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5001.

心房細動アブレーションは患者の予後を改善するのか(解説:今井靖氏)-1110

 本邦においても100万人近い心房細動患者が存在し、動悸、胸部不快感などの自覚症状をもたらすのみならず、脳塞栓、心不全の原因としても重要な疾患である。DOACの普及に伴い抗凝固療法の導入率が増加したが、その時流と並行して心房細動に対するカテーテルアブレーションも増加の途にある。リズムコントロールの手段として薬物療法に比して顕著に有効性が高く、薬物治療抵抗性、有症候性心房細動患者のQOL改善の手段として非常に優れた治療と考えられる。 一方、心房細動カテーテルアブレーションの長期生存率あるいは脳梗塞リスクに与える効果については今まで前向き試験として明らかにされたものはなく、CABANA試験において心房細動症例をカテーテルアブレーションあるいは薬物療法に割り付け、前者が後者に比較して予後に優れるか否かが検証された。医師主導・オープンラベルの10ヵ国にまたがる多施設国際共同研究であるが、対象として65歳以上、あるいは脳梗塞に対するリスク因子を1つ以上有する65歳未満の症候性心房細動2,204例を登録(2009年11月~2016年4月)、2017年末まで追跡がなされた。主要エンドポイントは死亡、後遺症を残す脳卒中、重症の出血あるいは心停止の複合とされ、副次エンドポイントとしては全死亡、死亡+心臓血管系入院、心房細動再発などである。2,204例(中央値68歳、女性37.2%、42.9%が発作性)が組み入れられ、カテーテルアブレーション群のうち1,006例(90.8%)が手技を受けた。一方、薬物療法群のうち301例(27.5%)が結果的にカテーテルアブレーションを受けていた。 intention-to-treat(ITT)解析では、追跡期間中央値48.5ヵ月において主要エンドポイントは、カテーテルアブレーション群89例(8.0%)、薬物療法群101例(9.2%)で、統計的有意差を認めなかった(ハザード比[HR]:0.86、95%信頼区間[CI]:0.65~1.15、p=0.30)。副次エンドポイントの全死亡では差がなかったが(5.2% vs.6.1%、HR:0.85、95%CI:0.60~1.21、p=0.38)、死亡または心臓血管系入院(51.7% vs.58.1%、HR:0.83、95%CI:0.74~0.93、p=0.001)、および心房細動の再発(49.9% vs.69.5%、HR:0.52、95%CI:0.45~0.60、p<0.001)は統計的有意差をもってカテーテルアブレーション群で低率であった。残念ながらカテーテルアブレーションによる主要エンドポイント減少効果が認められなかった。 実際に治療を受けたか否かという観点でper protocol解析を行うと、主要エンドポイントにおいてカテーテルアブレーションのHRは0.74(95%CI:0.54~1.01)、12ヵ月で見た場合、0.73(95%CI:0.54~0.99)と差を認めないか僅差であった。副次エンドポイントの1つである全死亡で見ると、6ヵ月で0.69(95%CI:0.47~1.10)、12ヵ月で0.68(95%CI:0.47~0.99)であった。この試験における限界として、クロスオーバーが相当数あること、イベント発生数が期待されたよりも低率に抑えられていたことなどがあり、研究デザインなどについても検討すべき点が含まれると考えられた。しかしこの研究からの日常臨床における解釈としては、長期予後改善効果は証明されていないが、症状が強い薬物治療抵抗性の心房細動アブレーションに対する適応の妥当性は堅持されるものと考えられる。 心不全合併心房細動については、昨年報告されたCASTLE-AF試験において、カテーテルアブレーション群が薬物療法群に比較して予後を改善することが報告され注目された。心房細動が心不全の惹起因子となっている場合、心房細動の抑制が心不全改善に寄与することが期待されるが、一方、心不全・心機能悪化の結果として心房細動が生じた場合、心房細動は予後不良のマーカーであってそれをカテーテル治療で抑制しても効果が得られないという可能性もあるため、心不全合併心房細動についても症例ごとに治療適応を判断する必要性があると思われる。今回のCABANA試験、またCASTLE-AF試験においてもカテーテルアブレーション手技は5~10年前あたりからの登録症例を最近まとめた研究であり、カテーテルアブレーション技術自体は高周波アブレーションにおいても3-Dガイド、コンタクトフォースなどのさらなる技術革新、クライオ、ホット、レーザーなどのバルーン技術の積極的導入など目覚ましい進歩があり、現在の日々の診療データ集積から心房細動アブレーションの有効性・問題点について検討を続ける必要性がある。

5002.

抗精神病薬持効性注射剤の治療継続に影響を及ぼす因子の検討

 抗精神病薬持効性注射剤(LAI)は、統合失調症患者の症状を軽減し、再発・再燃を防ぐための薬物治療として用いられる。藤田医科大学の谷口 美紘氏らは、LAIの治療継続に影響を及ぼす因子について検討を行った。Biological & Pharmaceutical Bulletin誌2019年第7号の報告。 対象は、2009年10月~2017年6月までに藤田保健衛生大学(現、藤田医科大学)においてリスペリドン、パリペリドン、アリピプラゾールを含むLAI治療を受けている統合失調症患者。6ヵ月間のLAI治療継続率を評価し、患者背景や投薬歴などの特徴を収集した。さらに、これまでの研究に基づき、LAI導入理由により、対象患者を2つのクラスターに分類した。クラスターIは、コンプライアンス不良や前治療無効患者で構成され、クラスターIIは、病識、教育レベルの高さ、抗精神病薬治療に対する前向きさ、洞察力の高さ、治療関係の良さなどを有する患者で構成されていた。 主な結果は以下のとおり。・対象患者は、82例(平均年齢44.9±15.0歳)であった。・クラスター別の内訳は、Iが54例、IIが28例であった。薬剤別の内訳は、リスペリドン36例、パリペリドン15例、アリピプラゾール31例であった。・6ヵ月後のLAI治療継続率は、63.4%(52例)であった。・薬剤ごとの治療継続患者は、リスペリドン17例(47.2%)、パリペリドン8例(53.3%)、アリピプラゾール27例(87.1%)であり、リスペリドンと比較した治療継続率では、アリピプラゾールにおいて有意な差が認められた(p=0.001)。・LAI治療継続に影響を及ぼす因子は、クラスターII(調整オッズ比[aOR]:5.74、p=0.017)、同成分からの切り替え(aOR:7.13、p<0.001)、ジアゼパム換算率(aOR:0.88、p<0.001)であった。・6ヵ月以内にLAI治療を中止した理由のうち、最も多かったのは効果不十分(14例、47%)であり、次いで忍容性不良(6例、20%)、中断(3例、10%)であった。 著者らは「LAI治療は、クラスターIIの患者において治療継続率の有意な改善を示した。 さらに、他の因子や中止理由を考慮すると、LAIは、より安定している患者に対して開始することが望ましい」としている。

5003.

NT-proBNP高いと認知症リスクが2.5倍~久山町研究

 心疾患と認知症の関連が疫学研究で示唆されているが、血清NT-proBNP(N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド)値と認知症の関連を評価した前向き研究はほとんどない。今回、九州大学の永田 拓也氏らが久山町研究で調べたところ、血清NT-proBNPが300pg/mL以上では54pg/mL以下に比べて認知症リスクが2.5倍高いことが示された。Journal of the American Heart Association誌2019年9月3日号に掲載。 本研究の対象は、地域在住の認知症ではない60歳以上の日本人高齢者1,635人(女性57%、平均年齢±SD:70.8±7.7歳)で、10年間追跡調査した。血清NT-proBNP値を4つのカテゴリー(54pg/mL以下、55~124pg/mL、125~299pg/mL、300pg/mL以上)に分けて評価した。Cox比例ハザードモデルを用いてハザード比を推定した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間中、認知症全体の発症が377人、アルツハイマー病が247人、血管性認知症が102人に認められた。・年齢・性別の調整後、認知症全体の発症率は1,000人年当たり31.5で、血清NT-proBNP値の低いカテゴリーから順に16.4、32.0、35.7、45.5と有意に増加した(傾向のp<0.01)。・交絡因子の調整後、血清NT-proBNPが300pg/mL以上では54pg/mL以下より、認知症全体のリスクが有意に高かった(ハザード比:2.46、95%CI:1.63~3.71)。・アルツハイマー病や血管性認知症においても同様のリスクが認められた。・既知の危険因子による認知症予測モデルに血清NT-proBNPを組み込むことによって、予測能力が有意に改善した(c統計量:0.780~0.787、p=0.02、NRI:0.189、p=0.001、IDI:0.011、p=0.003)。

5004.

