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ごく早期に発現するがん悪液質の食欲不振とグレリンの可能性/JSPEN

 本年(2019年)2月、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会(JSPEN2019)が開催された。その中から、がん悪液質に関する発表について、日本緩和医療学会との合同シンポジウム「悪液質を学ぶ」の伊賀市立上野総合市民病院 三木 誓雄氏、教育講演「がんの悪液質と関連病態」の鹿児島大学大学院 漢方薬理学講座 乾 明夫氏の発表の一部を報告する。前悪液質状態の前から起きている食欲不振 伊賀市立上野総合市民病院 三木 誓雄氏は「がん悪液質の病態評価と治療戦略」の中で次のように発表した。 がん悪液質の出現割合は全病期で50%、末期になると80%にもなる。また、がん患者の30%は悪液質が直接の原因で死亡する。EPCR(European Palliative Care Research Collaborative)のガイドラインでは、がん悪液質は前悪液質(Pre-Cachexia)、悪液質(Cachexia)、不可逆的悪液質(Refractory Cachexia)の3つのステージに分けられる。ESPEN(European Society for Clinical Nutrition and Metabolism:欧州静脈経腸栄養学会)のエキスパートグループは、食欲不振・食物摂取の制限は前悪液質となる前から現れると述べている。 この食欲不振の原因は全身性炎症反応である。McMahon氏らの研究では、未治療の肺がん患者のCRPは、手術侵襲のピーク時を超える高値で持続するとされる。全身性炎症反応の最も大きな原因は、腫瘍から放出されるTNFα、IL-6、IL-1などの炎症性サイトカイン。「炎症性サイトカインが中枢神経に働きかけて、まず食欲が失われ、それに伴って悪液質が始まり、代謝異化に向かい体重減少し、最後にはサルコペニアに至る」という。悪液質の発現で変わるがん治療効果 全身性炎症はまた、がんの治療効果にも影響を及ぼす。全身性炎症が亢進すると、薬物代謝酵素である肝臓のチトクロームP450活性が低下する。薬の代謝が抑制されるため薬物毒性が増える。一方、代謝を受けて薬効を示すプロドラッグなどは効果が減弱する。Carla氏らの報告では、非悪液質患者の抗がん剤の毒性出現頻度は約20%だが、悪液質患者では約50%と上昇する。抗がん剤の治療成功期間(Time to progression)も、非悪液質に比べ悪液質では約400日短縮する。 三木氏らは、伊賀市立上野総合市民病院で、5%以上の体重減少があるがん化学療法施行消化器がん患者179例に対して栄養療法(EPA 1g/日含有栄養剤:300kcal)のトライアルを行った。結果、栄養支持療法なし群だけをみると悪液質(体重減少5%以上かつCRP 0.5以上)は20%に発現し、この悪液質発現群では非発現群と同様の化学療法を受けていても全生存期間が有意に短かった(p<0.01)。また、栄養支持療法あり群では、がん化学療法施行時中もCRPは上昇せず、骨格筋量、除脂肪体重は増加した。栄養支持療法なし群ではCRPは上昇し、骨格筋量、除脂肪体重は増加しなかった。がん化学療法継続日数は栄養支持療法あり群で80日延長した(388.8日 vs.308.0日)。これら栄養支持療法による生命予後改善は、悪液質患者に限ってみられた(全患者:p=0.84、悪液質患者:p=0.0096)。「栄養支持療法をすることで、悪液質患者を非悪液質患者と同じ抗がん剤治療の土俵へ上げることができたことになる」と三木氏は述べる。がん悪液質におけるグレリンの役割 鹿児島大学大学院 漢方薬理学講座 乾 明夫氏は「がん悪液質と関連病態」の中でグレリンについて次のように述べた。 グレリンは胃から分泌され、摂食促進、エネルギー消費抑制に働く。グレリンはグレリン受容体(成長ホルモン分泌促進受容体)に結合し、食欲促進ペプチドである視床下部の神経ペプチドY(NPY)に作用し食欲を増やす。また、下垂体前葉において成長ホルモンの分泌を促進しサルコペニアを改善する。 がん悪液質では、グレリンの相対的分泌低下とレプチンの相対的上昇があり、食欲抑制系が優位状態となっていることが、動物実験で示されている。そのため「外部からグレリンを投与し補充することは理論的」と乾氏は言う。動物実験では実際に、グレリンを投与すると空腹期強収縮が起こり、胃の中に食物があっても空腹期様の強収縮を起こすことも示されている。 グレリン化合物には、多くの開発品がある。anamorelinは、グレリン受容体に強力な親和性を有する経口のグレリンアゴニストである。すでに4つの第II相試験と2つの第III相試験を実施している。StageIII/IVの悪液質を有する非小細胞肺がん患者174例を対象にした第III相試験においては、主要評価項目である除脂肪体重(p<0.0001)に加え、全体重も有意に改善した(p<0.001)。握力はp=0.08で有意な改善は示さなかったものの、「悪液質の診断がついて早期に使えば、より大きな効果を期待できるであろう」と乾氏。 さらに、グレリン・NPYを活性化するものに人参養栄湯がある。グレリン分泌の促進とグレリン非依存性のNPY活性化という2つの作用を有する。食欲、サルコペニア、疲労・抑うつの改善など、重症がん患者に対する支持療法としてさまざまな効果がある。「将来はグレリンアゴニストと人参養栄湯をドッキングして使われることもあると思う」と乾氏は言う。

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ドライアイに新規シクロスポリン点眼液が有効

 シクロスポリン(CsA)点眼液CyclASol(0.1%、0.05%含有の2規格)は、中等度~重度ドライアイ(DED)に対し、有効性、安全性ならびに忍容性が良好であることが、米国・Eye Research FoundationのDavid L. Wirta氏らによる第II相臨床試験で示された。角膜および結膜染色による評価でCyclASolと実薬対照を比較したところ、投与開始後2週間という早期で効果が認められ、とくに視覚機能として重要な角膜の中央領域で有効性が顕著であった。著者は、「優れた安全性・忍容性および快適性のプロファイルは、有望なベネフィット・リスク比を有するDED治療薬として、この新しいCsA点眼液を支持するものである」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2019年1月28日号掲載の報告。 研究グループは、CyclASolの有効性および安全性を評価する目的で、多施設共同無作為化試験を行った。 対象は、DED既往患者207例で、2週間の導入期間(SystaneTM Balance点眼液1日2回投与)の後、CyclASol 0.05%群:51例、0.1%群:51例、プラセボ群:52例、実薬対照(RestasisTM:CsA0.05%点眼液)群:53例を1対1対1対1の割合で4つの治療アームに無作為に割り付け、それぞれ1日2回16週間投与した。CyclASolの両濃度群およびプラセボ群は二重盲検、実薬対照群は非盲検であった。 主要評価項目は、角膜フルオレセイン染色、結膜染色、DEDの自覚症状で、VAS(visual analog scale)とOSDI(Ocular Surface Disease Index)で評価した。 主な結果は以下のとおり。・CyclASol群は、プラセボ群および実薬対照群と比較し、角膜および結膜染色時間の改善が治療終了16週まで一貫して認められ、効果発現も14日目と早かった。・混合効果モデルによる解析の結果、CyclASol群の有効性はプラセボ群より有意に優れていた(全角膜染色領域p<0.1、中央角膜染色p<0.001、結膜染色p<0.01)。・自覚症状のパラメータであるOSDIも、CyclASol群で有意に優れていた(p<0.01)。・眼の有害事象件数は、すべての治療群で低かった。

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ICU重症例への心理学的介入、PTSD症状を改善するか/JAMA

