロピドグレル群3.0%vs.アスピリン群3.0%、HR:0.97[95%CI:0.67~1.42])、大出血(BARC type 3または5)(1.6%vs.1.3%、1.00[0.58~1.73])のリスクは両群で差はなかった。
上部消化管イベント(クロピドグレル群2.8%vs.アスピリン群4.9%、HR:0.65[0.47~0.90])および有害な臨床イベント(全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中、大出血の複合)(5.4%vs.7.3%、0.78[0.61~0.99])はクロピドグレル群で少なく、血行再建術(4.2%vs.4.5%、0.94[0.69~1.27])の頻度は両群で同程度だった。
著者は、「これらの患者において、クロピドグレル単剤療法は、出血を増加させずに全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合リスクの低下をもたらしたことから、長期維持療法としてアスピリン単剤療法に代わる好ましい選択肢と考えられる」としている。
(医学ライター 菅野 守)