fremanezumab、4クラス抵抗性の片頭痛に有効/Lancet

 最大4クラスの予防薬が奏効せず、治療困難な片頭痛患者において、fremanezumabはプラセボに比べ片頭痛の発現を抑制し、忍容性も良好であることが、オランダ・ライデン大学医療センターのMichel D. Ferrari氏らが行ったFOCUS試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年8月16日号に掲載された。カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)またはその受容体を標的とする抗体は、片頭痛発作の予防において有効性が確認されている。fremanezumabは、CGRPの2つのアイソフォームに選択的かつ強力に結合する完全ヒト化モノクローナル抗体である。2種の投与法とプラセボを比較する無作為化試験 本研究は、14ヵ国(ベルギー、チェコ、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、スイス、英国、米国)の104施設が参加した二重盲検プラセボ対照無作為化第IIIb相試験であり、2017年11月10日~2018年7月6日に患者登録が行われた(Teva Pharmaceuticalsの助成による)。 対象は、年齢18~70歳、50歳またはそれ以前に片頭痛の診断を受け、12ヵ月以上の片頭痛の既往歴があり、試験登録時に反復性または慢性の片頭痛がみられ、過去10年間に2~4種のクラスの片頭痛予防薬(β遮断薬、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬、Ca拮抗薬など)の投与を受けたが、治療に失敗した患者であった。 被験者は、fremanezumabを3ヵ月に1回皮下投与する群(1ヵ月目:675mg投与、2および3ヵ月目:プラセボ投与)、同薬を毎月1回皮下投与する群(1ヵ月目:反復性は225mg、慢性は675mg投与、2および3ヵ月目:反復性、慢性とも225mg投与)またはプラセボ群に無作為に割り付けられ、12週の治療が行われた。 有効性の主要アウトカムは、12週の治療期間における、1ヵ月間に片頭痛が発現した平均日数のベースラインからの変化とした。中等度以上の頭痛や急性期治療薬の使用も少ない 838例が登録され、3ヵ月投与群に276例、毎月投与群に283例、プラセボ群には279例が割り付けられた。全体の平均年齢は46.2歳(SD 11.0)、700例(84%)が女性、786例(94%)が白人であった。 片頭痛の診断からの平均経過期間は24.2年(SD 13.4)であり、慢性片頭痛(509例[61%])が反復性片頭痛(329例[39%])よりも多かった。無効であった片頭痛予防薬のクラスは、β遮断薬、抗けいれん薬、三環系抗うつ薬の割合が高かった。 12週の治療期間における、1ヵ月間に片頭痛が発現した平均日数のベースラインからの変化は、プラセボ群(最小二乗平均[LSM]:-0.6[SE 0.3])と比較して、3ヵ月投与群(LSM:-3.7[0.3]、プラセボ群とのLSMの差:-3.1、95%信頼区間[CI]:-3.8~-2.4、p<0.0001)および毎月投与群(LSM:-4.1[0.34]、プラセボ群とのLSMの差:-3.5、95%CI:-4.2~-2.8、p<0.0001)が、いずれも有意に低下した。 12週における、1ヵ月間に中等度以上の頭痛が発現した平均日数のベースラインからの変化についても、プラセボ群に比べ3ヵ月投与群(プラセボ群とのLSMの差:-3.2、95%CI:-3.9~-2.5、p<0.0001)および毎月投与群(プラセボ群とのLSMの差:-3.6、95%CI:-4.3~-2.9、p<0.0001)が、いずれも有意に低下した。 また、fremanezumabの両投与群はプラセボ群との比較において、あらゆる急性期治療薬の1ヵ月間の平均使用日数がベースラインから有意に短縮し(3ヵ月群:プラセボ群とのLSMの差:-3.1、95%CI:-3.8~-2.4、p<0.0001、毎月群:-3.4、-4.0~-2.7、p<0.0001)、同様に片頭痛に特異的な急性期治療薬(トリプタン、エルゴット化合物)についても有意な短縮が認められた(3ヵ月群、毎月群とも、p<0.0001)。 1件以上の有害事象(3ヵ月群55%、毎月群45%、プラセボ群48%)、1件以上の重篤な有害事象(<1%、1%、1%)、投与中止の原因となった有害事象(<1%、1%、1%)の頻度は、3群でほぼ同等であった。頻度の高い有害事象は、注射部位紅斑(7%、6%、5%)、注射部位硬結(4%、5%、4%)、注射部位疼痛(4%、3%、3%)、鼻咽頭炎(5%、2%、4%)などであった。 著者は、「プラセボと比較した治療効果は、患者の重症度が高かったにもかかわらず、あるいはおそらくその結果として、これまでに行われたfremanezumabや他の片頭痛予防薬の研究に比べて高かった」としている。

5005.

2次予防のアスピリン、投与すべき患者は?~MAGIC試験

 心血管イベントの再発予防のための低用量アスピリンの使用は、リスク-ベネフィットのバランスに基づくべきである。今回、国際医療福祉大学臨床医学研究センター/山王病院・山王メディカルセンター脳血管センターの内山 真一郎氏らが、わが国の全国規模の多施設共同前向き研究であるMAGIC(Management of Aspirin-induced Gastrointestinal Complications)試験において、心血管疾患の既往のある患者のアスピリン長期使用による心血管イベントと出血イベントの発生率を調査した。その結果、虚血性脳卒中または一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、複数の心血管疾患の既往のある患者ではベネフィットがリスクを上回っていたが、心房細動または静脈血栓塞栓症の既往のある患者ではリスクとベネフィットが同等であった。Heart and Vessels誌オンライン版2019年8月24日号に掲載。 本研究は、血栓塞栓リスクのある心血管疾患(虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、心房細動、静脈血栓塞栓症)の既往があり、アスピリン(75~325mg)を服用している日本人患者1,506例を対象とし、重大な心血管イベント(虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作、冠動脈疾患、心血管死、血管形成術またはステント留置、心血管疾患による入院)および出血イベント(入院と輸血のいずれか、もしくは両方とも必要な大出血)の発生について1年間調査した。対象患者を、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作(540例)、冠動脈疾患(632例)、心房細動/静脈血栓塞栓症(232例)、これらの2つ以上に該当(101例)の4つのカテゴリーに分け、心血管イベントおよび出血イベントの年間発生率を評価した。 主な結果は以下のとおり。・心血管イベントは61例(3.82%/年)、出血イベントは15例(0.93%/年)に発生した。・各カテゴリーにおける心血管イベントおよび出血イベントの年間発生率は、虚血性脳卒中/一過性脳虚血発作では2.81%および0.93%、冠動脈疾患では5.32%および0.75%、心房細動/静脈血栓塞栓症では1.15%および1.15%、2つ以上に該当した患者では6.44%および0.91%であった。

5006.

不眠症とがんリスク~メタ解析

 近年、最も一般的な睡眠障害の1つである不眠症とがんとの関連について新たな研究が発表されているが、それらの結果は一貫していない。社会の発展や生活スピードの加速により、不眠症を経験する人は増加している。中国・Anhui Medical UniversityのTingting Shi氏らは、不眠症とがんとの関連を明らかにするため、メタ解析を実施した。Journal of Sleep Research誌オンライン版2019年7月28日号の報告。 関連文献は、7つのデータベースおよび補足検索により収集した。厳密なスクリーニング後、対象者57万8,809例とがんイベント7,451件を含む8つのコホート研究(プロスペクティブ研究:7件、レトロスペクティブ研究:1件)が抽出され、分析に組み込まれた。 主な結果は以下のとおり。・不眠症患者は、非不眠症者と比較し、全体的ながんリスクが24%増加していた。・感度分析では、安定した相関関係が認められた。・サブグループ解析では、女性を対象とした研究においてがん発症リスクが有意に高かったが(HR:1.24、95%CI:1.01~1.53)、男性では認められなかった(HR:1.28、95%CI:0.90~1.80)。・特定のがん種については、甲状腺がんのみで、プールされたHRが有意に高く(HR:1.36、95%CI:1.12~1.65)、他のがん種では認められなかった(p>0.05)。 著者らは「本調査結果より、不眠症はがん発症の早期警告として機能する可能性と、早期発見と早期介入の機会を提供する可能性が示唆された。限定的な研究数と潜在的なバイアスのため本調査結果は慎重に扱う必要があり、さらなる追加研究が必要性である」としている。

5007.

人工関節治療の“侵襲”を最小限へ-Makoシステム

 日本では、年間約8万例の人工膝関節置換術、5万例以上の人工股関節全置換術が行われている。患者がこの人工関節置換術に期待するのは、痛みからの開放はもちろん、術後のQOLやADLを、いかにこれまでの生活水準に近づけられるかどうかということである。 2019年8月6日、「整形外科領域における日本初のロボティックアーム手術支援システム『Makoシステム』が変える人工関節治療~人工関節置換術の革新性~」と題したプレスセミナーが開催(主催:日本ストライカー株式会社)された。セミナーでは、柴沼 均氏(神戸海星病院リウマチ・人工関節センター)が「Mako(メイコー)システム」(Mako)の臨床での有用性について解説し、デモンストレーションを行った。Makoの特徴 Makoとは、整形外科領域において日本で初めて承認されたロボティックアーム手術支援システムで、3次元ナビゲーションシステムにロボティックアームを取り入れたものである。患者個々のCTデータに基づく術前計画と3D画像化、ロボティックアームによる補助機能を搭載しているため、既存の人工関節術と比較して「術後回復が早く、軟部組織の安全性が担保される。これまで30分~1時間かけて行っていたPlanningの時間が不要になる」と同氏は特徴付けた。さらに、「ナビゲーションに従って手術器具を動かせる。そして、傷んだ骨だけを削るので、削る必要のない部分に差し掛かると止まる。患者の足が動いても制御されるため、血管損傷のリスクが回避できる」と、軟部組織温存や最小侵襲での手術による手術精度の向上、さらに早期リハビリ介入などの有用性について説明した。 Makoは2019年6月1日付で人工股関節置換術に、7月1日付で人工膝関節全置換術についての保険適用を取得している。既存システムvs.Mako 同氏はマニュアル人工股関節術との比較研究を紹介。既存のマニュアル手術とMakoを用いた手術に対象者をそれぞれ50例ずつ割り付け、人工股関節の設置角度に関する正確性評価としてSafe ZoneをLewinnekとCallananでみたところ、Lewinnek(マニュアル:80%vs. Mako:100%)、Callanan(同:62%vs. 92%)という結果であった。同様に人工膝関節の症例において、それぞれ60例ずつ割り付けたところ、術後早期の疼痛は有意にMakoで低かったことが示された。 このほか、ナビゲーションを使用して人工股関節手術を施行した群とMako使用群を比較すると、「入院期間の短縮は見られなかったが、杖つき自律歩行の開始や痛みの改善は、ほかの手術方法と比較して有意差をもって早かった」と同氏はコメントした。 このようにMakoにより患者は痛みから早期に開放されるが、これ以外にも多くのベネフィットがあるという。以下に患者、医療従事者それぞれ対するベネフィットを示す。<患者にとってのベネフィット>・低侵襲での手術による、出血量の減少や術後の高い機能回復。さらに、術後疼痛の軽減や入院期間の短縮が期待できる・手術技術の正確性による、脱臼率の低下や術後の高い機能回復。さらに、軟部組織の安全性担保や術後疼痛の軽減について期待できる<医療従事者にとってのベネフィット>・医師の手術負担の軽減につながる。また、手術器具の減少と準備効率化も可能になる・操作範囲が明示されることで手技の客観的評価が可能となり、教育的意義も期待できる・正確な骨切り、コンポーネントの設置により、良好な治療成績を期待できる・軟部組織バランスや術中キネマティクスの評価が可能となるため、将来的な応用の可能性もある・国内外への最新研究発表が可能 最後に同氏は、これまでの手術と異なる点として「患者の骨とコンピュータ上のCTデータとの位置合わせ(レジストレーション)のため、大腿骨、脛骨部分にピンを埋め込まなければならず、そこに時間を要する。だが、慣れてくると5分くらいで完了するので、現在の手術時間とほぼ変わらない時間で手術可能」と自身の経験についてコメントした。