 集中治療室(ICU)に入室した重症患者では、看護師主導による予防的な心理学的介入を行っても、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状は軽減しないとの研究結果が、英国・University College London Hospitals NHS Foundation TrustのDorothy M. Wade氏らが行ったPOPPI試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年2月19日号に掲載された。ICU退室後6ヵ月のアウトカムに関するメタ解析では、臨床的に重要なPTSD症状の有病率は25%とされる。ICU入室中の急性ストレスや恐怖体験(幻覚、偏執性妄想、悪夢)の記憶は、PTSD症状などの長期的な心理学的合併症の独立のリスク因子であり、その予防への取り組みは退室後では遅すぎ、ICUで行う必要があるという。外傷でICUに入室した患者では、ICUでの臨床心理士との面談で、PTSD症状の経験が減少するとの報告がある。24のICUが参加したクラスター無作為化試験 本研究は、ICUで開始された看護師主導による複合的な心理学的予防介入が、患者報告による6ヵ月後のPTSD症状の重症度を軽減するかを検討するクラスター無作為化試験である(英国国立健康研究所[NIHR]の助成による)。 英国の24のICUが登録され、介入群または対照群に12施設ずつが無作為に割り付けられた。試験参加者は、年齢18歳以上、ICU入室から48時間以上が経過し、この間にレベル3(intensive)の治療を受け、意思決定能力が回復した重症患者であった。 介入群のICUでは、ベースラインの期間中(1~5ヵ月)に通常治療を行った後、訓練を受けた看護師により高リスク(急性の強いストレス下にある)患者に対し、複合的な心理学的予防介入が実施された。介入は、ICUの治療環境に加え、3つのストレス支援のセッションと、リラクゼーション・リカバリー・プログラムの推進で構成された。対照群のICUでは、ベースライン期および介入期ともに通常治療が行われた。 主要臨床アウトカムは、PTSD症状スケール自己報告(PSS-SR)質問票による、6ヵ月時の生存者のPTSD症状の重症度とした。PSS-SR質問票は、0~51点でスコア化され、点数が高いほど症状の重症度が高い。臨床的に意義のある最小変化量は4.2点とされた。副次アウトカムも、全項目で有意差なし 2015年9月~2017年1月の期間に1,458例(平均年齢58[SD 16]歳、599例[41%]が女性)が登録され、試験を完遂した1,353例(93%)が最終的な解析に含まれた。 主要臨床アウトカムは達成されなかった。介入ICU群のPSS-SR質問票の平均スコアは、ベースライン期が11.8点であったのに対し、介入期は11.5点であった(差:-0.40、95%信頼区間[CI]:-2.46~1.67)。また、対照ICU群ではそれぞれ10.1点、10.2点(0.06、-1.74~1.85)だった。6ヵ月時のPTSD症状の重症度の両群間の差は有意ではなかった(推定治療効果[差分の差分]:-0.03、95%CI:-2.58~2.52、p=0.98)。 副次アウトカムも、2つの短期的アウトカム(30日までの非鎮静での生存日数、ICU入室日数)および4つの6ヵ月時のアウトカム(PSS-SR質問票スコアがその時点およびその後のPTSDを予測する閾値[18点]以上の患者の割合、Hospital Anxiety and Depression Scale[HADS]で評価した不安スコア、HADSによる抑うつスコア、EQ-5D-5Lで評価した健康関連QOL)のすべてにおいて、有意差のある結果は得られなかった。 また、事前に規定されたサブグループ(年齢、性別、重複剥奪指標、せん妄の発現日数、STAI-6で評価した不安、手術の種類など)のいずれにおいても、有意差のある結果は認めなかった。 著者は、有効性が示せなかった原因として、(1)ストレス支援セッション開始のタイミングが早すぎた、(2)3セッションすべてを受けたのは全例ではなかった、(3)ICU看護師は専門家ではないため目的どおりにセッションを行うのが困難だったなどの可能性を挙げている。

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燃え尽き症候群と妄想的観念との関連

 これまで、燃え尽き症候群と妄想的観念との関連が疑われていた。しかし、この関連についてのシステマティックな研究は、ほとんど行われていなかった。スイス・ヌーシャテル大学のR. Bianchi氏らは、燃え尽き症候群およびそれに伴ううつ病と妄想的観念との関連を調査した。Occupational Medicine誌2019年2月7日号の報告。 スイス人教師218人(女性の割合:58%、平均年齢:47歳)が本研究に参加した。燃え尽き症候群の評価には、Maslach Burnout Inventory-Educators Surveyの情緒的消耗感(emotional exhaustion:EE)および脱人格化(depersonalization:DP)サブスケールを用い、うつ症状はPHQ-9、妄想的観念はGreen et al. Paranoid Thought Scaleを用いて評価した。 主な結果は以下のとおり。・燃え尽き症候群、うつ病、それらの属性は、妄想的観念と正の相関が認められた(0.42~0.55)。・燃え尽き症候群、うつ病、妄想的観念が密接に関連していることが明らかとなった。・低レベルの燃え尽き症候群、うつ病では、妄想的観念は低く、高レベルの燃え尽き症候群、うつ病は、妄想的観念が高かった。・測定誤差を補正した場合、EEとうつ病およびDPとの相関係数は、それぞれ0.96、0.57であった。・主成分分析より、EEとうつ病は分類不能であることが確認された。 著者らは「燃え尽き症候群は、妄想的観念と関連していることが示唆された。興味深いことに、EEには、DPとの相関と同じぐらい強い妄想的観念との関連が認められた。さらに、燃え尽き症候群が、うつ病ではなくEEおよびDP症候群である場合には、EEとうつ病との相関係数は1に近くなるべきではなく、EEとうつ病との相関は、DPより強くなるべきではない。構成概念の独自性および症候群の統一性に関するこれらの基本的な要件は、満たされていなかった」としている。■関連記事仕事のストレスとベンゾジアゼピン長期使用リスクとの関連職業レベルの高さとうつ病治療への反応率との関係職場ストレイン、うつ病発症と本当に関連しているのか

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新規抗体薬物複合体、難治性の転移TNBCに有効/NEJM

 開発中のsacituzumab govitecan-hziyは、2レジメン以上の前治療歴のある転移性トリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者の3分の1に客観的奏効をもたらし、奏効期間中央値は7ヵ月以上に及ぶことが、米国・マサチューセッツ総合病院のAditya Bardia氏らが実施した第I/II相試験(IMMU-132-01試験)で示された。研究の詳細は、NEJM誌2019年2月21日号に掲載された。前治療歴のあるTNBC患者では、標準化学療法は奏効率が低く、無増悪生存(PFS)期間が短いことが知られている。本薬は、ヒト栄養膜細胞表面抗原2(Trop-2)を標的とするヒト化モノクローナル抗体に、トポイソメラーゼI阻害薬イリノテカンの活性代謝産物であるSN-38を、切断可能なリンカーで結合させた抗体薬物複合体であり、腫瘍に高濃度のSN-38を送達できるという。複数治療歴のある患者のバスケットデザインによる単群試験 研究グループは、TNBCを含む、転移病変を有する既治療の種々の固形がん患者を対象としたバスケットデザインのもとで、sacituzumab govitecan-hziyの多施設共同非盲検単群試験を進めている(Immunomedics社の助成による)。転移性TNBCについては、すでに69例の結果が報告されている。また、2016年、本薬は、米国食品医薬品局(FDA)により、2レジメン以上の前治療を受けた転移性TNBC患者の「画期的治療」に指定された。 本研究では、2レジメン以上の前治療歴のある進行性上皮がん患者が、21日を1サイクルとして1日目と8日目に、sacituzumab govitecan-hziy(10mg/kg体重)の静脈内投与を受けた。治療は、病勢進行または忍容できない毒性が発現するまで継続された。 エンドポイントは安全性、RECIST ver. 1.1に準拠して各施設で評価した客観的奏効率(完全奏効[CR]+部分奏効[PR])、奏効期間、臨床的有用率(CR+PR+6ヵ月以上持続する安定[SD]の割合)、PFS期間、全生存(OS)期間などとした。事後解析として、奏効率と奏効期間について、盲検下に独立中央判定での評価を行った。主な有害事象は骨髄・消化器毒性、PFS期間5.5、OS期間13.0ヵ月 2013年6月~2017年2月の期間に108例が登録された。ベースラインの年齢中央値は55歳(範囲:31~80)、男性が1例含まれた。全身状態(PS)は0が28.7%、1が71.3%で、前治療レジメン数中央値は3(2~10)だった。98.1%にタキサン系薬剤、86.1%にアンスラサイクリン系薬剤の投与歴があった。フォローアップ期間中央値は9.7ヵ月。 治療期間中央値5.1ヵ月(範囲:0.03~36.1)の間に、平均18.7回(1~102)、平均9.6サイクル(1~51)の治療が行われた。頻度の高い有害事象として、悪心(67%)、好中球減少(64%)、下痢(62%)、疲労/無力症(55%)、貧血(50%)、嘔吐(49%)などが認められた。 Grade3、4の有害事象は、好中球減少がそれぞれ26%、16%、貧血が11%、0%、白血球数の減少が8%、3%にみられた。発熱性好中球減少は10例(9.3%)に発現し、このうちGrade3が7例(6%)、Grade4は2例(2%)であった。重篤な有害事象は35例(32%)で報告され、発熱性好中球減少、嘔吐、悪心、下痢、呼吸困難の頻度が高かった。 治療期間中に4例が死亡した。3例(2.8%)が有害事象により治療を中止し、このうち2例は治療薬関連イベントによる中止であった。 奏効率は33.3%(36/108例、CR:3例、PR:33例)であり、臨床的有用率は45.4%(49/108例)であった。奏効例36例の奏効までの期間中央値は2.0ヵ月(範囲:1.6~13.5)、奏効期間中央値は7.7ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.9~10.8)であった。独立中央判定では、奏効率が34.3%、奏効期間は9.1ヵ月と、各施設判定とほぼ同様であった。 PFS期間中央値は5.5ヵ月、6および12ヵ月時のPFS率はそれぞれ41.9%、15.1%であった。また、OS期間中央値は13.0ヵ月、6および12ヵ月時のOS率はそれぞれ78.5%、51.3%だった。 著者は、「タキサン系、アンスラサイクリン系薬剤の治療歴のある患者にも有効であったことから、前治療の細胞傷害性化学療法薬との交差耐性はないと示唆される」とし、「治療期間中央値(5.1ヵ月)は直前の抗がん剤治療(2.5ヵ月)よりも長く、これは治療困難な転移性TNBC患者における臨床活性に関して、さらなるエビデンスをもたらすものである」と指摘している。

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C型肝炎へのDAA、実臨床での有効性を前向き調査/Lancet

