がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancet

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がんサバイバーの多くが中長期のCVDリスク増加/Lancetのイメージ

 がんサバイバーのほとんどで、がん部位別でかなり違いはあるものの、一般集団と比較して心血管疾患の中~長期リスクの増加が確認された。英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のHelen Strongman氏らが、がんサバイバーにおける心血管リスクの定量化を目的とする電子医療記録データベースを用いたコホート研究の結果を報告した。過去数十年で、がんの生存率は顕著に改善してきたが、サバイバーの長期的な心血管リスクについては懸念が指摘されている。しかし、さまざまながんサバイバーにおける心血管疾患の予防や管理に関するエビデンスが不足していた。Lancet誌オンライン版2019年8月20日号掲載の報告。

英国の大規模臨床データベースを用い、がんサバイバー約10万人について解析
 研究グループは、英国の入院やがん登録のデータベースと連携しているUK Clinical Practice Research Datalink(CPRD GOLD)を用い、一般的な20種類のがんについて診断後12ヵ月時点で生存している18歳以上のサバイバー、ならびに年齢、性別などをマッチさせたがんの既往がない対照群のコホートを特定し、Coxモデルによりさまざまな心血管疾患のリスクを比較した。

 交互作用を適合させ効果修正を行い、フレキシブル・パラメトリック生存モデルで経時的な過剰絶対リスクを推定した。

 1990年1月1日から2015年12月31日の期間で、1年以上の追跡調査を受け対象がんの診断を受けた患者12万6,120例と、対照群の患者63万144例が特定され、除外基準に合致した症例を除き、がんサバイバー群10万8,215例と対照群52万3,541例が主要解析に組み込まれた。

血液、食道、肺、腎、卵巣等のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加
 静脈血栓塞栓症のリスクは、対照群と比較して、20種類のがんのうち18種のサバイバー群で増加した。補正ハザード比(aHR)の範囲は、前立腺がん患者の1.72(95%信頼区間[CI]:1.57~1.89)から、膵臓がん患者の9.72(95%CI:5.50~17.18)にわたっていた。aHRは経時的に減少したものの、診断後5年超は増加が続いていた。

 20種類のがんのうち、10種のがんサバイバーで心不全や心筋症のリスクが増加することが確認された。それぞれのaHR(95%CI)は、非ホジキンリンパ腫1.94(1.66~2.25)、白血病1.77(1.50~2.09)、多発性骨髄腫3.29(2.59~4.18)、食道がん1.96(1.46~2.64)、肺がん1.82(1.52~2.17)、腎がん1.73(1.38~2.17)、卵巣がん1.59(1.19~2.12)などであった。

 不整脈、心膜炎、冠動脈疾患、脳卒中、心臓弁膜症のリスク増加は、血液悪性腫瘍などで同様に確認された。心不全または心筋症、および静脈血栓塞栓症のHRは、心血管疾患の既往歴がない患者および若年患者において高かった。しかし、過剰絶対リスクは、年齢の上昇に伴い徐々に増加し、これらのリスク増加は化学療法を受けた患者において最も顕著であった。

 なお、著者は今回の研究の限界として、投与された化学療法の種類や投与量に関する情報がないこと、がんの再発、家族の心血管疾患歴、人種、食事やアルコール消費量などの重要な情報に関する信頼できるデータがなかったことなどを指摘している。

(医学ライター 吉尾 幸恵)

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腫瘍循環器病学の基礎研究の1つとなる論文(解説:野間重孝氏)-1113

コメンテーター : 野間 重孝( のま しげたか ) 氏

栃木県済生会宇都宮病院 副院長

J-CLEAR評議員

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