5008.

虚血性心筋症におけるCABG後の心筋生存能と生存転帰の関連/NEJM

 心筋生存能(viability)は、虚血性心筋症患者における冠動脈バイパス術(CABG)の長期的な利益とは関連しないことが、米国・ニューヨーク医科大学のJulio A. Panza氏らが行ったSTICH試験のサブスタディーで明らかとなった。生存可能な心筋の存在は、治療法にかかわらず左室収縮能の改善をもたらすものの、その改善は長期生存とは関連しないことも示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月22日に掲載された。血行再建術の利益を受ける可能性のある虚血性心筋症患者の同定における、心筋生存能評価の役割に関しては、議論が続いている。さらに、左室機能の改善は血行再建の目標の1つだが、その後の転帰との関連は不明とされる。CABGの生存転帰の改善効果を検証 本研究は、STICH試験(多施設共同非盲検無作為化試験、患者登録期間2002~07年)の参加者1,212例のうち、心筋生存能の評価が行われた患者において、CABGと適切な薬物療法は薬物療法単独に比べ生存転帰が良好との仮説を検証するサブスタディーである(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]の助成による)。 対象は、CABGを受ける予定で、左室駆出率が35%以下の冠動脈疾患患者601例(平均年齢60.7±9.4歳、男性87%)であった。単一光子放射断層撮影(SPECT)またはドブタミン負荷心エコー検査、あるいはこれら両方を用いて、心筋生存能を前向きに評価した。 被験者は、CABG+薬物治療を受ける群(298例)または薬物治療のみを受ける群(303例)に無作為に割り付けられた。左室駆出率は、ベースライン時と4ヵ月のフォローアップ後に318例で測定された。 主要エンドポイントは、全死因死亡とした。フォローアップ期間中央値は10.4年だった。左室駆出率改善は、長期生存に重要な機序ではない 全死因死亡の発生率は、CABG+薬物治療群(182/298例)が、薬物治療単独群(209/303例)よりも低かった(補正ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.60~0.90)。 487例(81%)が心筋生存能を有すると判定され、残りの114例(19%)は心筋生存能がないと判定された。10.4年のフォローアップ期間中に391例(65%)が死亡し、全死因死亡率は、心筋生存能を有する患者(313/487例)とそれがない患者(78/114例)の間に差はなく(HR:0.81、95%CI:0.63~1.03、p=0.09)、関連のある予後因子で補正後も有意差は認めなかった(p=0.64)。心筋生存能の有無と、CABG+薬物治療群の薬物治療単独群を上回る有益な作用に、有意な交互作用はみられなかった(交互作用:p=0.34)。 試験開始から4ヵ月以内に死亡した34例を除く567例のうち、ベースラインと4ヵ月後の双方で左室駆出率の評価を受けた318例(56%)における全死因死亡率は、左室駆出率が改善された患者(105/167例)と改善されなかった患者(91/151例)の間に差はなかった(補正後HR:1.00、95%CI:0.74~1.34)。心血管系の原因による死亡についても同様の結果であった。 心筋生存能を有する患者では、CABG+薬物治療群および薬物治療単独群の双方で左室駆出率が有意に改善されたのに対し、心筋生存能のない患者ではいずれの群も左室駆出率は改善されなかった。また、全死因死亡および心血管系の原因による死亡に関して、心筋生存能の有無と、左室駆出率の改善の有無との間に有意な交互作用は観察されなかった。 著者は「これらの知見は、心筋生存能がCABGによる長期の有益な効果と関連するとの仮説を支持しない」とし、「左室駆出率の改善は、心筋生存能を有する患者で起きる可能性が高く、それは血行再建術を受けた患者に限定されず、薬物または手術による治療を受けた虚血性心筋症患者の長期生存において重要なメカニズムではない」と指摘している。

5009.

TAVI周術期の脳卒中は減少していない(解説:上妻謙氏)-1109

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)は高齢者心不全の原因の1つとなっている大動脈弁狭窄症(AS)に対する根本的介入を行うもので、手術ハイリスク、超高齢者に対する治療として早くから第1選択となっていたが、すでに無作為化試験のエビデンスがそろって、米国FDAは手術低リスクの症例にまで適応を拡大した。本論文は米国の胸部外科学会(STS)と米国心臓病学会(ACC)の合同で行われている経カテーテル弁膜症治療に関するTranscatheter Valve Therapy(STS/ACC TVT)Registryデータを用いた、大規模データベース研究の結果である。 今回発表されたHudedらによるJAMAの論文は、全米521病院の2011年11月~2017年5月までの10万例を超えるTAVIの30日データを検討している。結果、脳卒中の発症頻度はデバイスの進歩にもかかわらず2012年から2017年の経年でほとんど変化しておらず、TIA平均は0.4%、脳卒中全体平均で2.3%であった。脳卒中発生の中央値は2.0日で、約半数が1日以内に発生しており、68.4%が3日以内の発生であった。年間症例数100件未満と100件以上で比較しても発生率は差がなく、症例規模にかかわらず一定の割合で発生していることがわかる。脳卒中発生患者は非発生患者に比べて高齢で、女性に多く、脳卒中既往患者、末梢動脈疾患・高血圧・全周性石灰化大動脈・頸動脈狭窄の合併などで多かったが、心房細動の既往の有無では差がなかった。ただし、術後に発生する新規の心房細動は脳卒中患者に多かった。大腿動脈アプローチのほうが脳卒中は少なく、STSスコアが高い、全身麻酔、自己拡張型人工弁が、脳卒中発生のグループに多かった。また抗血小板薬と抗凝固薬の服用に関しては脳卒中の発症頻度に影響がなかった。 本論文の結果をみると、TAVIに伴う脳卒中はデバイスの大動脈あるいは大動脈弁通過に伴う機械的な血管壁のダメージが原因と考えられる。これは日本でも大幅に症例数が増えても、脳梗塞発症率が1%前後から低下していないことから同様に考える必要がある。今後TAVIの適応拡大を進めていくに当たっては、脳保護デバイスや血管壁に優しい細いデバイスなどの開発が必要と考えられる。

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第27回 空飛ぶ心電図~患者さんの命を乗せて~(前編)【Dr.ヒロのドキドキ心電図マスター】