 直接作用型抗ウイルス薬(DAA)は、慢性C型肝炎ウイルス(HCV)感染患者の治療に広範に使用されてきたが、その実臨床における有効性の報告は十分でなく、投与例と非投与例を比較した調査はほとんどないという。今回、フランス・ソルボンヌ大学のFabrice Carrat氏らの前向き調査(French ANRS CO22 Hepather cohort研究)により、DAAは慢性C型肝炎による死亡および肝細胞がんのリスクを低減することが確認された。研究の詳細は、Lancet誌オンライン版2019年2月11日号に掲載された。ウイルス蛋白を標的とするDAA(NS3/4Aプロテアーゼ阻害薬、NS5Bポリメラーゼ阻害薬、NS5A複製複合体阻害薬)の2剤または3剤併用療法は、HCV感染に対し汎遺伝子型の有効性を示し、95%を超える持続的ウイルス陰性化(SVR)を達成している。DAAの有無でアウトカムを比較するフランスの前向きコホート研究 研究グループは、DAA治療を受けた患者と受けていない患者で、死亡、肝細胞がん、非代償性肝硬変の発生率を比較するコホート研究を実施した(INSERM-ANRS[France Recherche Nord & Sud Sida-HIV Hepatites]などの助成による)。 フランスの32の肝臓病専門施設で、HCV感染成人患者を前向きに登録した。慢性B型肝炎患者、非代償性肝硬変・肝細胞がん・肝移植の既往歴のある患者、第1世代プロテアーゼ阻害薬の有無にかかわらずインターフェロン-リバビリン治療を受けた患者は除外された。 試験の主要アウトカムは、全死因死亡、肝細胞がん、非代償性肝硬変の発生の複合とした。時間依存型Cox比例ハザードモデルを用いて、DAAとこれらアウトカムの関連を定量化した。 2012年8月~2015年12月の期間に、1万166例が登録された。このうちフォローアップ情報が得られた9,895例(97%)が解析に含まれた。全体の年齢中央値は56.0歳(IQR:50.0~64.0)で、53%が男性であった。補正前は高リスク、多変量で補正後は有意にリスク低下 フォローアップ期間中に7,344例がDAA治療を開始し、これらの患者のフォローアップ期間中央値(未治療+治療期間)は33.4ヵ月(IQR:24.0~40.7)であった。2,551例は、最終受診時にもDAA治療を受けておらず、フォローアップ期間中央値は31.2ヵ月(IQR:21.5~41.0)だった。 DAA治療群は非治療群に比べ、年齢が高く、男性が多く、BMIが高値で、過量アルコール摂取歴のある患者が多かった。また、DAA治療群は、肝疾患や他の併存疾患の重症度が高かった。さらに、DAA治療群は、HCV感染の診断後の期間が長く、肝硬変への罹患、HCV治療中、ゲノタイプ3型の患者が多かった。 試験期間中に218例(DAA治療群:129例、DAA非治療群:89例)が死亡し、このうち73例(48例、25例)が肝臓関連死、114例(61例、53例)は非肝臓関連死で、31例(20例、11例)は分類不能であった。258例(187例、71例)が肝細胞がん、106例(74例、32例)が非代償性肝硬変を発症した。25例が肝移植を受けた。 未補正では、DAA治療群のほうが非治療群に比べ、肝細胞がん(未補正ハザード比[HR]:2.77、95%信頼区間[CI]:2.07~3.71、p<0.0001)および非代償性肝硬変(3.83、2.29~6.42、p<0.0001)のリスクが有意に高かった。 これに対し、年齢、性別、BMI、地理的発生源、感染経路、肝線維化スコア(fibrosis score)、HCV未治療、HCVゲノタイプ、アルコール摂取、糖尿病、動脈性高血圧、生物学的変量(アルブミン、AST、ALT、ヘモグロビン、プロトロンビン時間、血小板数、α-フェトプロテイン)、肝硬変患者の末期肝疾患モデル(MELD)スコアで補正したところ、DAA治療群では非治療群と比較して、全死因死亡(補正後HR:0.48、95%CI:0.33~0.70、p=0.0001)および肝細胞がん(0.66、0.46~0.93、p=0.018)のリスクが有意に低下し、未補正での非代償性肝硬変のリスクの有意差は消失した(1.14、0.57~2.27、p=0.72)。 また、全死因死亡のうち、肝臓関連死(0.39、0.21~0.71、p=0.0020)と非肝臓関連死(0.60、0.36~1.00、p=0.048)のリスクは、いずれもDAA治療群で有意に低かった。 著者は、「DAA治療は、あらゆるC型肝炎患者において考慮すべきである」と結論し、「今回の結果は、重症度の低い患者へフォローアップの対象を拡大し、DAAの長期的な臨床効果の評価を行うことを支持するものである」としている。

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がんマネジメントに有用な栄養療法とは?

 2019年2月14、15日の2日間にわたり、第34回日本静脈経腸栄養学会学術集会が開催された。1日目のシンポジウム3「がんと栄養療法の実際-エビデンス?日常診療?」(司会:比企 直樹氏、鍋谷 圭宏氏)では、岡本 浩一氏(金沢大学消化器・腫瘍・再生外科)が「食道がん化学療法におけるCAWLと有害事象対策としての栄養支持療法」について講演。自施設での食道がん化学療法におけるがん関連体重減少(CAWL)・治療関連サルコペニア対策としての栄養支持療法について報告した。がん患者、体重減少の2つの理由 がん患者における体重減少の原因は主に2つに分類することができる。まず、がん誘発性体重減少(CIWL)。これは、がん細胞から分泌される炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-α)やホルモンによる代謝異常、タンパク質分解誘導因子(PIF)の増加が影響しているため、従来管理での改善や維持は、現段階でエビデンスが乏しい。一方、もう1つのCAWLは、消化管の狭窄や閉塞による通過障害、がん治療の有害事象(AE)に起因する体重減少のため、「タンパク質やエネルギーの補給、AE対策によって改善が可能」と岡本氏は述べた。化学療法前にサルコペニアを意識する 抗がん剤の投与量決定に重要となる体表面積を求めるには、体重が必要となる。「この時に筋肉量まで考慮しないと、AE発現率に影響が生じる恐れがある」と同氏はコメント。実際、筋肉量が少ない患者における化学療法では、AEが高率に発現するとの報告*もあり、この事象が原因でサルコペニアの増悪にまで発展してしまうのである。これは、抗がん剤治療によって小腸などの消化管でグルタミン消費量が増加すると、骨格筋分解によってグルタミンが消費され、筋タンパク分解・筋萎縮亢進に至るためである。よって、筋肉量の少ない患者では、「AE発現リスクが高くなるため、治療開始前に患者のサルコペニア有無を認識しておく必要がある」と、同氏は語った。 同氏らの施設では、食道がん患者の化学療法マネジメントとして、栄養バンドル療法(Oral cryotherapy、予防的G-CSF投与、Pharmaconutritionの概念に基づいた栄養補助)を実施し、対策に取り組んでいる。サルコペニアへの対応が長期予後に影響 同氏の施設では食道がん術前・導入化学療法として、2008年よりcStage II以上のSCCに対してFP療法(Day1:CDDP 80mg/m2、Day1~5:5-FU 800mg/m2)を、2012年よりcStage III以上のSCCに対してDCF療法(Day1:DTX 60mg/m2、CDDP 60mg/m2、Day1~5:5-FU 800mg/m2)を実施している。 これらの治療を施行した食道がん患者176例を対象とし、栄養バンドル療法に含まれる栄養剤の有用性を検討するために、2011年3月~2018年7月の期間、HMB・アルギニン・グルタミン配合飲料(以下、配合飲料)非投与群(76例)と配合飲料投与群(100例)に割り付け、後ろ向き研究を実施。方法は2012年5月以降、化学療法開始7日以上前より1日2包を経口もしくは経管投与とし、評価項目はAE発生率、重症度、腸腰筋面積、栄養学的指標の変化とした。その結果、DCF療法を行った配合飲料非投与群(15例)vs.配合飲料投与群(81例)で、総合効果判定PR以上:20% vs.54.3%(p=0.023)、腫瘍縮小割合:-11% vs.29.4%(p=0.065)と改善。同氏は「有意差はつかなかったものの、AEの軽減と奏効率の向上が望める」とし、腸腰筋面積の減少を有意に抑制(-5.2% vs.2.8%、p<0.001)したことを踏まえ、「サルコペニアの予防・治療の介入に有用であった」とコメントした。 また、3年生存率は26.7% vs.46.7%(p=0.098)と、サルコペニア対策が長期予後にも密接に関連していることが裏付けられる結果となった。 化学療法時の栄養バンドル療法導入を振り返り、同氏は「サルコペニアと体重減少の改善を図りながら、化学療法をより安全に行うことが可能となった。この方法によりCAWLやサルコペニアのみならず、QOL、さらなる奏効率向上も期待できる」と締めくくった。■参考*Prado CM, et al.Clin Cancer Res. 2007;13:3264-3268

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糖尿病・脂肪性肝炎の新たな発症機序の解明~国立国際医療研究センター