第27回:空飛ぶ心電図~患者さんの命を乗せて~(前編)心電図と言えば、生理検査室や診療所、病棟などのベッド上で記録し、病院内で閲覧する“静”なイメージがありませんか? でも、最近では、大切なメッセージを届けてくれる伝書鳩のように、遠くで記録された心電図が病院に届く技術があるんです。いわば“空飛ぶ心電図”かな(笑)。正式には「伝送心電図」と言いますが、院外の救急現場で記録され、電子データとして心電図が病院に送られます。このシステムが、診療の質や効率を向上させることが確認されてきています。この、伝送心電図の活用法について、京都での実際の取り組みを谷口 琢也先生(京都府立医科大学循環器内科)へDr.ヒロが取材しました。2回シリーズの前編をどうぞ!◆聞き手:Dr.ヒロ(以下、ヒロ)◆ゲスト:谷口 琢也先生(以下、谷口)谷口 琢也氏京都府立医科大学医学部卒業。松下記念病院で心筋虚血(核医学)に関する薫陶を受け、2007年より国立循環器病センター心臓血管内科CCUに所属、モバイルテレメディシンシステムに触れる。2013年からは京都府立医科大学附属北部医療センターで心不全レジストリなどの臨床研究を主導すると共に、クラウド型12誘導心電図伝送システムを導入。2018年に京都大学大学院で臨床疫学の方法論を系統的に学び、現在、母校にて社会に還元できる臨床研究の推進に取り組む。医学博士、社会健康医学修士、総合内科専門医、循環器専門医、心血管カテーテル治療専門医を取得。趣味は美食探訪、得意な家事は皿洗い。(ヒロ)Willem Einthoven先生が発明した心電図は、100年以上も前から有用性が裏付けられており、今もなお臨床の最前線で活用されています。そんな歴史を有する“レジェンド検査”が、現代の情報技術(IT)と融合し、さらなる進化を遂げています。救急現場で12誘導心電図を記録し、いち早く専門医の元に届ける「伝送心電図システム」は、循環器系救急のトピックの一つでもありますが、“時間との闘い”的な側面の強い心血管疾患の診療に革新をもたらす可能性のある技術だと思います。心電図や不整脈に関して、ボクは普段から情報収集を怠っていないつもりでしたが、同システムを用いた救急診療を先導した経歴を持つ先生が学内にいるのを見落としていました(笑)。「一度、イイネ!と思った企画は必ずやる」-ボクの信条が今回も実現しました。全国の読者の方々にもきっとお役に立つかと思い、本日は、心電図の伝送システムの現状と課題について伺います。(谷口)よろしくお願いします。<質問内容>【質問1】伝送心電図の概略について教えてください。【質問2】この伝送心電図の取り組みは、どこの地域・どこの病院で行われていますか?【質問3】なぜ、この地域(京丹後医療圏)が選ばれたのでしょうか?【質問4】全国のほかの地域で同様な取り組みをしている場所はありますか?【質問5】心電図はどこでとるのですか? 【質問6】プライバシー面での配慮はありますか? 同意をとっていますか?【質問7】心電図検査の要否、クラウド送信などの判断は、どの時点で誰がするのでしょうか?【質問8】伝送された心電図は「誰」が「どこ」で読むのでしょうか?【質問9】心電図の記録、送信、到着までの時間は大体どれくらいですか?【質問10】心電図はいつ伝送しますか?救急車が出発してから送るのですか?【質問11】心電図の記録や送信に時間がかかったことで、診断や治療が遅れたケースはありますか?【質問12】この伝送心電図システムが最もターゲットとしている疾患は何でしょうか?【質問13】伝送心電図が有効だった典型例を教えて下さい。【質問14】“狙い通り”のSTEMI症例は、実際に年間どれくらいの件数がありますか?【質問1】伝送心電図の概略について教えてください。(谷口)正式名称は「クラウド型12誘導心電図伝送システム」といい、救急車に搭載されるものです。このシステムのポイントは、これまでの救急現場で心電図といえば3点モニターだけが定番であったのを、病院と同じ12誘導にしていることです。(ヒロ)いわゆる「プレホスピタル心電図」(病院前心電図)を12誘導で行おうということですね。(谷口)病院前心電図には、病院到着前の段階で、いち早く心電図診断を行い、治療が必要な患者を同定し、その準備も同時並行で行うことができるメリットがあります。(ヒロ)治療というのは、具体的には“心臓カテーテル検査・治療”のことですか?(谷口)はい。緊急冠動脈造影・カテーテル治療(CAG/PCI)が必要な急性心筋梗塞を含む急性冠症候群(ACS)の患者の血流再開までの時間を短くして、予後を改善するのが本システムの一番の目的です。(ヒロ)「胸痛」を訴えた患者ということですか?(谷口)いや。実はACSの症状は多岐にわたります。ですから、今回は、下顎から心窩部の範囲、これに両上肢も含めて何らかの症状があった場合に心電図を記録するよう救急隊にお願いしました。(ヒロ)なるほど。間口を広くとることで“漏れ”が少なくなりそうです。実際に記録された心電図は、その後どうなるのですか?(谷口)記録された心電図はMFER(Medical waveform Format Encoding Rules、医用波形記述規約)というデータ形式でクラウドに飛ばして、それを搬送先の病院医師が見る、という流れになります。オンコール医師は院外(自宅など)にいても、スマホからクラウドにアクセスして12誘導心電図を確認し、緊急性を判断することができます。なお、われわれが用いたのは株式会社メハーゲンのSCUNA(スクナ)というシステムで、キャリアはNTTドコモです(図1)。(図1)クラウド型12誘導心電図伝送システム画像を拡大する【質問2】この伝送心電図の取り組みは、どこの地域・どこの病院で行われていますか?(谷口)京都府の二次医療圏としては、最北の丹後医療圏*1にある京都府立医科大学附属北部医療センターで行われています。(ヒロ)有名な天橋立がある風光明媚な場所ですね。先生が以前そこにお勤めだったと聞いています。ほかに京丹後市のアピールポイントは?(谷口)実際に病院があるのは、京丹後市ではなく、与謝郡与謝野町です。ここは歌人与謝野 晶子が住んでいた場所であり、絹織物(丹後ちりめん)の名産地でもあります。食に関しても、あのブランド蟹である「間人ガニ」の漁港が近いなど、魚介類をはじめ、ご飯がとてもおいしい地域です。とくに宮津では、5~6月に収穫される「丹後とり貝」も有名です。(ヒロ)日本海が近いですから、海産物はテッパンでしょうね。とり貝はボクも大好きです。そして、“空”には心電図が飛び交っているわけですね(笑)。*1:人口約10万人。宮津市、与謝野町、伊根町、京丹後市の約845km2からなるエリア。【質問3】なぜ、この地域(京丹後医療圏)が選ばれたのでしょうか?(谷口)丹後医療圏は国内でも長寿地域の一つなんです。なかでも京丹後市は歴代最高齢の男性*2としてギネスに登録された方が暮らしていた場所としても知られています。(ヒロ)当科の的場 聖明教授が主導されている健康長寿に関するコホート研究が行われているのも、このエリアですよね?(谷口)ええ。的場教授のご指導もあり、同地域で救急領域での伝送心電図活用プロジェクトが立ち上がりました。*2:木村 次郎右衛門氏(きむら じろうえもん、116歳没)。【質問4】全国のほかの地域で同様な取り組みをしている場所はありますか?(谷口)最初に沖縄で導入された実績があります。あとは、八戸(青森県)、大分は県全域、岩手県、そして津(三重県)など、かなり広いエリアで同様の取り組みがされています。淡路島でも行われていると聞いています。【質問5】心電図はどこでとるのですか?(谷口)伝送システムは救急車内にあるので、救急隊が現着して、患者と接触後、救急車内に収容した段階で心電図を記録します。【質問6】プライバシー面での配慮はありますか? 同意をとっていますか?(谷口)現場で患者の心電図をとってそれを病院に送りますが、とくに患者や家族の同意をとらず、患者は救急車内に収容されたら、12誘導心電図をとられる仕組みになっています。顔は写りませんので、プライバシーの問題はクリアできていると思っています。(ヒロ)切迫した状況のことも多く、やむを得ない面があるのでしょうね。【質問7】心電図検査の要否、クラウド送信などの判断は、どの時点で誰がするのでしょうか?(谷口)心電図をとる必要性についての判断は、現場の救急隊が行っています。ちょっとでも疑わしければ心電図をとるようお願いしています。とった心電図はすべて病院に送信してもらい、必ず医師が確認するようにしています。(ヒロ)なるほど。ここでも“できるだけ漏らすまい”という姿勢がうかがえますね。【質問8】伝送された心電図は「誰」が「どこ」で読むのでしょうか?(谷口)読むのは循環器内科のオン・コール(またはファースト・コール)と呼ばれる役割の医師です。伝送心電図が病院に飛んでくると、救急ナースからその医師に「心電図を見てください」と一報が入り、その時点で医師が確認します。院内にいればもちろん、スマホさえあれば自宅でも屋外でも伝送された心電図を見ることができます。【質問9】心電図の記録、送信、到着までの時間は大体どれくらいですか?(谷口)心電図をとったらすぐに伝送できるので、実際には心電図をとるべきか判断して記録するまでの時間が律速になるかもしれません。現着から心電図伝送までは、85%のケースが12分以内に済んでいます。(ヒロ)ACSガイドラインにも記されている、「思わせぶりな胸部症状なら10分以内に心電図」がほぼ達成されているわけですね。【質問10】心電図はいつ伝送しますか?救急車が出発してから送るのですか?(谷口)伝送の約3/4(76%)は現場を出発する前でしたが、出発前に伝送したケースでは、現場の滞在時間が2分ほど長くなるなどのデメリットもありました。(ヒロ)難しいトレードオフ(trade-off)ですね。実際の所要時間は?(谷口)現着から医師の心電図確認までは、出発前伝送で14分、出発後伝送で20分でした。郊外型病院の特性で病院到着までの時間は患者が発生した場所次第でまちまちでしたが、心電図を確認した段階で、次にどう動くべきか判断できるので、救急車が病院に到着する頃には、受け入れ態勢(カテーテル室の立ち上げなど)がかなり整いました。(ヒロ)そういう意味でもできるだけ早く「出発前伝送」を心がけるべきなのでしょうね。事がスムーズに進めば、患者接触から15分程度で専門医が心電図にアクセスできるわけですから。【質問11】心電図の記録や送信に時間がかかったことで、診断や治療が遅れたケースはありますか? (谷口)現時点ではありません。(ヒロ)システムが優秀なこともあるのでしょうが、これは送る側と受ける側が1:1対応で“あうんの呼吸”だからですね。都心部のように受け取る病院が複数で、件数自体が増えればシステムトラブルなどが出てくる可能性もあるため、対策は必要だと思います。【質問12】この伝送心電図システムが最もターゲットとしている疾患は何でしょうか?(谷口)やはりACSです。最も早くカテーテル治療が必要で、救命効率が高い疾患ということになります。カテ室の準備にかなり時間がかかるものですから、そこを短縮するという意味でも、やはりACSが一番のターゲットになります。【質問13】伝送心電図が有効だった典型例を教えて下さい。(谷口)2016年10月~2017年1月までのトライアル期間において、17件の伝送例のうち3例で緊急カテーテルが行われました。このうちの1例がSTEMI(AMI:急性心筋梗塞)であり、その例を提示します。【症例1】58歳、男性。【主訴】胸部不快感、意識消失【現病歴】2016年11月X日、新聞配達の仕事中、午前3時頃にコンビニでタバコを買い、店を出た直後に胸が“えらく”なり、ムカムカして意識が遠のくような感じがした。その後、車を運転中に意識消失し、気がついたら電柱にぶつかっており、近隣住民によって救急要請された。救急搬送時にはNRS(Numerical Rating Scale)7/10の胸部症状が持続していた。【身体所見】意識清明、会話可能。脈拍数:49/分・不整、血圧95/61mmHg、呼吸音:清。(ヒロ)割合とリスクに乏しい男性の深夜の胸部症状ですか。車を電柱にぶつけていますから、意識がない時間があったのですね。心電図伝送の時間経過は?(谷口)3時13分に現着、車内収容が3時18分で心電図伝送が3時22分です。心電図確認は3時35分でした。3時23分に現地を出発し、病院搬入が3時40分(搬送距離9.1km)でした。(ヒロ)実際に伝送された心電図は?(谷口)図2です。II、III、aVF誘導でST上昇、胸部誘導で対側性ST変化があります。救急外来でとった心電図に比べてより振幅が大きいのですが、ノイズもなく、ほぼ遜色なく評価可能だと思います。(図2)伝送された12誘導心電図画像を拡大する(ヒロ)波形としては、同時相の12誘導波形ですね。3拍目は補充収縮でしょうから、「2度以上」、おそらくは「高度」の範疇に入る「房室ブロック」もありそうです。これが意識消失の原因ですかね。こういう場合、閉塞部位は大半が近位部ですし、V1誘導のST低下が相対的に軽めで血圧も低めですから、右室枝の関与(右室梗塞)も気になります。実際の心カテの様子はどうでしたか?(谷口)カテ室入室が4時12分、穿刺が4時20分です。右冠動脈が近位部(図内↗)で完全閉塞しており、左冠動脈にも狭窄がありましたが、当日はこちら(右冠動脈)を治療しています(図3)。血栓吸引をして、型通りのPCIにてTIMI 3を得て終了しています。peak CK 2,311U/Lでした。(図3)右冠動脈造影画像を拡大する(ヒロ)Door-to-Balloon-Time(DTBT)はいかがでしょう?(谷口)血栓吸引までが58分、バルーンまでですと69分で、これがDTBTになります。(ヒロ)DTBTは90分が一つの指標だと思いますが、余裕でクリアしていますね。“勝因”の一つは、伝送心電図の“事前情報”ですかね。(谷口)ええ。胸の症状があって心電図が送られてきたということで、われわれは“アラート”(alert)として受け止め、病院としても受け入れ体制で待ちます。プレホスピタル心電図のクラウド伝送を行うことで、診断が早くつき、病院到着後の流れが非常にスムーズになる可能性が十分あると思います。(ヒロ)まったくその通りですね。【質問14】“狙い通り”のSTEMI症例は、実際に年間どれくらいの件数がありますか?(谷口)2017年12月1日から1年間のデータがあります。心電図伝送されたのが152例(平均年齢79歳[29~96歳])あり、そのうちSTEMIの症例が11例であったという状況です。(ヒロ)割合としては7%が“ホンモノ”(本物)なんですね。いやー、今回のお話、非常に魅力的でした。“空飛ぶ心電図”の前半はここまでにしましょう。次回はプロジェクトの成功秘話や苦労した点について伺います。お楽しみに!【古都のこと~松花堂~】松花堂は、岩清水八幡宮に程近い、京都市中心部から電車でも車でも1時間弱の八幡市にあります。その社僧で瀧本坊なる寺坊の住職を務めた昭乗が晩年、泉坊一角に方丈の草庵*1を結び、「松花堂」と名付けたとされます。昭乗は今で言う“マルチ人間”で、書道(能書)*2、絵画、茶の湯などに優れた才能を発揮しました。敷地内には広大な庭園が広がっていますが、平成30年の大阪北部地震(6月)と台風21号(8月)による被害のため、一時閉園に追い込まれたという苦難の年がありました。懸命の復旧作業が行われ、同年10月下旬に再開されたものの、自然の猛威の爪痕は深く、令和元年2019年9月現在、外園のみ限定公開のため、草庵や書院、3つある茶室*3を目にすることはできません。ただ、その周囲を歩くだけでも優美さに心奪われ、いつまでも残したい名園だと誰しもが感じるでしょう。多数の竹とともに春は椿、秋は隠れ紅葉スポットとして、皆さんにもぜひ一度訪れてもらいたいです。*1:廃仏毀釈の際に現在の場所に移築され、旧地(松花堂跡)より南方に位置する。*2:光悦寺で有名な本阿弥光悦、近衛信尹とともに「寛永の三筆」とされ、将軍家の書道師範も務めた。*3:松隠・竹隠・梅隠が茶会に利用されていた。