 肝臓での代謝は絶食時と摂食時で大きく変化するが、その生理的意義や調節機構、またその破綻がどのように種々の疾患の病態形成に寄与するのか、これまで十分解明されていなかった。今回、東京大学大学院医学系研究科分子糖尿病科学講座 特任助教 笹子 敬洋氏、同糖尿病・生活習慣病予防講座 特任教授 門脇 孝氏、国立国際医療研究センター研究所糖尿病研究センター センター長 植木 浩二郎氏らのグループは、絶食・摂食で大きく変化する肝臓での小胞体ストレスとそれに対する応答に注目し、食事で発現誘導されるSdf2l1(stromal cell-derived factor 2 like 1)の発現低下が、糖尿病や脂肪性肝炎の発症や進行に関わることを明らかにした。2月27日、国立国際医療研究センターが発表した。Nature Communications誌に掲載予定。 同グループはまず、マウスの実験で、摂食によって肝臓で小胞体ストレスが一時的に惹起されることを見いだした。また、複数の小胞体ストレス関連遺伝子の中でも、とくにSdf2l1遺伝子の発現が大きく上昇していた。Sdf2l1は小胞体ストレスに応答して転写レベルで誘導を受けるが、その発現を低下させると小胞体ストレスが過剰となり、インスリン抵抗性や脂肪肝が生じた。また、肥満・糖尿病のモデルマウスでは Sdf2l1の発現誘導が低下していたが、発現を補充するとインスリン抵抗性や脂肪肝が改善した。加えてヒトの糖尿病症例の肝臓において、Sdf2l1の発現誘導の低下がインスリン抵抗性や脂肪性肝炎の病期の進行と相関することが示された。 これらの結果から、摂食に伴う小胞体ストレスに対する適切な応答が重要であるとともに、その応答不全が糖尿病・脂肪性肝炎の原因となることが示された。今後は、Sdf2l1が糖尿病・脂肪性肝炎の治療標的となること、その発現量が良いバイオマーカーとなることが期待されるという。■参考国立国際医療研究センター プレスリリース

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第18回 花粉症患者に使える!こんなエビデンス、あんなエビデンス【論文で探る服薬指導のエビデンス】

 インフルエンザがやっと落ち着いてきたと思ったら、花粉症が増える季節になりました。症状がひどい方は本当につらい季節で、身の回りでも花粉症の話題でもちきりとなっています。今回は、服薬指導で使える花粉症に関するお役立ち情報をピックアップして紹介します。アレルゲンを防ぐには?アレルギー性疾患では、アレルゲンを避けることが基本です1)。花粉が飛ぶピークタイムである昼前後と日没後、晴れて気温が高い日、空気が乾燥して風が強い日、雨上がりの翌日や気温の高い日が2~3日続いた後は外出を避けたり、マスクやメガネ、なるべくツルツルした素材の帽子などで防御したりしましょう。それ以外にも、鼻粘膜を通したアレルゲンの吸入を物理的にブロックするために、花粉ブロッククリームを直接鼻粘膜に塗布するという方法もあります。この方法は、ランダム化クロスオーバー試験で検証されており、アレルギー性鼻炎、ダニおよび他のアレルゲンに感受性のある成人および小児の被験者115例を、花粉ブロッククリーム群とプラセボ軟膏群に割り付けて比較検討しています。1日3回30日間の塗布で、治療群の鼻症状スコアが改善しています。ただし、必ずしも花粉ブロッククリームでないといけないわけではなく、プラセボ群でも症状改善効果が観測されています2)。ほかにも小規模な研究で鼻粘膜への軟膏塗布で有効性を示唆する研究3)がありますので、やってみる価値はあるかもしれません。症状を緩和する食材や栄養素は?n-3系脂肪酸大阪の母子健康調査で行われた、サバやイワシなどの青魚に多く含まれるn-3系脂肪酸の摂取量とアレルギー性鼻炎の有病率に関する研究で、魚の摂取量とアレルギー性鼻炎の間に逆の用量反応関係があることが指摘されています4)。ただし、急性の症状に対して明確な効果を期待できるほどの結果ではなさそうです。ビタミンEビタミンEがIgE抗体の産生を減少させる可能性があるとして、アレルギー性鼻炎患者63例を、ビタミンE 400IU/日群またはプラセボ群にランダムに割り付け、4週間継続(最初の2週間はロラタジン/プソイドエフェドリン(0.2/0.5/mg/kg)と併用)した研究があります。しかし、いずれの群も1週間で症状が改善し、症状スコアにも血清IgEにも有意差はありませんでした5)。カゼイ菌アレルギーは腸から起こるとよく言われており、近年乳酸菌やビフィズス菌が注目されています。これに関しては、カゼイ菌を含む発酵乳またはプラセボを2~5歳の未就学児童に12ヵ月間摂取してもらい、アレルギー性喘息または鼻炎の症状が改善するか検討した二重盲検ランダム化比較試験があります。187例が治療群と対照群に割り付けられ、アウトカムとして喘息/鼻炎の発症までの時間、発症数、発熱または下痢の発生数、血清免疫グロブリンの変化を評価しています。通年性の鼻炎エピソードの発生は治療群でやや少なく、その平均差は―0.81(―1.52~―0.10)日/年でした。鼻炎にわずかな効果が期待できるかもしれませんが、喘息には有効ではないとの結果です6)。薬物治療の効果は?薬物治療では、抗ヒスタミン薬、抗ロイコトリエン薬、アレルゲン免疫療法が主な選択肢ですが、抗ヒスタミン薬にフォーカスして見ていきましょう。比較的分子量が小さく、脂溶性で中枢性の副作用を生じやすい第1世代よりも、眠気など中枢性の副作用が少ない第2世代の抗ヒスタミン薬がよく用いられています。種々の臨床試験から、第2世代抗ヒスタミン薬は種類によって効果に大きな差はないと思われます。たとえば、ビラスチンとセチリジンやフェキソフェナジンを比較した第II相試験7)では、効果はほぼ同等でビラスチンは1時間以内に作用が発現し、26時間を超える作用持続を示しています。なお、ルパタジンとオロパタジンの比較試験では、ルパタジンの症状の改善スコアはオロパタジンとほぼ同等ないしやや劣る可能性があります8)。また、眼のかゆみなど症状がない季節性のアレルギー性鼻炎であれば、抗ヒスタミン薬よりもステロイド点鼻薬の有効性が高いことや、ステロイド点鼻薬に抗ヒスタミン薬を上乗せしても有意な上乗せ効果は期待しづらいことから、点鼻薬を推奨すべきとするレビューもあります9)。副作用は?抗ヒスタミン薬の副作用で問題になるのがインペアード・パフォーマンスです。インペアード・パフォーマンスは集中力や生産性が低下した状態ですが、ほとんどの場合が無自覚なので運転を控えるようにすることなどの指導が大切です。フェキソフェナジン、ロラタジン、またそれを光学分割したデスロラタジンなどはそのような副作用が少ないとされています10)。口渇、乏尿、便秘など抗コリン性の副作用は、中枢移行性が低いものでも意識しておくとよいでしょう。頻度は少ないですが、第1世代、第2世代ともに痙攣の副作用がWHOで注意喚起されています11)。万が一、痙攣などが起こった場合には被疑薬である可能性に思考を巡らせるだけでも適切な対応が取りやすくなると思います。予防的治療の効果は?季節性アレルギー性鼻炎に対する抗ヒスタミン薬の予防的治療効果について検討した二重盲検ランダム化比較試験があります12)。レボセチリジン5mgまたはプラセボによるクロスオーバー試験で、症状発症直後の早期服用でも花粉飛散前からの予防服用と同等の効果が得られています。予防的に花粉飛散前からの服用を推奨する説明がされがちですが、症状が出てから服用しても遅くはないと伝えると安心していただけるでしょう。服用量が減らせるため、医療費抑制的観点でも大切なことだと思います。鼻アレルギー診療ガイドラインでも、抗ヒスタミン薬とロイコトリエン拮抗薬は花粉飛散予測日または症状が少しでも現れた時点で内服とする主旨の記載があります1)。以上、花粉症で服薬指導に役立ちそうな情報を紹介しました。花粉症対策については環境省の花粉症環境保健マニュアルによくまとまっています。また、同じく環境省による花粉情報サイトで各都道府県の花粉飛散情報が確認できますので、興味のある方は参照してみてください13)。1)鼻アレルギー診療ガイドライン2016年版2)Li Y, et al. Am J Rhinol Allergy. 2013;27:299-303.3)Schwetz S, et al. Arch Otolaryngol Head Neck Surg. 2004;130:979-984.4)Miyake Y, et al. J Am Coll Nutr. 2007;26:279-287.5)Montano BB, et al. Ann Allergy Asthma Immunol. 2006;96:45-50.6)Giovannini M, et al. Pediatr Res. 2007;62:215-220.7)Horak F, et al. Inflamm Res. 2010;59:391-398.8)Dakhale G. J Pharmacol Pharmacother. 2016 Oct-Dec 7:171–176.9)Stempel DA, et al. Am J Manag Care. 1998;4:89-96.10)Yanai K, et al. Pharmacol Ther. 2007 Jan 113:1-15.11)WHO Drug Information Vol.16, No.4, 200212)Yonekura S, et al. Int Arch Allergy Immunol. 2013;162:71-78.13)「環境省 花粉情報サイト」

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EGFR変異陽性例のSCLC転化とは何なのか? どう対応するか?【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第5回