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IV期でも積極的な局所治療を?その2―オリゴメタのコンセンサスレポート【忙しい医師のための肺がんササッと解説】第9回

第9回 IV期でも積極的な局所治療を?その2―オリゴメタのコンセンサスレポート1)Dingemans AC, et al. Definition of synchronous oligo-metastatic non-small cell lung cancer – a consensus report. J Thorac Oncol 2019 Aug 6.[Epub ahead of print]IV期でも腫瘍量の少ない「オリゴメタ」に対する積極的な局所治療の可能性について前回紹介したが、その後もいくつか興味深い追加報告がなされている。一方で、いつも議論されるのが「オリゴメタをどう定義付けるのか」という話題。今回EORTCを中心としたグループからJ Thoracic Oncol誌にコンセンサスレポートが報告されているので、成立過程とともに紹介する。1)について本報告は欧州においてEORTCが主導した、オリゴメタに関するコンセンサスレポートであるが、議論が割れる対象だけにその成立過程にいくつかの工夫がみられる。また、少数派の意見も存分に記載されている。検討内容は大きく3本立てで進んでいる。王道であるシステマティックレビューに加え、webベースでのクリニカルクエスチョン作成とこれに関するサーベイ、さらには学会でのケースディスカッションを加え、最終的にコンセンサス会議でひとまずの合意形成がなされたとのこと。内科・外科・放射線科といった多職種が参加した中でWebを活用した体制構築もさることながら、2017年10月から開始され翌2018年には最終の会議まで持ってきているというスピードも素晴らしい。検討事項の詳細は以下の通り。1.システマティックレビュー;1125報から最終的に21報(総患者数1215人)を抽出。2.インターネットサーベイ;34か国から423人が参加。3.ケースディスカッション;24施設から26人の研究者が参加し、10症例について検討した。100%の合意が得られたのは1例のみ。3例で90%以上の合意が得られた一方で、その他の症例での合意形成は30~60%台と専門家間でもかなり意見が割れた様子がうかがえる。最終的なコンセンサスの内容について1.オリゴメタに対する治療は、すべての転移巣について根治的局所治療が技術的に可能かつ毒性が許容可能と考えられる場合に検討する。2.オリゴメタの定義は「転移巣5つ、転移臓器3つまで」。胸水や骨髄への転移はオリゴメタからは除外する一方で、脳・副腎転移は特別視しない。同一肺葉内転移(T3)、原発巣と同一肺内転移(T4)、縦郭リンパ節転移は転移巣としてカウントしない。一方でインターネットサーベイでは転移巣は3個までという意見が最多であった。3.画像評価として、PET-CT・頭部MRIは必須とする。これについては100%の賛同が得られた。4.将来的な検討事項として、組織型や遺伝子変異をどのように組み込むか、また転移巣だけではなく腫瘍量も考慮すべきなのかが議論された。また、転移巣の個数を元にしたより詳細な検討が可能か、などの意見が出た。解説局所治療の発展とともに「やろうと思えば施術はできる、しかしどの程度のメリットがあるのかわからない」というジレンマに悩む場面が増えてきた。全体からすると多くない集団ではありながら、オリゴメタに対する臨床試験が続々と報告されていることからも、世界的に重要なクリニカルクエスチョンとしてとらえられている事がわかる。一方で前向き試験の対象も一定ではなく、定義付けが明確でない事が一番の課題でもあった。それなら皆が同じ土俵で議論するためのたたき台としてコンセンサスを作ろう、というのが今回の試みである。ありきたりなシステマティックレビューのみでなく、多くの職種・国をまたいだインターネットサーベイ、実際の症例を用いたケースディスカッションを含めつつ、短期間でコンセンサスを形成し論文の形まで持ってきたところに関係者の熱意を感じる。ちなみに、本文中に記載されているが、最終的なとりまとめには若手が多く関わっているようであり、わが国でもこのような試みができるはずでは、と思ってしまった。本筋に戻るが、この論文の白眉は臨床医の実感とエビデンスをうまく融合させて落としどころを付けている点である。転移巣の数については「最新の技術を用いれば多くの転移巣にも施術が可能」という意見も紹介しつつ、「システマティックレビューでは5つ以内が最多であった」とバランスよく結論付けている(転移巣を有する患者については、今回定義したものとは別の集団として考えるべきでは、という意見も紹介されていた)。脳転移は特別視しない一方で、肺内転移・縦郭リンパ節転移をすべからくカウントしなくてよいのか、などやや違和感はあるものの、おおむね本邦の臨床医も納得できる内容になっていると思われる。現在米国を中心に第III相試験が進行中であるが、欧州では大規模レジストリー(EORTC-RP-1822)を行っているようである。一筋縄ではいかないクリニカルクエスチョンをどのように解決していくか、体制作りが有効に機能していることをうかがわせる報告である。