第5回 EGFR変異陽性例のSCLC転化とは何なのか? どう対応するか?1)Marcoux N, et al. EGFR-Mutant Adenocarcinomas That Transform to Small-Cell Lung Cancer and Other Neuroendocrine Carcinomas: Clinical Outcomes. J Clin Oncol. 2019;37:278-285.2)Ferrer L, Levra MG, et al. A Brief Report of Transformation From NSCLC to SCLC: Molecular and Therapeutic Characteristics. J Thorac Oncol 2019;14:130-134.EGFR変異陽性例の耐性に際して、少数ながら小細胞肺がん(SCLC)への転化が報告されているが、どの程度生じるのか、その対応策についてはまとまった報告がなされてこなかった。また、検体を用いた分子生物学的な解析も十分ではない。Journal of Thoracic Oncology(JTO)誌、Journal of Clinical Oncology(JCO)誌に、SCLC転化に関するまとまった報告がなされているので、併せて紹介する。1)について米国から、8つの病院におけるレトロ解析。2006~18年まで、67例を集積。うち、SCLCやLCNECなどの混合型は9例(13%)。患者背景は、年齢中央値56歳、女性57%、非喫煙者73%。NSCLCの診断からSCLC転化までの中央値は17.8ヵ月。前治療として、オシメルチニブを含んだ第3世代EGFR-TKIが約3割に使用されている。全生存期間中央値は31.5ヵ月。うち、SCLC転化後の生存期間中央値は10.9ヵ月であった。SCLC転化時の検体においても、NSCLC診断時にみられたEGFR変異が全例で確認されている。T790M陽性例は経過中に29%で認められたが、SCLC転化時には約80%で消失していた。SCLC転化時の検体において最も多く認められた変異はTP53(79%)であり、RB1(58%)、PIK3CA(27%)と続く。なお、次世代シークエンサーにて解析できた検体に限ると、TP53は91%で認められている。化学療法の効果については、プラチナ+エトポシドが53例と最も多く用いられており、ORRは54%、PFSは3.4ヵ月であった。タキサンが21例で用いられており(うち単剤が14例)、ORRは50%と高い。一方で、ドセタキセルはわずか6例ではあるものの全例で奏効しなかった。免疫チェックポイント阻害剤は17例で使用されているが、ORRは0%であった。2)についてイタリアとフランスの31施設によるレトロ解析。2005~17年まで、61例を集積。こちらは、SCLCやLCNECなどの混合型は省かれているが、EGFR変異陰性例を13例含む。(以降、EGFR変異陽性例のみの解析結果を示す)患者背景は、年齢中央値61歳、女性69%、非喫煙者62%。NSCLCの診断からSCLC転化までの中央値は、1)と同じで26ヵ月。全生存期間中央値は28ヵ月。うち、SCLC転化後の生存期間中央値は9ヵ月であった。この論文では遺伝子変異に関する解析は充実していないものの、やはりEGFR変異は84%で検出されている。化学療法の効果については、やはりプラチナ+エトポシドが最も多く用いられており、ORRは45%と良好であった。免疫チェックポイント阻害剤に関する検討はなされていない。解説2011年のSequistらによる報告(Sequist LV, et al. Sci Transl Med. 2011;3:75ra26.)では14%で認められるとされたSCLCへの転化、実臨床における頻度はもう少し低い気はするが確かに遭遇する機会があるし、自信をもって対処しにくかった。今回紹介した2報では、欧米におけるこれらの治療状況や予後に関して紹介されている。予想どおりであったのは主にレジメン選択・治療効果に関する内容で、SCLCに準じた治療が行われるべき、という結果であった。面白いのは、1)で紹介されているタキサンで、腺がんから発生しているSCLCであることを考えると、両者に対して有効とされるタキサンの選択は理にかなっていると思われる。逆に、少数例ながらドセタキセル単剤・免疫チェックポイント阻害剤単剤がまったく無効であった点も示唆に富む。意外だったのは、SCLC転化後の大多数でEGFR変異が検出された点ではないだろうか。患者背景も若年・女性・非喫煙者が多く、一般的なSCLCの患者背景とは合致しない。それではEGFR遺伝子変異陽性肺がんのどのような集団がSCLC転化をするのか、という疑問が生じることになるが、1)、2)いずれの報告でも紹介されている2017年JCO誌の報告(Lee JK, et al. J Clin Oncol. 2017;35:3065-3074.)が興味深い。EGFR変異陽性・SCLC転化例の全エクソン解析では、SCLC転化前後で両者に同じ変異(truncal mutation)を共有していることが示されている。つまり、腺がん検体の一部にSCLCクローンが含まれているわけではなく、腺がんから発生したSCLCと考えるのが妥当ではないか、という結果である。また、同じ論文で行われたSCLC転化例と非転化例との比較(腺がん時点での検体を使用)では、前者においてRb・p53のinactivationが有意に多かった(82% vs.3%、オッズ比131 !!)という。TCGAデータベースではRB1変異・TP53変異をともに持つ腺がんが約5%存在しており、これは彼らのコホートにおけるSCLC転化の頻度とほぼ合致していた。つまり、SCLC転化の種が診断時より存在している可能性を示唆している。彼らは、初回診断時に、スクリーニングとしてこれらのRb・p53免疫染色を提案しているが、さすがに現実的ではない。ただし、1)の文献でも述べられているように、耐性時における遺伝子変異解析全盛の時代に、生検診断の重要性に関する一石を投じた論文といえる。

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EGFR変異陽性NSCLC1次治療の新たな選択肢ダコミチニブ

 ファイザー株式会社は、ダコミチニブの承認にあたり、本年(2019年)2月、都内で記者会見を開催した。その中で近畿大学医学部内科学腫瘍内科部門 中川 和彦氏と国立がん研究センター中央病院 先端医療科長/呼吸器内科 山本 昇氏がEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療とダコミチニブについて紹介した。 2000年時点のNSCLCの標準治療はプラチナ併用化学療法で、当時の全生存期間(OS)は約1年だった。昨年、オシメルチニブが1次治療薬に承認となったEGFR変異陽性NSCLCは、無増悪生存期間(PFS)でさえ19.1ヵ月1)となった。EGFR-TKI、化学療法と治療選択肢が増えるなか、「EGFR陽性NSCLCの今の問題は、治療シーケンスである」と、中川氏は述べる。ダコミチニブの効果と安全性 そのような中、2019年1月8日にダコミチニブ(商品名:ビジンプロ)が承認になった。ダコミチニブはEGFR(HER1、ErbB1)だけでなく、HER2、HER4も不可逆的に阻害する第2世代EGFR-TKI。今回の承認は、EGFR変異陽性NSCLCの1次治療における国際共同無作為化非盲検第III相ARCHER1050を中心とした複数の臨床結果に基づくもの。この試験でダコミチニブはゲフィチニブに比べPFS、OSの改善を示した。主要評価項目であるPFSは、全集団においてダコミチニブ群14.7ヵ月、ゲフィチニブ群9.2ヵ月(HR:0.59、95%CI:0.47~0.74、p<0.0001)。日本人集団では、ダコミチニブ群(n=40)18.2ヵ月、ゲフィチニブ群(n=41)9.3ヵ月(HR:0.544、95%CI:0.307~0.961、p=0.0163)と、いずれもダコミチニブ群で有意に改善した。全生存率はダコミチニブ群34.1ヵ月、ゲフィチニブ群26.8ヵ月と、ダコミチニブ群で良好であった(HR:0.780、95%CI:0.582~0.993)であった(日本人集団は未達)。 一方、安全性について。ダコミチニブ群は皮膚系統(爪囲炎、ざ瘡様皮膚炎など)の有害事象が多いことが特徴である。有害事象の発現時期は早く、代表的な副作用である下痢、口内炎、ざ瘡様皮膚炎の初回発現の時期は全集団で7~14日、日本人集団で5~10日であった。また、ダコミチニブ群では減量例が多くみられ、減量経験のある患者の割合は全集団で66.1%、日本人集団では85.0%であった。相対用量強度は全集団で平均73.3%、日本人集団では55.7%という数値であったが、「この用量強度でも十分な効果(PFS)を示すことから、十分な副作用管理と用量調整が重要」と山本氏は述べた。2018年ガイドラインの選択肢としていかに活用するか ダコミチニブは、「肺癌診療ガイドライン2018」にもEGFR変異陽性の1次治療に選択肢の1つとしてあげられている(CQ.51 b:ダコミチニブを行うよう提案する:2B)。 EGFR変異陽性NSCLCの生命予後は大きく向上しており、「複数の治療選択肢を効率よく適用することが、患者の予後改善、QOL維持に重要。ダコミチニブは新たな選択肢として期待できる薬剤」と山本氏は言う。 ダコミチニブの日本人集団におけるPFSはオシメルチニブに匹敵する。ダコミチニブを有効に活用するポイントとして山本氏は次のように述べる。まず治療前に治療の適用を見極めること。それにはARCHER1050試験の選択・除外規準が参考になる。そして、治療開始後には減量を含めた早期の副作用対策である。一方、中川氏は減量について、「用量強度が多少低くても長く続けられることが重要」だと述べる。国際臨床試験において、日本の医師は早期に減量・休薬する傾向にある(ARCHER1050試験でも減量開始時期は全体の12週に対し日本人では8.79週)。しかし、結果としてこれが日本人集団の有効性の高さにつながっている可能性があるという。 EGFR変異陽性NSCLCの1次治療にダコミチニブが参入した。さらなる予後改善のため、この後、より良い治療シークエンスの開発が期待される。1)Ohe Y, et al. Osimertinib versus standard-of-care EGFR-TKI as first-line treatment for EGFRm advanced NSCLC: FLAURA Japanese subset. Jpn J Clin Oncol. 2019;49:29-36.■関連記事dacomitinib、EGFR変異肺がん1次治療でOS延長(ARCHER1050)/ASCO2018FLAURA試験日本人サブセット、PFS19.1ヵ月/JJCOダコミチニブ、EGFR変異陽性NSCLCに国内承認/ファイザー