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赤肉と鶏肉、乳がんリスクはどちらが高い?/Int J Cancer

 肉を食べると乳がん発症リスクは上昇するのか。これまで因果関係が言われながらも、一貫性のあるエビデンスが示されていなかった肉と乳がんの関係について、米国・Columbia Mailman School of Public HealthのJamie J. Lo氏らが、4万2,000例超の女性を平均7.6年間追跡した調査結果を発表した。赤肉(red meat)の摂取量が最も多い群は最も少ない群に比べて浸潤性乳がんのリスクが1.23倍高く、一方で鶏肉は最も多く食べる群が最も少ない群に比べて同リスクは0.85倍と低く、赤肉の代わりに鶏肉を食べることで乳がんリスクが低下する可能性があることが示唆されたという。なお調理法についての関連性は観察されなかったとしている。International Journal of Cancer誌オンライン版2019年8月6日号掲載の報告。 研究グループは、各種の肉摂取量、肉関連変異誘発物質と浸潤性乳がん発症との関連を調べるため、「Sister Study」に参加した4万2,012例から、各種の肉摂取量と調理方法の情報を入手し解析した。参加者は、2003~09年に登録されBlock 1998 Food Frequency Questionnaireを完了し適格基準を満たしていた。 各種の肉曝露および肉関連変異誘発物質の曝露を算出し、浸潤性乳がんリスクを、多変量Cox比例ハザード回帰法にて推算した。 主な結果は以下のとおり。・追跡期間平均7.6年間において、4万2,012例の被験者のうち、浸潤性乳がんと診断されたのは試験登録後1年以降の時点で1,536例であった。・赤肉の摂取量増加は、浸潤性乳がんリスクの上昇と関連していた(最高四分位群vs.最小四分位群のHR:1.23、95%CI:1.02~1.48、傾向のp=0.01)。・一方で、鶏肉の摂取量増加は、浸潤性乳がんリスクの低下と関連していた(同HR:0.85、95%CI:0.72~1.00、傾向のp=0.03)。・赤肉摂取と鶏肉摂取を固定していた置換モデルにおいて、赤肉摂取を鶏肉摂取に切り替えると、浸潤性乳がんリスクは低下する関連が認められた(同HR:0.72、95%CI:0.58~0.89)。・調理方法(ヘテロサイクリックアミンや赤肉摂取に由来するヘム鉄)と、乳がんとの関連は観察されなかった。

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全国の医療施設、災害対策の実情はいかに!?

 地震大国の日本において、異常気象の常態化によるスコール、それに伴う洪水・土砂災害などが後を絶たない。このような災害時には、DMAT(災害急性期に活動できる機動性を持った トレーニングを受けた医療チーム)と呼ばれる災害派遣医療チームにより医療支援が行われる場合がある。 しかし、医療者一人ひとりが日頃から災害を意識し準備を行っていなければ、家族や患者、ましてや自らの命は救えないだろう。 そこで、ケアネットでは2019年7月に会員医師約200名を対象とし、「院内の災害対策」に関するアンケート調査を実施。医師たちの災害に対する意識や対策状況などの実態について、実情や意見を聞いた。アンケート回答者の内訳 アンケートは2019年8月1~7日、ケアネット会員の医師を対象にインターネット上で実施。回答者の年代別内訳は50代が31%と最も多く、40代(28%)、30代(20%)、60代(14%)と続いた。このように今回のアンケートでは責任世代の回答が多く、具体的な対策を行っていると回答したのも、この年代が多かった。病床数別内訳は、200床以上が58%で最も多く、0床(20%)、100~199床(12%)、20~99床(6%)、1~19床(3%)、NA(2%)だった。早めの休診連絡で患者を外の危険から守る 「自施設で災害対策を行っている」と回答した方の具体策内訳は、休診連絡(29%)が最も多く、その他(25%)、備蓄(20%)、処方対応(15%)、災害拠点病院(6%)、スタッフの保護(5%)と続いた。 具体的な対策の一例を以下に示す。・インターネットで休診状況発表・避難経路の確立・備蓄食料、非常電源、災害対応チームの訓練・薬剤の処方日数を10日分ほど増やした・入院患者のための食料、飲料水の備蓄を増やした・泊まれるように寝袋を用意した また、大規模災害の場合、特定施設の問題ではなく地域の問題に発展するため、医療施設間、さらには地方自治体との連携が要求される。これを踏まえ、地域での災害対策の話し合い実施状況と実施時に話し合われた内容についても調査した。 この結果を含む、今回のアンケート調査の詳細データや自由記述で挙げられた具体的な理由は、CareNet.comに掲載中。

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selinexorが3クラス抵抗性多発性骨髄腫に有望/NEJM

 現在使用可能な治療に抵抗性の骨髄腫患者において、first-in-classのエクスポーチン1(XPO1)阻害薬selinexorと低用量デキサメタゾンの併用療法は、約4分の1の患者に客観的奏効をもたらすことが、米国・マウント・シナイ・アイカーン医科大学のAjai Chari氏らが行ったSTORM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2019年8月22日号に掲載された。selinexorは、核外輸送複合体の選択的阻害薬であり、骨髄腫で過剰発現しているXPO1を阻害して腫瘍抑制蛋白の核内蓄積と活性化を促進し、核内因子κBを阻害するとともに、腫瘍蛋白メッセンジャーRNA翻訳を抑制する。selinexorは、現在の治療選択肢に抵抗性の骨髄腫患者において、新規治療薬となる可能性が示唆されている。selinexor+デキサメタゾンを週2回経口投与  本研究は、欧米の60施設が参加した多施設共同非盲検第IIb相試験であり、2015年5月~2018年3月の期間に患者登録が行われた(Karyopharm Therapeuticsの助成による)。 対象は、骨髄腫に罹患し、ボルテゾミブ、カルフィルゾミブ、レナリドミド、ポマリドミド、ダラツムマブ、アルキル化薬による治療歴があり、1種以上のプロテアソーム阻害薬、1種以上の免疫調節薬、ダラツムマブに抵抗性(3クラス抵抗性)を示す患者であった。 被験者は、selinexor(80mg)+デキサメタゾン(20mg)を週2回経口投与された。治療は、病勢進行、死亡、毒性による治療中止となるまで継続された。 主要評価項目は全奏効(部分奏効以上と定義)とし、独立評価委員会による判定が行われた。副次評価項目は、奏効期間、臨床的利益(最小奏効以上と定義)、無増悪生存期間、全生存期間とした。selinexor+デキサメタゾンの全奏効率26%、CAR-T後再発例で部分奏効達成 122例を修正intention-to-treat集団、123例を安全性解析集団とした。年齢中央値は65.2歳(範囲40~86)、男性が58%で、前治療レジメン数中央値は7(3~18)であった。患者の53%が、高リスクの細胞遺伝学的異常を有していた。 selinexor+デキサメタゾン併用療法による部分奏効以上は、32例(26%、95%信頼区間[CI]:19~35)で観察された。内訳は、厳格な完全奏効が2例(2%)で達成され、最良部分奏効が6例(5%)、部分奏効が24例(20%)であった。CAR-T療法施行後に再発した2例はいずれも部分奏効を達成した。最小奏効は16例(13%)で、48例(39%)は安定であったのに対し、病勢進行または評価不能は26例(21%)であった。最小奏効以上は48例(39%)だった。 selinexor+デキサメタゾン併用療法で部分奏効以上に達するまでの期間中央値は4.1週、奏効期間中央値は4.4ヵ月であった。また、無増悪生存期間中央値は3.7ヵ月、全生存期間中央値は8.6ヵ月であった。部分奏効以上または最小奏効以上の患者の全生存期間中央値は15.6ヵ月だった。 selinexor+デキサメタゾン併用療法の頻度の高い非血液学的有害事象として、疲労(73%)、悪心(72%)、食欲不振(56%)が認められたが、Grade1または2が多かった。血液学的有害事象では、血小板減少(73%)の頻度が高かった(Grade3は25%、Grade4は33%)。血小板減少に起因するGrade3以上の出血イベントが、6例にみられた。67%に貧血が認められた。 著者は、「この試験結果は、いくつかの理由で注目に値する」とし、(1)腎機能低下、血小板減少、好中球減少がみられる患者も登録可、(2)対象は、中央値で10種の抗骨髄腫薬を含む中央値7レジメンという強力な前治療歴があり、(3)骨髄腫の進行が急激で、スクリーニングから初回治療までの12日間に疾病負荷が22%も増加した患者である点などを挙げている。

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災害対策、周りの施設はどうしている?-アンケート結果発表

9月1日は「防災の日」。皆さまの施設は災害時に備え、万全の対策を行っているでしょうか? 自然災害時には医師も被災者の1人。しかし、自らの家族だけではなく、経営者や勤務医としての立場から患者や従業員の命を守ることが求められます。今後、いつなんどき発生するかわからない災害に備え、全国の医師の災害に対する認識や自施設での取り組みについて、CareNet.com会員医師約200人に調査しました。結果概要「自施設において、検討または実施している対策はあるか?」という問いに対し、半数以上の施設で対策をしていないという結果に。画像を拡大する対策を行っていない回答者の中には、「災害拠点病院ではない」という理由も見られたが、災害拠点病院以外でもスタッフや患者への配慮が必要となるため、スタッフとの話し合いは欠かせないと考えられる。医師が考える具体的な対策とは…?自施設での対策を実施していると回答した69人(うち、4人は無効)における主な対策の内訳を『スタッフの安全確保』『休診対応』『災害拠点病院としての対応』『(日々の診療における)薬剤処方に関する対応』『備蓄』『その他』の6つに区分したところ、グラフのような結果になった。画像を拡大する具体的な回答として、「スタッフの出勤方法と出勤時間の確認」「緊急連絡用の掲示板整備やホームページでの休診連絡」「災害拠点病院として他院に連絡をとる」「日頃から薬剤の処方日数を1週間分増やす」「缶詰、米、水、燃料を備蓄する」などが挙がった。また、『その他』としては、「自家発電機を準備」「行政と連携し障害者や老人の存在を把握する」「在宅酸素療法の会社に災害時の態勢を確認」「院内放送で津波の有無を連絡」などがあった。具体策を講じている回答者で最も割合が高かった年代は、50代(34%)と40代(26%)であった。また、所属施設で最も割合が高かったのは、200床以上の病院(60%)で、続いて0床のクリニックなどが15%だった。画像を拡大する地域での話し合いは14%にとどまる「近隣のクリニックや病院、地域医師会などで対策を話し合ったことはあるか?」については、あると回答したのは14%のみで、ほとんどの施設が「地域間での話し合いの経験がない」と回答した。画像を拡大する地域の話し合いがあると回答した30人(14%)には、自施設での対策を行っていない12人が含まれていた。「ない」の理由は“機会がない”だけ?話し合われた内容としては、「患者の情報提供」「受け入れ状況の伝達」「避難経路や連絡・中継場所」「患者さんへの説明方法」「地震発生時の拠点病院、地域の医療ケア児の対策」「スプリンクラーの設置について」などが挙がった。一方で、「ない」と答えた医師の主な回答として「話し合いの機会がない」が最も多く(23%)、「自治体に委ねられている」「役員・立場ではない」「近隣のクリニックとは対象疾患が異なるから」などがあった。また7%と少数意見ではあるが、「大きな災害の想定がない」など危機感の乏しさも明らかになった。画像を拡大する設問詳細Q1.自施設において、検討または実施している対策はありますか?あるないQ2.設問1で「ある」と答えた方にお伺いします。それはどのような対策ですか?(自由記述)例)「薬剤の処方日数を1週間分増やした」「患者ごとにインスリンなどの対策を説明」「スタッフや来院患者の被害を防ぐため、早めに休診を決定し、患者にその旨を連絡する」などQ3.災害対策について、近隣のクリニックや病院、地域医師会などで対策を話し合ったことはありますか?あるないQ4.設問3で「ある」と答えた方は主な対策内容を、「ない」と答えた方はその理由をお答えください(自由記述)。画像を拡大する

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悪性黒色腫におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用の心血管リスク

 悪性黒色腫患者の治療におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法による心血管有害事象の特徴が明らかになった。ドイツ・エッセン大学病院のRaluca I. Mincu氏らによるシステマティックレビューおよびメタ解析の結果、BRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法はBRAF阻害薬単独療法と比較し心血管有害事象のリスクが高いことが示された。著者は「今回の結果は、悪性黒色腫治療の有益性と、心血管疾患の発症および死亡とのバランスをとるのに役立つと思われる」とまとめている。JAMA Network Open誌2019年8月2日号掲載の報告。 研究グループは、悪性黒色腫患者におけるBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法と心血管有害事象との関連について、BRAF阻害薬単独療法と比較する目的で、システマティックレビューおよびメタ解析を行った。PubMed、Cochrane、およびWeb of Scienceを用い、2018年11月30日までに発表された論文について、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、エンコラフェニブ、トラメチニブ、ビニメチニブ、cobimetinibをキーワードとして検索した後、悪性黒色腫患者を対象にBRAF阻害薬単独療法とBRAF阻害薬・MEK阻害薬併用療法を比較し心血管有害事象について報告している無作為化臨床試験を解析に組み込んだ。データの評価はPRISMAガイドラインに従い、ランダム効果および固定効果分析を用いて相対リスク(pooled relative risk:RR)および95%信頼区間(CI)を算出した。また、心血管有害事象に関連する患者特性を評価する目的でサブグループ解析を行った。 主要評価項目は、肺塞栓症、左室駆出率低下、高血圧、心筋梗塞、心房細動およびQTc間隔延長であった。 主な結果は以下のとおり。・無作為化臨床試験5件、悪性黒色腫患者計2,317例が解析に組み込まれた。・BRAF阻害薬+MEK阻害薬併用療法はBRAF阻害薬単独療法と比較して、肺塞栓症のリスク増加(RR:4.36、95%CI:1.23~15.44、p=0.02)、左室駆出率低下(RR:3.72、95%CI:1.74~7.94、p<0.001)および高血圧(RR:1.49、95%CI:1.12~1.97、p=0.005)と関連することが認められた。・心筋梗塞、心房細動およびQTc間隔延長に関してはRRに有意差は認められなかった。・Grade3以上の心血管有害事象についても同様の結果であった。Grade3以上の左室駆出率のRR:2.79、95%CI:1.36~5.73、p=0.005、I2=29%、Grade3以上の高血圧のRR:1.54、95%CI:1.14~2.08、p=0.005、I2=0%。・Grade3以上の肺塞栓症に関しては、RRに有意差はなかった。・左室駆出率低下のリスクは平均年齢が55歳未満のサブグループで高く(RR:26.50、95%CI:3.58~196.10、p=0.001)、肺塞栓症のリスクは平均追跡期間が15ヵ月超のサブグループで高かった(RR:7.70、95%CI:1.40~42.12、p=0.02)。

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2型糖尿病の予防・治療に不飽和脂肪酸は影響せず?/BMJ

 英国・イースト・アングリア大学のTracy J. Brown氏とJulii Brainard氏らは、新たに診断された糖尿病と糖代謝に対する多価不飽和脂肪酸(PUFA)の影響を評価する、未発表データを含むこれまでで最も広範囲なシステマティックレビューとメタ解析を実施し、オメガ3、オメガ6または総PUFAの増加は、2型糖尿病の予防および治療に対し影響が少ないかあるいは影響がないことを明らかにした。これまで、オメガ3は実験データでは糖尿病のコントロールを悪化させることや、観察研究のシステマティックレビューでは有益性と有害性の両方が示唆されていた。また、オメガ6の上昇は、糖代謝の改善および悪化の両方と関連することが観察研究で報告されており、オメガ3、オメガ6および総PUFAの、糖代謝および2型糖尿病への影響は結論が得られていなかった。BMJ誌2019年8月21日号掲載の報告。無作為化試験83件のシステマティックレビューとメタ解析を実施 研究グループは、Medline、Embase、Cochrane CENTRAL、WHO international Clinical Trials Registry Platform、Clinicaltrials.gov、および関連するシステマティックレビューの研究を検索し、α-リノレン酸、長鎖オメガ3、オメガ6、総PUFAの増加による影響を評価した24週以上の無作為化比較試験を対象として、糖尿病の診断、空腹時血糖または空腹時インスリン、HbA1c、インスリン抵抗性(HOMA-IR)に関するデータを収集し、相対リスクと平均差を用いたランダム効果メタ解析による統計解析と感度解析を実施した。 ファンネルプロットを検討し、サブグループ化により介入の種類、ベースライン時の糖尿病リスク、抗糖尿病薬の使用、試験期間、用量などの影響を評価した。バイアスのリスクはCochrane toolとGRADEを用いたエビデンスの質で評価した。 検索により、無作為化比較試験83件(主に長鎖オメガ3補給の影響を評価)が解析に組み込まれた。10件はバイアスのリスクがlow(低)であった。長鎖オメガ3の高用量摂取で糖代謝が悪化 長鎖オメガ3は、糖尿病診断の可能性(相対リスク:1.00、95%信頼区間[CI]:0.85~1.17、5万8,643例、糖尿病発症3.7%)、あるいは糖代謝の測定値(HbA1c平均差:-0.02%[95%CI:-0.07~0.04]、血漿グルコース平均差:0.04mmol/L[95%CI:0.02~0.07]、空腹時インスリン平均差:1.02pmol/L[95%CI:-4.34~6.37]、HOMA-IR平均差:0.06[95%CI:-0.21~0.33])に関する影響が少ないかまたはまったく影響がなかった。 長鎖オメガ3の摂取量が4.4g/日を超えると、負の影響が示唆された。糖尿病の診断に対するα-リノレン酸、オメガ6および総PUFAの影響はエビデンスの質が非常に低いため不明であったが、α-リノレン酸の増加が空腹時インスリンを増加(約7%)させる可能性があることを除いては、糖代謝の測定値に対する影響は少ないかまたはないことが示された。 オメガ3/オメガ6比が糖尿病または糖代謝に重要であるというエビデンスは確認されなかった。

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がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancet