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中高年の歩数にポケモンGOが影響

 『Pokemon GO(ポケモンGO)』は、位置情報機能を利用し、現実世界のさまざまな場所でポケモンを捕まえて楽しむ、スマートフォン向けゲームアプリである。2016年夏の発売以降、いまだに根強い人気のあるこのゲームの意外な効果が、東京大学の樋野 公宏氏らの研究で明らかになった。 現在、スマートフォンは健康アウトカム改善ツールとしての役割が期待され、とくに身体活動(PA)を増加させる可能性への関心が寄せられている。ポケモンGOに関するいくつかの研究ではゲーム発売前後の歩数が比較されているが、試験期間が短く、若者だけが対象となっている。今回、研究者らは、ポケモンGOの発売前後における、中高年の利用者と非利用者の歩数の差を確認し、歩数は発売後7ヵ月までの期間で多いことを明らかにした。Journal of Medical Internet Research誌2019年2月5日号掲載の報告。 対象は40歳以上の利用者(46例)と非利用者(184例)で、性別、年齢、およびPAレベルをマッチさせた。参加者は、無作為に送られたアンケートに答えた横浜市民で、市から無料の歩数計が与えられた。また、プレイ状況はアンケートを通じて確認し、プレイ状況によるポケモンGO発売前後の歩数変化は、二元配置反復測定分散分析(Two Way Repeated Measures ANOVA)で調査。ゲーム発売前の1ヵ月間の歩数と発売8ヵ月後の歩数を比較した。さらに、性別、年齢、PAレベル、およびsubjective health statusに応じたサブグループ解析を実施した。 主な結果は以下のとおり。・利用者と非利用者の平均年齢±SDは、それぞれ56.5±9.9歳、57.3±9.6歳だった。・利用者と非利用者のベースラインの平均歩数±SDは、それぞれ7,641.8±2,754.5歩、7,903.3±2,674.7歩だった。・両側検定によると、ベースラインの歩数には、年齢で有意差はなかった。・すべての対象を分析したところ、プレイ状況と時間による相互作用は、発売後8ヵ月のうち3ヵ月間で有意だった。・サブグループ解析の結果、相互作用はそれぞれ有意(男性:3ヵ月間、55~64歳のグループ:7ヵ月間、労働者:2ヵ月間、PAレベルが活発なグループ:4ヵ月間、主観的に健康な参加者:2ヵ月間)で、利用者は55歳未満の男性、労働者、活動的、そして主観的に健康である可能性がより高かった。・ほかのサブグループで相互作用が有意であったのは、たった1ヵ月間だった。・利用者群は冬季の間でも歩数を維持したが、非利用者では歩数は減少した。

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非肥満で冠動脈疾患を有する2型糖尿病の血糖管理

 非肥満者の糖尿病はインスリン抵抗性よりインスリン分泌低下による可能性が高い。それゆえ、内因性もしくは外因性のインスリン供給(IP)治療が、インスリン抵抗性改善(IS)治療よりも有効かもしれないが、最適な戦略は不明のままである。今回、国立国際医療研究センターの辻本 哲郎氏らは、非肥満で冠動脈疾患(CAD)を有する糖尿病患者の血糖コントロールについて検討したところ、IS治療のほうがIP治療より有益である可能性が示唆された。International Journal of Cardiology誌オンライン版2019年2月7日号に掲載。 著者らは、Bypass Angioplasty Revascularization Investigation in type 2 Diabetes(BARI 2D)試験データを用いて、CADを有する2型糖尿病患者におけるアウトカムイベントについて、Cox比例ハザードモデルによりハザード比(HR)と95%信頼区間(95%CI)を計算した。また、BARI 2D試験の無作為化デザインを用いて、非肥満(1,021例)および肥満(1,319例)の患者それぞれにおいてIP群とIS群を比較した。主要アウトカムは、全死因死亡、心筋梗塞、脳卒中を含む複合評価項目であった。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、非肥満患者231例と肥満患者295例で少なくとも1件の主要アウトカムイベントが確認された。・主要アウトカムイベントのリスクは、非肥満患者ではIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.30、95%CI:1.00~1.68、p=0.04)が、肥満患者では2群間に有意な差はなかった。・非肥満患者において、腹部肥満のない患者に限定しても主要アウトカムイベントのリスクはIS群よりIP群で有意に高かった(HR:1.51、95%CI:1.05~2.19、p=0.02)。・血糖コントロール戦略と非肥満患者のさまざまなサブグループとの間に有意な交互作用はみられなかった。

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会員医師が感じる医師不足・偏在の問題

 2月15日に厚生労働省において「医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)」が開催され、将来の医師数不足、診療科による医師数偏在に関する資料が公開された。CareNet.comでは、この発表をうけ、「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマに緊急アンケートを会員医師に行った。今回、その結果がまとまったのでお伝えする。 調査は、2019年2月20日にCareNet.comの医師会員を対象に、インターネット上で実施。回答者総数は340名。約6割の医師が「医師不足、診療科偏在を実感」 Q1で「今回発表された医師不足や偏在、将来の推計の数字への実感の有無」を質問したところ、「実感できる」という回答が58.2%、「実感できない」という回答が41.8%だった。 Q2でそれぞれの理由について聞いたところ、「実感できる」と回答した会員医師では、「東京一極集中への懸念」「医師の都会志向」を危惧する声が一番多く、続いて「外科、小児科、産婦人科医の成り手不足」「小児科医の高齢化、産科の閉院」「開業する医師の増加」など診療科の偏在を心配する声が多かった。また、「医局人事の崩壊」「地方での医療崩壊」「医師の就業環境が悪化の一途」など医療全般や労働環境からの声もあった。 一方、「実感できない」と回答した会員医師では、「医師数だけは足りている」「患者の過剰受診が問題」「医師が医療に専念できない環境に問題」など医師の人数よりもその働き方や偏在への是正を求める声が多かった。医師不足はマイナー診療科を超えた! Q3で「医師が不足していると思う診療科」を質問したところ、「産婦人科」(175)、「外科」(155)、「小児科」(139)、「内科」(136)、「救急科」(119)、「病理科」(77)、「麻酔科」(58)、「脳神経外科」(57)の順番で多かった(以上は複数回答)。少子化による人口減少社会の中で「産婦人科」「小児科」の担い手が減少、多忙な勤務環境や訴訟リスクなどから「外科」「救急科」を目指す医師が少なくなっているだけでなく、地方の医療機関では高齢者医療の担い手である内科医師の不足も顕在化しつつあることが示唆された。地方で勤務する医師には特別な配慮を Q4で「医師不足・偏在」への解決策について質問したところ、「病院・診療所・クリニックの適正配置」(155)、「診療報酬で地域差を設ける」(119)、「医師の就業の流動性」(107)、「患者の診療抑制の実施」(100)、「専門医制度の改革」(76)などの順番で多かった(以上は複数回答)。 また、具体的な提言について質問したところ「地方勤務医師の専門医資格の緩和」「地域枠採用の医師の拡大と固定化」「医師免許の2段階化」など、地方と都会で働く医師に差を設ける施策を求める声が多かった。また、医療制度全般では「外科の診療報酬増額」「患者の多い診療科の診療報酬減額」「大学医学部の再編成と地域義務医療の創設」など診療報酬制度や医学教育制度への変革を求める声があった。 今回の調査の詳細と、寄せられた具体的なコメントなどはCareNet.comに掲載中。■参考医療従事者の需給に関する検討会 医師需給分科会(第28回)■関連記事推計1万6,226人の内科医が2030年に不足16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

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重症患者、気管挿管時のバッグマスク換気は有益か/NEJM

 重症成人患者の気管挿管時におけるバッグマスクを用いた陽圧換気(バッグマスク換気)の実施は、未実施の患者と比べて、酸素飽和度を上昇し高度低酸素血症の発生リスクを有意に低下することが示された。米国・ヴァンダービルト大学医療センターのJonathan D. Casey氏らが、401例の患者を対象に行った多施設共同無作為化比較試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年2月18日号で発表した。気管挿管中の重症成人患者における低酸素血症は最も頻度の高い合併症であり、心停止および死亡のリスクを高める可能性がある。バッグマスク換気の実施が、誤嚥リスクを増大することなく低酸素血症の予防に有効かどうかについては明らかになっていなかった。米国7ヵ所のICUで401例を対象に試験 研究グループは2017年3月15日~2018年5月6日に、米国内7ヵ所の集中治療室(ICU)を通じて、気管挿管を受ける重症患者401例を対象に試験を行った。 被験者を無作為に2群に分け、導入から喉頭鏡検査までの間に、一方にはバッグマスク換気を行い(バッグマスク群)、もう一方には換気を行わなかった(対照群)。 主要アウトカムは、導入から気管挿管後2分間に観察された最低酸素飽和度。副次アウトカムは、酸素飽和度80%未満低下と定義した高度低酸素血症の発生率とした。高度低酸素血症発生率、バッグマスク群11%、対照群23% 登録被験者401例において、最低酸素飽和度の中央値は、バッグマスク群96%(四分位範囲:87~99)、対照群93%(同:81~99)だった(p=0.01)。 高度低酸素血症の発生率は、バッグマスク群21例(10.9%)、対照群45例(22.8%)だった(相対リスク:0.48、95%信頼区間[CI]:0.30~0.77)。 施術者の報告による挿管中に認められた誤嚥は、バッグマスク群2.5%、対照群4.0%だった(p=0.41)。気管挿管後48時間の胸部X線で認めた新たな陰影の発生率は、それぞれ16.4%、14.8%だった(p=0.73)。