 がんサバイバーのほとんどで、がん部位別でかなり違いはあるものの、一般集団と比較して心血管疾患の中~長期リスクの増加が確認された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHelen Strongman氏らが、がんサバイバーにおける心血管リスクの定量化を目的とする電子医療記録データベースを用いたコホート研究の結果を報告した。過去数十年で、がんの生存率は顕著に改善してきたが、サバイバーの長期的な心血管リスクについては懸念が指摘されている。しかし、さまざまながんサバイバーにおける心血管疾患の予防や管理に関するエビデンスが不足していた。Lancet誌オンライン版2019年8月20日号掲載の報告。英国の大規模臨床データベースを用い、がんサバイバー約10万人について解析 研究グループは、英国の入院やがん登録のデータベースと連携しているUK Clinical Practice Research Datalink(CPRD GOLD)を用い、一般的な20種類のがんについて診断後12ヵ月時点で生存している18歳以上のサバイバー、ならびに年齢、性別などをマッチさせたがんの既往がない対照群のコホートを特定し、Coxモデルによりさまざまな心血管疾患のリスクを比較した。 交互作用を適合させ効果修正を行い、フレキシブル・パラメトリック生存モデルで経時的な過剰絶対リスクを推定した。 1990年1月1日から2015年12月31日の期間で、1年以上の追跡調査を受け対象がんの診断を受けた患者12万6,120例と、対照群の患者63万144例が特定され、除外基準に合致した症例を除き、がんサバイバー群10万8,215例と対照群52万3,541例が主要解析に組み込まれた。血液、食道、肺、腎、卵巣等のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加 静脈血栓塞栓症のリスクは、対照群と比較して、20種類のがんのうち18種のサバイバー群で増加した。補正ハザード比(aHR)の範囲は、前立腺がん患者の1.72(95%信頼区間[CI]:1.57~1.89)から、膵臓がん患者の9.72(95%CI:5.50~17.18)にわたっていた。aHRは経時的に減少したものの、診断後5年超は増加が続いていた。 20種類のがんのうち、10種のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加することが確認された。それぞれのaHR(95%CI)は、非ホジキンリンパ腫1.94(1.66~2.25)、白血病1.77(1.50~2.09)、多発性骨髄腫3.29(2.59~4.18)、食道がん1.96(1.46~2.64)、肺がん1.82(1.52~2.17)、腎がん1.73(1.38~2.17)、卵巣がん1.59(1.19~2.12)などであった。 不整脈、心膜炎、冠動脈疾患、脳卒中、心臓弁膜症のリスク増加は、血液悪性腫瘍などで同様に確認された。心不全または心筋症、および静脈血栓塞栓症のHRは、心血管疾患の既往歴がない患者および若年患者において高かった。しかし、過剰絶対リスクは、年齢の上昇に伴い徐々に増加し、これらのリスク増加は化学療法を受けた患者において最も顕著であった。 なお、著者は今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量に関する情報がないこと、がんの再発、家族の心血管疾患歴、人種、食事やアルコール消費量などの重要な情報に関する信頼できるデータがなかったことなどを指摘している。

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言いたいことが言えない!【Dr. 中島の 新・徒然草】(287)

二百八十七の段 言いたいことが言えない!最近やっているオンライン英会話の<Cambly>は、とくに予約しなくても、やろうと思ったときに接続すれば、手の空いている講師につながります。誰につながるかは、まったくランダムのようです。先日つながったのは、メキシコに住むアメリカ人男性でした。画面で見ると、私よりもちょっと年配かな、という印象です。「日本に住んでいる」と自己紹介すると「おお、日本旅行をしてきた両親が、すごくいい国だった、と言ってたぞ。俺もぜひ行ってみたいよ」ということでした。さて、今回私が話したのは手術中のことについてです。近頃の英会話レッスンは、もっぱら私が喋って、要所要所で講師に直してもらっています。中島「僕が麻酔科医をしていたときは、速い手術ほどいい手術だと思っていました」講師「なるほど」中島「でも、手術をやる側の立場になると、たとえば、取り残しのない腫瘍切除のほうが速い手術より重要だと思うようになりました」講師「確かにそうだ」中島「なので、この麻酔科医と外科医の考え方のギャップを埋めるということが重要だと思います」ここで、「ギャップを埋める」の「埋める」が出てこない!何て言ったらエエねん。まさか英語でも「埋める」ではないやろうし「ギャップを縮める」というのも変だし。中島「うーん、うーん」(適切な動詞が出てこなくて苦しんでいる音)講師「closeだな」中島「そうか、closeか!」画面の向こうの講師は、左右の手の平をお互いに近付ける動作をしています。これが close のイメージなのでしょう。中島「麻酔科医を、〇〇先生と名前で呼ぶことも大切だと思います」講師「なるほど」中島「『麻酔科の先生』と呼ぶのも失礼ですし」講師「そりゃそうだ」中島「でもね。この年になると、人の名前を覚えるのも難しいんですよ」講師「わかるよ」中島「若い時には看護師さんたちの名前なんか、勝手に頭の中に入ってきたのに」講師「ハッハッハ」中島「あの情熱がどっかにいっちまいましたよ」またまた「情熱がどっかにいった」の「どっかにいった」が出てこない。「蒸発した」とか言ったらいいのか?でも、いささか文学的すぎる表現ですね、これは。講師「そいつはdisappearだよ」中島「ホンマや。disappearぐらい知っていたのに」講師「情熱が消えたってのもよくわかるよ。俺も一緒だ」中島「やっぱり!」講師「おっと時間だな。また話を聞かせてくれ」というわけで、15分間のレッスンが終わりました。あらかじめテーマを決めておいて喋ると、比較的話がしやすいですね。レッスンでは「こう言ったら良かったのか!」というのが勉強になります。苦しい修行は続きますが、また経過を報告いたしましょう。最後に1句英会話 あるある話で 盛り上がる

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ゼロからの挑戦、私が米国を志した理由【臨床留学通信 from NY】第1回

第1回:ゼロからの挑戦、私が米国を志した理由このたび、ケアネットで連載執筆の機会をいただきました、工野俊樹と申します。現在、米国Mount Sinai Beth Israel病院で内科レジデントをしております。この連載では、私が卒後13年目で米国に臨床留学するに至った経緯を、その準備や具体的な勉強方法など、できるだけ細かな情報を盛り込みながらお伝えしたいと考えています。留学に興味があるけれどもイメージが湧かない、どうやったらよいのかまったくわからないけれどアメリカに興味がある、とにかく海外で生活してみたいという研修医や若手医師の方、あるいは、私のように若手を過ぎてしまったけれど留学してみたいという方々に、自身の体験を参考にしていただければと思います。まずは、私の略歴をお示しします。2000年3月ラサール高校(鹿児島)卒業2006年3月慶應義塾大学医学部卒業2006年4月さいたま市立病院臨床研修医2008年4月慶應義塾大学病院内科専修医2009年4月横浜市立市民病院循環器内科2010年4月慶應義塾大学病院循環器内科2011年3月ECFMG certificate取得2011年6月足利赤十字病院循環器内科2018年7月~Mount Sinai Beth Israel 内科レジデントご覧いただいた通り、私の専門は循環器内科です。2018年6月まで慶應義塾大学の関連病院である足利赤十字病院で、主に心臓カテーテル治療をメインとして行う循環器内科として勤務していましたが、現在は、うってかわってカテーテルとは無縁の内科レジデントをしています。カテーテル治療医としての留学ができれば理想的ではあったのですが、なかなか米国でのバックグラウンドもない外国人には、そのような“おいしい”トレーニングの枠はありませんでした。それでも留学したかったため、回り道をしながらも内科レジデントとして米国に入り込み、現在に至ります。英語は不得手、それでも留学したかったそもそも、「なぜ留学するのか」という問いに対する明確な動機はありませんでした。帰国子女でもなく、英語はむしろ不得意なほうでした。強いて言うなら、学生のころから海外で医者をしてみたかった、という程度の動機でしかなく、今思えば無計画でしかありませんでした。計画的な人は、学生のうちに短期留学したり、USMLE Step1の受験準備などをしたりしている中、学生時代の私はテニスに明け暮れていました。結果的に、一念発起してUSMLEを受け始めた2009年から、実際に留学するまでに10年近い歳月を費やすことになるとは思いもよりませんでした。そういう意味では、私が留学するまでの過程は一般的なコースではありません。学生の間は考えてもいなかったけれど、今からでも間に合うのか―と迷っている方々にも私の経験が参考になれば幸甚です。実際、こうして海外で働いてみて日本との違いを実感し、視野の広がりを実感する日々です。「2023年問題」前に、急げ!ただ、迷ってばかりもいられない現実的な問題があります。いわゆる「2023年問題」です。現在、日本の医学部を卒業していれば、米国の国家試験であるUSMLEを合格するとcertificateを取得できます。しかしながら、米国のECFMG (Educational Commission for Foreign Medical Graduates)は、2023年以降、ある一定の水準を満たした医学部を卒業しなければECFMG certificateを取得できない可能性がある、と通達したのです。これに対し、日本の医学部全体で実習時間を増やすなどの対策を進めていますが、ECFMGが求める「ある一定の水準」を満たすレベルなのかどうかは不透明です。また、2023年以前に卒業していれば問題ないのか否かもわからないのが現状です。今言えることは、少しでも留学したいという思いがある方は、早めの受験が望ましいということです。思い切って行動あるのみです。次回より、USMLE受験の流れと具体的な対策について書いていきます。

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