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非浸潤性乳管がん、局所治療しない場合の進行・死亡リスク

 非浸潤性乳管がん(DCIS)と診断された女性の大多数が治療を受けるため、局所治療していない女性の浸潤性乳がんへの進行および死亡リスクは不明である。今回、米国・デューク大学メディカルセンターのMarc D. Ryser氏らの研究により、局所治療を受けていないDCIS患者の浸潤がん進行リスクは限られることが示唆された。また、今回の研究コホートはDCISと診断された患者の一般集団を代表するものではないが、高齢者や併存疾患の多い患者においてとくに過剰治療の可能性があることが示唆された。Journal of the National Cancer Institute誌オンライン版2019年2月13日号に掲載。 著者らは、米国国立がん研究所のSurveillance Epidemiology and End Results(SEER)Program(1992~2014)の記録で、根治切除または放射線治療を受けていないDCIS患者において、患者レベルのデータによる生存分析を行った。その後の同側浸潤がんのリスクをカプランマイヤー曲線で推定し、同側浸潤がん・対側乳がん・死亡における累積発生率を競合リスク法で推定した。 主な結果は以下のとおり。・局所治療を受けていない1,286例のDCIS患者が同定された。・診断時の年齢中央値は60歳(四分位範囲:51~74歳)、追跡期間中央値は5.5年(四分位範囲:2.3~10.6年)であった。・同側浸潤乳がんの10年リスク(net risk)は、腫瘍グレードI/IIの患者(547例)で12.2%(95%信頼区間[CI]:8.6~17.1%)、腫瘍グレードIIIの患者(244例)で17.6%(同:12.1~25.2%)、グレード不明の患者(495例)で10.1%(同:7.4~13.8%)であった。・全患者における同側浸潤がん、対側乳がん、全死亡率の10年累積発生率は、順に10.5%(95%CI:8.5~12.4%)、3.9%(同:2.6~5.2%)、24.1%(同:21.2~26.9%)であった。

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アリピプラゾール治療と精神医学的イベントリスク

 抗精神病薬で治療されている精神疾患患者に対するアリピプラゾール初回使用に関連した潜在的な精神医学的悪化を懸念する報告がいくつかあるが、とくに長期的なアリピプラゾール使用が、重篤な精神医学的イベントリスクを増大させるかは、よくわかっていなかった。カナダ・Jewish General HospitalのFrancois Montastruc氏らは、他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加(アリピプラゾール群)が、アリピプラゾール以外の抗精神病薬への切り替えまたは追加(非アリピプラゾール群)と比較し、重篤な精神医学的イベントと関連性が認められるかについて評価を行った。JAMA Psychiatry誌オンライン版2019年1月30日号の報告。 2005年1月1日~2015年3月31日の期間に、集団ベースコホート研究を実施した。Hospital Episodes Statistics(HES)とOffice for National Statistics(ONS)死亡率データベースにリンクされた世界最大の電子データベースの1つである、英国Clinical Practice Research Datalink(CPRD)よりデータを収集した。抗精神病薬新規使用患者の基本コホートにおいて、傾向スコアマッチングを使用し、アリピプラゾール群と非アリピプラゾール群に1:1の割合で割り付けた。すべての患者について、精神科治療不良、コホート参加から1年、自殺以外の原因による死亡、データベースの登録終了、試験期間終了(2016年3月31日)のいずれかに至るまで、フォローアップを行った。非アリピプラゾール群と比較したアリピプラゾール群の精神科治療不良の重篤なイベント(精神医学的入院、自傷行為、自殺)のハザード比(HR)および95%信頼区間(CI)の推定には、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。傾向スコアのマッチングに加えて、すべてのモデルは、年齢、コホート登録前6ヵ月間の精神医学的入院または自傷行為の件数、コホート登録前の他の抗精神病薬数、Index of Multiple Deprivationの五分位数で調整された。 主な結果は以下のとおり。・対象は、アリピプラゾール群1,643例(女性の割合:57.8%[949例]、平均年齢:42.1±16.8歳)、非アリピプラゾール群1,643例(女性の割合:53.0%[871例]、平均年齢:42.4±17.1歳)。・フォローアップ期間の2,692患者年のうち、重篤な精神科治療不良は391件であり、粗発生率は100患者年あたり14.52件(95%CI:13.16~16.04)であった。・ アリピプラゾール群は、非アリピプラゾール群と比較し、精神科治療不良率(HR:0.87、95%CI:0.71~1.06)、精神医学的入院率(HR:0.85、95%CI:0.69~1.06)、自傷行為または自殺の発生率(HR:0.96、95%CI:0.68~1.36)の増加と関連が認められなかった。・結果は、いくつかの感度分析にわたり一貫していた。 著者らは「他の抗精神病薬で治療されていた精神疾患患者に対するアリピプラゾールへの切り替えまたは追加は、アリピプラゾール以外の薬剤と比較し、精神医学的入院、自傷行為、自殺との関連は認められなかった。これらの結果は、大規模な観察研究における追試の正当性を示すものである」としている。■関連記事アリピプラゾール治療を見極めるタイミングは何週目か本当にアリピプラゾールは代謝関連有害事象が少ないのか抗精神病薬のQT延長リスク、アリピプラゾールはどうか

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皮膚がんの遠隔診断、その有効性は?

 遠隔医療のもたらすさまざまな効果が期待されているが、海外では一歩進んだ検討が行われているようだ。米国・カイザーパーマネンテのS. Marwaha氏らは、皮膚病変の診断に対する遠隔皮膚診断(テレダーマトロジー)と対面診断による有効性や有用性は十分に検討されていないとして、対面診断とテレダーマトロジーによる皮膚がんの診断について後ろ向きに検討。テレダーマトロジーのほうが皮膚がん検出力の向上、生検率低下、対面診断の減少において、対面診断よりも優れている可能性が示唆された。ただし、今回の検討では、各テレダーマトロジーのワークフロー遂行力の違い、紹介を受けた医師による患者選択で、バイアスが生じた可能性があった。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2019年2月1日掲載の報告。 研究グループは、対面診断2種類診断(紹介を受けた医師、非常勤の皮膚科医によるもの)と、テレダーマトロジー4種類の各ワークフローで、生検リスクおよび皮膚がんの診断について比較。プライマリケアを受診した皮膚病変を有する5万9,279例について、2017年1~6月の期間に後ろ向き研究を行った。 主な結果は以下のとおり。・1種類のテレダーマトロジーのワークフローでは、画像保管通信システムを使用して、ダーマスコープ付きデジタルカメラによる高解像度画像を大画面コンピュータモニタ(スマートフォン画面とは対照的な)に映し出して読影することができた。・同ワークフローは、紹介を受けた医師による対面診断と比較し、皮膚がん検出率が9%(95%信頼区間[CI]:2~16%)高く、生検率は4%(相対リスク[RR]:0.96、95%CI:0.93~0.99)低かった。また、対面診断のための来院は39%(RR:0.61、95%CI:0.57~0.65)減少した。・ほかのワークフローでは、有効性が乏しかった。

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andexanet alfa、第Xa因子阻害薬による大出血に高い止血効果/NEJM

 andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の使用により急性大出血を来した患者において、抗第Xa因子活性を著明に低下させ、良好な止血効果をもたらすことが、カナダ・マックマスター大学のStuart J. Connolly氏らが行ったANNEXA-4試験で示された。研究の詳細は、NEJM誌オンライン版2019年2月7日号に掲載された。andexanet alfaは、第Xa因子阻害薬の中和薬として開発された遺伝子組み換え改変型ヒト第Xa因子不活性体で、2018年、米国食品医薬品局(FDA)の迅速承認プログラムの下、アピキサバンまたはリバーロキサバン治療中に出血を来し、抗凝固薬の中和を要する患者への投与が承認を得ている。本試験は2016年に中間解析の結果が発表され、現在、エドキサバン投与例を増やすために、継続試験としてドイツで患者登録が続けられ、2019年中には日本でも登録が開始される予定だという。andexanet alfa投与後の抗第Xa因子活性の変化と止血効果を評価 本研究は、北米および欧州の63施設が参加した非盲検単群試験であり、2015年4月~2018年5月の期間に、中間解析の対象となった67例を含む352例が登録された(Portola Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18歳以上、第Xa因子阻害薬投与から18時間以内に急性大出血を発症した患者であった。被験者には、andexanet alfaが15~30分でボーラス投与され、その後2時間をかけて静脈内投与された。 主要アウトカムは2つで、(1)andexanet alfa投与後の抗第Xa因子活性の変化率、(2)静脈内投与終了から12時間後の止血効果が、事前に規定された基準で「きわめて良好」または「良好」と判定された患者の割合であった。 andexanet alfaの有効性の評価は、大出血が確認され、ベースラインの抗第Xa因子活性が75ng/mL以上(エノキサパリン投与例では0.25IU/mL以上)のサブグループで行った。andexanet alfaの止血効果は82%で良好以上、活性低下は効果を予測せず 対象の平均年齢は77歳で、48例(14%)が心筋梗塞、69例(20%)が脳卒中、67例(19%)が深部静脈血栓症、286例(81%)が心房細動、71例(20%)が心不全、107例(30%)が糖尿病の病歴を有していた。 また、128例(36%)がリバーロキサバン、194例(55%)がアピキサバン、10例(3%)がエドキサバン、20例(6%)がエノキサパリンの投与を受けていた。主な出血部位は、頭蓋内が227例(64%)、消化管が90例(26%)だった。254例(72%)が有効性評価の基準を満たした。 有効性評価では、アピキサバン群(134例)は抗第Xa因子活性中央値がベースラインの149.7ng/mLからandexanet alfaのボーラス投与終了時には11.1ng/mLへと、92%(95%信頼区間[CI]:91~93)低下し、リバーロキサバン群(100例)は211.8ng/mLから14.2ng/mLへと、92%(88~94)低下した。また、エノキサパリン群(16例)は0.48IU/mLから0.15IU/mLへと、75%(66~79)低下した。3剤とも、この効果が静脈内投与終了時まで、ほぼ維持されていた。 andexanet alfaの静脈内投与終了から4、8、12時間後の抗第Xa因子活性中央値のベースラインからの変化率は、アピキサバン群がそれぞれ-32%、-34%、-38%、リバーロキサバン群が-42%、-48%、-62%だった。 andexanet alfaの止血効果の評価は249例で行われた。このうち204例(82%)が、「きわめて良好」(171例)または「良好」(33例)と判定された。これには、アピキサバン群の83%、リバーロキサバン群の80%、エノキサパリン群の87%が含まれ、頭蓋内出血の80%、消化管出血の85%が該当した。 30日以内に49例(14%)が死亡し、34例(10%)に血栓イベントが認められた。全体として、抗第Xa因子活性の低下は止血効果を予測しなかった(AUC:0.53、95%CI:0.44~0.62)が、頭蓋内出血の患者ではある程度の予測因子であった(0.64、0.53~0.74)。 著者は、82%というandexanet alfaの止血効果は、ビタミンK拮抗薬治療に伴う大出血に対するプロトロンビン複合体製剤の試験で観察された72%に匹敵するとした。一方、抗第Xa因子活性低下は頭蓋内出血での臨床効果を予測したとはいえ、抗第Xa因子活性の測定は難しく、実臨床において有用となる可能性はほとんどないだろうと指摘している。

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会員医師の約6割が医師不足・偏在を実感(会員医師アンケート調査報告)

CareNet.comでは、過日、会員医師の方々に「現在・将来の医師不足、偏在について」をテーマにアンケートへのご協力をお願いしました。今回、その結果がまとまりましたので報告いたします。2019年2月20日にCareNet.comの会員医師を対象にインターネット上でアンケートを実施、回答者総数は340名でした。結果概要医師不足・偏在を実感している会員医師は約6割Q1 今回発表された医師不足や偏在、将来の推計の数字は実感できますか。(回答は1つ)1 実感できる2 実感できない「医師の都会志向」「医局人事」など複雑に絡み合う理由Q2で「実感できる」・「実感できない」の具体的理由についてお聞きしたところ、「実感できる」と回答した会員医師のコメントでは「医師の都会志向」、「へき地人口のさらなる減少」、「医局人事が厳しい」などのコメントがあった。また、「実感できない」と回答した会員医師のコメントでは、「医師の絶対数よりも偏在」、「厚生労働省の統計への信頼性」、「医師の頭数ではなく緊急対応の有無」などのコメントが寄せられた。Q2 「Q1」の回答の理由をお聞かせください。「1 実感できる」回答のコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●地域偏在の問題都市部への集中、へき地医療の衰退医師の将来設計が都会志向地方に医師が残らず、内科志望者も激減都会での勤務を希望する医師が多いという実感地方中核都市でさえ医師が不足している東京への一極集中が問題医師不足地域で勤務しているが、医師1人に対する負担は東京での勤務時とは比べものにならないくらい大変●診療科偏在の問題主要診療科のなり手が減ってきた外科、小児科、産婦人科では医師不足が進むと思う外科や産婦人科の医師がどんどん疲弊している新専門医制度により、さらに内科系が減る可能性近隣の産科が閉院している診療科によって忙しさが違いすぎる内科、とくに循環器、糖尿病内分泌、脳神経内科の医師が少ないように感じる当地域ではマイナー科も不足し、皮膚科受診をする際は予約が3日後になっている近隣の小児科開業医の高齢化が顕著休日、夜間の救急体制では、顕著に医師数が不足当直勤務後に引き続き勤務する先生方が多い都心部では、皮膚科や耳鼻科が非常に多い印象●医学教育、行政の問題医局人事が大変厳しい将来の見通しが立っていたのに、厚生労働省の対応が遅すぎる自分の医療圏では公的病院の医師がどんどん辞めていくどこの医療機関も医師確保に苦労している地域枠で入学した医師はまず不足地域で働くべき身近で医療崩壊が起こっている若い医師の派遣がない●医療そのものの問題医師の就業環境が劣悪すぎるしばらくは高齢者が増加するため、医師が必要になるのは明らか医師の絶対数がやはり不足「2 実感できない」回答のコメント偏在は実感できるが、医師の絶対数が不足しているとは思えない医療の現場で感じる実感と違うが、将来は不足すると思う医師の不足よりも、フリーアクセスや自己負担が少ないことによる過剰受診が問題表面上の数字よりも医師の雑用や勤務内容などの改善が先だと考える厚生労働省の統計はうのみにできない人口過疎地に医療だけ充実させても解決にはならない人口そのものも偏在があるのではないか医師不足県にいるが、実際周囲で医師が不足しているとの声は聞かれない産婦人科や小児科は頭数ではなく、当直や緊急対応ができるか否かが問題コンビニ出店並のクリニック密集地域に住んでいるので実感がない意外にも「内科」も医師不足Q3で「医師不足だと思う診療科」を尋ねたところ、多い順番で「産婦人科」(175)、「外科」(155)、「小児科」(139)、「内科」(136)、「救急科」(119)の順だった。「内科」の回答が多かった点、ひと頃問題になった「麻酔科」を挙げる会員医師が少なかった点から現場のニーズが垣間見られた。Q3 現在、医師が不足していると思う診療科をお選びください。(回答はいくつでも)1 内科2 小児科3 皮膚科4 精神科5 外科6 整形外科7 産婦人科8 眼科9 耳鼻咽喉科10 泌尿器科11 脳神経外科12 放射線科13 麻酔科14 病理科15 救急科16 形成外科17 リハビリテーション科18 その他19 不足していると思う診療科はない画像を拡大する必ずしも医師数増加だけでない解決策もあるQ4で「医師不足・偏在」への解決策について尋ねたところ、多い順に「病院・診療所・クリニックの適正配置」(155)、「診療報酬で地域差を設ける」(119)、「医師の就業の流動性」(107)の順だった。医師への待遇改善と偏在をなくすことで解決できる内容が多くを占めた。また、「8 その他」へ寄せられた提言として、「医師免許の全国区と地域区の2本立て化」、「女性医師の待遇改善」、「患者数の多い診療科の報酬減」、「患者の受診への意識改革と啓発」などの声が寄せられた。Q4 医師不足や偏在の解決には何が必要だと思われますか。(回答はいくつでも)1 医学部の定員増員2 医師の就業の流動性3 専門医制度の改革4 病院・診療所・クリニックの適正配置5 患者の診療抑制の実施6 診療報酬で地域差を設ける7 外国人医師や医師以外の医療者の活用8 その他画像を拡大する「8 その他」で寄せられたコメント(一部割愛、簡略化しておりますことをご了承ください)●医師や専門医資格への提言地方に魅力ある教育病院を設置し、若手医師を勤務させる地方医師の専門医更新の免除医師国家試験の合格基準を2段階とし、上位は全国区免許、下位は医師不足県限定免許とする。診療実績で全国区免許へ格上げする女性医師の待遇を改善する医師不足が指摘されている診療科へ進む医師へのメリットを増やす勤務医の所得を増やす医学部の地域合格枠の拡大と地域義務年限の引き上げ医師のボランティア的な仕事に対しての十分な報酬適切な人材を医師にすること●医療制度や診療報酬への提言地域枠への補助金制度を直接医師に支払う急性期病院の内科・外科の診療報酬を上げる患者数が多い診療科の診療報酬を削減する開業医を減らす方策、たとえば勤務医の給与控除を増やす医局制度の復活と強制的な医師のローテーション応召義務の廃止都会の大学医学部の統廃合または自治医大化医師の強制配置●社会への提言医師法など時代に合わせたフレキシブルな改正患者の受診への意識改革と啓発アンケート概要内容「現在・将来の医師不足、偏在についてお聞かせください」実施日2019年2月20日調査方法インターネット対象ケアネット会員医師340名アンケート調査にご協力いただき、ありがとうございました。関連記事推計1万6,226人の内科医が2030年に不足16県が医師少数、改正医療法で是正となるか?

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